傷の深さはどこまでも。愛の深さもどこまでも。 作:人権を得た魚
アパートの一室。ゴミ袋が角に溜まったカビた部屋。
窓にはシャッターがいつも落ちている。
母と子供の私が2人。部屋は陰鬱な空気が漂う。閉じきった窓とシャッターはどうしても空気を逃がしたくないらしい。
「……ッ!」
無言で隣にいる母からタバコの灰皿代わりにされる。当然生身。
背中には数えきれない根性焼きの痕。消せるものでは到底ない。
深く、深く、深くまで。死は近づいている。
閉じこんだ部屋にはタバコの匂いが染み付いてた。
「……」
「おい、酒」
言葉は出ない。そこにある
たった3文字で感情は痛くなるほど読み取れる。タバコで喉が渇いた。持ってこなきゃ殺す。私の息子だろ?
声を出したこともあったのだ。それは儚くも罵声と怒号で消え失せた。
痛みは、消えない。言葉も、消えない。
この傷は、運命なのだろうか。
目が覚める。寝汗がシーツにも染みる。
再び過去の異物を胃から戻してしまった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「せんせい?」
「! ……どうした?」
「いやぼーっとしてるからさぁ」「ごめんごめん」
「まあそういうこともあるよねえ」「……ごめん」
夏の暑い日、エアコンの効いた部屋で書類の山に隠れる。天井にも届きそうで床にも積まれている。終業式近くは書類がアルプスのようになる。
ぼーっとしてるのは……夏バテ? この部屋はそんなに暑くないと私でも思ったけどなあ。
あんまりこの部屋から出てるイメージもないからただぼんやりしてるだけだと思ったけど……
謝って欲しくもないところで謝る先生。なんでだろう
「ホシノ。明日私は少し席を外すね」
「あれ? そんな予定あったっけ」「ちょっとね」
「うへ〜……」「じゃあその分もやれるだけやっちゃお」
「はーい……」
普段は外出をしない先生がわざわざ予定を伝えるほどのことだった。なんの事だろう。
書類の山を崩しながら少し思い出す。
就任当時から先生はどこか不思議な感じだった。
初めて見た時からそうだった。どこか怯えてて寡黙な人。
背筋を伸びてて真っ直ぐな目をしているのに、ずっと不安げな雰囲気があった。今もだけど。
でも、しっかり人のことを思っていて、他人第一のちょっと危なかっしい人。そんなところが好きだ。
そろっと先生の目を見る。角度もだろうが、目に光がない。
「(いつもそうだったような)」
いや徹夜だろか。いやそれでもダメだ。何しろ聞いてみないと分からない。
「先生、そういえば目に光がないよ? 徹夜?」
「……ん。ああ、最近この量の書類だからね。あんまり頭の中が整理できなくて」
「うーん……寝ないとダメだよ〜? 先生の体はひとつなんだからさ〜」
「そうだね……ごめん」
「謝る必要は無いよ〜」
やっぱり謝る。会話する事に罪悪感が積もっていく。少し話しづらい。
話しづらいなら話さなきゃいいと言われるかもしれない。でも、私は話したい。だって、好きだから。
何度も何度もアビドスを助けてくれて、私自身も助けられた。感謝の言葉は言葉じゃ伝えきれない。
ただ尊敬する人、気になる人の内面を知りたいというのに、これ以上の説明はいらない。
今度寝ている時に
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
The、躁鬱の躁のお時間です☆
今朝はあまりにも嫌すぎる記憶にまさかの吐瀉物撒き散らしたところからスタートです。一日のスタートが早速死にポイント。
ちなこの死にポイントが溜まると鬱にジョブチェンジします。過去の俺がそうだった。
運良く始業時間前だったので掃除→風呂歯磨き→ゴミ出しが何とか間に合いました。良かった。死にポイント減ります。
急に減るし急に増えるのなんなん←分かれよ。
躁鬱とは自分でも言うけど、正直診断されたわけじゃないし確信なし。
ただ自己肯定感があまりにも低くて、いつ死んでもいいように遺書を毎日書いてるぐらい。
何もかも失敗してきた人生だからね。仕方ないね。
と、そんなこんなであっという間に始業時間。今日の担当はホシノ。
良かった。あんまり怒られなくてすむ。
怒られるのは当然嫌いだ。だからといって怒った人を嫌いになるわけでなく、怒られる自分が嫌いになる。ネガティブ思考はどうやっても断ち切れなかった。
「また私の知らないところでこんなプラモデル買って……!」
なーんて言われた日にはプラモデル窓から投げ捨てたんだよね。そのプラモデルは俺が寝て起きて見たらもう消えてた。
後悔はしてるけど、これで嫌われないならいいやって感じ。(でも嫌われたらとか考えたりするどん詰まり)
「せんせい?」
「! ……どうした?」
やっべ話しかけられた。あんまり生徒とは話さないようにしている。考えてることが全て間違って来た私には会話する能力もないのだ。
「いやぼーっとしてるからさぁ」「ごめんごめん」
軽く流そうとする。仕事するから許して! ちょっと今朝の事考えてたの!
「まあそういうこともあるよねえ」「……ごめん」
死にポイントです。早いねッ
生徒から諦めにも近い目を向けられることは信用のなさの最もな例。
そうだよ。鬱1歩手前だよ。
鬱になるともうどうしようもない。早くッ! 早く仕事を終わらせねば!
ただ、寝れてないのは事実。明日寝具を買いに行く予定だった。
たしかまだホシノには伝えてないはず。明日も当番だったし言っておくか。
「ホシノ。明日私は少し席を外すね」
「あれ? そんな予定あったっけ」「ちょっとね」
「うへ〜……」「じゃあその分もやれるだけやっちゃお」
うへ〜……
仕事は思ったより難しい。
それはそうだ。
義務教育を半端に終えてきた奴がまともに字は読めねぇし算数はできねぇし生徒と先生の立場逆の方がマシなぐらい。
ハナコと会った時は地獄だった。彼女はお気楽な態度で私と接してくれるが、あまりにも酷い誤字を見て驚いた彼女を見るのは生き地獄だった。死んだ方がマシの最たる例。
何を思っているかなんて大体わかる。憐れみの感情が1ミリでもあった時しか想像出来んのだ。
「先生、そういえば目に光がないよ? 徹夜?」
「……ん。ああ、最近この量の書類だからね。あんまり頭の中が整理できなくて」
とは言うが、睡眠不足の理由は多分これでは無い。悪夢のせい。夢なんて言葉も使いたくないぐらいだが、辞書にはないらしい。
「うーん……寝ないとダメだよ〜? 先生の体はひとつなんだからさ〜」
「そうだね……ごめん」
「謝る必要は無いよ〜」
と言われるも謝る以外の会話を知らない。友達はいない。家族とは謝る関係しか無かった奴が相手の肯定自分の否定以外ができるわけが無いんだよな。
ああ、やめよう頭の中で言葉をめぐらすのは。
今は仕事だ仕事。明日はゆっくり枕を探すんだ……
ちなみに窓から捨てられたプラモデルを見てとある生徒は泣きじゃくって組み立てるよ。部屋にあるよ。でも先生に言った本人だから返せないね。辛いね。
先生虐待概念。皆書かないよね……私が小説読まないのもあるか。