神室透《かむろとおる》、35歳、160センチ、体重60キロ。見た目は若々しいが、中身は苦労しているアラフォー。彼は男女比が1:9の職場で、日々の人間関係のストレスと戦っていた。事務職という仕事は静かだが、彼にとっては毎日が戦場だった。
透は、誰もが部門内の派閥争いに巻き込まれるのを避け、中立を保つことで、職場での平和を保とうとしていた。しかし、その平和は常に脆く、彼は疲弊していた。
女性とお付き合いした数はそれなりに多いが、透はなぜか結婚する気にはならず、結婚を希望していた女性たちは愛想を尽かして離れていく。そんな付き合いを繰り返していた。
ある金曜日の夕方、普段より早めに仕事を終えた透は、ホッと一息つきながら帰宅していた。しかし、彼の日常は突然、破られた。通りを横断している最中、彼の前に突如として飛び出してきたトラックが見えた。透の反射神経で、隣にいた小さな女の子を押しのけたが、自分は間に合わず、トラックに撥ねられた。
目を覚ますと、彼は異様に白い空間にいた。そこは天国か、それとも……
「ん?ここは天国かな?白い部屋にいるみたいだ。」
透はこの部屋が赤かったから、フラッシュ動画で見た、誰も出られないホラーな部屋だなと思っていた。
1人でくすくす笑っていると、白い空間に血のような赤い染みがにじんで、真っ白な部屋が赤い紅い部屋に変わっていく。
「え?え?いやいや確かに赤い部屋は想像したけどさ。本当に変わることはないじゃん?ちょっと待って。ホラー映画はダメなんだよ!怖いわけじゃないけどね!!本当に怖くないんだからね!?」
最後はツンデレお嬢様みたいになってしまった透。どっからどう見てもホラーは苦手だ。
「私、メリーさん。赤い部屋の前にいるの。」
「ちょっ!?赤い部屋にメリーさんはホラー属性盛りすぎですよ!?」
「私、メリーさん、今あなたの後ろにいるの。」
透がガタガタ震えながら、恐る恐る後ろを振り向くと血に染まった衣装を着た長い髪で顔が見えない長身の女の人がいた。
「イヤーっ!!!!!!!!赤いあかああい貞子おおおおおお!!!!!!!!」
透は叫びながら、気を失った。口から泡を吹いて、ブルブル震えながら。今思いだしてもブルブル震えるな。
30分後、爆笑する純白の服をきた大人のお姉さんと膨れっ面の透が椅子に座っていた。
「あっははははは!突っ込みながらあそこまでいい反応をしてくれると驚かせがいがあって。気合い入れちゃったのよ。ごめんごめん。」
「だからといって神様が貞子の格好して、後ろにいるなんておかしいでしょ。赤い部屋にメリーさんに貞子は全然違うし。属性盛りすぎでしょ。ブツブツ……」
「そもそもねえ!ここはどこです?トラックに轢かれたのにいつの間にか白い部屋にいるなんて、まるでラノベの異世界転生と同じじゃないですか。ちょっとちがうけど。」
透はキャンプ動画も見るが、ラノベやアニメの異世界転生ものが好きだった。異常なほどに。
「あらあらあなたもラノベとかアニメとかみるのね。そうよ、あなたはあの少女を助けて命を落とした。ただあの子は地球のある神の加護を受けていてね。その神から神子を救ってくれたことに対して、何かお礼をしたいということで私に相談が来たのよ。ああ申し遅れたわね。私の名前は女神ミリオニア。ミリアってよんでね?」
ウィンクをしてくる大人のお姉さんの、Fカップはある豊満なおっぱいをチラ見しながら、これが大人の余裕かとくだらないことを考える。だがいうことは決まっている。
「なるほど。僕は神室 透です。それなら僕を異世界転生させてください。現世に生き返らせて欲しいなんて言いませんから」
「あら、話が早いのね。私もそのつもりだったのよ。わかってるとは思っているけど、生き返らせるのは無理ね。死んだという事実が確定しているし、体がグチャグチャよ、今の透は、魂だけの存在で天界の私の部屋にいるってわけ。」
そうみたいだ。透は案外冷静だった。異世界転生させてくれ、という要求も白い部屋にいると気付いた時から決めていた。どこか既視感の様なものさえあった。まるで昔同じことがあったかのように。
そこからトントン拍子のように話は進み、どのような条件で転生させてくれるかの話になった。
「まずは年齢ね。今は35歳だけど、18歳にしてあげる。人間の寿命なんてあっという間だものね。地球の神からの頼みもあるし、異世界翻訳言語スキルもあげるわ。私が管理する異世界『アナザークラウド』のあらゆる文字も読み書きできる様にしてあげる。」
これはありがたいな。勉強はそこまで得意じゃなかったし、いちから覚えるのは面倒だ。もらえるようにこちらから働きかけるつもりだったよ。
「あら透?異世界でも勉強は必要よ?当然じゃない。」
これは今更だが心を読まれてるな。もはやテンプレ、天ぷら食べたい。
「なんで、そこで天ぷらの話になるのよ。1文字違うじゃない。」
「異世界にも天ぷらはあるのか?」
「ないわよ、地球に比べたら文化も技術も巨人族とミジンコの差よ。剣と魔法はあるけどね。」
やっぱり剣と魔法はあるのか、興奮してきたな。
「あんた、見た目はまだまだ若いけど、中身はおっさんね。ちょっと呆れたわ。見た目は年相応にして、ついでに身長も伸ばしてあげようかなと思ったけどやめるわ。」
何故だ!?とある有名なお笑いコンビのネタを口にしただけじゃないか!身長は伸ばしてくれ?見た目はおっさんでいいからさ!
「ダメよ、私はしょt、いや身長が高くないほうが好みなの。見た目は若くしてあげるけど、絶対身長は変えないわ。」
エッッッド!!!この女神、絶対ショタコン属性じゃん。ニヤニヤしてやがるし。で、でも身長が高くて、おっぱいも大きいお姉さんにヨシヨシされながらそ、その。ああもう、顔が赤くなる。クソっ!女性経験はそれなりにあるはずなのにどうしてこんな動揺しているんだ。今思えば、歴代彼女はみんな身長が高かった。よく、ヨシヨシされたのはあいつら全員おねショタ好きだな!?今更気づいた。
「あー、話が進まないから、先に話すけど、有能なスキルもあげるわ。あと、あなたの大好きな赤ちゃんプレイもしてあげるわ。」
この後、めちゃくちゃバブバブした。あー知能レベルが赤ちゃんまで戻るバブ。
思う存分、透と女神はプレイを堪能した後、話し合いに戻ることにした。
透は転生先の場所はどこがいいと聞かれ、人里から離れた森がいい、と言うと、ミリアは溜息をつく。
「そんなに人見知りじゃないくせに、テンプレに沿おうとするのね。まあいいわ。誰もいない土地っていうのはアナザークラウドにはないからそれでもいいわね?」
「それでもいいよ。スキルは何がもらえるんだ?」
ミリアがくれると言ったスキルは鑑定,アイテムボックス、錬金術だった。といういか、透が森で悠々自適なスローライフをしたいと言ったのでこのような構成になった。スキルの詳細は転生後、自分で確認しろと言われてしまった。まあ人から言われて覚えるよりも自発的に見て覚えたほうがいいかと納得する。
戦闘スキルはもらえなかったが、レベルとステータスという概念が異世界(アナザークラウド)にもあり、鍛錬すれば、戦闘スキルが習得率やレベルの伸びがはやくなり、経験値が通常の1.5倍になる天賦の才能というスキルがもらえることに。魔法については、スキルは与えないが教えてもらえれば使えるようになると言われたよ。
最後にミリアからお楽しみがあると言って、白い部屋をでると、ルーレットがあった。
「あれはまさか、東京フ○ンドパークのパジェ○か!?」
「一眼で見抜くとはさすが透ね。」
「でもあのルーレット、境目がほとんど見えないし、何が書いてあるかわかんないんだが……」
「それはそうよ、1兆個以上あるスキルから厳選して、1千万くらいにしてあるんだから。はい、これダーツ。」
「ちなみにどんなスキルが大当たりなんだ?」
「そうね、よくあるやつだと、聖剣使いとか大賢者とか聖女とかかしらね。ああ、催眠術師、とかもあるわね?」
ニヤニヤしながらミリアが言うと、その時に透に電流が流れる。
お前、テンプレチートスキルとかに混ぜて、薄い本が厚くなるスキルを混ぜて言うな!!だがそのスキルがあれば絶対にお姉さんに勝てない体質の俺でも、もしかしてえ!!絶対、取るぞ!催眠術師!
「パジェ○!パジェ○!」
うおおおおおおおおお!!!!この一投に全てを賭ける。唸れ!!俺のダーツ!一千万分の一をつかめええええええ!
ダーツがパジェ○に突き刺さる。ルーレットが刺さった先に見えたのは『催眠術師』!!!うおおおお!!勝った!第一部 完!!
だが、ミリアは不満そうな顔をして、ルーレットを見たと思ったら、一瞬でダーツの位置がズレていた。そこに書いてあったのは『錬菌術』。
こいつ、多分神様のなんでもありみたいな能力でダーツをずらしやがった!!透は怒りに燃えて、ずんずんとミリアに向かって、進んでいくといきなり床が抜けた。お、落ちる〜
「あらあら、急に落とし穴ができちゃったわ。じゃあ、アナザークラウドでも頑張りなさい。透バブちゃん?」
「バブ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
こうして、透の異世界転生が始まる。
「危ない危ない、冗談で入れておいたスキルを本当に当てるとはねえ。まあ今度あったら、『催眠術師』あげてもいいかもねえ。透ならびびって悪用できないでしょ。」
ミリアは1人呟くと、自分の仕事に戻るのであった。
周りをみると一面の森。鳥や狼の遠吠えの様なものも聞こえる。どうやらここは、魔物たちの楽園というらしい。ここから、北に行ったところにアルカード王国、南に行ったところにエライト大帝国という国があるらしく、この森は二つの国の緩衝地帯になっている。
この森はどこの領地でもない空白地帯というわけではなく、太古から生きるエンシェントドラゴンの領地となっているらしい。エンシェントドラゴンは善政を敷いているらしく,魔物たちは過不足無く暮らせているらしい。というか、ここより善き政《まつりごと》をしている国はないそうだ。アルカード王国やエライト大帝国よりも。
なぜ転生したばかりの場所にこんなに詳しいかというと神様ノートというものに書かれていたからだ。あとはステータスやスキル、称号がステータスオープンという言葉で見れる様になっていた。
「では、言ってみよう!ステータスオープン!」
名前:トオル カムロ
性別 男性
年齢 18歳
ステータス
体力 F
魔力 C
筋力 G
器用さ E
防御力 G
速さ D
運 B
スキル 鑑定 レベル10(マックス)
異世界翻訳言語スキル レベル10(マックス)
アイテムボックス レベル10(マックス)
天賦の才能
ユニークスキル ハガレ○式錬金術 レベル10(マックス) 錬菌術 レベル1
称号 女神ミリオニアの加護 国家的バブ術師
たらたらし
神様ノートは作りたいものの作り方やこうした方がいいよというアドバイスをもらえるらしい。後はこの世界の情報が載っている。これは便利だな。こまめに見ることにしよう。
名前は全部カタカナになっていた。まあ、この世界の人にとって言いづらいのだろう。これからは自分のことをトオルと言うことにしよう。苗字は一旦伏せとくか。
ステータスはかなり凸凹(でこぼこ)しているな。筋力と防御力はGというのは、ひ弱なデスクワーカーとしては納得できる。体力もほとんどないな。速さがDなのは意外だ。まあ、小学生の頃は50メートル走では負けなしだったからな。その頃の名残りだろう。
器用さが、Eもあるのは事務職だったからかな?魔力Cと運がBなのは何故だ?地球にいた頃は魔法なんて使ったことはないし、運も普通くらいだったと思ってるんだが。
鑑定は名前とどういうスキルがあるかがわかる仕様。ユニークスキルも見ることができるが、その効果は調べることはできないそうだ。鑑定にもレベルがあるが最初からレベル10でマックスだった。同じレベル10もしくは高位の鑑定スキルを持つもの以外は相手からの鑑定を弾ける仕様になっている。そして、何らかの条件を満たすと、スキルは進化するようだ。
アイテムボックス。容量無限、アイテムボックスに入れておけば時間停止で料理であれば、すぐに出来立てを楽しめる。もちろん、チート仕様で、普通は容量は個人差があり、一軒家が立つくらいの大きさが入るものはかなり多い方らしい。時間停止なんて機能はほぼないそうだ。アイテムボックス持ちもあまりいないらしく、これは鑑定されるとやばそうだな。これもレベル10。
錬金術。国民的アニメのハガ○ンよろしく、等価交換の法則が成り立っているかは不明。理解、分解、再構築ができる。エネルギーは自分自身の魔力。錬金鍋が必要だが、ポーションを作ることが可能。賢者の石はありません。異世界アナザークラウドの錬金術とはかなり違っていて、透がハガ○ンにはまっていたため、攻撃スキルとして使えるが、普通はそんなことはできない。元地球人は魔法は使えないが空想力豊かなのでできる、地球チートである。ユニークスキルレベル10。
錬菌術。細○を作り出せる能力。想像次第では 様々な用途に使えるよ。どうなるかはわからないがどんどん使っていきたいな。現時点はユニークスキルレベル1だ。
なぜか、錬菌術だけ説明が少ない。それにレベルも低いな。これは自分で使い方を見つけろということなのか?それはそれでやりがいがありそうだな!伏せ字になっているところは、菌かな?色々アニメやラノベを読んできたがこのスキルは自分は見たこともない。攻撃的に使うなら病原菌をばら撒いて、村や町、いや一国を落とせるかもしれないスキルだが、平和的な利用もできそうだ。研究はしていくべきだな。
これで一通りのスキルは見たな。天賦の才能は神様から聞いたからいいや。次は称号欄をチェックしよう。その後に探索だな。
そこに書かれていた称号は女神ミリオニアの加護。これは、魔力と運のステータスに加点してくれる称号らしい。魔力C、運がBなのはこれのおかげらしい。運というパラメータは曖昧な様だが、この世界、アナザークラウドでは大事な部分で、その人の人生や生き方に大きな影響を与えるそうだ。
国家的バブ術師。どう考えてもネタ称号。全てのお姉さまに愛し、愛されたバブ術師。真面目に解説すると、自分より年上のお姉さまに好感を与える称号らしい。それがどれくらい、接し方に出るかは個人差はある。
なぜかこのスキルだけ下の方に配置されていたな。気づかれたくなかったのかもしれない。たらたらし。昔の日本では、例えるならば女垂らし(女を騙す、あざむく、または弄ぶ)などの意味で使われていたが現代では人の心を掴むものが得意な人、慕われやすいなど、ポジティブなイメージで使われているな。今回は後者の意味であっているようでこの称号は透の異世界生に大きな影響を与えていくことに、後から気づくのだ。
さて、アナザークラウドの魔物たちについても見ていこう。神様ノートによれば、この世界ではファンタジーではお約束のスライムやゴブリン、オークからドラゴンに至るまで知性が存在しているらしい。だがお互いの言語は違うが、魔物共通の統一言語があるらしく、お互いにコミュニケーションを取ることができる。
何を食糧として生きているかというと魔力を主食として生きている。狩猟民族であるオークや他の魔物は野生の獣を狩って食べることもあるそうだ。野生の獣は繁殖能力が地球の獣よりも強いらしく、狩っても狩ってもいなくならないそうだ。
ゴブリンは農耕民族だが、野生の獣が畑を荒らしにくるため,ゴブリンは他の魔物達にお願いして、野生の獣達を狩ってもらっているらしい。なぜ、ゴブリンが農業をしているかって?趣味らしい。あとは通貨を得て、曙光品を買うためにやっているそうだ。だから人族と魔物が敵対しているわけではないのだ。だが問題がないわけではないらしいのだが。
透はひとまず水場に行って、乾いた喉を潤したいと思っていた。初めは太陽がおそらく真上に来ていたので、お昼頃に異世界アナザークラウドに転生したらしい。だがステータスチェックやスキルチェックに3時間ほど費やしていたため、喉が渇くのは当たり前であった。
そのあとあてもなく、森を歩いていたため、時刻はおそらく夕方くらいであった。一応、鑑定をしながら薬草やきのみをとっていたが。
透は事務職だったため、平日はデスクワークをして過ごし、休日もユウチューブでキャンプ動画を見て過ごしていたため、体力がない。自炊はしていたので料理はそれなりにできる。だが水も食料もないし、調理道具もない。どうしようと途方に暮れそうになるが、先ほどもらった。スキルのことを思い出す。
水がないなら、出せばいいではないか、錬金術で。そう思い至った透は中学で習った化学を思い出す。水素と酸素を掛け合わせて、水を作ればいい。だが、ここで思い至る。空気の中から水素と酸素を抽出するのはどうやればいいのか?
そこでハガ○ンを思い出す。大事なのは、『理解』、『分解』、『再構築』だ。まず空気の組成を思い出す。窒素が約8割、酸素が約2割、そして二酸化炭素と他の色々な元素の中に水素があるはずだ。
まず水の入れ物を作ろうかなあ。朽ちた大木を見つけた透は錬金術でカップを作ることにした。大木をまず『分解』して、切りわける。そして小さな木の塊になったところで、『再構築』する。これで木のコップができる。どうせなら水筒があったほうがいいということに気づき、木の水筒も錬成する。
空気の組成を思い出しながら、酸素と水素とつぶやいて、『理解』に勤める。空気を分解すると、危険な原子ができそうだったので、酸素と水素を把握したところで『再構築』と唱える。カップの中にちょろっと水を出すイメージだったのだが、魔力を込めすぎて、水が滝の様に流れ出す。
カップも流れ出してしまったので、錬金術を発動しながら、滝の様に流れる水に口をつける。そして発動を止めたのだが、なぜか息が苦しい。あ、もしかしてこの周辺の酸素濃度が…… と考えたところで透は気絶してしまうのであった。
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