拳を構える。
巡らせた気、心臓から巡る力を集約し拳に顕現させる。
下賤な笑い声を出すソレに向け駆けだす。
『腰に持つ剣は飾りか』『噂の聖女の護り手というのも大したことない』
何度も聞いた。
都度、思い知らせる。
誰もが持つ肉体、生まれ持った才覚などではない。
鍛え、研ぎ澄まし、磨き上げた技。
がむしゃらな努力と死に物狂いな想い。
それらで示す。
「聖剣は僕には扱いかねる。どうもこちらが性に合っている」
オーラのようになった力を纏った拳で悪魔の身体を貫く。
蹴りで抉るように、拳をねじ込むように、都度都度何度でも
繰り返し削り抉り散らす。
あの子を守るために迷いも何もかも……捨てれるほど経験があるわけじゃない。
だとするならば、その余計なものを研磨剤に磨き上げた。
衝撃の瞬間に、拳銃が撃鉄で弾を爆ぜさせるように。
力をぶつける。
一撃昏倒
それが僕が目指した
人であるがゆえに磨くしかない、研ぐしかない。
破壊力を持つ同期も、狂ったような信仰を持つ仲間も、うらやましい
思い切りも融通も、社交性も信じることも、一度死にかけたあの日。
あの子に救われた日で握りつぶした。
『過剰ともいえる力で何を目指す』
それに対し僕は応える。
正しいかどうかは関係ない。
僕が守りたいものを全て手に入れる。
「優しいあの子が過ごしやすい世界になりますように」
仕事を終え、ホテルに入る。
教会の息がかかったホテルは本来、深夜に出向く面倒な客でも快く迎えてくれる。
例の二人が帰ってくる前にシャワーを浴び衣服を着換え、間食をつくる。
運動したあとかつ本来は眠るべき時間に起きておくための栄養食。
味は……保障できないが彼女らが作るものよりはましのはずだ。
鍋に水を張り火にかけ、沸くまでに時間を有意義に鍛錬に使おうとしたとき、一人目が戻ってきた。
教会指定のローブを纏いフードを深くかぶっている。
部屋に入る鳴りほっと息をつきフードを捲る。
「ご苦労様だイアン」
「そっちもね」
青い髪にここにはいないもう一人のアドヴァイスで緑のメッシュを最近入れた美少女といっても差し支えない同期がいう。
ゴトッと包帯で巻いた剣を壁に立てかけローブを脱ぐ。
これまた教会指定のコンバットスーツ姿となり同期はソファにどかっと座りくつろぎ始める。
斬姫と呼ばれる同期も蓋を開けたらただの……ただのというのは誤解の元となるか。
ともかく、普通にしていればクール気質な美丈夫というわけだ。
湯だった水面にパスタを投入し少し待つ。
その間にトマト缶を開けソースを用意……する時間はないのでインスタントのソース類を別の鍋で茹で、皿をテーブルに。
パスタを三人分取り分け盛り付ける。
そして食べる寸前に……
騒がしい1人も戻ってきた。
「大変イアン君!」
扉を蹴破る勢いで入ってきた栗毛の少女はいう。
重大で僕の今後を決定する衝撃な出来事を。
力を振り絞り非合法なA2免許と二輪車を駆り、その子の元へたどり着く。
ちょうど教会を出るところだったのか大荷物を持ち、そこにいた。
目元を赤く晴らし、涙をこらえる大事な人を抱きしめ僕は言う。
「僕の命に代えてもキミを守る」
少し泣いた後。
日差しをその綺麗で少し色素の薄い金髪できらめかしながら……
アーシアは言う。
「命に代えるなんて言わないでください。ただ傍に……」
困ったような、だけどあの時の僕と同じように救われたかのような笑顔で
「そばにいてください、イアンさん」
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