MARVEL STUDIOS 「ブルーアーカイブ」   作:MAN

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Vol.1 アビドス復興対策委員会編
悪戯好きな少女との出会い


 

 

 

 正式にシャーレ担当顧問補佐としての役割を得てから数日。私はシャーレのオフィスにて、肩書き通り先生の仕事の補佐を行っていた。

 ……と言っても、まだ出来て幾ばくも無い組織に割り当てられる仕事など微々たるもの。それが目的のない組織ならば猶更だ。

 

「んっ……今日の仕事はこの辺にしておこうかな」

 

 現在時刻は午後3時。まだまだ日も高い位置にあるが、隣に座る先生は一度伸びをしてそう言った。

 

「お疲れ様です。明日は初めての土日ですね。何か予定など入れましたか?」

 

 回転椅子を先生に向け、そんな世間話に興じてみる。

 ちなみに今は私服姿だ。アビドスでは指定の制服を着用、つまり女装が強制されるため、このような機会は中々珍しかったりする。

 最新型のMark25はオフィスの端の方にポツンと立ち尽くしている。背の高い私が着用する都合上、全長は2メートル近くあるので、夜中にふと出くわしたら悲鳴を上げそうな威圧感を放っている。

 

「アテネもお疲れ。……そうだね、アテネに教えてもらった地域や学園を見てみようかな。特に約束事とかはしてないし」

 

 最初はスーツに戸惑っていた先生だったが、もう慣れたのか特に驚かれることもない。それどころか、脱着する様子や羽を広げた際の動きなどを見せて欲しいと目を輝かせてくれるのだ。

 アルやシロコ、エンジニア部の子たちなど、興味を持ってくれる人はそこそこいるが、男である先生とメカの良さについて語るのも中々楽しいものだ。

 

 その他にも、キヴォトスに詳しくない先生に教えたりと話す話題は尽きない。

 あの子が選んだ人間ということもあって人当たりも穏やか。昼食も私のおすすめの店で一緒に食べたり、出会ってまだ数日しか経っていないが、私と先生の仲は良好と言っていいだろう。

 

 ……だが、全くもって不満が無いかと言えば嘘になる。

 

「ならこれを着て行ってください! ゲヘナ辺りに行くなら身を守る手段は必須になりますよ?」

 

 オフィスの真ん中に青白いエネルギーバリアで囲って置かれている、先生用に制作したアイアンマンスーツを指さす。

 それと同時にバリアがゆっくりと上から消失し、スーツの前面が音を立てて開いた。

 

「これを着れば生徒の弾丸はおろか、戦車の装甲弾やヘリのミニガンにも耐えられますよ! 最初は怖いかもしれませんがHERMAによる飛行サポートが付いているので、電車なんかで移動するよりもよっぽど速く快適に移動できます!」

 

 その最高速度は何とマッハ8! 流石にキヴォトスの外から来た先生にその速度で飛行させるわけにはいかないが、それでも慣れれば戦闘機を超える速度で飛行することも可能なのだ! 

 

「アークリアクターも最新型のものを使用しているので、ヘイローを持たなくても十二分の出力を得られます! 戦車を投げ飛ばしたりだってできるんですから! それに……」

 

 つい舞い上がった私を我に返らせたのは、先生が向けて来る微笑ましそうな笑顔だった。

 

「……失礼しました。でも、私のスーツの性能は凄いんですよ?」

 

「あはは、ありがとう。でも前も言った通り、私にこれはもったいないよ」

 

 そう。先生はそう言って、頑なに私の作ったスーツを着てくれないのだ。

 

「私は生徒一人一人に向き合う先生だからね。仮に銃を向けてくる生徒がいたとしても、そうやって武力で対抗するのは良くないと思うんだ」

 

「ですが……」

 

「私の身を案じてくれてるのはよく分かるよ。でも、私にはこれがあるから大丈夫」

 

 机の上に置いたタブレット端末を掲げ、ひらひらと穏やかな笑みを浮かべる先生。

 シッテムの箱……連邦生徒会長が残した摩訶不思議道具の一つだ。その用途は多岐に渡り、サンクトゥムタワーの権限もこれで解決させたという。

 

 先生はよくこれを持ったまま眠るように目を閉じている。先生曰く、この端末の中にいるアロナという人物と話をしているそうだ。

 恐らくは端末を通して意識を電子の世界に送っているのだろうが、その実態は全くのブラックボックス。あの子が失踪してからリンから頼まれて解析を行ったが、製造会社、電源、OS、スペック、動作原理に至るまで何一つ分からなかった。

 

 そして、この端末を保有することで、銃撃や爆発から先生を守ってくれるらしいのだ。

 

「……はぁ。分かりました。ですが、そのタブレットで先生の身を守れないと判断したときは、問答無用で着用してもらいますからね。キヴォトスの治安の悪さを舐めないでください」

 

 正直眉唾な話だが、スーツを着たくないために即席で考えた嘘とは思えないし、先生がそれを言うメリットもない。

 だからそう言われたら、私はこうやって引くしかないのだ。

 

「うん。ありがとうアテネ」

 

 そう言うと先生は私の頭を優しく撫でてくる。

 私の方が背が高いため、傍から見たら中々珍妙な光景だが妙に様になっている。キヴォトスに来る前にも教職や似た職業についていたのだろうか。

 

「……私、もう頭を撫でられる歳ではないのですが」

 

 前世の年齢を含めると先生よりは明らかに上だし、そもそも高校3年生はそういう年頃でもないだろう。私はまだホシノやミカによくやってるけど。

 

「私から見ればアテネも可愛い生徒だよ。背は少し大きいかもだけど」

 

 恥ずかしさと共に案外悪くないなという感想が半々で浮かんでくる。きっとホシノもこういう気持ちで撫でられていると思うと微笑ましいね。

 ……そういえば、先生にまだアビドスの紹介をしていなかったな。

 

「そうだ、明日予定がないのであれば、アビドスに遊びに来てくださいよ。皆の紹介も兼ねて……」

 

『アテネ様。明日はミカ様とナギサ様とのお茶会の予定が入っておりますが』

 

 ……そうだった。最優先事項として登録してもらっていたのを忘れていた。

 

「なら明後日は……」

 

『明後日はホシノ様とのパトロールと、その後にユメ様や住人の方々と砂祭りの企画会議が入っております』

 

「……なるほど」

 

 先生の前で容赦なく訂正された恥ずかしさから顔が熱くなっていくことを自覚しながらも、私はそう呟くことしかできなかった。

 そんな私を見て苦笑いを浮かべる先生。

 

「あはは……予定がいっぱいで羨ましいな」

 

「……すみません」

 

 何だろうこの気持ち。感情が昂った結果空回りする経験なんて何年ぶりだろうか。前世を含めても経験が少ない感情だった。

 そんな言い知れぬ感情を胸に謝罪の言葉を口にすると、先生は手をポンと叩いて笑顔で語る。

 

「じゃあ、月曜日お邪魔しに行こうかな」

 

「良いんですか?」

 

「うん。アテネとHERMAのおかげで仕事も少ないしね」

 

 いたずらっ子のような無邪気な表情で、先生は嬉しそうに言った。

 

「分かりました。では皆におもてなしの準備をするように伝えておきます」

 

「いいよいいよ。そんなに大げさにされたら私が緊張しちゃうって」

 

「そうですか? わかりました」

 

 客人を迎え入れるのは久しぶりだ。

 先生はこう言ってるけど、しっかりアビドスの魅力を覚えて帰ってもらえるよう、みんなで頑張らないといけないね。

 

 

 

 

 

 ────────────────

 

 

 

 

 

 アテネに教えて貰った場所や、D.U.にあるおすすめの飲食店を巡る休日を終え、今は月曜日の朝。

 よく月曜日の朝は憂鬱になるという話は聞くけど、背広に腕を通している私の気分は、とても晴れやかなものだった。

 

「HERMA。ちょっといい?」

 

『おはようございます先生。はい、大丈夫ですよ』

 

 アテネが作ってくれたというスマートフォンに声を掛けると、そこからシャーレのオフィスでも何度か聞いた音声が流れてきた。

 彼が小さい頃に作ったAIだというHERMAには、こうして事務的な予定を聞いたり、機密度の低い書類の処理などを任せている。

 

 一時は出番を奪われたとアロナに泣きつかれたが、キヴォトスの情報を教えて貰ったり、シッテムの箱でしかできない仕事をやったりと、しっかりと役割分担をして許してもらった。

 

「ありがとう。アテネが何時ころ来るかとかって分かる?」

 

『アテネ様は今日は出勤なさらないそうですよ』

 

「あれ? そうなんだ」

 

 アテネは着任してから毎日面倒を見てくれていたため、居ないとなると寂しい気持ちになる。

 しかし、そこで私は数日前アテネが言っていたことを思い出した。

 

「……もしかして、何か盛大なサプライズとかの準備をしてたり?」

 

『それについてはお答えできません』

 

 もう答えを言っているようなものな気がするけど……

 

「やっぱりね。アテネの性格的にそういうのやりそうだもん」

 

 出会って数日しか経っていないけど、アテネの性格は何となく分かってきている。

 世話焼きで面倒見がよく、でも案外甘えたがりなところがある可愛らしい生徒だ。本人は一人っ子だといっていたが、それを聞くまでは年の離れた下の兄弟がいる長男だと思っていたくらいだし。

 相手のことを考えられる優しい生徒で、自分が所属しているアビドスのことが大好きなのだろう。よく生徒会の友達のことや、町の人々との話をしてくれた。

 

「アビドスへは何で向かう予定なの?」

 

『13時にヘリキャリアからクインジェットを派遣する予定でした』

 

 ……何だろうそれ。二つとも聞いたことのない名前だけど。

 

『その二点についても、案内する際に説明するとおっしゃておりました』

 

 私が聞きなれない単語に疑問符を浮かべていると、HERMAはそんな私の様子を察したのか教えてくれた。

 

「なるほどね……じゃあさ、その予定こっそり早めることってできない?」

 

『できますが……どのような理由ででしょうか?』

 

 訝し気な様子で聞いてくるHERMAに対し、私は小さく微笑んで答えた。

 

「私は生徒のありのままの姿を見たいんだ。堅苦しい歓迎会は、その後でも大丈夫でしょ?」

 

 

 

 クインジェットのお迎えを断った私は、早速D.U.からアビドスへと向かう交通機関があるとHERMAに言われたため、D.U.の中心部へと足を運んでいた。

 

『よろしかったのですか? クインジェットでのお迎えも可能でしたが』

 

「それだとアテネに出発したのバレちゃうでしょ?」

 

 アテネが管理している機体でお迎えしてもらったら、こっそり早めに出た意味が無くなってしまう。

 

『なるほど。そちらの角を左に曲がってください』

 

 HERMAの指示に従い、オフィス街一角へと入っていく。

 すると、そびえたつビルの中に、不自然なほどにポツンと空いている空間の前にたどり着いた。地面はコンクリートによって固められており、その中心に白線で丸が書かれている。

 

「……ここ?」

 

 確かに駅から近い場所ではあるが、近くに地下鉄らしき設備も見当たらないし、バス停なども見当たらない。

 しかし、私のように土地の手前で待つ人が大勢見受けられた。一体何が来るんだろうか? 

 

()()()()一歩下がってお待ちください』

 

 どこからかそんなアナウンスが聞こえてくる。言葉通り歩道側に下がると、歩道と土地の境界線上をなぞるように、地面からフェンスのようなものが上がってきた。

 上りきって高さ2メートルほどで停止すると、それを覆うように赤色のホログラムが投影される。

 

『クインジェットが到着します。離れてお待ちください』

 

「……あれ? クインジェット?」

 

 すると、突然辺りが暗くなり、空気が冷たくなるように感じた。……いや、違う。太陽が遮られたんだ。

 今日の天気は雲一つない快晴。つまり、陽の光を遮ったのは人工物ということ。

 

 そう当たりをつけて上を見上げたのだが、そこには私の予想をはるかに超える驚きの光景が広がっていた。

 

「なっ……!?」

 

 見上げると、そこには数十台の飛行機のようなものが垂直に地面へと降りてくる姿が見えた。

 規則正しく地面に降り立った飛行機……クインジェットの後方が開き、中から大勢の人々がぞろぞろと出てくる。

 

「これって……もしかして」

 

 その様子からとある結論を導き出した私は、左手に持ったHERMAに小声で尋ねた。

 

『はい。D.U.には、()()()()()()()()へと直接向かうクインジェットの着陸ステーションが置かれています。午前6時から夜中の12時まで15分に一度のペースで往来しており、運賃はアテネ様が負担しているため無料です』

 

「……思ったよりすごい子? アテネって」

 

『今更気づかれたのですか?』

 

 そんなHERMAの辛辣な言葉に、私は乾いた笑みを浮かべることしかできなかった。

 

 

 

 クインジェットの中は思ったよりも普通の電車のような雰囲気で、飛行に伴って酔うこともなく数分でアビドスへとたどり着いた。

 

『交通用クインジェットはアテネ様が改良したものとなっています。他の交通手段としてアビドス中央線という列車もありますが、ダイアの正確さと利便性からそちらを使う方は非常に減少しています』

 

「凄いなぁ……一体いくら掛かるんだろう」

 

 アビドス後に降り立った後、待っていた乗客を乗せて飛び立つ数十代のクインジェットを見て呟く。

 

『クインジェットの動力にはアークリアクターを使用しているため、燃料費の面で考えると費用はかかりません。諸々調整する必要はありますが、アテネ様のスーツの胸についているリアクターでも動作は可能です』

 

 私が無遠慮に頭を撫でていた生徒の凄さを再度実感する。まるで頭を殴られてくるかのように入ってくる情報に恐れおののいていると、一瞬強く吹いた風が私の顔を無遠慮に打ち付けた。

 

「わっ、風が強いね……」

 

『砂嵐ですね。数十年前からアビドスに頻発し、衰退の原因となった現象です』

 

 確かに資料では見たことがある。幾度となく対策に失敗した末資金難となり、放棄されたアビドスの街は今や砂で埋め尽くされているとも聞いている。

 

「えっと、じゃあこの町は比較的酷くない地域なの?」

 

 しかし、そう言われてもこの町が衰退している様には思えなかった。

 D.U.のような超高層ビルこそ建っていないが、そこそこの高さの建物が並び、人々が数多く往来する様はかなり栄えている町と言っても過言ではないだろう。

 

『いいえ。このアビドス第一都市がある地域も、他と同様に甚大な量の砂嵐が吹きます』

 

「? じゃあ何で……」

 

 この町は砂に埋もれていないんだい? と聞こうとしたそのとき、青々としたアビドスの空が、下から段々と更に濃い青へと染まっていくのが見えた。

 目の錯覚かと思い2、3度擦ってみるが、特に様子は変わらない。

 

『丁度いいですね。()()()()()()()が見れますよ』

 

「えっ……何、あれ?」

 

 濃い青は空全域を覆うように上へあがって行き、空全体をドーム状で覆うようにして止まった。

 

『キヴォトスで最も大きい半径約10キロメートルを誇る、エネルギーバリアを使用した隔壁です。アビドス高等学校……その上空に飛ぶヘリキャリアを中心として展開されており、再来月には1キロ外側の地域も覆う予定となっています』

 

「これを……砂を防ぐために作ったの?」

 

『はい。ですが同時にアビドスが侵略された際の防壁としても利用できます。戦車の砲弾程度ではびくともしません』

 

 HERMAが何やら耐えられる衝撃の上限について語っているが、その言葉は呆然と上を見上げる私の耳から抜けて行ってしまった。

 すると、私の横を自転車で駆け抜けていく、制服を着た女の子の姿が見えた。

 

 すれ違った際に一瞬見得た名札には、確かにアテネと同じくアビドスの校章が描かれていた。

 

「あ、ごめんそこの君!」

 

「ん……?」

 

 自転車を止めて振り返ったのは、灰色の髪にオオカミのような特徴的な耳をつけた、青いマフラーをつけた女子生徒。

 

「えっと、君の高校の生徒会副会長に用事があるんだけど……」

 

「アテネ? ……セールスの話は会社の窓口を通せって言えって、アテネから言われてる」

 

 スーツ姿の私を見て勘違いしたのか、女子生徒はそう言って立ち去ろうとする。

 

『シロコ様、このお方はセールスの方じゃありませんよ』

 

 そんなHERMAの声が、シロコと呼ばれた女子生徒の鞄から聞こえてきた。

 シロコは鞄からスマートフォンを取り出し、不思議そうに首を傾げている。

 

「ヘルマ。じゃあこの人は誰?」

 

『このお方は……』

 

「ああいや、大丈夫だよ。私から説明するから」

 

 流石に先生として他人に紹介させるわけにはいかないからね。それに、ここに来てから随分とペースを乱されることばかりだったし。ここは気を引き締めて行かないと! 

 

「こんにちは。シロコ……でいいのかな? 私は、先日シャーレに配属された顧問先生で、アテネにお仕事を手伝ってもらってるんだけど……」

 

 そう言うと、シロコはその形の良い目をキリっと引き締め、私の目をジッと見つめてきた。

 良かった。アテネから私が来ることは聞いているみたいだね。

 

 折角だし、シロコに案内してもらおう。

 

「なるほど。この人が、私たちからアテネを奪った張本人なんだね」

 

「ん?」

 

 そう言うとシロコは中身を全て投げ捨て、空になったバックを私の頭に被せてくる。

 

「!?」

 

 動揺する私の腕を何か……感触的にネクタイだろうか? で縛ったのち、その手を前に回して何かに縛り付けた。

 

「ん、これでよし。これからホシノ先輩の所に連れて行くから、覚悟しててね」

 

「ちょ、ええ!? 何で!?」

 

 鞄越しに聞こえてきた声によって、私の腕がかかっている場所がシロコの首だという事に気づく。

 しかし気づいたときには既に遅く、体感で分かる程凄まじい速度でシロコは自転車を走らせていった。

 

「────っ!?」

 

「しっかり捕まってないと落ちるよ」

 

 その言葉を最後に、無言で自転車を漕いでいるであろうシロコ。

 目が見えなく手も不自由な中速度を出されるのは恐ろしいもので、私は鞄越しに絶叫する声をシロコに聞かせながら、アビドス高校へと向かうのだった。

 

 

 

「ついた」

 

 そんな声と同時に立たされ、視界が晴れやかになる。

 

「っ!? はぁ……! ビックリしたぁ……」

 

「しっ、静かに」

 

 ひょっこりと私の視界の端から顔を出し、唇に人差し指を置くシロコ。

 色々と言いたいことはあったが、彼女が反対の手で指さした先の光景を見た途端、その気もすっかり失せてしまった。

 

「……んっ、むにゃ……zzz」

 

「zzz……うへぇ……」

 

「わぁ……可愛い……!」

 

 シロコが指さした先には、大きな4人掛けソファーにタンクトップ一枚で眠るアテネと、その腕の中で幸せそうに眠る、桃色の髪をした少女の姿があったのだ。

 

「アテネは今日、本当は私と一緒に自転車で登校する予定だった。運動不足だって言ってたから、私から提案して始めた習慣」

 

 しかしシロコはそれを見ても特に何も思わなかったのか、淡々とした小声で沿う言葉を紡いだ。

 

「でも先週は一回も学校に来なくて、今日はシャーレの先生をお迎えするって断って、そして今来たらこうなってた。これはつまり……」

 

「つまり……?」

 

「先生とお話する前に、まずアテネとホシノにお仕置きをしなければならない」

 

 靴を脱いでソファーの正面に置かれたテーブルの上に乗り、こちらにサムズアップしてくるシロコ。……ちょっと待って!? 何しようとしてるのこの子!? 

 

「ちょ! それはマズいんじゃ……」

 

「大丈夫。アテネはどんないたずらをしても許してくれるから」

 

「えぇ……」

 

 もう1人のホシノって子は許さないってことだよね? やめておいた方が良いんじゃ……

 そんな困惑の声が彼女に届くことはなく、シロコは思いっきりテーブルからソファーで眠っている2人の上にダイブした。

 

「ぐあっ!?」

「うへぇ!?」

 

 悶絶する声と共に2人はソファーから崩れ落ち、外側に眠っていたホシノがテーブルの角に頭を打ち付ける……うわぁ、痛そう……

 

「っ! な、何事ですか!?」

 

 後頭部を抑えながら即座に立ちあがり、テーブルの上に置いてあったハンドガンを構えて辺りを見渡すホシノ。

 そしてこちらを見ると、ホシノはセーフティーを外してこちらに構えた。

 

「敵襲! アテネ! 寝ぼけていないで早くスーツ着てきてください!」

 

「ちょ! 違う、違うって!」

 

 凄まじい気迫でこちらに銃を向けるホシノに対し、私は思わず縛られたままの両手を上げて無抵抗の意を示した。

 しかしホシノの警戒するような視線が逸れることはない。

 

「痛ぇな……何っなんだよ朝っぱらから……先生?」

 

 頭をガシガシとかきながら、珍しく荒っぽい口調でこちらを見るアテネ。

 

「ちょ、どういう状況……何で先生が縛られててホシノが銃向けてんの!? 馬鹿お前っ、とりあえず下ろせって!」

 

「放してください! この人、銃で私の頭を撃ってきたんですよ! 今も頭がジンジンして痛いんです!」

 

「頭の上を見ろ! この人はただの人間だ! それにお前を銃で撃って痛がらせられる奴なんて早々いないだろうが!」

 

 取っ組み合いの喧嘩を二人、だがホシノの力が強いのか、アテネが逸らそうとしてもびくともしない。

 そんな中、その横に立っていたシロコが、私とホシノの間に立つ。

 

「ん、ドッキリ大成功」

 

 腰に手を当て、胸を張って高らかと宣言したシロコ。それを見た私は直感的に、この学校は楽しそうなところだと強く思った。

 

 

 





 砂嵐バリアはワカンダのアレをイメージして頂ければ大体合ってます。
アテネが頑張って作りました。

 高評価、感想、ここ好き頂ける作者の励みになります。モチベは投稿頻度にも露骨に作用するので、面白いと思ったらよろしくお願いします!
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