『エクスカリバーを一本任せられた男が魔女認定された者とともに逃げ出した』
その報告を受け青髪の少女……ゼノヴィアはやはりなとため息をつく。
正教会の聖剣使いにして枢機卿ヴァスコ・ストラーダの一番弟子。
本人曰く『譲り受けた』力を十全に振るい自分やイリナと悪魔祓いをし続けた若き戦士。
任されていた『
「私たちの仲はその程度……ということだったのか?」
5年近い付き合いで、自身の経歴のため実は同年代唯一の男の友人……かつ数少ない背中を預けられる男を失い、ゼノヴィアは項垂れる。
いつの間にやら心の奥底に住んでいた者を追うこともせず今更思い、女々しい自分にたいするため息が今日は何度も出る。
かといって今更追いかけるほど……
「振り切って一つのこと命をかけれるアイツを祝福してやるべきかな」
あの二人はお似合いだ、とよく小耳に挟む。
どこぞの栗毛狂信者ほど引き合いに出すわけではないが、よく装飾品を売っている店で似合うのを探す程度にはいつも気にかけているのを知っているからか、それとも一度だけ目撃した彼女が人を癒す場面の朗らかな笑みを知っているからか。
きっと彼らも見ている月に向かって十字を切りこうつぶやく。
「……アーメン」
そんなふうに思われている男は……
アーシアと共に一旦宿を取り、どうして異端追放となったかを聞いていた。
聞く限り、どうやら教会付近で傷ついた男を発見し、雰囲気などから悪魔だとわかりつつも生来の優しすぎる性格から見捨てることができずに聖女といわれた力……『
それにより悪魔に誘惑され墜ちた魔女として異端認定されたとのこと。
「……アーシアのやさしさは知ってるし、それに僕も救われたけど」
十数年前、身寄りもなく『聖剣計画』という実験の被験者だったイアンは、被験者ほぼ全員が処分というなの毒殺をされるところを逃げ出し、その時に現出した
それにより一命を取り止め、師であるヴァスコとも出会えたのだ。
ゆえにイアンはアーシアによって救われた命をアーシアに捧げることを望んでいる。
「次、その悪魔が現れたら僕が滅する。それでいい?」
「……」
そしてイアンの性格もアーシアは知っている。
神を信じなくとも、恵まれた奇跡を信じ自分を守ってくれていること、そして
彼の決断はなによりも他者を優先しくだされること。
今や後ろ盾もいない十代の男女というだけの自分たちは、悪魔と戦うないし密会を行うと、完全に道を外れてしまう。
夢見がちでは本当に彼を失ってしまいかねないということも理解している。
「わかりました……」
しかし、アーシアは優しすぎる。悲し気な瞳の奥には……イアンにその決断をさせてしまったことを後悔している。
自分がもっと戒律に則った行動をしていれば……
イアンが自分を責めないのを知っているからか、自分自身を責めている。
そんな彼女を見かねたのかイアンがアーシアを抱きしめる。
今、彼女を守れるのは自分だけだから、命を救ってくれたという恩義もある。
それよりもただ強く、彼女の涙はみたくない。
数年間抱いていた恩は少年の中で育まれ恋心を通り越し愛になっている。
抱きしめる力は弱く、アーシアが拒絶するならば容易く振り払える程度のもので。
けれど、アーシアはそれを振り払わない。
幾度と自身の力を狙った者に襲われ、その都度イアンに助けられた。
自分のために戦士と成った少年に、そのまっすぐすぎるあり方に憧れを抱くのはそう時間はかからない。
「ごめんなさい……」
そして、彼の傍には自分よりふさわしい人がいることもしっている。
イアンと同じように悪魔祓いと王の聖剣を任された二人の女性。
戦えない守られる自分よりも彼女たちの方が……と考えてしまう。
くすぶった憧れはいつの日か恋になっていた。
長い期間で育んだ互いの想いを伝える機会はなかった。
が、今は違う。
二人以外知らない人ばかりの状況で、きっとこれからも一緒にいるだろうという安心が
自覚を促し……聖女といわれた少女の口が開く。
「イアンさん私……」
震える声に込められたのは後悔、恋慕、不安。
ごちゃ混ぜになった感情が理性の蓋を揺らす。
恋と溺れるモノ。それを体現したのか、それとも雰囲気に酔ったのか。
続く言葉を……一本の指が静止する。
「それは、キミが安全になってから聞くとするよ。今はただ、不安になってるだけかもしれないから」
真に思っているからこそ諭す。ガラスの彫像を触るように丁寧に、傷が残らぬように。
なにかに焦ることはない。
追っ手が来る懸念材料は先ほど来た師に預けた。
異端を庇い立てした罪できっと追放された。
そう思うことで時間はまだあると考えることもできる。
ただ、この時。想定外だったのは。
アーシアの癒しの力、そして自分の戦闘能力を欲した別陣営の接触。
二日目にしてそれはやってきた。
扉からなんてありふれたものではなく、窓からというものですらなく。
天上を切り抜き、1人の神父がやってくる。
行き過ぎた殺しをし、追放された神父『フリード・セルゼン』
「堕天使の誘いがきやしたぜぇ、イアンの兄貴ぃ。ひっさびさに弟分にあえてうれしいことでありましょう?」
人を舐めたような口を利くそいつの来訪にイアンはため息をつき立ち上がる。
もちろんアーシアを庇うように。
「キミならしってるだろう。この子は……」
「あーもちろん、そりゃそうなんすけどね。あんたの武勇を見込んだとあるヒトから直々のお誘いなんすわ」
こほんとわざとらしく咳をし、フリードが続ける。
衣食住の提供、とある人物との定期的な手合わせ、そして堕天使所属組織での労働。
後ろ盾もいないイアンがアーシアを養うないし一緒にいるためには破格の条件。
なにせイアンは奇跡は信じていても神は信じていない。信じるのは己の能力とアーシアのやさしさと心ばかりの同期のみ。
兄貴と呼んでくるフリードも神父時代に何度か試合、悪魔祓いをこなした結果だ。
「以上堕天使総督"アザゼル"からの勧誘でさ」
「……なんだ冗談の類か。聞いて損した」
その好条件で話を付けに来たものの名を聞いた瞬間、イアンはそれらを一蹴する。
堕天使……自身が所属していた勢力とは別にある冥界に本拠を置く勢力。
天界にいる神をトップとする天使並びに宗教勢力。
その天使が堕天し、冥界に本拠を構える堕天使勢力。
そして、冥界に初めから住む魔王をトップにすえた悪魔勢力。
その三つの勢力をひっくるめて三大勢力と呼ぶが、そのトップの一角が交渉しているとなどいわれたら世迷言だと断言もするだろう。
実際、フリードは馴染みはあるが冗談や気に障るしゃべり方をする男だ。
疑われるのも無理はない……一蹴はやりすぎだろうが。
「前々から思ってたんすけど、兄貴は自分のことそこらのモブ童貞と一緒に考えていやせん?」
「童貞なのは変わりないだろう」
「いやそこじゃなくて……あーやりづら」
その会話に顔を紅くするアーシアをよそに
臨戦態勢を取るイアンを前になにも構えないフリード。
堕天使の翼から光の力を引き出す武装は軽く、すぐに構えられるとはいえ、イアンはインファイトの名手であり距離の都合で顔面に拳を叩き込むほうが早いだろう。
「あのセイクリッドオタクのそーすい様は本気で兄貴を勧誘してんすわ。まあ、俺っちの行いがあれなのは今更でやすし、信じろーっていうのも無理なのもよーくわかりやす」
「よくわかってるじゃないか。心を入れ替えるには遅すぎるとおもうが」
「でもこれだけはずっといってるでっしゃろ?兄貴を敵に回したくねぇ」
初邂逅からフリードがずっとイアンにいい続けていた言葉だった。
初めは強すぎて、次に冗談が通じず一瞬即発になった時に、そして
他の悪魔祓いとは違い、戦力として友として認めたと感じたから。
問題が山ほどあるフリードがほぼ唯一といっていい信頼しているのがイアンだ。
「……わかった。すこしでもそういうそぶりを見せたら蹴るからな」
「うっひー……手じゃなくて脚っすか。俺っち受けきれやせんぜ」
第二回 Fate/の絡め方
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Fate/と世界観融合
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技術や魔術、魔法が共有
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何等かの方法でサーヴァントと出会う
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イアンを聖杯戦争に放り込む(第四次
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イアンを聖杯戦争に放り込む(第五次
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イアンを聖杯戦争に放り込む(聖杯大戦