MARVEL STUDIOS 「ブルーアーカイブ」 作:MAN
男なのにヘイローを持っている理由も一応あります。
メカニック、芙蓉アテネだ
雲一つない快晴の空というのは、実に清々しい気分にさせてくれるものだ。
眼前にはヴィクトリア時代のイギリスを彷彿とさせる、ネオゴシックや新古典主義様式の建物が並んでいる。その一角にある喫茶店にて、私こと『
一人ぼっちのティータイムというのは些か寂しいものだが、幸運なことにその時間ももうすぐ終わりを迎える。
「……筈なんだけど」
予定では30分前には集合を果たしている筈だが、マホガニーで作られた2つの椅子は寂しそうに主人を待っている。これでは私が貴重なテーブル席を1人で占領している非常識な人間だと思われてしまうだろう。まったく、1杯の紅茶を引き延ばして飲むのにも限界があるのに。
休日の昼間ということもあり、辺りには友人との余暇を楽しむ女子生徒の姿が多くみえる。
「……ねえ、────────ってさ」
「だよね! ──────?」
そして、その内の一角である女子生徒のグループが、私の方を見てひそひそと何か耳打ちをしているのが聞こえた。話の内容は断片的にしか分からなかったが、視界の端で地面に映った羽の影がピコピコと動いているのを見る限り、彼女たちが興奮しているのは明らかだった。
「……H.E.R.M.A。ミカとナギサに催促のモモトークを送ってくれ」
このままだと聖セバスチャンのように、視線という名の槍で体をめった刺しにされそうだ。
椅子に背を預けながら周囲の喧騒に紛れるように呟く。傍から見たら虚空に向かって呟く危ない人だが、私の呼びかけに応えるように、機械的な音声が耳に取り付けたインカムから聞こえてきた。
『承知しました。1人のティータイムが寂しいのであれば、私がお相手になりましょうか?』
「勘弁してくれ。余計に注目される羽目になる」
ここでは自然言語処理、音声認識、顔認識、強化学習を採用した対話型インターフェースなんてものは流通していない。
ミレニアムに行けばある程度の理解は得られるだろうが、それでもぶつぶつと独り言を呟くデカい金色の翼を持つ人間と、仲良くなりたいという気狂いは少ないだろう。私はマリリンモンローではないし、ドレスなんて着た日には羞恥心でのたうち回ること間違いなしだ。
『只今返答がありました。あと5分ほどで到着なさるそうです。「アテネ様が寂しがっている」という旨のメッセージを追加で送信させていただきました』
……こいつ。提案を断られたことを根に持っているな?
まあいい。これで噂好きのお嬢様たちによる明日の話題から外れることができる。もう遅いかもしれないけど。
数分程時間が経ち、一杯目の紅茶を飲み終えたとき、視界全てが暗闇に包まれた。頬や目元を触れる感覚からして、後ろから両手で目を塞がれたのだろう。
「だ~れだ?」
嗅ぎ慣れたサミュエラの香水の匂いがふわっと漂う中、鈴を転がしたような心地よい声で囁いてきた。
耳元にかかる吐息にくすぐったさを覚えながら、一切反省の色が見えない手下人の名を呆れを込めて呟く。
「……
「せいかーい。さっすがアテちゃん!」
後ろを振り返ると、チェリーブロッサムを彷彿とさせる、ピンクの髪をシュシュで団子にまとめたロングヘアの少女の姿があった。
彼女の名は聖園ミカ。私の幼馴染にして、待ち合わせ相手の内の1人だ。
「普通に登場することはできないのかい? ……それにナギサはどうした? 一緒だと思ってたんだが」
もう1人の待ち合わせ相手である桐藤ナギサの姿が見えない。質問を続けるのは気が引けたが、舌を小さく出して笑顔でピースをしているミカに聞くことにした。
「あー、ナギちゃん? さっきまで一緒にいたんだけど置いて来ちゃった☆」
「置いてきたって……あのなぁ」
「だってしょうがないでしょ? アテちゃんが寂しがってるって聞いて居ても経っても居られなくなって」
演技ったらしく両肩を抱いて体を揺らすミカ。相変わらずコロコロと表情が変わる子だ。
そんなミカにため息をついたとき、その後ろから息を切らして小走りでこちらに向かって来る少女の姿が見えた。
「はぁ……はぁ……なら寝坊しないでください」
「おはようナギサ。色々と大変だったみたいだね」
息を切らしながら膝に両手をつき、ミカに恨み言を呟くホワイトブロンドの髪をカチューシャで止めた少女……桐藤ナギサに、私は同情の意を込めて声をかけた。
「だってしょうがないじゃん。アテちゃんがくれた時計、時間がズレててアラーム鳴らなかったんだから」
「冗談は君の馬鹿力だけにしてくれ。私の作ったものに限ってそんな誤作動を起こすわけがないだろう」
言い訳をしたいならもう少し現実的な嘘をついてほしいものだ。
「全く……ほら、怒ってないから早く中で注文を済ませよう。私もお腹がペコペコだからね」
「本当だって! っもう、アテちゃんったら自分の発明品の事になるとすぐに頑固になるんだから」
後ろで喚くミカの面倒をナギサに押し付け、私は注文の列に並ぶのだった。
注文を済ませ、先ほどまで閑散としていたテーブルは姦しさを取り戻した。日焼けを気にするうら若き乙女を気使っているのだろう。テーブルの中央に立てられたパラソルを囲う様にして、私たち3人は食事の到着を待っていた。
「……でね! ナギちゃんったら、眠ってる私の顔に枕を押し付けてきたんだよ!? 一言声かけてくれれば私だってちゃんと起きるのに」
左前に座るミカが足をプラプラと揺らし、私とナギサを交互に見やって声を荒げた。口調こそ厳しいものだったが、彼女がただその状況を面白おかしく伝えたい意図を読み取れたのは、ひとえに私とミカの付き合いが長いからだろう。
ナギサも分かってはいるのだろうが、実際に矛先を向けられて心穏やかでいられるかは微妙なところで、怒り心頭と言った様子で返した。
「元はと言えばミカさんが寝坊したのが悪いんですよ! 私が迎えに行かなかったらどうするつもりだったんですか!?」
全くもって正論だ。だがコミュニケーションにおいて、正論というのは必ずしも最適解になるとは限らないものだ。特にミカのような性格の子にはね。
「ふーんだ。髪の毛もくしゃくしゃになっちゃったし、そのせいで余計に時間かかったんだから!」
私はあまり女性の髪形には詳しくないが、そんな私から見てもミカの髪の毛は綺麗に整えられているように見える。言葉の通り、時間をかけて整えてきたのだろう。
だが。髪の毛はしっかり整えられたのかもしれないが、ミカの言い分は滅茶苦茶なものだ。
「……っ!」
感情を表に出さないように努めるナギサだったが、小刻みに震える体と逆八の字に曲がった眉を見れば、その内心を読み取ることはそう難しくない。
意外かもしれないが、口喧嘩ではナギサよりもミカの方に分があったりするのだ。天真爛漫なお姫様といったミカが、上品で育ちの良いお嬢様のナギサを言い負かすのを見るのは、何もこれが初めてではない。
……仕方ない。ここは大人として、私が仲裁に入る他無いだろう。『男が女性の口喧嘩とショッピングのセールの間には入るな』なんてジョークは有名だが、私と彼女たちとの関係性なら問題はない。それに、仲裁に入るのが女性だと
「ほら、喧嘩もそこまでだ。今日は私たち水入らずの中等部卒業祝いなんだから。最初からそんな空気だと胃もたれしてしまうよ」
……ふふっ、これは決まったな。私の天才的な頭脳によってこの場は切り抜けられたと言っていいだろう。
前職の上司は平気で半日近く遅刻をするような人物だったし、こんなのはかわいいものだ。私としても祝いの場で友人2人が喧嘩しているところなんて見たくないしね。
吊り上がる口角を頬の筋肉で押さえつけながら、紳士的な表情を装って視線を上げる。
「「……」」
帰ってきたのは、私の器の大きさに感動する2人の尊敬の眼差し……ではなく、麗らかな春の空気さえも凍えさせるほどの冷たい視線だった。
……えっ、何? 私何か変なこと言った?
「うーん、言ってることはすっごいまともなんだけど……ねえ、ナギちゃん?」
「そうですね。その右手に持っている精密ドライバーが無ければ、私も素直にお話を聞くことができたのですが」
2人の視線はもう片方に握られている、以前私がミカに誕生日プレゼントとして渡した腕時計へと移る。
「……いや、一応確認のために分解していただけだ。もし本当にミカが言うように故障していたのなら、その原因を確かめる必要があるからね」
私が開発した、彼女たちのヘイローを動力源とする機構を搭載したこの腕時計は、キヴォトス全体のエネルギー問題を解決しうる可能性を秘めているのだから。残念ながらアークリアクターの開発には失敗してしまったからね。今の私にあれを開発するのは不可能だ。
化石燃料でも、核燃料でもない、最も安全で革新的なエネルギーを、効率的に得られる手段をようやっと実現させたのだから。あとはこれを実用できる段階にまで磨き上げる必要がある。だから私はミカにこの腕時計をプレゼントしたのだ。
もちろん私の体で安全性を第一とした臨床実験は済ませているし、取り扱うエネルギーも極めて少ないため、誤作動を起こしたとしても爆発する危険性は0に等しい。しかし、最終的な目標であるキヴォトス全体のエネルギーを賄う技術に昇華させるには、まだまだ確実性が足りていないのだ。現にミカが言っていることが本当だったのなら────
「あーあ。またアテちゃんがトリップしちゃった」
「私のせいですか!? ……はぁ。その様子じゃ忘れているようですが、今日はあなたの誕生日だということも思い出してください」
ため息をついたナギサが、分解された腕時計を握る私の手にそっと手を重ねた……って、
「そうか。今日は私の誕生日か。すっかり忘れてたよ」
わざわざ混んでいるであろう土日に予定を立てたのは、これが理由だったみたいだね。
「だから時計弄りは禁止! 主役がそんな様子じゃ、祝うものも祝えないし」
反対側に座るミカが、握っている手を無理やり開かせてドライバーを奪い取る。一応抵抗を試みたが全く持って歯が立たなかった。
「仕方ない。これは帰ってから弄ることにするよ」
ここは大人しく従うことにしよう。私の為に来てくれた友人たちを無下には扱えない。それに女性を怒らせるとロクな事にならないのは、この学園で9年間過ごしてよく分かっている。
降参の意を込めて両手を上げる私を見て、満足気に頷くミカとナギサ。
「お待たせいたしました。ご注文いただいたモーニングのAセット、Bセットです」
「わっ! 美味しそう」
そのタイミングで、店員らしきエプロンを着たロボットが商品をテーブルに置いた。ミカが両手を合わせて嬉しそうに声を上げる。
ハニートーストとパンケーキとは、実に女の子らしいチョイスだ。
「セットの紅茶も失礼いたします。そして────」
2人の分の配膳を終えた店員がテーブルを回って私の横へとたどり着く。
「────こちらチーズバーガーとコーラとなります。ご注文は以上でよろしいでしょうか?」
紙に包まれた本格的なチーズバーガーがテーブルに置かれる。この店で注文したのは初めてだが、バンズから溢れて紙にこぼれたチーズは実に美味しそうだ。
「はい。ありがとうございます」
口の中が潤うのを感じながら、私は笑顔で店員に応える。
ロボット型の店員はモニターに映る顔を微笑ませ、小さく礼をしてその場を後にした。
「よし。丁度そろったようだし食べようか。……どうした2人とも。まだ眠いのか?」
「……いいえ。何でもありません」
「うん。いつも通りで安心って感じ? 機械オタクなのもそうだし、やっぱり変だよねアテちゃんって」
何か言いたげな2人を横目に、私は笑顔でチーズバーガーにかぶりつくのだった。
「何を言うんだミカ。これから1日中遊ぶんだから、しっかり食べて英気を養わないといけないだろう……美味い!」
「そういう問題じゃないんだけどね」
苦笑いを浮かべながら、ミカは上品にナイフとフォークを使ってパンケーキを食べるのだった。
──プロフィール
フルネーム?:IRON MAN
役割:STRIKER
ポジション:FRONT
クラス:アタッカー
武器種:
遮蔽物:×
攻撃タイプ:神秘
防御タイプ:重装甲
市街地戦闘力:S
屋外戦闘力:A
屋内戦闘力:D
学園:
部活:
年齢:■■歳
誕生日:■月■日
身長:193㎝
趣味:兵器開発、映画鑑賞、化粧
──基本情報
■■■■所属、全身を金属で出来たスーツで覆われた生徒。ヘルメットに付けたボイスチェンジャーで声を加工しており、その素顔、本名を知る生徒は存在しない……と言われている。
特殊な技術で見えなくしているが、機能をオフにするとしっかりとヘイローらしきものが浮かんでいる。
非常に先進的な科学技術を扱い、銃で戦えないという欠点を自身の開発した光学兵器を使用することでカバーしている。金属製のアーマーもそのうちの一つ。
化粧の技術が凄まじく、器用にスーツ姿のまま他の生徒に化粧を教える様が見られ、彼女たちからは師匠と親しまれている。
H.E.R.M.A:アテネが開発しためっちゃ凄いAI。開発者に似て皮肉が上手い。
アークリアクター:アイアンマンの動力源。トニースタークが開発したトンでも発電装置。半永久的に原子力発電を優に超えるエネルギーを生み出す。
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