MARVEL STUDIOS 「ブルーアーカイブ」 作:MAN
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目を覚ますと、そこは知らない天井……だなんてことはなく、見覚えのある石膏ボードで埋められた天井が目に映った。
以前掃除をしたときの記憶が確かなら、恐らくここはアビドスの保健室だ。
「ん……私は……っ」
こうなる前の記憶が曖昧だ。何か夢を見ていたような気がしなくもないが、頭を捻れば捻るほど泥沼へと落ちていくような感覚になる。
上半身を起こして頭を抑えると、脈打つような痛みが襲って来る。ガーゼが額に貼られているのを見た限り、どうやら頭を打って気絶していたようだ。
「あ……アテちゃん」
その声を聴いた瞬間、曖昧だった記憶が鮮明に蘇る。
……そうは言っても、正直意味が分からない展開だったけど。百歩譲ってミカがアビドスに居るのは分かるが、私が髪を切るタイミングで、なおかつ壁をぶち破って入って来る意味も分からない。
「……ミカ」
あれだけ仲が良かったのに、話す言葉が思い浮かばない。
だってそうだろう? あれだけ盛大に裏切って逃げた挙句、他校で楽しくしているのだから。もちろん楽な事ばかりではないけれど、充実していたのは確かだ。
「その、ニュースにもなってたでしょ? アビドスに入学したって」
「ここには一人で来たのかい?」
結局、一番最初に出てきた言葉は心配の言葉だった。まだ今までの癖が抜けていないのだろうが、どう考えても適切な言葉じゃない。
「うん。一緒に行こうって言ったんだけど、ナギちゃんには断られちゃったから」
「そうか……」
そんな私の呟きを最後に、部屋には再び沈黙が走った。
気まずい。ミカとの会話でそう思うのは、人生で初めてだった。
「謝って」
風が窓ガラスを打ち付ける音が響く中。ミカはどう言葉を紡ごうか迷う私の、腕を握ってそのまま小さく握る。
「……そう、だよな。分かってる。……今まで、騙しててごめん」
「そうじゃないよ……! 全然違う!」
私の手を自身の膝の上に持っていき、上から押さえつけるように力を籠めたミカが声を荒げる。
自分の頬を伝って垂れていく涙を隠すこともしない。
「男の子だって黙ってたことじゃなくて、勝手に居なくなったことを謝ってって言ってるの!」
「それは……君も分かっているだろう? もし私が男だとバレたら大変なことになることくらい。君だって偏見を持たれるかもしれないん……」
様々な学園が政治闘争の末合併したという始まりや、それぞれが水面下で派閥争いを繰り広げているのだ。トリニティの生徒の陰険さはキヴォトスで一番と言っていい。
私が男だとバレてしまったら間違いなく審問会に掛けられるだろう。私は皆を騙し続けた変態の詐欺師として裁かれ、関係の深かったミカやナギサにまであらぬ疑いが掛かってしまう。
そう説明したはずなのに、ミカは私の声を遮り、駄々をこねる子供のように言葉を紡いだ。
「うるさいっ。ひっぐ……何で、だからっていって勝手に、いなくなっちゃうの? ……ずっと、寂しかったんだよ?」
「は……? だって、君は私のことが嫌いに」
「なるわけないじゃん! ちょっと隠し事してたくらいで、嫌いになったりしないよ! 私がアテちゃんのこと大好きなの、知ってて言ってるなら凄い意地悪だからそれ!」
ぐしゃぐしゃになる顔を片手で拭いながら、それでもミカはもう片方で握った私の手に力を込めた。……それはまるで、もう2度と離したくないと言わんばかりに、ぎゅっと力を込めて。
「……そうか……そうだったのか」
私は、ずっと間違いを犯し続けていたのか。
……正面から罵声を浴びせられることを恐れて、何も言わずに彼女たちの前から勝手に消えて、思い出を断ち切ろうとしてたのか。
最低だ。……私はミカに傷をつけたまま、逃げようとしていたのだから。
そんな私に、そんな資格は無いことくらいは分かっている。だが、目の前で涙を流し続けるミカを見て、何もしないという選択肢は無かった。
「ふえっ……? あ、アテちゃん……?」
「ごめん」
ベッドから起き上がってスーツを解除。前面が開いた状態のスーツをベッドの上に置いて、傍で泣きじゃくっているミカに正面から抱き着く。
もう何度したか分からない抱擁だったが、こちらが裸足なこともあって、いつもは胸辺りにあった顔が鎖骨辺りに来ている。荒くなる吐息をくすぐったく感じながら、小さく謝罪の言葉を口にした。
「私が、私が弱かったから。君たちに嫌われたくなくて、嫌われたと知るのが怖くて、勝手に逃げたんだ」
「……うん」
どうして気づいてあげられなかったんだろう。きっと、もう少し深く考えていれば、最善の方法を考えることができたかもしれないのに。
「……出会ってちょっとした頃に、私が迷子になっちゃったの覚えてる? アテちゃんと二人で、初めてお買い物に行ったときの話」
自然と抱き寄せる力が強くなる私とは対照的に、ミカは後ろに回した手をそっと背中に添えた。
「あのとき、初めてお友達とお買い物に行ったから、こっそりプレゼントを買ってあげようって張りきっちゃったの。……馬鹿だよね。その結果迷子になっちゃうんだから」
ミカは鈴を転がしたような、透き通った美しい声で小さく笑う。
そのときのことはよく覚えている。……ミカやナギサとの楽しかった思い出は、一度たりとも忘れたことはない。
「周りには大人の人とか先輩ばっかりだったけど、道に座って泣いちゃった私を、助けてくれる人は誰も居なかった。そのとき、私だけここに一人ぼっちになっちゃったように感じたの」
「……ミカ」
「でもすぐに、アテちゃんが助けに来てくれて、それは違うんだって思えたの。そのときもアテちゃんは、不安とか安心とかが混ざっちゃって、ずっと泣いてる私を、こうやって抱きしめてくれた」
後ろに回した腕に少しだけ力を籠め、前に向けて顔を首元に埋めた。
「懐かしいなぁ……昔はあんまり身長の差も無かったから、抱き着いたらこんな感じだったっけ」
顔を上げたミカが私の瞳をジッと見上げて来る。鼻と鼻がくっつくような距離で、ミカはにっこりと笑った。
「ふふっ。でも、迷子になったのはアテちゃんだったみたい」
「……私は、その」
「っもう。ずっとそればっかりじゃん。いつものお説教好きのアテちゃんはどこに行っちゃったの?」
ミカは上手く言葉が出てこない私を揶揄い、こちらの頬に両手を伸ばし、包み込むように触ってきた。
……思えば、こうやって諭される側に立ったのは初めてだな。
「……済まない」
頬を撫でられるくすぐったさを感じながら、私は再度謝罪の言葉を口にした。
「いいよ。謝ってもらえたから許してあげる。その代わり、もう二度とこんなことしないって約束できる?」
「ああ。もちろんだ」
ミカの問いかけに2つ返事で即答する。トリニティに戻ることはできないが、それ以外で会ったり遊んだりすることは容易にできる。
今までのような関係に戻るのには、少し時間がかかるかもしれない。だが、ミカとまた人生を共に過ごせるという事実が、私の胸を高鳴らせた。
「ねえ。ちょっと体大きくなった?」
「最近遅めの成長期が来ててね。毎月1センチ弱成長してるんだ」
恐らく今着ているMark5も、Mark4も数か月すれば着れなくなるだろう。ある程度伸縮性を持たせているとはいえ、その都度体をスキャニングしてモデルを作らないと機動性が悪くなる。
「ふーん。じゃあ、これから男の子って感じの体になっていくんだ?」
「そうだな。……だから、こういう風に抱き着いたりするのも、控えた方が良いかもしれないね」
「何で?」
「何でって……そりゃあ、君は女で私は男だ。今までの様にはいかないだろう」
少し考えれば分かるだろうに。男性が居ないキヴォトスならではの価値観というものだろうか。他の例がホシノとユメだから検証のしようがない。
「ふーん。私は気にしないけどね」
「こっちが気にするんだよ。私だって男なんだ。君は自分の魅力をもう少し自覚した方が良いぞ。いくら幼馴染とは言えな」
具体的に口に出したらセクハラになるため控えさせてもらう。男だとバレたときは余裕が無かったのが逆に功を奏したが、もう一度同じ状況で平静を保てるかと言われたら確信はない。
「あははっ。私、可愛い?」
「ああ。可愛いぞ。ミカは私の天使だ」
分かりきっている癖によく言うな。私の天才的な頭脳をもってしても、ミカの容姿を褒めた回数など数え切れないぞ。
「エッチなことしたい?」
「ああ。したいz……待て。今なんて言った?」
話の流れで肯定してしまったが、引き返せないラインを越えてしまったような気がするのは勘違いだろうか。
「そ、そうなんだ……えへへ。嬉しいな。……じゃあさ」
顔を真っ赤に染め、恥ずかしそうにこちらの顔にチラチラと視線を移すミカを見れば、それが勘違いでないことは容易に分かる。
そしてその次に取った行動によって、私の予感が確信へと変わる
「……っ! ちょ、何して……!」
何と、ミカは私の手を両手で包み、そのまま自分の胸の上へと重ねてきたのだ。
焦って引き離そうとするが、私がミカに力で叶うはずもなく、押し付けられた腕はビクともしない。
引っ張ったときの反作用で手のひらがミカの胸へと沈み込む。意識しないようにしても否応なしにその感触が、手のひらから伝わってきてしまう。
「アテちゃんのえっち」
「いや、違うから。それは無理があるだろ流石に……お前っ」
何を思ったのか、ミカは更にこちらに身を寄せて押し倒してきた。ベッドの上に置いたスーツがカーテンを巻き込んで床へと落ち、仕切りとして閉じていたカーテンが外れてしまう。
体裁を保つためか何なのか、口では抵抗しているミカだが、行動が全く持って伴っていない。
「私ね、アテちゃんとならいつでもいいから。……で、でも……その、初めてだから優しくして……ね?」
「待て待て待て……! あのノスタルジックな雰囲気からどうしてこうなるんだ!?」
こいつは一体何を言っているんだ。
どこで覚えたのか艶やかな声を上げるミカに、変な雰囲気にならないように必死に抵抗する。こんな所ホシノ達に見られたらアビドスを追い出されてしまう。
「ミカ。アテネの馬鹿は起きましたか? ユメ先輩が怪我をしたので治療しにきたのですが……え?」
それを懸念して押しのけようとしていたのだが、抵抗虚しく保健室の扉がガラガラと音を立てて開いた。
「ひぃん……ヘルマちゃんのドローンが頭の上に落ちてきたの……あ、起きたんだアテネちゃん。二人とも何やってるの?」
扉を開けたのはドローンを片手に怪訝そうな顔を浮かべるホシノだった。その後ろには頭を痛そうにさすっているユメの姿も見える。
完全に見られてしまった。ミカが私をベッドに押し倒し、彼女の胸を鷲掴みにしている様子を。
「……お邪魔だったようですね。行きましょうユメ先輩」
「ええ!?」
抵抗するユメを引っ張って、保健室を後にするホシノ。
「女の敵ってやつですね。最っ低です」
「ちょ!? 違……ホシノっ!」
なんて捨て台詞を残して、こちらの返事を待たずして部屋を後にした。
去り際に強く扉を閉めた音が響き渡り、再び静寂が訪れる。
「あーあ。見られちゃった。残念っ☆」
「……ミカ」
性別を気にしなくてもよくなったためか、それとも相変わらず考えなしのミカの行動に呆れてか、自分でも驚くほど低い声が出てきた。
「あ、アテちゃん……?」
その瞬間、ミカは体をビクッと揺らし、何故かくすぐったそうに顔を歪める。そして、左手を意味もなくへその下辺りでもじもじと動かし、これから到来するであろう 責へと備えていた。
「……いや、何でもない」
このままいつも通り説教をしようと思っていたのだが、寂しい思いをさせた自分のせいだと考えるとその気も失せてしまった。
家族や友人同士の親愛を、再開した喜びなどから恋愛感情に結びつけてしまったのだろう。ずっと同性だと思っていた友人が実は異性だったみたいな展開で興奮するのは二次元の世界だけだ。
「えっと……」
肩透かしを食らった為か、困惑した様子で見下ろしてくる。
そんな可愛い私のお姫様はさておいて、彼女の背中に手を回しガッチリと固定する。
「わわわっ」
そのまま体を捩って巻き込む形でベッドの上へ持ってくる。
「疲れた」
「……え?」
再度鼻と鼻がぶつかる距離で、私は思いの丈をぶちまけた。たった1単語の短い言葉だったが、私の気持ちを全て代弁している。
時計を見る限り10分程度しか気絶していなかったみたいだし、色々落ち着いたら眠気が襲ってきた。
「昔みたいに一緒に寝よう。ほら」
「っ!」
流石に顔を見たまま眠るのは難しいため、ミカを反対に向けてその後ろから抱き着く形にする。
そのまま片手をお腹の上へと持っていき、もう片方で大きい羽の感触を楽しんだ。
「ひゃん! あ、アテちゃん!」
「好きだっただろう。羽を撫でられるの」
「そうだけど! 今は……んっ!」
昔は両手のひらくらいの大きさだったのに、今や私の腕程度の長さまで成長して……
大きくなったなミカ。こんないい子に育ってくれて、私は嬉しいよ。
「ひぃ! アテ、アテちゃん……!」
くすぐったそうに身を捩るミカを抱きしめながら、再度深い眠りへと落ちていくのであった。
Mark4
初の非携帯型スーツ。動力性能、耐久性、出力に重きを置いている戦闘用スーツ。装着したらラボにある装置で外すか、部品の一つ一つをドライバーとレンチで外さないと脱ぐことができない。羽を展開することで弾丸を媒介とした神秘を吸収。エネルギーとして貯めることができる。また、リパルサー、小型ミサイル、徹甲榴弾、EMP装置などの基本武装の他に、胸部のリアクターから強力なUNI-ビームを発射することができる。
Mark5
Mark3を改良したスーツ。Mark4で装着している2代目アークリアクターを装着しているため動力性能は高いが、装甲の薄いため出力と耐久性はそこそこ。神秘の吸収も不可能と制約も多いが、余程の相手でない限りこれで十分。スーツの前面を展開して脱ぎ、再度畳むことができる。
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