MARVEL STUDIOS 「ブルーアーカイブ」 作:MAN
高評価、感想、ここ好き頂ける作者の励みになります。モチベは投稿頻度にも露骨に作用するので、面白いと思ったらよろしくお願いします!
「再び高エネルギー反応! 攻撃、来ます!」
「ホシノとユメでそれぞれ足元に散開! シロコたちは攻撃を止めて建物に隠れて!」
アヤネと先生の声がマスクの中に響き渡る。モニターの奥には、再度主砲にエネルギーを貯めて発射の準備をするロボットの姿があった。
「アテネ!」
「分かってます!」
指示を聞く前にロボットの目の前に飛び立ち注意を引く。
空中で動きを一瞬止め発射を誘い再度加速する。その瞬間、ほんの数秒前まで居た場所に私1人を容易に飲み込めるであろう大きさの、光の柱が通り過ぎて行った。
「ナイス連携! 今のうちに行くんだ!」
先生のかけ声によって、全員が一斉に射撃を始める。
最初は先生が指示をすることに対して懐疑的だったホシノも、やりやすそうに前線で自由に戦っている。
集中的に狙っていた左足の関節部分が煙を上げて爆発し、ロボットはバランスを崩してその場に片膝をついた。
「凄い……ここまでスムーズに……」
クインジェットから支援をしてくれているアヤネが驚いたように呟いている。
事前に高い指揮能力を持つと知っていた私ですら驚いているんだ。初めての彼女たちが受ける衝撃は相当なものだろう。
先生は戦闘開始直後に私の熱源探知により、内部で人が操作していないことを把握。その後に最も危険な主砲による攻撃には、発射後数十秒のクールタイムが必要ということを見抜いた。
操作系統が無人……つまり最も近いターゲットを狙うという特性を利用し、アークリアクターの動力を使用する、主砲以外の攻撃はユメとホシノに。角度、爆発範囲的に足元は狙えないという当たりを付けた先生は、チャージが行われた段階で2人をロボットの足元に移動させることで、ターゲットを私に限定させるという作戦を見事に実行させている。
「深追いはしないで! 次の攻撃が来るよ!」
簡潔で分かりやすい指示もそうだが、特筆すべき点はその分析能力の高さだろう。
私の情報があったとはいえ、命令系統の弱点や物理的な死角まで一瞬で見抜いたのだから。
再度攻撃を躱すことに成功したが、遮蔽として利用していた工場の跡地が跡形もなく吹き飛んだ。食らっても死にはしないだろうが相当痛いのは確実だ。
アークリアクターが凄いのはもちろんなのだが、よくもまあヘリキャリア用のリアクターを兵器に落とし込めたものだ。生成されるエネルギーの効率を落とさずに変換するのもそうだし、数十秒毎とはいえオーバーヒートせずに連射できる耐久性もそうだ。
……間違いなく大きな、それも兵器開発に長けた集団の仕業だな。
「アテネ!」
ホシノの声で上を向くと、ロボットの肩に取り付けられていた機関砲がこちらを向いている事に気が付いた。それと同時に、ミニガンのような砲門が回転し始める。
咄嗟に転がるようにしてその場を離れると、先ほどまでいた場所に弾丸の嵐が降り注いだ。
「っぶね」
「戦闘中に考え事とは余裕ですね!」
「悪い」
隣に降り立つと、ホシノは左手をこちらに差し出してきた。
「どうせ使わないのでしょう? ユメ先輩に返しちゃったので、あの盾貸してください」
そうだった、完全に忘れてた。
左手を握って腕を外側に真っ直ぐ突き出すと、背中部分の装甲が機械的な音を立てて展開。腕を伝って来た丸形の小さな盾を中心に、青いエネルギーバリアが展開された。
起動することを確認し、再度バリアを切ってホシノに投げ渡す。
「バッテリーだと10分しか持たないからな」
「余裕です。それまでに方を付けますよ」
左手に盾、右手にショットガンとお馴染みの戦闘フォームに切り替えたホシノ。
「おう」
シロコたち後方班が隠れられる場所も減ってきた。相手の消耗もかなり激しいだろうし、そろそろ決着がつく頃合いだろう。
「背面にあるリアクターとの接続部を狙うんだ! 恐らくそこを壊せば動作は止まる!」
背負うようにしてアークリアクターが背中に搭載されている。わざわざ動力源を外側に出す理由はないので、恐らく小型化するのに失敗したということだろう。見たところヘリキャリアに積んでいるものと全く同じ大きさなことからも伺える。
そして姿勢が低くなったことよって、弱点であろう部分を直接狙うことができるようになった。
「ユメ先輩、ちょっと背中借りるね」
「う、うん! 任せて!」
シロコが盾を持つユメの背中に隠れ、そこからドローンを立ち上げる。
私が改良しプレゼントしたドローンは、アビドス中に飛び交っている建築用ドローンとは違い特別製で、かなり性能が高く設計されている。
盗難の可能性を考慮して他のドローンには搭載していないのだが、彼女のものは私のスーツと同じフルサイズのアークリアクターを搭載している。
「EMPは使うなよ! 誤作動を起こして爆発でもされたら厄介だ!」
「分かってる」
武装に関しても機関銃、リパルサー、小型ミサイル、磁器接着式テーザーガン、EMPパルスなど選び放題だ。
シロコはお気に入りの小型ミサイルを選んだようで、次々と発射されるミサイルがロボットの背中を爆破している。
「セリカ、そろそろバイトの時間じゃないのか?」
「キャンセルしたに決まってるでしょ! 今更帰れっていうわけ!?」
そんな場違いな質問をされたセリカが声を荒げる。
借金を返済するためにバイトを始めてくれたそうだが、不正請求分の返済と適正な利子に戻されて約2年、既に借金は返済し終えている。
どうやら知らずにバイトを始めてしまったようだが、今更辞めるわけにはいかないとのことで、自分の為に使ってもらっている。アビドス生徒会の中でアルバイトをしているのはセリカだけだ。
最近は新しいスコープを買ったと大層喜んでいた。しっかりと健全な使い方をしているようで何よりである。
……女子高生がライフルのスコープをバイト代で買うということに違和感を覚えない辺り、私もかなりキヴォトスに染まってきているみたいだね。
「冗談だ」
「っもう! ムカつく!」
手に持った銃を上下に振り怒りを表現するセリカ。その可愛らしい仕草はアビドス生徒会の末っ子ポジションのなに恥じないものだ。
リアクションが良いとついイジリたくなってしまうのは私の悪い癖だな。
「これが終わったら大将のところに食べに行こうか。ドタキャンした謝罪も兼ねてね」
「もちろん奢ってくれるんでしょうね!」
「いつもそうしてるだろう?」
「やった!」
よし。これでからかった部分の清算はできたかな。
……こうやって困ったら金で解決するのも、前世譲りの悪い癖かもしれないけど。
そんなことを思っていると、煮えを切らしたホシノが弾丸の雨を潜り抜けてロボットの元へと向かっていった。
「アテネ!」
ご指名が入ったためその横に並ぶようにで飛ぶ。
するとホシノは私の背中の上に飛び乗り、背中のリパルサーで火傷をしないように首の後ろに跨った。
そのまま体を上に起こして肩車のような状態になり、ロボットの真上へと向かう。
「ワルキューレの騎行をご所望で?」
「ええ! お願いします!」
予想が当たっていたようなので背中の装甲を開くと、中から銀色の短い棒が飛び出してきた。
棒を取り出して一度上下に振るホシノ。すると短かった30センチメートルほどだった棒が一気に伸び、私の身長よりも少し長い程度の槍に変わった。
「っとと、相変わらず長いですね! もうちょっと短くした方が良いと思いますよ!」
取り回しがしにくいのか、私の足や腕に数回ぶつけながら文句を言ってくる。
「私用だから大きいんだよ」
「その言葉、覚えておきますよ!」
そんなおっかないことを言って背中を飛び降りたホシノ。
真下に立つロボットに向け槍を突き立てる。
「ヴァルキリーは馬から飛び降りたりしないと思いますが! っ!」
金属を突き抜ける音と共に槍がリアクターとの結合部に突き刺さり、左手に装着した盾を思いっきり叩きつけた。
凄まじい轟音が鳴り響き、背中の装甲にヒビが入る。
「はあぁぁぁぁあああ!」
到底人が打ち付けているとは思えない、まるで何かが爆発するような音とともに装甲が破壊される。
むき出しになった配線を見て、ホシノは槍を掴む手を離した。
「っとと。相変わらず無茶するなお前は」
地面に真っ逆さまに落ちるホシノを抱きしめ皮肉を言う。
「きっとあなたに似たんですよ。……シロコちゃん!」
「ん、任せて」
そこに再度シロコのドローンによるミサイルが飛んでくる。
数十回の着弾音と共に、ロボットは完全に機能を停止したのか、大きな音と共にその場に倒れ込んだ。
「流石私の後輩。まさか怪我なしで勝っちゃうとはね」
「私たちの、でしょう?」
腕に抱え込まれたままのホシノがこちらを向き、得意げな笑みを浮かべる。
「そうだな……だが……」
地面に降り立ちマスクを収納する。スーツを脱いで折れ曲がったスカートを直し、倒れ伏したロボットの元へと歩いていく。
少し遅れてユメたちもこちらに駆け寄ってきた。
「はぁ……疲れたよ~ 運動したのなんて久しぶりだし……」
「おじさん臭いですよユメ先輩」
そんな掛け合いが聞こえる中、ロボットの背に付いたリアクターの状態を確認する。
……なるほど。やっぱりな。
「アヤネ。悪いんだけど大至急こっちまで迎えに来てくれない?」
「え? 分かりました」
ほっと一息ついているであろうアヤネに声をかける。それから間もなくして、砂丘の奥からクインジェットが近くに降りて来た。
「よし。じゃあみんなそれに乗って、一緒にアビドスに帰ろうか」
「……えっと、もう終わったんだし、そんなに急がなくても良いんじゃない?」
不思議そうに聞いてくる先生。他の皆も口にこそ出さないが同じ疑問を抱いているようだ。
そんな先生に対して苦笑いを浮かべ、彼らの後ろから飛んでくる幾千もの小さな影を指さして答える。
「ちょっとヤバい事態になっちゃって。早くしないと
「巻き込まれる……?」
セリカがそう呟いた直後、ロボットの装甲がどんどんと赤熱し始めた。
「なっ!? こ、これヤバいんじゃないの!?」
「うん。これ多分爆発する」
明らかに異常な事態だと狼狽えるセリカにあっけらかんとした態度で応える。
「ヤバいじゃないの!? 早く逃げないと!」
「そう。だからさっさと乗った乗った」
全員が乗り込んだのを確認した後、コックピットに座ってハッチを閉める。
「HERMA、頼んだよ」
『承知しました』
コックピットに設置されたモニターには、おびただしい数のドローンがロボットに群がる様子が映されている。
「……なるほど。わざわざヘルマにドローンを運ばせたのはこれが理由でしたか」
「これは……まさか……!」
アヤネは段々と浮き上がるロボットを見て、口元に手をやって驚きの声を上げた。後ろで見ていた先生たちも同様だ。
「一目見て無理やりリアクターを搭載したんだなってのは分かってたからね。接続を切られて行き場を失ったエネルギーがどうなるのかは、何となく予想がつくでしょ?」
スーツを含め私の製品に使われているアークリアクターは、過度な負荷やオーバーヒートが起きうる場合には安全装置がはたらくように設計されている。ヘリキャリアに搭載されているものも同様だ。
「空中で爆破さえしちゃえば跡形もなく消えてなくなるだろうし、仮に破片が落ちてきても下には誰も居ないから大丈夫」
その瞬間、上空から凄まじく鳴り響く爆発音と、それによって吹いた爆風が機体を揺らした。
ヘルメット団は既に残りのドローンによって、今頃ヴァルキューレのアビドス派出所の前で簀巻きにされて放置されている頃だろうか。
「そっか。万が一のために私たちを避難させてくれたんだね」
「はい。……まあ、それだけじゃないんですけど」
コックピットにあるボタンを押し、ステルスモードを起動させる。これでこの機体が周りから見られることは無くなった。
「? 他に理由があるんですか?」
ホシノどこか気まずそうに呟いた私に対し、首を傾げてそう質問してきた。
「……もし、爆発の中心地に私達がいたと知られたら、あらぬ誤解を生むと思ってね」
「い、隠蔽するってこと!?」
その端正な顔を引きつらせて声を荒げるセリカ。
「人聞き悪いこと言わないでくれよ。そもそも私たち本当に関係ないんだから」
純粋なこの子にはまだ大人の汚いところを知ってほしくないが、まあいつかはこういう事もしなければならないんだし、ちょうどいいタイミング……と言うことにしておこう。
「だとしても……住民の人たちにはどう説明するつもりなの?」
「んー……」
説明も何もなぁ……あれだけ大規模な爆発。何を言っても勘繰られそうだけど。
エデン条約前でキヴォトスがピリ付いている中、トリニティと関係が深いアビドスにそんな疑いがかかってみろ。ナギサの胃が死ぬこと間違いなしだ。
「……まあ、それはおいおい考えるとして。紫関の大将のところにドタキャンしたことを謝罪に行かないと」
「流すな! 絶対順番逆でしょうが!?」
セリカがコックピットに座る私の肩を掴み前後に揺らす。
────忙しなく揺れる視界の端に一瞬映った、苦笑いを浮かべる先生の姿が印象的だった。
忙しない1日を終えた夜。D.U.郊外にある自宅へと帰ってきた。
庭に降り立ってスーツを脱ぎ、玄関の扉を開ける。
……流石に今日は疲れたな。先生にアビドスを紹介するって話も後日になっちゃったし。
記者会見の準備もしないといけないと考えると憂鬱になってくる。
「……ただいま~」
そんなことを思いながら声を出したら、思いのほか間抜けな言葉が出てきてしまった。
気恥ずかしさを感じながら靴を脱ぎ、制服のネクタイを緩める。……
「あら? 随分とお疲れのようですね」
そんな私を出迎えてくれたのは、エプロン姿のフミカだった。
小走りでこちらにかけ寄り、私が脱いだ制服を持って腕にかける。
「ありがとう」
その板についた所作に感心しながら礼を言うと、フミカはにっこりと笑った。
「ええ。食事の準備はできていますが、先にお風呂に入られますか?」
「いいや。先に食べるよ」
このまま風呂に入ったら浴槽で寝そうだし。せっかく作ってくれたんだから暖かいうちに食べたい。
「そうですか。では準備しますね」
嬉しそうに笑みを浮かべ、フミカは小走りでリビングへと向かっていった。
横開きの扉が閉まり、その姿が完全に見えなくなったタイミングでスマートフォンを取り出す。
「HERMA。例の件の解析は済んだか?」
奥にいるフミカに聞こえないように小声で呼びかける。
『はい。復元した映像を再生しますか?』
横向きにしたスマートフォンから再生されたのは、とある観光用クインジェットの監視カメラの映像。
『────ほ、本当にこれで良いのよね!? アテネにバレたりしないわよね!』
『……分かんない。でも、やるしかないんでしょう?』
『そ、そうだけど……そうね! ここまで来たなら派手にやりましょう! 依頼を必ず遂行するのが、私たちのモットーなのだからっ!』
『あはは! さっすがアルちゃん! アテネとホシノちゃんを敵に回す覚悟はもうできてるんだ?』
『そ、それは……』
『派手に……ば、爆発させればいいってことですか?』
『違うわよ!?』
「……何してんだこいつら」
カメラに映っていたのは何とも予想外。お得意様でもある便利屋68の子たちだった。
まさかの身内による犯行とは予想外だったが、発言の内容からして
「今後セキュリティシステムは別口で用意した方がよさそうだな。まさかドローンを動かしている間に盗まれるとは」
『……申し訳ございません』
「いいや。どちらにせよあの状況じゃ仕方がない」
アルが言っていた『依頼』という言葉から察するに、彼女たちを雇ったクライアントは事前にクインジェットを盗む依頼をしていたのは確実。
正体がバレる危険性を考慮して便利屋を雇うほどの周到な人物が、クインジェットのセキュリティの強さを理解していない訳がない。つまり、あのタイミングでアルたちが盗み出せたのは偶然ではないということ。
そして、ヘリキャリアのリアクターを軍事転用した黒幕と、リアクターが搭載されたクインジェットを盗む依頼をした依頼人。
どうにも、私にはこの二者が無関係だとは思えなかった。
「……厄介な相手に目をつけられたな」
『この件は内密にしておきますか?』
「ああ。クインジェットが1台盗まれた程度では誰も気づかないだろうし」
……先生にだけは相談するべきだな。今まで私が隠し事をし続けて上手くいった試しはないんだし。
「アテネ?」
「ああごめん、すぐ行くよ」
いつまでたっても来ない私の様子を見に来たのか、フミカが扉から顔をのぞかせた。
そんな彼女に謝罪した後、手に持ったスマートフォンをポケットにしまってリビングへと向かうのだった。
いつも感想、高評価ありがとうございます。すぐに返信はできていませんが、全てしっかり読ませていただいています。