傷の深さはどこまでも。愛の深さもどこまでも。 作:人権を得た魚
納得できる形に収めるのに相当かかりました。
クッションを持ってシャーレに到着する。先生はお昼ご飯を買ってくると、少し後で来るそうだった。
パタン……
「(……お昼寝、一緒に出来ないかな)」
ほぼほぼ無謀なことである。さっき抱きしめた時ですらあの反応だ。朝添い寝したこととは訳が違うこともわかってた。
どうしても無理なら仕方ない。でも
「(それでも、私は)」
「先生と、寝たいなぁ……」
先生の、拠り所になってあげたい。頼られたい。
いつも一人で先を行く私に着いてきて、止めてくれた。
ユメ先輩の時も、そうだったように。
それだけじゃなくて、私が通るはずの道の先を行く先生。
隣に、誰か居てあげなきゃ
きっとまた壊れちゃうだろうから……
ぱたっ……
後ろから小さくドアが閉まる音がした。
「……ホシノ……? 今、なんて……」
先生だ。あれいつのまに……?? ていうじゃ今私なんか言ってた? 考え事をしてただけなんだけど、
もしかして……!? こわれちゃう……って漏れてた!?
「え? って、先生……! いつから……?」
「今、その、私と……寝たいって」
「!?!?」
口から漏れてた〜!!!! しかもそこぉ!?
「あっ!? いや、えと! その違くて!」
「そ! そうだよね!? 私となんか寝たいなんて……」
「いや、えと……そういうわけでもなくて!」
赤面二人。シャーレには複雑な感情とおかしなジェスチャーで満たされていた。
ただ、先生の顔と私の顔。同じ赤面でも、どうか違った。
単純に恥ずかしがる私と対照的に、どこか焦りと拒否感を示す先生の顔。
まぁ、先生としては正しいのかな?
昼寝は断られる気がした。
「ね、寝たいって……その……えと」
「こ、この後! 仕事の後! 昼寝するかなと思って、その……!」
「ええっと……?」
「一緒に、そ、そ……その」
「添い寝……したいんだ……よ……ね」
あああああ!! 、いっちゃった言っちゃった言っちゃった!!
やばいよぉ! 恥ずかしい!!
頭から煙が出てくるような感じ! やだ! 本当に恥ずかしい!
でも! あそこまで言ったら! いうしかないよ〜……
「ああ、そっちの。…………!?!?!?」
なんだか安心したような顔をした後、急にたどたどしくなる。数歩後ずさる。
赤面も恥じらいの赤面になったような気がする。
……それはそうかもしれない。
「……逆になんだと思ってたの〜……?」
「……なんでもない。忘れて?」
「うへ~……わかったよ〜……」
「じゃ、じゃあ行く?」
「‥うん」
────────────────
買い物終わった。疲れた。
普段から配達しか使わない身からしてみれば一歩の歩幅ががあまりにも狭い。帰り道とは基本ウキウキな物ではなかったのか。いや、小さい頃からそうでも無かったか。
とにかく疲れた。眠い。
ホシノには悪いが外食するだけの財布の余裕がないため、コンビニで昼ごはんを買うことにした。
「ソラ、いつもありがとうね」
「い、いえ! いつもお疲れ様です!」
シャーレからでないだけで、コンビニはには行く。なんなら繁忙期はここが生命線だ。
買いだめとしておにぎりやらパンやらエナドリやらをカゴに突っ込む。
大人のカードの正しい使い方だ。機械も元気よく反応する。
「あ、ありがとうございました!」
「またね、ソラ」
細い足で階段を登る。
早くエレベーターが設置されないかため息をついて愚痴る。連邦生徒会、頼むぜ。
ようやく仕事部屋、いわゆる監禁部屋に着いた。いや、ただ1日中ここにいることが多いから呼んでるだけなんだけど。
ホシノを待たせているだろう。なんて言おうか。許してくれるだろうか。
いつも通り部屋に入る。ホシノは呆然と部屋の真ん中で立ちつくしている。途端、ホシノはこちらを見ずに言い放った。
「先生と寝たいなあ……」
寝る……寝ると言った。そういった。
結果的に言えば、私は寝るという単語の意味を間違ったようだった。
ホシノとは今朝のこともある。だからこそ、その言葉には身の毛のよだつ恐怖を感じた。
中学生のことだろうか。まだ家に帰っていた頃だ。私は母親の友人に体を売られた。
3、40ぐらいの厚化粧をしたおばさん。派手なネックレスとピアス、境目の分からない首、手首を締め上げる腕時計、部屋中に漂う香水の匂い。
言葉にするだけで吐き気がする。あの一日は最悪な記憶の1部だ。
私は非道にも、それをホシノにも当て嵌めてしまった。朝の抱きつきと発言が、結びついてしまって離れなかった。
私は部屋を出ようとも思った。体はとうにボロボロだ。
だが、逃げることは辞めると決めた。愛らしくて分別の効く愛弟子だ。私だって、……多分。嫌いじゃない。
「ホシノ……? 今なんて……」
「え? って、先生……! ……いつから……?」
「今、その私と寝たいって……」
「!?!?」
「あっ!? いや、えと! その違くて!」
明らかに驚いていた。動揺を隠せず足はバタバタ、手もバタバタ、目はキョロキョロしている。
いや、考えればそうだ。私なんかと寝たいなんて思うわけもない。撤回しよう。
「そ、そうだよね? 私となんか寝たいなんて……」
「いや、えと……そういうわけでもなくて!」
……?? なんだがごちゃごちゃしてきた。分からなくなってきたぞ。とりあえず、話を聞くしか……
「ね、寝たいって……その……えと」
「こ、この後! 仕事の後! 昼寝するかなと思って、その……!」
「ええっと……?」
「一緒に、そ、そ……その」
「添い寝……したいんだ……よ……ね」
「ああ、そっちの。…………!?!?!?」
……勘違いでした〜!! 申し訳ない! 土下座ざぜでぐだざい……
あのホシノが私のことをなんてする訳ない! 純粋無垢で寛大で強靭なあのホシノが!
大切にしてもらっている身がおこがましい考えをしておりました!
……でも、あんまり変わってないのでは? 結局同じベットでは寝るのでしょ? なんにもないの? 本当に?
ちょっと怖い。落ち着くとなんでも客観的になる。
「……逆になんだと思ってたの〜……?」
「……なんでもない。忘れて?」
「うへ~……わかったよ〜……」
……ホシノは読心術でも持っているのか? 私がほかのことを考えていたことを疑われているのだが。怖い。
昼寝についてだ。もしここで断れば、ホシノを傷つけてしまうかもしれない。彼女の口からの発言だ。誰に言わされたでもない。
もしそうで私をはめるためなら、私は首を吊るだろう。
私が頑張れば、ホシノがしたいことは叶うのだ。一瞬ぐらい、いいだろう。
「じゃ、じゃあ行く?」
「‥うん」
ホシノかわいいね!恥じらいこそ女の子の可愛さだヨ!
先生元気ないね。頑張って!
……長らくお待たせしました。本当に申し訳ありません。
理由といたしましては、現実の忙しさ、想像力の欠如が原因です。負の感情を多く持つこの小説を書くにはエネルギーが必要で、しばらく書けない状況でした。
次回はなるはやで頑張ります。すみませんでした……
次回で一旦ホシノの話は終わりでス。
次書く章も決めているので、気長にお待ちください…