私の名前はツルマルツヨシ、しがない大学生だ。今日は12月24日、いわゆるクリスマスイブという日である。
『今日はクリスマスイブという事もあって、街は多くの人で満ちています。それではまずあちらの方からお話を聞いてみたいと思います』
今はこたつに入りながらテレビをつけ、暇を潰している。
「あの人遅いなぁ、今日は1日ゆっくり出来るって話だったけど流石に寝すぎなのでは……」
「おはよう……」
「あっトレーナーさん、おはようございます」
彼は私が競技者現役時、担当契約していたトレーナーさんだ。トレセンを卒業後、正式にお付き合いする事となり今は同棲している。
「俺もこたつ入る」
「あっそれなら詰めますね」
「いや、そのままでいい……」
「え?それはどういう?」
てっきり隣に座るのかと思ったので、端によろうと思ったら止められた。珍しいですね。
「よいしょっと」
「ひゃっ!?」
「ふふ、ツヨシ湯たんぽ……暖かい」
トレーナーさんは私の後ろに座ると、そのまま私をこたつと自分の体で挟みながら入ってきたのだ。
「もう……今日は随分と甘えんぼさんですね、いつものキリッとしたトレーナーさんはどこ行ったんですかね」
「トレセンに置いてきた、今の俺は大好きな人を抱擁したくてしょうがないハグ人間だ」
トレーナーさんの言う通り、私の体は絶賛トレーナーさんの体に包まれている。一抹の恥ずかしさはあるが、それはそれとして嬉しくある所もある。
「まったく、でも良いですよ。トレーナーさん、最近忙しそうで息抜きも出来てませんだったろうし」
「ありがとう」
「いえいえ、その代わり腕にもっと力を入れて下さい」
「ツヨシ?」
そう、彼が忙しくイチャイチャ出来ていなかったという事は──
「私だって、寂しかったんです。今日くらいはしっかり埋め合わせ、して下さい」
私だって、我慢してたって事なのだから。
♢
「本当に良かったんですか?」
「んっなにが?」
「その、今日イブなのに何処にも行かなくて」
「行くも何も、ツヨシがそうしたいって言ってたじゃないか。あっそれとも、テレビ見てたらどっか行きたくなったのか?」
「いえ、そうじゃなく……ただ、聞いてみただけです」
クリスマスイブである今日の予定は、朝から晩までお家デートの予定である。
と言うのも、トレーナー業と言うのが多忙なのはずっと隣で見てきたから知っている。日頃忙しくしてる彼とゆっくり出来る時間は限られてる、だからこそこういう日は誰にも邪魔されない場所でゆっくり過ごしたいと思ったのだ。
けど、コレは私のわがままでもしかしたらトレーナーさんはどっか行きたいのではと、不安になってしまった。
「そうだな、確かにどっか行きたいって気持ちが皆無って訳じゃなかったが……」
「ッ!」
「日頃俺のわがままに付き合わせちまってんのに、彼女のわがままを受け入れられないような度量の狭い男にはなりたかねぇよ」
「トレーナーさん……」
「そ・れ・に、俺もともと寒いの苦手だったからさ、渡りに船だったんだよ。だから、気にすんな」
「そう言うのでしたら、もう考えるのを辞めます」
「よし!デリバリーが届く迄にはまだ時間あるし、それまでこたつでぬくぬくとしようか」
「そうですねぇ」
(不安に、させちゃってたよな……)
後ろから見えるウマ耳の機微に、人知れず思案するトレーナー。
(これからはもっと頑張って、時間作んなきゃな)