「もし自分達が出会ってなかったら? 」
トレーニング後、トレーナー室のソファで休んでいる際に、担当ウマ娘であるツルマルツヨシにそう質問された。
「はい、ちょっと気になる記事を見つけたので私達はどうなってたかなって」
「そうだなぁ……俺とツヨシが出会ってなかったら、か」
俺とツヨシは、具合が悪くなっていたツヨシをたまたま見かけた事がきっかけで出会った。あの時俺が他の道を選んでいたら、ツヨシの体調が良かったら、ちょっとした食い違いで関係を持つ事すら無かったかもしれない。
「俺は未だ新米トレーナーだし、ツヨシと出会わなければ多分……今頃は担当なんて出来ずに、何処かのチームのサブトレーナーだったんじゃないかな」
「むぅ、そこは〝どんな世界でもツヨシと出会ってたよ〟とか言ってくれるヤツじゃないんですか」
「あっえ!? 今のってそういうヤツ?」
「そういうヤツです! 」
望んだ回答が来ず、少しご機嫌を損なったツヨシは仮眠用のベッドに寝っ転がり、壁側を向きながらクッションを抱える。
「酷いなぁトレーナーさんは、私なら絶対〝どんな時でもトレーナーさんと一緒です! 〟って言うのに、甲斐性なしです」
「ツヨシもいずれ分かる、大人になるとそういうのが小っ恥ずかしくなるって」
「………」
ツヨシはこちら側を振り向くと、静かにけれど真っ直ぐ見つめてくる。
「な、なんだよ」
「いえ、ただ……」
「ただ、なんだ? 」
「そういう割には私の事何時だって可愛いって言ってくれますよね……と」
「ウグッ! 」
「あーいう事が小っ恥ずかしくなるのは分かるとして、それなら私を何時だって何度も可愛いって言うのも、恥ずかしいんじゃないですか? 」
「い、いいんだよアレは! ツヨシが可愛いって思ってるのは本当だから、だからいいの! 」
「ふふふっ」
俺が答えるとツヨシは嬉しそうに微笑みながら立ち上がり、ソファの隣に座り込む。
「トレーナーさんのそういう素直で真っ直ぐな好意、私も大好きです! 」
「〜っそうかよ」
「はい! 」
年下の女の子に何か負けた気がしなくも無いが、この際ソレはもういいか。
「それよりトレーナーさん! そろそろお時間ですし今日はお開きですかね」
「そうだな、もうこの時期暗いし寮まで送るよ。一応な」
「素直にもうちょいおしゃべりしたいから一緒に帰りたいって、言っても良いんですよ」
「それはお前もだろ? 」
「へへへ、バレちゃいましたか」
この娘の健やかで、可愛い姿がこれから先幾度と見れるのなら、負けてもいいだろう。