MARVEL STUDIOS 「ブルーアーカイブ」 作:MAN
高評価、感想、ここ好き頂ける作者の励みになります。モチベは投稿頻度にも露骨に作用するので、面白いと思ったらよろしくお願いします!
「こちら芙蓉アテネ。目標の上空に到着した」
場所はアビドスの街から外れたとある廃工場。砂嵐対策バリアの範囲に入っていないためか、そこら中に砂が積もっている。
昔のアビドスは皆こんな感じだったと懐かしみながら通信を行うと、アヤネの声が返ってきた。
「承知しました。中の様子はどうですか?」
赤外線カメラを使用し、天井越しに熱源を感知する。12、14……18人か。
やけに人数が多いな。また外から不良が紛れ込んできたのか?
「東、南、北にある入口の前にそれぞれ3人。中に9人の合計18人だね」
『工場の設計データを入手いたしました。共有します』
H.E.R.M.Aが地図データをマスクのHUDに表示する。おそらくホシノたちの所にもデータが送られていることだろう。
「ユメは北の入り口から一番近い所に捕まっているね。さて、どこから突入しようか?」
「なら、一番近い入口からさっさと入った方が良いんじゃない?」
はやる気持ちを抑えながら提案するセリカ。
しかし、それに待ったをかけたのはホシノだった。
「……確かに物理的な距離は北の入り口からが一番近いですが、そこから行くにはいくつものチョークポイントを経由する必要があります」
チョークポイント……ビンの首のように構造的に狭くなっている場所は、必然的に敵の射線が集中することとなる。
「恐らく敵も北側から来ることを想定しているのでしょう。配置も不自然に多いです」
確かに、中の配置を見るとユメの見張りが1人、南と東側に2人ずつ、北側には4人という不思議な配置となっていた。
「ここは二手に分かれて、東と南から同時に攻めるべきです」
「分かりました~。どのようにして分けましょうね?」
異論はないのか、ノノミが穏やかな口調で質問する。
「制圧力の観点から私とシロコちゃん、ノノミちゃんとセリカちゃんで分けましょう。アテネは北側の入り口で、逃げようとする残党を排除してください」
「ん、良い作戦」
ホシノの指示により、とんとん拍子で作戦が決まっていく。
流石、不良の溜まり場だったアビドスを浄化し続けただけはあるね。指示が素早くて適格だ。
「砂丘の奥にランデブーポイントを設定しておく。各自準備ができしだい作戦を実行するよ」
工場から数百メートル奥に着陸地点を設定。
上空とはいえ、ずっと飛んでいるとバレる可能背があるため撤退。ホシノ達が乗るクインジェットへと合流する。
飛行音を出さないようにゆっくり飛んでいると、数分でほどしてこちらに向かってくる戦闘用クインジェットの姿があった。
コックピット……といっても操縦しているのはHERMAだけど。座っているアヤネにハンドサインを送り、そのまま天面に磁気クランプを使用して両手両足をくっつける。
「砂丘で隠れているからって、着陸するところを見られそうな場所だけど……」
遠慮がちに聞く先生の声がマスク越しに聞こえてくる。確かに、その心配はご尤もだ。
「大丈夫ですよ先生。この機体、外からは見えていないんで」
そんな先生に、私は笑いながら答えた。
機体は音を立てないようにゆっくりと工場上空へと向かっていく。
その上を通り過ぎた辺りで固定を解除。クインジェットはランデブーポイントへ、私は再度工場の北側上空へと移動する。
「準備できました。いつでも突入できます。北側での陽動をお願いできますか?」
「OK」
敷地内へとたどり着いたホシノたち。発見されないように盛大に暴れてくれと頼まれたため、リパルサーの出力を上げ地面へと向かう。
空気を切る音に気が付いたのだろう。入口を守っていたヘルメット団の1人が上を向いた。
「っ!? 奴だ! アイアンマンだ!」
上空から一直線に向かう私に、弾丸の嵐が飛んでくる。
羽を展開するの億劫なため、旋回して弾を回避。地面に降り立つと同時に両手のリパルサーで二人を吹っ飛ばした。
「チッ!? クソッ!」
もう一人が銃床で殴り掛かってくるがそれを受け止め、もう片方のリパルサーで銃を上へ吹っ飛ばす。
その勢いでしりもちをついた生徒のヘルメットを外し、掌を向けて言い放った。
「投降しろ。そうすれば衣食住だって保証してやる。アビドスは転入生を絶賛募集中だ」
心の中にトニーを憑依させ、飄々と小馬鹿にしたような態度で問いかける。
こうでもしないとアイアンマンの中身が私だとバレてしまうからね。ただでさえ2人ともこんな目立つ羽を引っさげているのだから。
「ふざけんな!」
「ああそうかい」
ヘルメット団に向けた掌……ではなく手の甲の部分から部品が分離し、彼女の両手足と口者に巻き付いて固定させる。
「なら仕方がない。H.E.R.M.A、盛大にもてなしてやれ」
『承知しました』
「っ! ────!?」
そう言って手を叩くと、クインジェットから派遣されたドローンがヘルメット団に群がって運んでいく。
空中で芋虫のように暴れるヘルメット団だったが、それによって落ちそうになった途端、無抵抗になって運ばれていった。
「北側の入り口はクリア。そっちはどうだ?」
遠くから銃声が聞こえてくる中通信を起動し、ホシノ達に話しかける。
「ちょ、今は話しかけないでください! ……っと、しつこいですね!」
「H.E.R.M.Aに支援させるか?」
「問題ありませんっ!」
どうやら予想通りお取込み中の様だった。まあ、彼女たちなら問題ないだろう。
少なくともそこらのチンピラに負けるような面子じゃない。
「すまないね先生。退屈だろうけどもうちょっと待っててくれ」
「大丈夫だけど……」
退屈であろう先生に謝罪をすると、先生は訝しげな声で呟いた。
「ん? どうした?」
「ああいや。アテネって、スーツを着ると性格変わるタイプだったりする?」
「……いや、これは……」
そういうわけじゃないんだけど……うん、失敗した。
「……失礼しました」
恥ずかしさから小さくなる声を自覚しながら、返事を待たずに無線を切断する。
ホシノたちの位置情報を確認するとすでに工場の中に入っているようで、じわじわと外側から中心部へと進行しつつあった。
「流石アビドスの精鋭たちは格が違うな」
ミレニアムのC&Cにも劣らない、見事な連携に惚れ直していると、ホシノから無線が入った。
「ユメ先輩の確保に成功しました! これから撤退します!」
「ひぃん! 怖かったよぉホシノぢゃぁぁん!」
「ああもう! 分かったので抱き着かないでください! ここは戦場ですよ!」
相変わらず仲が良いようで何よりだ。
ユメも誘拐されるのは初めてじゃないんだからそろそろ慣れても良い頃だと思うけど。
「……誘拐され慣れるってどういうことだよ」
思わずそんなツッコミを自分でしてしまった。
毎度さらわれては配管工に助けられるお姫様じゃあるまいし。
ユメが嫌がるからやってなかったけど、いい加減護衛のドローンでもつけてあげた方が良い気がして来た。
「そちらに敵の残党が向かっています! こそこそと何かを運んでいたようなので、一応注意してください!」
「了解」
無線を切り、来たる敵に備えて入口前に立つ。
……全く。毎度こうなるんだから、こいつらもいい加減諦めれば良いものを。
そんな、油断が無かったかと聞かれれば嘘になる。
今回もいつも通り、町に馴染めなかったチンピラによる質の悪いいたずらの一つだと、そう思っていたのだ。
『っ!
「……何?」
────その瞬間、工場の一角が盛大な爆発音と共に吹き飛んだ。
────────────────
「っ! 何が……!?」
クインジェットで事の成り行きを見ていた私の耳に入ってきたのは、耳をつんざく爆発音だった。
コックピットで指示を出していたアヤネの元へと向かい、状況を確認する。
「わ、分かりません! 工場内部で莫大なエネルギー反応が検知された瞬間爆発して……先生!?」
アヤネの言葉を聞くなり居てもたってもいられなくなった私は、シッテムの箱を持ってクインジェットを飛び出していた。
「私は大丈夫! アヤネは引き続きサポートをお願い!」
積もる砂に足を取られそうになりながら砂丘を上り、走って工場へと向かう。
その途中で再び爆発が起きる。一際眩しい光に目を細めていると、驚きの光景が目に入って来た。
「あれは……」
廃工場の北側の一角。そこに、機械で出来た巨大なロボットのようなものの上半身が見えた。
「アテネ……大丈夫!?」
攻撃を受けたであろうアテネに無線を繋ぐ。
すると少しして、ノイズと共に声が返ってきた。
「大丈夫……です。くそっ、何が起きたんだ……」
「でっかいロボットが現れたんだ! 今すぐそこから逃げないと!」
「ロボット……?」
衝撃を受けて意識が朦朧としているのか、アテネの反応は芳しくない。
すると、無線を繋げてきたアヤネが声を荒げた。
「再び高エネルギー反応を検知! 目標は恐らくアテネ先輩です!」
黒と灰色、所々橙色のカラーリングが施された二足歩行のロボットが唸りを上げ、頭に付いた円筒所の部品を足元に向ける。
そして円筒状の部品が白色に光ると、再び凄まじい轟音と共に爆発を起こした。
「アテネ!」
私の叫び声が虚しく砂漠に響き渡る。
あれだけの爆発……いくらアテネでも……!
そんな絶望感に打ちひしがれる中、立ち込める煙の中から青と銀色の影が飛び出してくる。
「私は大丈夫! それよりあいつを止めないと!」
良かった……! 流石アテネだ!
空中を飛びまわるアテネに向かって、巨大ロボットの肩や背中に付いた砲門から弾が飛び出す。
「ホシノ、全員をこっちに集めてくれ! このダサいロボットをぶっ壊すぞ!」
それを全て躱しながら、アテネは声を荒げて全員に呼びかけた。
「分かりました。ほら、ユメ先輩も来てください!」
「えぇ!? 私も戦うの!?」
「当たり前でしょう! 頂いた盾と拳銃は一時返却します!」
そんな騒がしいやり取りが無線越しに聞こえてくる。
その間にも、巨大ロボットは凄まじい弾幕をアテネに向かって発射し続けていた。
「あれは一体……」
「分かりません! ですが、あれは私のスーツと
そんな私の呟きに返したのはアテネ。口調こそいつも通りだが、その声色には焦りが含まれていた。
「同じ技術……まさか!?」
私にはその言葉の意味を理解することは出来なかったが、付き合いが長いであろうホシノは何かに気が付いたようだった。
「ああ。
「ということは……」
ホシノの呟きに応えるように、H.E.R.M.Aの機械音声がインカムに流れてくる。
『照合完了いたしました。2年前、ビナーによって墜落させられたヘリキャリアに搭載されていたもので間違いありません』
私にはそれが何を意味するのか分からなかったが、アテネがあれだけ焦っている時点でかなりヤバい代物なのは容易に想像がつく。
「H.E.R.M.A! あるだけ全部のドローンを持ってきてくれ! メモリリソースを全て注ぎ込んでも構わない!」
『承知しました』
そうこうしているうちに、ロボットの近くまでたどり着く。
眼前には、踏みつぶそうとするロボットの足を避けながら、銃撃戦を繰り広げるホシノたちの姿があった。
「なっ、正気ですか! アヤネちゃん1人じゃ荷が重すぎますよ!」
指示とサポートを同時に行うのは不可能だと声を荒げるホシノ。
「大丈夫。私たちには優秀な指揮官様がついているからね」
しかし、アテネは動じることなく、毅然とした態度で言い放った。
「先生」
「……なんだい?」
私の名を呼び、アテネは一呼吸おいて問いかけてきた。
「サンクトゥムタワーを奪取したその手腕、見せていただいてもよろしいですか?」
その言葉を聞いて懐に仕舞ったタブレット端末……シッテムの箱を取り出す。
『やっと出番が来たみたいですね! 待ちくたびれましたよ!』
一面の海が見える、壊れかけの教室の隅っこで、青い髪の少女が意気揚々と立ち上がる。
……どうやら、随分と待たせてしまったみたいだね。
「ああ。任せて」
シッテムの箱起動し、私は『お仕事』を始める準備をするのであった。
いつも感想、高評価ありがとうございます。すぐに返信はできていませんが、全てしっかり読ませていただいています。