MARVEL STUDIOS 「ブルーアーカイブ」   作:MAN

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火種

 

 

 

 アビドス生徒会の仕事は楽ではありません。

 

「ぎゃはははは! おいテメェら! 金目の物は根こそぎ持ってけよ!」

 

 目の前では砂に飲み込まれて横転した自動車の上で、アサルトライフルをぶっ放すヘルメット団の姿がありました。

 そしてその下には、住民が置いて行ったであろう物品をトラックに積んでいる団員の姿も見えます。

 

「お頭ぁ! この町はまるで宝箱ですね!」

 

 所有者が逃げたとはいえ、他人の物を抵抗なく積み上げていく様子は、いつ見ても慣れるものではありません。私はリーダーであろう自動車の上に立つヘルメット団に向けて、ホルスターから抜いた拳銃の弾を撃ち込みました。

 砂の吹き荒れる音と共に銃声が鳴り響き、衝撃で落ちたリーダーが車から顔を出してこちらを睨んできます。

 

「痛ぇ!? テメェ! 何しやがる!」

 

「それはこっちのセリフです。これからここは復興予定地になるので、今すぐその金品を元あった場所に戻してきてください」

 

 なんて言っても素直に頷くわけがないので、肩にかけたショットガンを構え、チャンバーに弾が込められているかを確認します。

 

「ふざけんな! お前らやっちまえ!」

 

 案の定逆上したリーダーが指示を出し、ヘルメット団が襲い掛かってきました。

 人数はざっと15人程度。他にも回らないといけない場所は多いので、ササッと片付けちゃいましょう。

 

 

 

「うへぇ。目がチカチカします」

 

 いつもより少しだけ時間をかけてしまいました。普通のグレネードだけじゃなくて、値段の高い閃光弾をこうもポンポン使ってくるとは。略奪によってお小遣い稼ぎができた故でしょうか。

 ということで団員を全員無力化した私は、うつ伏せに倒れ伏すリーダーに銃口を向けます。

 

「ぐ……テメェ……何モンだよ……」

 

「アビドスの生徒会副会長です。治安維持は正当な権利の元行ってますので」

 

 割れたヘルメット越しにこちらを憎々しい目で見ながら、リーダーは声を荒げます。

 

「ふざけんな! 俺たちが何やってもテメェらには関係ねえだろうが!」

 

「……あなた私の話聞いてましたか? アビドスの自治区で、アビドスの生徒会が犯罪行為を取り締まるのは当たり前じゃないですか?」

 

 頭を打たれて錯乱しているのかと思って再度確認した私ですが、帰ってきたのは予想だにしない言葉でした。

 

「だから! ここは()()()()()()()()()()()()って言ってんだよ!」

 

「……はい?」

 

 何を言っているのでしょうかこの人は。ここは確かにアビドスの自治区だったはずです。

 毎回巡回するルートは地図を見て確認していますし、ここだって何回も見回った場所の一つです。間違うはずがありません。……と言うより、

 

「仮に私たちの管轄外であっても、略奪を見逃す理由にはなりませんので」

 

 セーフティーを外し、再度リーダーへと銃口を向けます。

 

「わ、悪かった! 元の場所に戻すから、撃つのだけはやめてくれ!」

 

「その言葉、嘘じゃありませんよね?」

 

「えっ……?」

 

 にっこりと笑い、私はトラックに積み上げられた荷物を見るのでした。

 

 

 

「では、がんばってくださいね」

 

「……おう」

 

 ヘルメット団の処遇をヘルマに任せ、私は学校へと戻ります。

 リーダーにはあの山のように積みあがった盗品を元の家に戻すまで、開放しないと言っておきました。もしサボって逃げ出すような真似をしたら、ヘルマが背中にリパルサーをぶち込んでくれるので問題ないでしょう。武器も取り上げたので抵抗する術もないはずです。

 

『それでは行きましょう。強制労働プロトコルを起動します♪』

 

「おい!? 分かった、分かったからその銃しまってくれ!?」

 

 校門を抜けて校舎に入ると、入口の奥へと向かって人が列をなしているのが見えました。

 その横を抜けて先へと向かうと、そこには折り畳みテーブルとパイプ椅子を広げ、書類とにらめっこをしているユメ先輩の姿がありました。

 

「ひぃぃぃん……人が多いよぅ……」

 

「お疲れ様です。午前の部はこの人たちで最後ですか?」

 

 話しかけると、ユメ先輩はまるで救世主を前にする祈り人のような、希望に満ちた表情でこちらを見つめてきました。

 

「ホジノぢゃあああん! 助けて~!」

 

 ユメ先輩が行っていたのは、自治区に転入してくる方々の書類の登録でした。

 本来なら生徒会ではなく専門の役員が居るのですが、生憎そんなところに割ける人員は居ないため、ユメ先輩が臨時でやっているということですね。

 ……仕方ありませんね。大変ということはそれだけ移住してくる人が増えているという事なので、私も手伝ってあげましょう

 

「椅子。もう一つ持ってきますね」

 

「っ! ホジノぢゃあああん!」

 

「ほら。ユメ先輩は目の前の業務に集中してください。住民の方を待たせちゃダメですよ」

 

 体育館倉庫からパイプ椅子を持ち、ユメ先輩の隣に座ります。

 

「こちらでも受付を行います。後ろの方々は2列に並んでお待ちください」

 

 書類の登録といっても、書かれている内容が正しいかを確認した後受け取るだけなので簡単な業務です。しかし、朝からずっとこのペースで相手していたとなると、ユメ先輩がひんひん言いたくなるのもよく分かります。

 

「次の方どうぞー!」

 

 2人でやれば意外とすぐに終わるもの。長蛇の列をなしていた住民の対応も、30分程度で終わらせることが出来ました。

 

「疲れた~」

 

 そう言って椅子の上で解けたように体をだらんとさせるユメ先輩。生徒会長としての威厳など等の昔に消え去っていますが、これはこれで住民からは人気のようなので良いでしょう。

 

「ありがとう! ホシノちゃん!」

 

「ええ。感謝してくださいね」

 

 素直に受け取ればいいものを、私はこうやっていつも突き放した態度を取ってしまいます。

 ですがユメ先輩は気にすることなく、にこにこと笑って立ち上がりました。

 

「お昼ご飯作ってきたんだ! ホシノちゃんの分もあるよ!」

 

「……ありがとうございます。片づけたら生徒会室で食べましょうか」

 

「うん!」

 

 折りたたみテーブルとパイプ椅子を片付けながら、私は前から気になっていたことをユメ先輩に聞きます。

 

「そういえば、アテネの奴はどこに行ったんですか。朝から姿が見えませんけど」

 

「アテネちゃんは今日はお休みだって。何でも実験中にラボを吹き飛ばしちゃったらしくて」

 

「何やってるんですかあの人は……」

 

 私たちが苦労している間、彼は悠々自適に機械を弄っていると考えるとムカつきますね。

 

「自宅からアビドスまでも遠いし、ついでにこっちにラボを移すんだって」

 

「こっちって、どこに移すつもりですか。まさか()()ですか?」

 

「そうみたいだよ!」

 

 ……はぁ。やることなすことのスケールが大きすぎますって。

 まあ、アテネの活動拠点がこっちに移動するのであれば色々助かることも多いですし、今日くらいは大目に見てあげましょう。

 

 生徒会室に戻り、ユメ先輩が作ってきたお弁当を食べます。

 

「美味しいですね。アテネにも食べさせてあげたいくらいです」

 

 昨日の時点で連絡はあったそうで、アテネの分はありませんでした。

 ユメ先輩の手料理を逃すなんて、アテネも間が悪いですね。そういうシチュエーションは男の夢でしょうに。

 

「ね! アテネちゃん痩せてるから。もっといっぱい食べないといけないのに」

 

 スーツをスムーズに着用する目的で毎日ピッタリの全身タイツを着ているため、アテネの体格は良く知っています。私から見てもかなりの痩せ形なアテネは、よくユメ先輩からもっと食べろと小言を貰っています。

 一応太りたくても太れなかっただけで、ここに来てからは標準の体形に戻りつつあると本人は言っていました。口には出さないだけで、トリニティでの生活はストレスが掛かっていたのでしょう。

 

 いつもならこの辺でアテネのお説教臭い返事が返ってくるのですが、今日は休みのためそんなことは起きません。

 ……我ながら、アテネが居る生活に大分慣れてきてしまっているようですね。一か月と少しでここまで馴染むとは驚きです。

 それを言うなら私も入学してから2か月も経っていませんし、ここまで気の置けない中になったのは、ひとえにユメ先輩ののおかげでしょうか。

 

「ねえねえホシノちゃん! こっちこっち」

 

 そんなことを考えていると、ユメ先輩はニコニコと笑顔を浮かべながら、こちらに手招きをしました。……こちらに寄れという意味でしょうか。

 

「ホシノちゃんって、アテネちゃんのことどう思ってるの?」

 

 口に入ったものを飲み込んでから身を乗り出すと、ユメ先輩は私の耳元で呟きました。

 

「……何ですか、急に」

 

 改まって何を聞いて来るのかと思いきや、ユメ先輩はそんな毒にも薬にもならない話題を投げかけてきました。

 

「えぇ~? だってアテネちゃんって、キヴォトスでは珍しい人型の男の子なんでしょ?」

 

「珍しいというか、彼以外に見たことありませんけどね」

 

 ヘイローがある時点で、キヴォトスの外から来た人じゃないことも確定してますし、突然変異とかそこら辺でしょうか。

 

「それにすっごくかっこいいし、何か思うところあるんじゃないかな~って」

 

 顔が良いことは認めます。物凄く癪ですが。結局髪の毛こそ切りませんでしたが、ポニーテールの脇から見える首筋には妙な色気がありますし。

 でも、だからといって私がアテネなんかに惚れるなんて、ユメ先輩は脳みそがお花畑すぎますよ。

 

 そうですね。私とアテネの関係は……あれ、どういうものなのでしょう? 

 

「……別に、アテネとはそう言う関係じゃありませんから」

 

「ほんと~?」

 

「おじさん臭いですよ。わざわざそういうことを聞いて来るの」

 

 ニヤニヤと笑いながら寄って来るユメ先輩の頬を押しのけながら、親戚の面倒なおじさんを相手にするような気持ちになりため息を吐く。

 

「それに、アテネにはミカが居るじゃないですか。もし仮に、万に一つもあり得ませんが、私がアテネのことが好きになったとしても、勝ち目なんてありませんよ」

 

 そんな世界線を想像するだけでめまいがしてきますが、そこで浮かんできたのは先日知り合った彼の幼馴染の少女の顔。

 

「あれは両想いですよ絶対。アテネもさっさと手を出してしまえばよいものを」

 

 全てを吹き飛ばす勢いで彼の元へ駆けつけたミカと、片や気持ち悪いほどの親バカな好意を向けるアテネ。

 保健室の一件は誤解……別に誤解でも何でもないですけど。あの後に普通に2人でくっ付いて眠っていた時は正気を疑いました。

 

「でも、アテネちゃんはホシノちゃんのこと可愛いってずっと言ってるよ?」

 

「……いや、あれは絶対妹や娘に向けた言葉ですよ。腹立たしいですけど」

 

「意外とお似合いだと思うけどな~」

 

 どうしてもこの人は私とアテネをくっつけたいみたいですね。余計なお世話も良い所です。

 

「そういうユメ先輩こそどうなんですか? 常日頃抱き着いたりして、それで何も思ってなかったらアテネが勘違いするかもしれませんよ?」

 

 私なんかよりもこの人の方が余程可能性あるじゃないですか。……ミカを見る限り、私よりユメ先輩の方が好みっぽいですし。

 

「ん~? 私、アテネちゃんのことは女の子として見てるから」

 

「……それ、アテネが聞いたら卒倒しますよ」

 

 男女とか恋愛とかとは全く別の意味で言っているようですけど、せっかく自分を偽らずに済む場所を見つけたアテネが可哀想な発言です。

 

「ふふっ、そうかもね。この話はアテネちゃんに直接聞いた方がよさそう」

 

「……ご愁傷様ですアテネ。あなたが学校サボるからこうなるんですよ」

 

 その日はなるべく距離を取って食事を済ませようと考えていると、窓から見える校庭で、こちらに向かって手を振る人の姿が見えました。

 

「聞こえるかさっきのピンク女! なんかヤベェことになってるぞ!」

 

「誰がピンク女ですか! 誤魔化してサボろうって言ったってそうはいきませんからね!」

 

 先ほど成敗したヘルメット団のリーダーが、大声を上げてこちらに呼びかけます。付きっきりで監視させていたドローンが見当たらないですね。破壊したのでしょうか? 

 ……いや、よく見れば見覚えのない傷や装備の損傷が見えますね。まさか本当に緊急事態? 

 

「違ぇよ!? ガチでヤバいんだって!」

 

 焦った様子のリーダーが叫んだ内容は、今度こそ本当に私の予想をはるかに超える内容でした。

 

「トリニティの正義実現委員会が攻めてきたんだよ! 話に応じないと攻撃するって言ってるんだ!」

 

「は?」

 

 

 

 

 

 

 

 ────────────────

 

 

 

 

 

 

 

「……それは確かな情報なんだね?」

 

 壊滅状態からある程度復旧を果たしたラボの一室で、私は作業机に座って真剣な面持ちで呟いた。

 忙しなく作業を続けていたドローンを全て止め、室内には静寂が訪れる。

 

「……はい。先ほど、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 そんな中スピーカー越しに聞こえてきたのはナギサの声。久しぶりに聞いたその声は、悔しさと申し訳なさで苦しげなものとなっていた。

 

「パテル分派とフィリウス分派が賛成。サンクトゥス分派の首長は最後まで反対していたそうですが、サンクトゥスの中でも賛成の声が多数出ているようで……私が話を聞いたときには、既に正義実現委員会が出動した後でした」

 

「ミカはこのことを知っているのかい?」

 

「いいえ。恐らく関係の深かった私とミカさんには緘口令が敷かれていたのでしょう。現在私とミカさんは、委員会による監視の元軟禁されている状態です」

 

 思っているよりも自体は深刻のようだ。

 確かに今まで私の身柄を引き渡すようにとの連絡は来ていたが、まさか大規模な軍事的圧力を行使してくるとは。

 

「……申し訳ございません。お久しぶりの連絡が、まさかこのような形になってしまうだなんて」

 

「いいや、ナギサは悪くない。……これは全て、私の撒いた種だ」

 

「……どうなさるおつもりで?」

 

 私の声色から何かを感じ取ったのだろう。ナギサは暗に下手なことはするなという意味合いを込め、質問を投げかけてきた。

 

「ミカに余計なことをするなと連絡を入れておいてくれ。……自由に対する責任を負うのが大人の仕事だからね」

 

「……また、私は何もできないのですね」

 

 電話口で何かを呟くナギサだが、聞き取ることは叶わなかった。

 

「済まないが切るぞ。時間がない」

 

「……ご武運を」

 

 通話を切り、深くため息をついて椅子にもたれかかる。

 

『どうなさるおつもりで?』

 

 H.E.R.M.Aの声に応えるように、私は椅子から立ち上がって脱いだ上着を椅子に掛ける。

 

「大規模作戦プロトコルを始動する。場所はF13から17だ」

 

『……よろしいのですか? まだ調整の段階ですが』

 

「今使わないでいつ使うんだ」

 

 爆発の余波でむき出しになったスーツ用の装着ステーションの前に立ち、髪の毛を結んで言い放つ。

 

 

 

 

 

「────ヘリキャリアを呼べ

 

 

 

 

 





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