トリニティのいちばん長い日   作:RudolfA6

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3章 命令違反

 

呼吸する音が聞こえる。それは自分のものだった。吐いた息はひんやりとした外気に晒され白くなって目に見える。だが、体はじっとりと汗をかいていた。

周囲を照らすのは赤色灯の僅かな明かりのみ。左右を見渡すと、二人の部下が私と共に障害物に隠れ、先ほどまで駆けてきた道へと銃を向けている。

その後ろ、トンネルを遮る重い鉄製の扉と私たちの間に意識のない1人が寝かされ、もう1人に治療を受けていた。

 

静寂の中、スピーカー特有の起動音が響いて聞こえてきたすぐ後、けたたましい怒鳴り声が鳴り響いた。

 

「―聞こえているよなァ!正義実現委員ども!バカが、お前らが来ることはお見通しだったんだよ!」

 

ブリーフィングで散々聞かされた声。今日確保すべきだったHVTはマイクにがなりたて続ける。

 

「そこにいる逃げ遅れ…名前も知ってるぞ!小隊長の刈野ジュンナ!」

 

「降伏すれば命は助けてやる!武器を捨てて姿を現せ!」

 

勧告と同時に、正面の曲がり角から重武装のヘルメット団員たちが現れた。

ゲヘナ製の最新型パワーアーマーに同校製の軽機関銃を携えた5名が矢面に立ち、その後ろにもまだ予備がいる。

残っているEM2用のマガジンは1つのみ、残弾は本体も含めて36発。閃光手榴弾は使い切り、スモークが一つあるだけ。現状の装備では一人無力化できるかどうか。

 

「しょ、小隊長…」

 

怯えた目で左側にいた隊員が私を見る。振り返れば右側の隊員も。手当てしている者も、されている者も。皆が私を見ていた。

その時の私は―純粋に理想を信じていて。悪く言えば、愚直だった。

 

「クソくらえよ」

 

吐き捨てるように宣言する。アイコンタクトを取ると隊員らも察し、うなづいた。尋ねてきた者も震えながらそうした。

 

腰のポーチに入っていたものを取り出す。それは一見するとナイフのようだが、柄の部分に銃身へ取りつけるための穴がある。

バヨネット。すべての軍人が最後に命を預ける剣。20㎝ほどの細かい傷がついた鈍い銀色の刃は、赤色灯に照らされてまだ振るってもいないのに赤黒く光る。

 

「総員、着剣」

 

静かに呟くと、私に追随して全員が剣を取り出し、銃身へと付ける。気絶していた隊員もよろめきながら上体を起こし、揺れる手で取り付けた。

 

「おいお前らァ!!聞こえてんだろ!?見えてんだろ!?勝ち目はねーぞ!!!」

 

音割れするスピーカーを無視し、私は全員を見回した。

 

「合図したら、全員残っている手榴弾を全て投擲。その後スリーカウントで突撃。備えて!」

 

指示しながらスモークグレネードを取り出し、ピンへと指を掛ける。

障害物をいつでも乗り越えられる体勢になり、グレネードの本体を掴む右腕を引いた。レバーを握り締めて左の人差し指に力を入れ、ピンを引き抜く―

 

そうしようとした瞬間、私の後頭部は謎の衝撃に打ち据えられた。

 

ヘルメットが勢いよく障害物へと当たる。けたたましい爆音を聞いた記憶は飛んでいたが、耳がうまくきかない感じは間違いなくそれがあったことをわからせてくる。

何だ?何が起こった?

突撃し、華々しく散ろうなどとロマンチックな考えで埋め尽くされていた私の頭は混乱で満たされ、みっともなく周囲を見回した。

さっきの衝撃は恐らく後ろの扉が吹き飛ばされたようだった。粉塵があたりに漂い、吸ってしまって少しむせる。それが落ち着いてくると、扉のあった方から1人の人物が私に近づいてきていることに気が付いた。

 

「なんだてめーら!?」

 

その姿を、私は忘れはしない。いや、できないほど脳に深く刻み込まれた。

桃色の髪、純白の制服、そこから伸びた、白くか細い手に携えた短機関銃。

 

「ホワイトコート、第1大隊長の聖園ミカ。ティーパーティーの要請に基づき、あなた達を拘束するね」

 

彼女に続き、ホワイトコートの隊員たちが隊列をなして敵に向かい前進していく。

その姿は、まるでおとぎ話の騎士が目の前を歩いているかのような。聖典に描かれた主の再臨かのように神々しかった。

 

そして私は思い知った。彼女は私に一番足りていなかった物を持っていると。

 

彼女は掃射される軽機関銃の弾など当たっても意に返さず、銃弾の雨の中を駆け抜けてパワーアーマーを着込んだ敵に肉薄する。

表情はマスクで見えないが、その顔が恐怖に歪んでいたのは間違いない。1人が首元に短機関銃を押し付けられ、およそ1マガジン分の射撃を受けて沈黙する。

 

 

彼女にあって私になかったもの。それは力。理想を体現するための力。

あれほどの力があったなら、私たちはここまで追い詰められることはなかった。痛感した。私は理想ばかり先走っていたのだと。

真に正義を為すには、守りたいものを守るなら、あれ程の圧倒的な力が必要なんだ。

 

2年前、私がまだ1年生だったころの記憶。

私がホワイトコートを目指したのは、これがきっかけだった。

 

 

 

ゆっくりとまぶたを開くと、視界はまだぼんやりとしているが、ここがどこか薄暗い部屋なのはわかる。

今見ていたのは夢のようだった。さっきまで何をしていたか、思考を巡らせる。

意識がはっきりとしてくるにつれ、額にじわりとした痛みの感覚が広がる。その痛みで思い出した。

そうだ、確か議事堂で撃たれたのだった。そこまでは覚えている。

 

「おはようございます。よくお眠りでしたね、刈野連隊長」

 

ジュンナは正面からの声に顔を上げる。回転椅子に座って対面していたのは、戦略情報局局長の占見フセ。彼女は足を組みながら、手にしていたティーカップを傍にいた取り巻きの一人へと渡した。

彼女はあざ笑うかのような表情でジュンナを見ている。足から頭までを一瞥すると、ふっと鼻で笑った。

 

「先ほどは災難でしたわね。よもや自分の部下が裏切るとは。同情いたします」

 

そう言いながら、フセはずっと笑顔のままだ。そのような感情は口ほどにもないと一目でわかる。

 

「あなた達が助けてくれたのかしら?それにしては余計なアクセサリーを付けていただいたようだけど?」

 

ジュンナの手には手錠がされ、椅子の後ろで拘束されている。足首はガムテープで固定されていた。

両隣には小銃を持った局員が立ち、彼女をじっと監視していた。

 

「日頃の感謝のしるしです。お気に召しましたか?」

 

「ええ。お礼をぜひしたいのだけど、顔を寄せてもらえる?」

 

「遠慮させていただきます。この後外に出る用事があるのに、お見せできないようにされそうですから」

 

フセは椅子を一周ぐるりと回転させた。彼女は見たこともないほど上機嫌な様子だった。

この時点でジュンナはもう察しがついていた。おそらく、彼女は教育大隊と手を組んでクーデターを起こした。

腐ってもフセは情報のプロだ。実行されたその瞬間までクーデターの情報を誰からも隠し通せたのも、彼女であるなら納得がいく。

ジュンナの口から大きなため息が出た。

 

「まだクーデターが成功したと思わないことね。倒すべき障害は多い、トリニティを根底から崩せると思ったなら、それは大間違い!今すぐに自分の行いを反省し、すべての企てを止めなさい!」

 

「あら、まるで聖職者のようなことを言いますね」

「そうですねえ…時に刈野さんは、この言葉を御存じでしょう?"敵の敵は味方"。これを踏まえて言うならば、私には心強い味方がおります」

 

味方…ジュンナの脳裏に、まさかとは思うものの、ある勢力が思い浮かぶ。

 

「アリウス、と言う気ではないでしょうね」

 

「大当たり!その通りです」

 

手を叩き、けらけらとフセは笑うが、ジュンナはさらなる大きなため息しか出なかった。

私が知っているフセはもっと賢かったはずだ。もはや呆れしかない表情で、イスをくるくる回す彼女を見る。

 

「…あんなテロリストまがいの集団を、味方に利用できると?」

 

「ご安心を。彼女らの目的は把握しておりますので。それさえ知れていれば、利用するだけ利用し、捨てることなど造作もありません」

 

「はあ、目的?だったら言ってみなさいよ」

 

するとフセは食い気味に答えた。

 

「アリウスの目標はエデン条約の書き換え。それを利用し、トリニティとゲヘナへの攻撃を行うつもりです」

 

「…へえ」

 

虚勢か空想かとも聞くまでは思っていたが…意外とありそうなものが出てきた。

だが、ありそうというだけだ。本当にそうかは―「ああ、そういえば刈野さんは知らないのでしたね?」彼女は勢いをつけて立ち上がった。

何の話、というより先にフセが続ける。

 

「私共、戦略情報局はミカ様の命で、最近までアリウスと秘密裏に接触していたのです」

 

「はぁ?またバカみたいなことを―」

 

ジュンナの脳裏を通り抜けようとした言葉が引っかかる。ちょっと待て、今なんと言った?私の耳が間違っていなければ、ミカ様と?

渦巻き始めた疑問を、さらに加速させるかのようにフセは3枚の写真を差し出した。

 

それを見て、ジュンナは驚愕せざるを得なかった。

1枚目、廃墟となった教会で、どう見てもミカ様と、青いストレートのロングヘアに帽子とマスクをし、ロングコートを羽織った人物が並んでいる。腕章に描かれているのは―アリウスの校章、あのガイコツ。

2枚目はおそらく同じ場所。やはりミカ様と先ほどのロングヘアの人物に加え、今度は白髪でロングの少し背格好は小さめな人物、3人が映っている。

3枚目…これは学園の敷地内のようだった。しかも…確か、サンクトゥスが使用している施設。そこの最上階のある部屋の前に、ミカ様とガスマスクをつけた数人が映っている。

かなり遠くから望遠レンズを使ったようで、あまり鮮明ではない。しかし、あの格好は先日拘束されたアリウス生徒とあまりに似通っている。

 

「…どういうことよ、これ」

 

「どうと言われましても、見ての通りですよ?」

「とても大変でした。ある日いきなりミカ様が私を訪ね、"アリウスと接触したい"などと言い出すのですから。しかもなるべく内密に、とのことで…まあ、何とかしたのですが」

 

「加工してあるでしょう!?それともディープフェイク!?騙されないわよ、こんな画像ごときで!」

 

ジュンナは反射的に飛びかかろうとし、手錠が音を立てた。両脇に立っていた生徒が両肩を抑えに入る。

だが激高する彼女に構う様子もなく、フセは周囲をうろついている。

 

「なんと言おうと構いませんが、私からは一切の加工等のない、事実であるということだけ言っておきます。情報は結局受け取り手次第ですから」

 

フセはジュンナの真正面で足を止めてかがんだ。そしてそこだけ見るなら邪悪さなど少しも感じさせない垂れた紫の瞳でジュンナの目をのぞき込むと、まるで子供に言いつけるときのように人指し指を立てる。

 

「ほら、昔のある人物はこう言ったとされていますよ?"人は信じたいものしか信じない"と」

 

そう言うと、彼女はニコニコとほほ笑んでジュンナを見つめた。ジュンナは心の中の疑問と、そして目の前の人物に対する憤怒で、ただ拳を握り、歯を噛みしめるしかできなかった。

 

「局長、そろそろ…」

 

取り巻きの一人がフセに耳打ちした。

 

「あら。では私、先ほども言いました通り用事がありますので。それでは」

 

フセは立ち上がって出入り口へと向かう。取り巻き達もそれに続く。

 

「待ちなさい!話は終わってない!」

 

ジュンナは拘束を解こうとさらに強くもがくが、手錠は硬い。

抑えていた生徒の一人が一瞬振りほどかれると、おとなしくさせるために銃床で勢いよくジュンナの頭を殴った。

 

「っ…!」

 

強い衝撃がジュンナの脳を揺さぶり、動きが止まる。少し遅れて響くような痛みが広がっていく。

扉の向こうに消えていくフセの影に向かって、おおよそ公共の場にはふさわしくない罵倒すら大声で叫ぶジュンナに、もう一度銃床が叩きこまれた。

 

 

 

「…しかし、良かったのですか?連隊長を引き込まないで。大隊長と同じく、ミカを開放するためと口車に乗せれば…」

 

取り巻きの一人がフセへと尋ねる。彼女たちは学内のエレベーターにちょうど乗り込んだところだった。

フセは頭だけ動かして尋ねた生徒を一瞥した。

 

「無理でしょうね」

 

そうため息交じりに呟く。エレベーターが動き出すときに特有のわずかに下へと押し付けられる感覚が全員にかかり、巻き上げるワイヤーが音を立てて昇っていく。

 

「彼女はミカを信じてはいますが、一方で学園そのものに対する忠誠心もある。アレほどバカではありません」

 

それに―フセは口には出さなかったが、もう一つ理由を心の中に秘めていた。万が一ジュンナと手を組むことになると、立場的にどうしても私が下になってしまう。それでは意味がない。

 

「…ではなぜ、わざわざ彼女と会ったのです?」

 

「煽りたかったからですよ?」

 

フセは質問した者の方を振り向き、満面の笑みで答える。

 

「だってすごく上手くいっているんですもの!こういうときにこそ煽るのがいっちばん気持ちいいんです!ああ、楽しかった!」

 

腹を抱えて大笑いする局長を周りの者達は「この人は本当にこういうところが…」と冷めた目で見ている。

上昇が止まり、ピロンと到着を示す音が鳴る。それを聞くとフセはさっきまでの様子が嘘のようにすっと落ち着いてドアに向き直る。たどり着いたのはこの校舎の最上階だった。

ゆっくりと扉が空くと、目の前には大隊の面々がフセ達を待ち構えていた。大隊長は落ち着きなく辺りを歩き回っていたが、ドアが開くと立ち止まり、フセの方を見た。

 

「情報局長…」

 

大隊長の表情は硬く、見ればわかるほど制服に汗がにじんでいる。隠そうとしてはいるものの動揺していることははっきりと分かった。

 

「始めましょう。何事も迅速にです」

 

エレベーターから出たフセが先導し、一団は廊下をそのまままっすぐ歩いていく。突き当りにある議長の部屋の前で、その歩みは止まった。

大隊長が「開けろ」と命じ、二人の隊員が扉へと駆け寄る。施錠されているのがわかると、二人は銃床で扉を叩いてこじ開けようとし出した。木製の扉は叩かれるたびにへこみ、きしむ音を立てる。

中々開かない様子にショットガンを持った隊員が加勢しようと駆け寄ったところで、何かが折れる音と共に扉がわずかに開いた。

隊員が銃を収め、蹴れば扉は完全に開く。

 

二人の敬礼を横に、真っ先に議長執務室へ入ったのは情報部の者達だった。彼女らは部屋を漁り何かを探す。その様子をこの後に何をするか知っている者達は眺め、その他は「何を探しているんだろう」と不思議な様子で見ている。

机を漁っていた隊員が一番下の引き出しに手を掛けると、それには鍵がかかっていた。彼女は拳銃を取り出して鍵穴を撃ち、壊してその引き出しを開ける。

中にはトリニティの紋章が刻まれた、取っ手付きの木箱が入っていた。

 

「ありました!」

 

そう言って書類の散乱する机の上へと木箱を持ち上げる。フセ達が集まって周囲から視線が注がれる中、木箱が慎重に開かれる。

中に入っていたのは大きな印鑑だった。

 

「これが議長の印か」

 

大隊長はフセに尋ねる。

フセの方はというと、上機嫌な様子でにやつきながら印を手に取り裏返す。すると、彼女は人目もはばからず笑いだした。

 

「ええ、ええ、そうです!間違いない!」

 

なんとか笑いをこらえながら印を箱へと戻すフセをよそに、大隊長は興奮していた。

 

「これさえあれば正規の命令として部隊を動かせる…!」

 

深呼吸するとフセはやっと落ち着いたようで、部下に命じて自分の鞄を持ってこさせる。

 

「では、始めましょうか」

 

鞄からフセは中に十数枚ほどの紙が収まったクリアファイルを取り出した。

中にあるのは市販などされていないはずのトリニティの命令書用の紙、それに議長の筆跡によく似た文字ですでに命令が書かれている。

机の書類をどかしてスペースを作り、そこに取り出した命令書を置く。再び取り出した印鑑にフセがインクを付けている間、大隊長はその命令書を読んでいた。

 

「パテル分派の武装解除令を撤回…校舎防衛のためホワイトコートへの出動要請…」

 

「トリニティ統合学園生徒議会議長、佐藤モア、っと」

 

命令書の一番下、モアの名前の横にフセは印を押した。紙を机から持ち上げて押した印のところを手で煽って乾かすと、情報部の一人を呼んだ。

 

「これを持ってサンクトゥスの本部へ行きなさい」

 

「了解しました」

 

そう言って彼女は駆けだす。

 

「さて、大隊長」

 

フセの呼ぶ声に大隊長は振り向く。

 

「刈野さんのあの言動は憶えてらっしゃいますよね?つまり、あの人もミカ様に真に忠誠を誓うものではなかった…貴方の言うところの、君側の奸であった、と言う訳です」

 

「…そうなるな」

 

フセは机に寄りかかり、横目で大隊長を見ながら話を続ける。

 

「そして現在、サンクトゥスに拘束されている第一と空挺の大隊長、及び副連隊長…彼女らも言ってしまえば刈野派なわけです」

 

「…なるほど、釈放しない方が都合がよい、と」

 

フセは大きくうなづいた。

 

「そこで、第一大隊の指揮権は第二大隊長に、空挺の指揮権は貴方に」

 

「それよりも、ミカ様を開放する手はずはどうなっている?」

 

「今はまだその時ではありません。サンクトゥス、フィリウスを打倒し、学内の治安を回復してからでなければ。今解放しては色々と面倒……な問題が、起こるかと」

 

大隊長は腕を組み、渋々ながらも納得したようだった。

それでいい。ミカがいると今後の計画に差し障る。2派閥を無力化した辺りで大隊長は交代してもらわなければ、やはり面倒になりそうだとフセは確信した。

思い返せばミカには苦労させられた記憶しかない。後始末をした回数では刈野と並ぶくらいだし、その点では彼女に同情している。

アリウスと接触したいと言い出したときはいつもの"思い付き"だったのだろうが、それがクーデターを起こすまで行くとは!おかげでパテル分派No3という立場は滅茶苦茶だ。

ミカと刈野がいなくなり、パテルのトップの座が回ってくるのはまだいいとしても、問題はそのパテルでトップになったところでどうする?ティーパーティーのホストどころかメンバーに残れるかすら怪しい。

他派閥に移ることも考えたが、まともな扱いをされないことは目に見えている。ひたすら苦労して今の座に就いたというのに、また人に頭を下げるのはもうごめんだ。

それぐらいなら…どうせ落ちぶれるぐらいならと、一発逆転を狙ってクーデターを企てたが驚くほどうまくいっている。

もしかしたら…もしかすれば、なにもかもがうまく、私の目論見通りに転がるのではあるまいか…?そう考えるたびに体の奥底から身震いと共に笑いがこみあげてくる。

 

口に手を当ててそれを隠すと、スマホがポケットで鳴った。

電話がかかってきていた。相手は非通知。机の周りの集団を離れ、部屋の隅で通話を始める。

 

「私です」

 

わずかな会話の後に電話は切られ、大隊長が近くに来ていた。

 

「何の電話だ?」

 

「情報局の特殊部隊が風紀委員会の暗号表を入手しました。これから攪乱工作を行わせます」

 

大隊長は「ほう」とでも言いたげに微笑む。

クーデターはまだ完全に成功したわけではない。一度始めてしまった以上、なにもかもうまくいかせて成功させないと終わりなのは私だ。

そう考えると、背筋に冷たい汗が流れる感覚がした。

 

 

「当ててあげましょうか?私をここに閉じ込めておく理由」

 

ジュンナは両脇で自分を監視する二人の生徒に向かって話しかけた。

生徒たちは応じる様子を見せず、ただ無視している。

 

「フセは今回みたいに、かなり博打めいたことをする一方で徹底的にリスクを潰す人間でもある。だから、私をこのまま校舎に置いたままというのはちょっと薄い。他の勢力の手が及びそうなここじゃなく、どこか別のところに移そうとするはず…」

 

生徒たちは何も反応しない。

それに構わず、まるでステージに立つ演者のように軽い調子でまくしたて続ける。

 

「でも、まだそれがされていないってことは…あなた達二人じゃ不安だから。拘束した人間は移送中が一番脱走されやすいもの。あなた達も、映画とかでよく見るでしょ?そういう展開。だから、増援が来るまでここで待ってる」

 

「そうでしょ?」と右の生徒の目を見てウインクをする。

すると彼女は大きくため息をつき、肩をすくめた。

 

「推理大会をされても困りますよ。拘束されてるから暇なのはわかりますが」

 

「ああ、拘束?」

 

ジュンナはふっと笑った。

 

「おい、いい加減―」

 

左にいた生徒が、また銃床で殴ろうと銃を持ち上げて近づく。

 

 

「外したよ、そんなの」

 

外れた手錠が床へ落ち、カランという音を立てるとほぼ同時に―左の生徒の顎へ強烈なアッパーが刺さった。

衝撃に脳が揺さぶられ、崩れ落ちる生徒から素早く小銃をひったくると、その勢いをのせたまま小銃を右の生徒目掛けて投げた。この距離では、構えて撃つよりも投げる方が早い。一瞬の出来事に反応が追いついていない右の生徒は、今やっと銃を構えようかというところで、4kg近い重量の小銃が頭を直撃した。

投げられた銃が地面へと落ちると共に生徒も倒れた。

 

ジュンナはふうと一息つき、拘束されて固まっていた肩を回した。

 

「まったく、ロープを買う予算もないのかしらね、情報局は」

 

両足を固定していたガムテープを破ってはがし、やっと椅子から解放される。

倒れている生徒から銃と弾薬を奪い、スマホと無線機を壊した後、ジュンナは部屋を出た。

扉の上のプレートを見上げると、いた部屋は「第4書類室」。書類室と書いてはあるが、セキュリティなどの都合で今はもうほとんど使われていない部屋。なるほど、ここならサンクトゥムもしばらくは探しに来ないはずだ、と彼女は納得する。

そして、ここが校舎のどこなのかはおおむね把握できた。なら次に向かうべきは―目を閉じ、少し逡巡した後、ジュンナは早足に歩き出す。

 

フセの言っていたことはジュンナの頭に引っかかったまま、あの無知なものをあざ笑う声が頭に響く。

その言葉とともに、ある一つの考えが頭をよぎる。最初にその可能性を考えていたものの、それは低いだろうと考えを保留した、いや、正しく言えば信じたくなかった一つの可能性、「本心から、ミカ様は学園に対しクーデターを起こすつもりだった」。その考えが再び、ふつふつと湧き出してきた。

銃を握る手に力が入る。今はそれを考えている暇ではないと、その考えを振り払うかのように大きく頭を振り、それよりも今、するべきことは決まっているはずと歩き続ける。

 

「フセの言葉が本当なら、動けるのは私だけ」

 

ジュンナは校舎を進み、ある部屋の前で立ち止まった。鉄の扉は所々塗装が剥がれたり錆びたりしており、中央にはかすれているが「正義実現委員会 武器弾薬類」と白い文字が描かれている。

ドアノブの上には0から9までの数字が刻まれたボタンが付けられていて、鍵穴はない。かつて正実が保有するすべての武器庫は物理鍵でないと開けられなかったが、緊急時の即応性を上げるために小さな武器庫は電子ロック化された。それは私の入学前には行われていた。そしてパスコードを知っているのは最末端でも小隊長クラスのみ…

0のボタンを軽く右手の指で叩きながら、ジュンナは必死に過去の記憶を掘り返していた。

そして蘇ってきた4桁の数字。彼女は1年生の時から変わっていないことを祈りつつ、ボタンを押していく。最後に一番下のなにも書かれていない小さなボタンを押す。中がさびているのか引っかかるがそれを押し込んだ。

 

ガチャリ、という音がはっきりと聞こえた。右手をそのまま下へスライドさせ、ドアノブをひねり、押すと扉は開く。

窓はなく、扉を閉めれば中は真っ暗になる。電気をつけると室内には結構な量の武器があった。

正実の黒と赤の塗装の小銃が棚に並び、数は少ないが軽機関銃、ロケットランチャー、爆薬、手榴弾まで。弾薬も豊富にある。

 

「さて、まずはモアたちを解放しないと」

 

ジュンナは自分が優先してするべきことをわかっていた。

教育大隊が最初に議事堂を襲ったのは各派閥のトップを抑えるためのはずだ。恐らく、彼女たちも私と同じようにどこかで拘束されている。ここは総当たりで行くしかない。

まずは議事堂から行ってみよう。

だが、どこに行っても交戦を避けることは出来ないだろう。準備はしておいて損はない。

無断で使った件は後で謝罪周りになるがそれは後の話。ひとまず心の中でハスミに謝りつつ、棚の銃器を手に取り始めた。

 

 

「おい、いつまで私らはここにいるんだ」

 

青髪のホワイトコートの隊員が、議事堂の扉を挟んで反対側にいる生徒へと尋ねた。青髪の隊員は座り込んで壁に寄りかかり、銃も銃床を床に付けてだるそうにしている。

 

「知らないよ、そんなの」

 

尋ねられた桃髪の隊員はそう答えると、小さくため息をつく。

 

「本当に成功するのかな、クーデターなんて…」

 

「"緊急対応"だぞ。中隊長にどやされる」

 

「さっきトイレ行ったでしょ。大丈夫だって。…はあ、先輩たちみたいに辞めとけばよかった」

 

大きなため息をついた瞬間、静かな廊下に、金属音と共に足音が響くのを二人の耳は捉えた。この重いブーツ特有の足音に共通するのは、出している主が間違いなくホワイトコートの隊員であること。

まずい。中隊長が戻ってきた。言葉を交わさずとも同時に察した二人は瞬時に立ち上がり、背筋を伸ばし、銃を正しい位置で構える。

 

足音は近づいてきて、ついに廊下の角から音の主が現れる。

それを横目で見ていた二人は驚愕した。中隊長ではないがその姿は間違いない。

自分たちの連隊長。

 

「道を開けなさい。命令よ」

 

ジュンナは凛とした様子で、肩からスリングで吊り下げた軽機関銃の銃口を向けながらそう命ずる。

 

「と、止まれっ!」

 

それを聞き入れる様子なく、生徒たちは銃を構えようとした。その瞬間―軽機関銃が火を噴いた。

薙ぎ払うように数秒射撃された弾が生徒を倒すだけでなく、壁と扉にも痕を残す。

 

「反応が遅すぎよ」

 

倒れている隊員を横目に、扉に掛けられたロックを解除しにかかる。

 

先ほど出会い頭でのした中隊長もそうだったが、全体的に練度が低い。教育大隊はその名の通り新兵教育も兼ねる教導大隊だが、それにしてもクーデターの一番重要な局面に新人を使うとは。右も左もわからない新人は上の言うことに逆らえず、従えやすいというのもあるだろうが。

 

施錠されているかと思えば、扉はノブをひねるだけで簡単に開いてしまった。ため息をついてかぶりを振りつつ、2つ目の扉へと向かう。

こちらはしっかりと施錠されていた。

おそらく、そろそろ銃声を聞きつけた隊員が確認しに来る頃合いだろう。それを出迎えるべく扉へとレンガブロックほどの大きさの爆薬を仕掛け、1枚目の扉の外の壁に身を寄せた。

 

新人には悪いが、腐っている上に付いていくべきではないと身をもって教えるしかない。そして、ホワイトコートの理念である「学園の守護者」すら守れないような教育の連中には、私自らきつくわからせる。

その思いとともに、ジュンナは爆破のスイッチを押した。

カチッというスイッチの音に少し遅れて激しい爆発が鳴り響く。衝撃波が髪を揺らした後、舞い上がる粉塵の中を掛けて議事堂内へと突入する。

入口のすぐそばには、おそらくこれからドアを開けようとしていた二人が倒れている。堂内には確か8人いると中隊長は言っていた。残り6人。

 

粉塵を抜けて堂内を見渡した。右側に二人、左側に一人、中央に三人。中央の演壇の向こう側に議長とルナとカリナ、警備の衛兵2人が拘束されている。中央はそれの見張りか。それを把握すると、ジュンナはすぐに物陰へと隠れた。案の定、物陰のすぐそばを銃弾がかすめ、議事堂内は銃声で満ちる。

 

おそらく、今頃銃声を聞きつけた他の部隊がこちらへ向かっているはず。あまり時間はない。

 

「銃を捨てなさい!」

 

声を張り上げて叫ぶが、銃声にかき消されているかそもそも聞く気がないか。銃撃が止むことはない。実力行使以外に選択肢はやはりないか。

議事堂というロケーションを活かし、接近戦で翻弄するしかない。そう考えるとジュンナは機関銃を後ろへ回し、ポーチから2丁の自動拳銃を取り出して床に置いた。リボルバーより装填弾数は多いが、1丁に8発で両方合わせて16発。あまり無駄遣いはできない。

閃光手榴弾を2つ取り出し、同時にピンを抜く。一つは議事堂左側、もう一つは、議長達には少し悪いが―中央へ向かって投げる。少しの後、銃声を切り裂く炸裂音が耳をふさいでもかなり響いた。顔をしかめながらも、ジュンナは隠れていた階段の手すりを乗り越えて、静まり返った堂内へと飛び降りる。

立ち直った右側の二人から銃声が浴びせられるが、姿勢を低くし議席に隠れることで弾は当たらない。そのまま隠れながら通路を駆け抜け、正面のふらふらとしている隊員へと突進する。勢いよく押し倒した後、頭部を思い切り左手の拳銃で殴った。彼女は2発目で気絶し、ぐったりと倒れる。

 

議席を貫通して、0.5mほど先の床に銃弾がめり込む。すぐにまた低い姿勢のまま走り出し、今度は中央の議長達を開放しに向かう。

隠れているジュンナにしびれを切らしたか、一人のまだ入ったばかりの隊員が彼女の正面に飛び出す。度胸はあったが、まだ技術が追いついていない。ジュンナの姿を捉え、ライフルの銃口を向け、引き金を引こうというところで、ジュンナの右手の拳銃より放たれた弾が、まるでハンマーに殴られたかのような衝撃で頭を打った。キヴォトスに一般的に流通している拳銃弾の中でも、有数の威力を誇る45ACP弾を3発も食らっては、まだ未熟な隊員は耐えられず気絶する。

 

ジュンナはそのまま倒れた隊員を飛び越え、空中で目線と銃口を右手側に変えながら通路の角へと飛び出した。左肩を擦って制動しながら、眼前に捉えたもう一人の隊員へと右手側で2発。体を起こしながら、まだその隊員がふらつきながらも立ってるのを確認するともう2発を撃った。それで完全に隊員は倒れる。

角の曲がった先を掛け、左手側にいた隊員を仕留めると、ジュンナは議事堂の中央、一段高く堂内全体を見渡せる議長席へとたどり着いた。その正面の演台との間に議長達は拘束されていた。

 

ジュンナは右手の銃のマガジンを入れ替え、一番近くにいたカリナに渡した。

 

「使って!」

 

「何なんです!?あなた方は敵なんですか、味方なんですか!?」

 

カリナは怒りながらも銃をひったくるように取った。

 

「備品壊しますけど、請求しないでくださいね!」

 

「いいから早く!」

 

説明するまでもなく、カリナは掛けられた手錠の鎖に銃口を押し当てて発砲し、拘束を解いた。

人質達が動いたのを確認した隊員たちは、今度は議長達を狙いだした。ジュンナは危険を承知で走りながら立ち上がり、左手の拳銃を右に持ち替え、残る二人を狙う。

1人を倒したところで小銃弾が胸部を叩いた。

 

「ぅげほっ」

 

つばの混ざった咳を漏らしながらも、残る弾を撃ち込んで、最後の一人はようやく倒れた。

 

議事堂内はジュンナの放った銃声を最後に静まり返った。

議員席は至る所が銃弾で貫通され、床には木片と飛び出した綿が散らばっている。いつ撃たれたかはわからないが、設置されて数十年は経つというシャンデリアの電球がいくつか割れ、ガラスが演台の上へと、書類と共にまき散らされていた。

言葉で物事を決めなければならないこの場所で、暴力が行使された。それはトリニティの長い歴史に泥を塗る行為であり、あってはならないことを私の部下と、私がしてしまった。そうジュンナは肩で息をしながら、荒れた議事堂を見渡して思った。

 

「ジュンナ!」

 

下の方から聞こえた声に、ジュンナはその方向を向く。傍観に暮れる彼女を呼び戻したのはモアだった。

彼女は拘束を解かれていた。階段を昇り、親友の元へと駆け寄ろうとした瞬間―彼女との間に手榴弾が入口の方から投げ込まれた。

 

「伏せて!」

 

既に入口から増援が入りつつあった。ジュンナは素早く手榴弾の方向に足を向け、飛び込むようにして横たわり、耳を手で覆い、口を開け、目は閉じて耐衝撃の姿勢を取る。

姿勢は完璧だが、この至近距離で炸裂すればただでは済まない。強烈な痛みを覚悟しながら爆発を待つ数秒間はまるで数分もあるかのように感じられ、やがてくぐもった爆発音が響いた。

不思議なことに、ジュンナは特に何も感じなかった。ひどい欠損をして、痛みが麻痺してしまっているのかと思うほどで、手足を確認するが、どこにも怪我はなく、血すら出ていない。何が起こった?不発ではないはず。そう思い、上体を起こして手榴弾のあった場所を振り返ると、そこにはモアが倒れていた。

彼女はピクリとも動かないまま、地面にうつ伏せになっている。

ジュンナは息を呑み、何があったかを理解した。彼女は、手榴弾に覆いかぶさって爆発から守ってくれた。

 

すぐに彼女を横に向かせ、回復体位を取る。

この状況でも、増援の隊員は容赦なくこちらを狙っている。横にすると同時に引っ張って遮蔽になる場所へと隠れさせた。

 

「モア!聞こえる!?大丈夫!?」

 

応答はない。制服は胸元が見るも無残に破れ、煤の黒と血の赤が全体を汚している。胴の至る所に切り傷があった。

首元に手を当てると、指先にわずかながらも押しのける感覚が返ってくる。脈はあるが、息はと確認しようとしたところで、モアは大きくせき込んだ。

まずいことに血を吐いている。おそらく衝撃波が内蔵に傷を与えた。ジュンナはすぐに治療が必要な状態だと判断した。

 

だが、ここから逃げるすべに困っていた。唯一の出入り口は増援部隊が塞いでいる。

一か八か突破を?そう考えたところで、ルナとカリナ、それに衛兵の二人が下から駆け込んできた。彼女らはいずれも拾った武器を手に取っている。

 

彼女たちは遮蔽から身を乗り出し応戦している。しかし、カリナは弾が切れたようで遮蔽に身を戻すと、ジュンナに向かって「弾!」と叫んだ。

思考に固まっていた状態から立ち戻ると、ジュンナはポーチのマガジンを2つ投げて渡した。彼女は再装填し、再び応戦する。

その間にルナが傍に寄ってきていた。彼女は先ほどジュンナがしたように議長の様子を確認すると「これはまずいな…」と小さく呟き、次にジュンナの方を向く。

 

「議長から秘密の出口があると聞いている。そこを使おう」

 

「そんなものが」

 

「私もさっき教えてもらったばかりだ。こっそりとね。こっちだ」

 

そう言うと彼女は議長をファイヤーマンズキャリーと呼ばれる抱え方で抱える。その間にカリナと位置を代わり、私が殿を務めることにする。遮蔽から残る一つの閃光手榴弾を入口の方へと投げつけ、炸裂すると軽機関銃を再び構えて身を乗り出した。左手で機関銃の三脚を掴んでグリップ代わりにしながら、入口に向かって制圧射撃を行いつつ先導するルナに続く。

 

彼女は議長席から右の方に進み、ある議席の背面の木板の一部を外し、赤いカーペットを押しのけて床の一部を上に開けた。すると人一人は降りられそうな階段が姿を現す。

 

横目でその様子を見ながら、ジュンナの顔には焦りが見え始めていた。箱型弾倉にあと何発残っているか詳しくはわからないが、かなり軽くなってきている。まずいことに、そろそろ弾が尽きる。

 

抱えたままでは降りられないと判断したルナは、一度モアを降ろすと下からカリナに向かって呼び掛け、二人で協力して下ろしていく。

急いではいるが、狭いために時間がかかっている。

 

そして、ついに弾が尽きた。突如止んだ銃声に目を落とすと、弾倉から薬室へと伸びるベルトは空になっていた。

先ほどまでの銃声が嘘のように静まり返るが、「来なさい!」頭だけを出したカリナが叫ぶ。

 

ジュンナは入口に駆け寄りつつ、もはや重りと化した機関銃を投げ捨てた。まだ粘ろうとする衛兵たちを先に行かせた後、代わりに背負っていたもう一つの火器、LAWランチャーを担ぎ、素早く組み立てるとおおよそに狙いを付けて入口の方へと撃ち込んだ。

無反動砲の中では小型でダメージに劣る部類とされているが、この狭い議事堂内で撃てば衝撃はすさまじい。部隊が完全に動けなくなっている隙に、立ち込める粉塵と共に階段を降りると、入口を勢い良く閉じた。

 

 

 

秘密の通路は最後に整備されてから久しいらしく、埃と蜘蛛の巣にまみれた通路を何度も曲がり、繋がっていたのは学園内を流れる水路の一部だった。

降っている雨と合わさってひんやりした空気と高い湿度が彼女たちを迎えた。

 

「追ってこないでしょうね、あの連中」

 

狭い通路から出て、体中に付いた埃をはたきながらカリナがジュンナに尋ねる。

 

「いくつかトラップを設置しておいたから、追ってきても時間は稼げるはず」

 

そう言うとジュンナはせき込んだ。最後尾を進んでいた彼女は結構埃を吸ってしまっていた。

 

「しかし、まさかフセが黒幕だったとはね」

 

カリナは腕を組んだ。

移動中にジュンナは自分の知った情報を共有していた。二人ともまだ訝しんでいる様子はあるものの、彼女の情報が正しいとすればこれまでのつじつまが合うことから、半分ほどは信じているようだった。

 

「どこに目があるかわからない。早く行こう」

 

ルナが議長を担ぎ直す。脱出して終わりではない、まだ議長を治療しなくてはならない。

どこに連れていくかは移動しながら話し合い、すぐに結論が出ていた。先ほどと同じくルナが先導して5人は進んでいく。

専門的な治療を受けることができ、なおかつ安全な場所―この条件を満たすのは、救護騎士団以外に答えはなかった。水路の階段を上って学園の敷地内へと出ると、幸い出たところはその本部に近かった。

脱出路を作った時にそう設計したのか、それとも騎士団がそれに合わせたのか…定かではないが、彼女たちにはともかくありがたいことだった。

入口へと駆け寄り、ドアを叩くとすぐに中から騎士団員が出てきた。彼女は担がれている議長を見ると、すぐ中に入るよう指示する。全員が入った後、団員は周囲を見回して誰もいないことを確認すると、ドアを閉じてロックを掛けた。

 

 

救護騎士団の本部は、騎士団を運営する能力はもちろんのこと、彼女らの名前にもある通り「救護」を行うための病院施設も当然整っている。

今日の本部は、さながら野戦病院のごとく怪我人が至る所にあふれ、室内はどこも喧騒で満ちていた。会場の戦闘から後送されてきたり、一連の混乱により負傷者も出ている。救護を必要とする人間は普段の比ではなかった。

 

その一角、緊急処置室の中でジュンナ達は布製の簡易なベンチに腰かけていた。全員の顔には隠し切れない疲れと、そして不安がにじみ出ている。

青いカーテンの向こうから、議長の治療を行っていた団員が出てきた。そのエプロンと手袋には所々血しぶきが飛び散っている。ゴム手袋はよく見ると2重にされていて、血の付いた1枚目を手早く捨てると、駆け寄ってきていた3人に団員は話し始めた。

 

「ひとまず、命に別状はありません」

 

その言葉にジュンナはほっと息を吐く。肩の荷が下りる思いだった。

一方で、二人の表情は硬いままだった。

 

「それで意識は?どうなってるの?」

 

カリナが険しい表情で尋ねた。

 

「しばらくは戻らない、としか」

 

ルナはその返答に唸った。

 

「まずいな…権限は議長に移ったままだぞ」

 

二人が硬い表情の理由、"ティーパーティーの権限"の問題。

トリニティの校則により、ティーパーティーが機能不全に陥った際は生徒議会議長へと権限が委任される。問題は、議長が新しいティーパーティーのメンバーを指定し、権限を委譲する命令を出さない限り、これ以上誰かへ権限が移ることはない。

そして、二人の様子からして権限移譲はされていない、というのをジュンナは察した。

 

つまり、トリニティの政治機能は、この瞬間に完全停止した―ということだった。

 

「わかった…」

 

しばらく黙った後、深呼吸をするとルナは再び団員に尋ねた。

 

「フィリウスに連絡したい。有線の電話は?」

 

「それでしたら一階の事務室に」

 

団員は踵を返して出口の方へと向かっていき、ルナはそれに続く。

 

「私も使わせてもらうわ。あなた達は議長を見ていて」

 

次にカリナも出ていく。ここに残るはジュンナと衛兵の二人だけだった。

後ろをストレッチャーで新しい患者が運ばれていく。このままここにいても邪魔になると思い、彼女達は室外で待つことにした。

 

三人は廊下に置かれた皮のベンチに腰掛ける。

ジュンナは肩の力を抜くと、体にごまかしていた疲れと痛みが湧きだしてじわじわと広がっていく。

少し、休息が必要か。そう思い周囲を見回すと、数歩のところにちょうどウォーターサーバーがあったので、一杯水を汲んで先ほどとは別の近くのベンチへと座る。

紙コップをあおると、冷水が喉を流れていく。一息で飲み干すと自然に息が漏れた。

 

ジュンナは一旦、思考を整理することにした。

これからするべきこと…それは決まっている。フセの企みを何としても止める。

そのためにはホワイトコートを動かさなくてはならない―すでにフセは教育大隊を取り込んでいるようだが、他はまだわからない。やつがすべての部隊を取り込む前に、こちらからも呼びかけを行えば賛同してくれる者もいるはず。

 

ホワイトコート同士による内戦は、もはや避けられそうにないか。これをミカ様が見れば何と思うだろうか。

 

 

……何と思う?

 

彼女は何と思うのだろう?

 

ジュンナの脳裏にふと湧いたその疑問は、瞬く間に思考のすべてを奪っていった。

 

部下たちが争う姿に心を痛める?

自分を解放しようと動いてくれたフセ達を歓迎する?

トップを失い、まとまりもしない私たちを軽蔑する?

 

胸が締め付けられるような感覚がした。先ほどまでは動いていたせいで熱いくらいだったのに、鳥肌が立ち、冷汗が背中を伝っていく。

 

私たちホワイトコートはパテルに忠誠を誓う。パテルとはトリニティにおける武力の象徴。そして、ミカ様はそれを体現する方だからこそ、パテルを統べるものとなられた。

つまり、私たちを統帥するのはミカ様であり、私たちが忠誠を誓うのも彼女であった。

その彼女はトリニティを力でもって守る役割を担った。だから私たちはトリニティの守護者と呼ばれたし、それを自負していた。

 

では数日前に起こったことは?守護の役割を担うべき柱の一本は、公会議の遺物を教科書の中から引っ張り出し、トリニティを転覆させようとした!

 

それはトリニティとパテルとホワイトコートの繋がりのすべてを断ち切るに等しかった!

ミカ様はトリニティを守る気がなかった!彼女に忠誠を誓えば守護者という役割は投げ捨てることになる!では守護者という役割に殉じれば、今まで崇拝してきたミカ様を裏切ることとなってしまう!

 

この構造の崩壊でどうなった?今日一日の間にぶつけられてきた言葉がよみがえる。

 

「私はもう、あの方を信じることは出来ません!」

パラドックスに耐えられないものは辞めていった。

「ミカ様をお救いし、ミカ様の下でトリニティの平和と秩序を取り戻すのです!」

教育大隊はミカ様に従うことを選んだ。

 

 

私は何を選んだ?

今までは部下たちのため、組織を維持しようとしてきた。トップがどうあれ所属する人間は未だいるのだから。

パテルの空中分解は彼女らの今後の生活に多大な影響を及ぼす。だから絶対に避けなければならないと努力してきた。

 

この選択は、今思えばパテルをどうするかというのを先送りにしただけだった。

守護者としての役割を残すなら、それこそ私がトップとなり、かつてのミカ様の役割を引き継いでトリニティとのつながりを強引につなぎとめることも出来た。

そんなことできなかった。あの事件の後でさえ、私はミカ様を裏切り者と呼ぶことなどできなかった。

でも、彼女に付いていき一緒にトリニティを転覆させようとするのは、あまりにも自分の背負っている人数は多く、そして私たちを頼らず事を起こしたということへの困惑がそれを押しとどめた。

 

やっと気が付いた。私は今、選択を迫られているのだと。

 

学園を守るために行動する?それはミカ様を裏切ること…

それとも、彼女を解放する?それはミカ様に従うこと……なのだろうか?

 

目の前に分かれ道が現れたかと思いきや、最初の疑問が再び立ちふさがった。

 

ミカ様は何を思う?彼女は本当に解放を望んでいるのだろうか?

 

…わからない。彼女の考えが。

 

なんとか思惑を探ろうと必死に過去の発言を掘り起こす。面会した知り合いより伝言された「迷惑かけてごめんね」、これの意味は?何を推測するにしても材料が足りない。もっと昔の発言に何かヒントがあるのだろうか。一週間前に書類を催促した時言われた言葉か?その数日前に茶会をした時の他愛ない世間話の中に何か兆候はあったか?前回の合同演習時にしていた演説はまだ断片的に覚えている。その時言っていたのは―

 

 

「大丈夫?」

 

不意に、ジュンナの肩へポンと手が置かれた。

 

「ひゃぁっ!?」

 

彼女はひどく驚き、反射的に顔を上げるまで、自分があまりに深く俯いていることに気が付かなかった。

置かれた手から体温が冷えた体へと伝わっていくにつれ、ジュンナは眼前の人物について思い出した。

 

「シャーレの……先生…」

 

どうしてこんなところに、と言おうとしたが、それよりも目を落とした先の腹部に注目が行った。ワイシャツへ放射状に滲んだ血の中央には穴が開いていて、向こうには包帯が見えるが、こちらにも血は滲んでいる。よく見れば息は荒く、汗をかき、顔色は青い。肩に置いてある手にも体重が乗っていて、無意識のうちに体の支えとしてしまっているようだった。伝わる体温もぬくもりというより発熱に近い。

明らかに立ち歩かせてはいけない状態だ。

 

「なにか悩んでる?よければ、相談に乗るよ」

 

「それどころでは…!」

 

彼女の心配をよそに、先生は片膝をついて目線を合わせてきた。

傷の具合からしてかなりの痛みがあるだろうに、先生はにっこりと笑ってみせる。

 

「大丈夫…と言っても、動いてくれそうにないですね」

 

かぶりを振って深呼吸した後、ジュンナは意を決して話し始めた。

自分が今、どうすべきか悩んでいること。ミカが何を考えているかわからないということ―先生は時折相槌を打ちながら黙って聞いていた。

 

「どうすればいいんでしょう、私は…」

 

俯いて垂れ下がった前髪が彼女の顔に影を落とす。

ジュンナが話し終えて大きなため息をつくと、少し考えて先生は口を開いた。

 

「…もうちょっと、前を向いてみようか」

 

「え?」

 

その言葉にジュンナは顔を上げた。

先生は相変わらず微笑んだまま、崩れて目にかかっていた前髪を、そっと指でのけた。

 

「もしかしたら…ミカはまだ、"ジュンナが学園を守ってくれる"って、信じているかもしれないよ?」

 

ジュンナは目を丸くして、激しく首を横に振った。

 

「い、いやいやいや!あまりに都合が良すぎます!」

 

「でも、100%否定はできないよね?」

 

先生は少し首を傾けてほほ笑む。

ジュンナは唇を噛んだ。確かに、直接聞いていない以上断言することは出来ないが…

 

「……先生の言うことに、一理あるのは確かです。しかし、だとすればなぜ、そもそもセイア様を襲い、挙句クーデターなど…」

 

「最初はふとしたきっかけだったのかも。ちょっと驚かせようみたいな」

「でも、それがどんどん大きなことになっていった。誰にも話せないまま、問題だけが膨れ上がり…結果、爆発した。そうは考えられないかな?」

 

ジュンナは後半、口を半分開けながら聞いていた。

その解釈はあまりに都合が良すぎないか、そんなの流石にあり得ない―という言葉が喉まで出かけたが、そこでストップがかかる。いや待てよ、案外先生の言うところはミカ様の性格を突いているのでは?

目線が右を向き、上を向き、左を見る。蘇ってきた記憶が一つ。

 

「…以前、情報局局長の占見フセが移動途中に襲撃されるという事件がありました。フセ自体は軽傷だったのですが、彼女のスマホとパソコンが持ち去られました」

「大騒動でしたよ。ゲヘナの襲撃、ミレニアムの特殊部隊、とにかくトリニティを狙う勢力が関与しているのは間違いない。犯人の捜索にホワイトコートの動員令まで出かかったところで…」

 

ジュンナは大きくため息をついた。

 

「空中機動大隊所属の強襲偵察小隊、彼女らが事件当日、独自に行動していたことがわかりました。すぐにその隊員を呼び出し、事情聴取をしたところ…ミカ様に、命令されたと」

「ミカ様にそれを問い詰め、事件の真相は明らかになりました。どうやらミカ様は、事件の先日にフセと軽い口論になったようで。それに腹を立てた彼女は、ささやかな復讐を…小隊には"訓練"と称して、襲撃を実行したそうです」

 

言い終わり、彼女はまたため息をついた。

あの時ほどミカ様に怒ったことはないと自負していた。数時間に渡る説教の後半は怒鳴るどころか泣いていたと見ていた隊員から聞かされた。

 

「確かに…先生の仮説はありえなくもないです。先ほど言われた通り、あの人は自分が原因で問題を抱えると、自己完結しなきゃと抱え込みます。そして対処ができないと、膨れ上がって爆発するんです」

 

ジュンナは目線を横に向けながら、手で口元を覆う。

確かに先生の言う通りな気がしてきた。しかし、やはり都合が良すぎる解釈ではないか。人差し指が頬を叩き出し、思考を続けていると先生は彼女の肩に手をのせた。

 

「ジュンナ。君はミカがどう思っていてくれてたら嬉しい?」

 

互いの目線が合う。一瞬だけジュンナのが逸れたが先生は真っ直ぐと見つめ続ける。

私が信じたいもの。そう言われれば答えはある。回り続けていた思考は止まり、ジュンナも先生を見る。

 

「私、私は…さっき言われていた通りです。ミカ様が私を信じてくれていると、いいなと」

 

先生が大きくうなづく。

 

「私も、そうだといいなって思ってるよ」

 

「でも、ミカが絶対にそう思っているはずだって保証はできない。だから自分の信じたいものを信じるしかないんだ」

「ジュンナ、そのいいなって思った自分の心を信じてみない?それが、一番後悔しない道だと思うんだ」

 

「自分の、心を…」

 

ジュンナは数回、瞬きをした。

他人の話をしているのに、自分の話が出てきたことに驚いた。だが不思議としっくりくるような感じがする。

"他人がどう思っているか"これは終わらない問いだ。直接聞いたってごまかされてしまえばわからない。心を読んでその人の思考を完璧に理解できればわかるかもしれないが、そんなことは不可能だ。

だから、結局"こう思っているはず"と信じて進むしかない。

 

それに気が付いたとき、心を覆っていた暗雲が晴れていくような気がした。

 

「…わかりました。ありがとうございます、先生。私…もう"進めます"」

 

そう言うと、再び先生はにっこりと笑った。薄暗い廊下の中で、わずかに周囲を照らすかのような笑顔。今度は、ジュンナも笑って返すことができた。

 

「よかった。ちょっと私は行くところがあるから、ここで失礼するね」

 

先生がよたよたと中腰の姿勢から立ち上がろうとするのをジュンナは先に立ち上がって手伝う。

 

「大丈夫ですか?せめて歩行の介助ぐらいは」

 

大丈夫、と力なく微笑む姿はどう見ても大丈夫ではないが。

よろめきながら歩いていく姿を見て、やはり手助けしようと思ったところで二人の救護騎士団の生徒が後ろからジュンナを追い抜き、先生に追いつくと支えに入った。

彼女らに任せれば大丈夫そうか。

そう思ったところで、後ろから話し声がかすかに聞こえた。

 

「…だから、交渉は任せるわ」

 

「そういうことには慣れている。任せて」

 

振り返ると、呼んでいたのはサンクトゥムとフィリウスの二人。電話を終えて戻ってきていた。

 

「まずいことになってるわよ」とカリナが言う。

 

「フセが議長の名を騙って命令書を出してる。うちの警備部から、ホワイトコートの武装解除令を取り消せとの書類を渡されたと連絡があったわ。しっかり印まで押されていたから従ってしまったそうよ」

 

「やはり…」

 

ジュンナの眉間にしわが寄る。予感していたが、私と一部幕僚、そして大隊長二人の不在を利用し、フセはホワイトコートを乗っ取るつもりだ。

世間からの強い逆風にも耐え、トリニティを守るという意思を絶やさずここまで残ってくれた勇気ある隊員たち。彼女達がフセの私利私欲のために、何も知らないまま利用されそうになっている。

はらわたが煮えくり返るようで、ジュンナは歯を食いしばらなければ大声で四文字の言葉を叫んでしまっていただろう。

 

「そこで、少し相談がある。ジュンナ殿」

 

ルナが一歩ジュンナに歩み寄った。

 

「このままでは、フセの思惑通りに事が進んでしまうだろう。そうなる前に事態に対処しなくてはならない。そのためには、我々の連携が必要になる」

 

そう言うと、ルナは自分を見るジュンナの目を真っ直ぐと見つめ返す。一瞬目を閉じて深呼吸した後、ルナは意を決したように口を開いた。

 

「刈野ジュンナさん。あなたと、ホワイトコートとパテルに所属するすべての生徒に対する仕打ちを、謝罪したい」

 

そして真摯な表情のまま、静かに頭を下げた。下げたままルナは続ける。

 

「我々の不信が、今回の事態を招いた要因の一つとなってしまった…!どの口で言うかと思うかもしれないが、それでもどうか、我々と協力してもらえないだろうか!」

 

普段は無機質で、感情など現れないルナの声、それが今は早口気味で、時々上ずりながらも話している。そこまでされてはジュンナも怒っている場合ではなく、急いで止めに入った。

 

「あ、頭を上げてください!私も部下たちも、その行動が学園を思ってのものだったことは分かっていますから!」

 

そう言われてルナはやっと頭を上げた。眉間にしわを寄せ、険しい表情は崩さないでいる。

 

「…石戸ルナさん。協力の件……合意します。こういうときこそ団結しなくては、バラバラのままではいともたやすく倒されてしまいますから」

 

ジュンナが右手を差し出した。ルナはそれを見るとわずかに口角を上げ、ジュンナの求めた握手に応じた。

 

「ところで、サンクトゥスの方は…」

 

握られた右手を振りながら、ジュンナはカリナの方を見る。すると彼女はバツが悪そうに腕を組みながらも答えた。

 

「ええ、もちろん我々も協力しますよ!ミカがどうこうと争っている場合ではありませんのでね!」

 

その様子を見て、ジュンナは微笑んだ。ほほえましかっただけではない。我々、お互いに信じるなどできなかった3つの派閥が、今手を取り合おうとしている。

救護騎士団の本部、その廊下での一幕をきっかけに、トリニティを揺るがす一連の事態はさらに急転を始める。

 

 

 

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