傷の深さはどこまでも。愛の深さもどこまでも。   作:人権を得た魚

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#3 ただのお買い物か、デートか

「来ちゃった」

「来たな」

 

 

 先生にお願いしてついて来た。時間はまだ昼前。

 今朝。正直、抱き着いてあんなになっちゃうなんて思わなかった。

 壁にふらふらとあとずさりしてそのまま過呼吸になってた。

 

 きっと、先生は女性恐怖症なんだ。聞いたことがある。

 確かにいままで体同士が触れたことはなかった。そうやって考えると、実はあの傷も……

 

 

 

「(先生。ごめんね)」

 

 

 

 

「……すっごい大きくない‥?」

「ね! 寝具店一軒でこれならすごい大きさだね~」

 

 

 一旦その話は忘れる。純粋に先生との買い物にこれたことを楽しもう。

 そういえば確かに先生の言う通り。この建物はすごく大きい。看板もすごいぃ……。

 

 まぁでもキヴォトスでは寝具の需要がすごい高いし、うまくかみ合ってるのかな。

 取りあえずはいってみる。

 

 

 

 入ればすぐのところで色んなクッションが私たちを出迎えてくれる。大小異なる魚や動物達のクッション兼ぬいぐるみの隊列はあまりにも綺麗だった。可愛かった。足が止まってしまった。

 

 

「かっ、かわいぃ……!!」

「ホシノはこういうのが好き?」

「うん!」

 

 

 普段は気怠けな感じだげど、今だけはすごく元気だ! 先生の前でもこの元気な姿で、良いよね? 

 

 

「どれが一番好き?」

「うーん、悩ましいことを聞くねせんせい〜」

「これかな! クジラのクッション!」

 

 大きさ1mほどにもなる大きなクッション! 

 触り心地も低反発で飲み込まれそうなぐらい柔らかい〜……

 きっとこれで昼寝したら、ぐっすり寝れるんだろうな〜

 

 

「じゃ、これ買ってこっか」

「え? いやいや、さすがいいよ〜」

 

 軽く桁が5桁に届いてしまうぬいぐるみをそうそう買ってもらうにはいかない。ちゃんと遠慮する。

 

 

「あんだけの仕事やってもらったし、お返し」ポスッ

「うへ〜……! ありがとう! 先生!」

「こちらこそ」

 

 まさか買ってもらえるなんて思ってなかった。がめつく見えちゃったかな……? 

 そもそも付き添いだから付いてくるだけで何も期待してなかったんだけど……

 

「先生はお金持ちなんだね〜」

「ふふ、実はカツカツよ」

「ええっ!?」

 

「俺のはもう探してあったから、レジ行ってくるね」

「ちょ、ちょっと〜」

 

 

 なんと手際がいいんだ先生……

 私が色んなクッションの触り心地を確かめている間に、買い物カートには大量の寝具やアロマが入っていた。物の審美眼が鋭いのね。先生がさっきの傷だらけの肌とは無縁そうに歩くので、なんだかほっこりした。

 

 

 そういえばお財布カツカツとか言われちゃったけど、ほんとに買って貰えるのかな? 

 

 

 

 店を出る時、大きなクジラぬいぐるみを貰った。かわいらしいリュックサック付きで! 

 正直、私には似合わないかもと思ったけど、先生が私にくれたことの方がよっぽどうれしい! 

 

「せんせ! ありがとねッ!」

「ホシノが喜んでくれて俺もうれしい」

 

 えへ! なんだかデートみた……

 

ぽふっ

 

 

「先生〜」「ん?」

「もう書類仕事ほとんど終わってるし、ちょうど買ってきたやつで昼寝でもして見たら〜?」

「うーん、仕事が完全に終わったらしてみるかな」「そう?」

「じゃあぱっぱと終わらせちゃお!」

 

 

 

 

 

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

「来ちゃった」

「来たな」

 

 

 言われるがまま一緒に連れてきてしまった。私はいいけど、ホシノはいいんだろうか? 

 あんまり生徒と出かけることもないし……

 ていうか、ここでかいな!? 軽くキヴォトスに来る前のEQNくらいあるじゃん! 

 

 

「……すっごい大きくない‥?」

「ね! 寝具店一軒でこれならすごい大きさだね~」

 

 こんなにでかくても店は回るのかな……? 

 そんなに枕とか皆買ってるの……? とりあえず入るけどさ……

 

 

「(ひっっっっっっっっっっろ!!!)」

 

 

 内装も外観想像以上にでかく感じる! コストトレベルででけえ! 行ったことないけど……天井がどこまでも続いていて、入口からちらっとキングサイズのベットが見える……!!なんだこの男の子が好きそうな空間は!ちょっと興奮してきた!! 

 

 お出迎えはどこかで見たことがあるようなぬいぐるみが見つめてくる。

 まさに女の子とかが好きそうな

 ……ぉ。ホシノが早速足を止めてる。女の子だぁ。俺の予想はあってた! 

 

 

「かっ、かわいぃ……!!」

「ホシノはこういうのが好き?」

「うん!」

 

 

 かわいいのはお前だホシノ。

 いつもはけだるげそうだけど、ぬいぐるみを見ている時だけはまさに女子高校生って感じだ。

 ‥ちょっと憧れる。私も制服と言う物を触れてみたかった。

 

 

 ぬいぐるみに熱中するホシノを取りあえずおいておいて、目に移った枕をちょっとした自分用の抱き枕を買う。

 

「(意外とレイアウト分かりやすいな)」

 

 冷静になって考えれば、さすが大型店ともいうべきか、客の導線がしっかり考えられている。構造に感服する。

 客の流れも絶えず、疎らになってるのが証拠。

 ここの店長すげえな。友達になりたい。

 

 

 カートにポイポイと枕を投げ込む。

 買い物自体は好きだが、買う物に執着はない。

 この職についてからいろんな場所に行けるようになって、いろんなことをして買った。

 でもなんだか満足できなくて、買い物自体も最近はネットで見るだけだ。

 

 

 

 

 

 カートにポイポイしてもう一度戻ってくると、ホシノはまだぬいぐるみを見ていた。

 こっそり財布の中を見る。生活費除いてもぎりぎり6桁はある。

 好きなやつ、買ってあげようか。

 

 

「どれが一番好き?」

「うーん、悩ましいことを聞くねせんせい〜」

「これかな! クジラのクッション!」

 

 

 おお、一番でっかいやつとかじゃなくて良かった。7万とかはさすがに気が引けちゃうけど……3万ぐらいなら

 よし、買うか! ホシノ喜ぶかな? 

 

 

 

「じゃ、これ買ってこっか」

「え? いやいや、さすがいいよ〜」

 

「あんだけの仕事やってもらったし、お返し」ポスッ

「うへ〜……! ありがとう! 先生!」

「こちらこそ」

 

「先生はお金持ちなんだね〜」

「ふふ、実はカツカツよ」

「ええっ!?」

 

「俺のはもう探してあったから、レジ行ってくるね」

「ちょ、ちょっと〜」

 

 

 

 言ってることは正しい。はず。

 私の感性があってるかどうかわからないが、欲しい物をもらったらうれしいはず。

 ホシノと買い物をするのは、なんだか友達と喋っているようで楽しいかもしれない。

 

 

「9万8900円です」

うぉはい。これで」

「1、2、3……10万ぴったりですね~」

 

「一定価格以上お買物されたお客様にはキャンペーンでぬいぐるみを背負えるリュックサックを配っておりまして、お使いになられますか」

 

「(俺はあれだけど……ホシノなら)じゃ、じゃあお願いします」

「分かりました~!」

 

「こちらご商品と、おつりの1100円です」

「ありがとうございました~」

「はい! ありがとうございました~」

 

 

 

 

 店を出てからホシノにリュックサックごと渡してみた。

 きらきらした目をさらにキラキラにして元気よく受け取ってくれた。ああ、なんだかすごく幸せかもしれない。

 自分のやったことが相手に喜ばれることなんて、今までなかった。

 

「せんせ! ありがとねっ!」

「ホシノが喜んでくれて俺もうれしい」

 

 なんだろうか、この幸福感。健全な幸福感なのだろうか。

 本来生徒とプライベートで関わることなんてほとんどなかったし……

 まぁ難しいことは忘れよう。今私は幸せだ。それだけでいいはずだ。

 

 

「先生〜」「ん?」

「もう書類仕事ほとんど終わってるし、ちょうど買ってきたやつで昼寝でもして見たら〜?」

「うーん、仕事が完全に終わったらしてみるかな」「そう?」

「じゃあぱっぱと終わらせちゃお!」

 

 頑張ろうか……! 

 

 

 

 

 

 




コストコ、友達の親に連れて行ってもらってから憧れでした。
広かったなぁ

もう少しホシノとの会話は続きます。よければ
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