MARVEL STUDIOS 「ブルーアーカイブ」   作:MAN

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 ※ちょっとエッチな展開になります。
 コハルちゃんと愉快なお仲間さんたちは回れ右でよろしくお願いします。


ARE YOU MAN!?

 

 

 

「ミカ!? お前っ、どこから入ってきた!? H.E.R.M.A! セキュリティはどうしたぁ!?」

 

「ヘルマちゃんが開けてくれたんだよ? 私は開けないと扉を吹っ飛ばしちゃうぞって脅しただけっ」

 

 それでわざわざセキュリティを解除したのか!? 私がお前に家番を任せている理由を考えろ!? 

 

『……ここで騒ぎを起こした場合、かえって面倒な事態になると判断いたしました。それに、アテネ様はミカ様を傷つけることを良しとしないでしょう?』

 

「そういうこと! 今まで一度もお風呂もプールも一緒に入ってこなかったし、そんなの寂しいじゃん? 15歳になったんだし、大人の階段上っちゃおーってことで!」

 

 酒も飲めないケツの青い子供が何を言っているんだ! 

 跨って入ろうとするミカの肩を、必死に両手で押ようとするがびくともしない。クソッ……せめてタオルで隠すとかしろよ!? 

 

「君はもっと恥じらいを持て! ……くっ、湯船に入って来るな!」

 

「いいじゃん、こんなに大きいお風呂なんだから」

 

 上から押さえつけられるようにして段々とミカが体を寄せて来る。

 こちらは濁り湯で体を辛うじて隠している形になっているため、立ち上がることも叶わない。

 

「これは私専用の湯船だ! 君が暴れるための射撃演習場でも、サンドバッグでもないぞ馬鹿力! お前が昔ラボに隕石をブチ落としたこと、まだ忘れてないからな!」

 

 銃弾に神秘を込めて威力を上げるのはまだしも、隕石落としに関しては一体どういう原理なんだよ!? 

 

「ひど~い。そういう意地悪なこというアテちゃんには、お仕置きしちゃうよ?」

 

 キヴォトスでもトップクラスの神秘とパワーを持つミカに、体が男なだけの一般生徒の私が勝てるはずもなく、私はお仕置きという名目で湯船の中に思いっきり顔を沈められてしまった。

 

「むぐっ!? ……んんっ! ……ぷはっ!」

 

 突然の行動に水を鼻からモロに吸ってしまい、ごぼごぼと大きな気泡が頬を掠めていく。

 数秒ほどで力が弱まったため顔を上げると、ミカは私の膝の間にすっぽりと体を納め、目と鼻の先でいたずらっ子の様に笑っていた。

 

「良い湯加減~流石ヘルマちゃん。私の付き人ちゃんより優秀だね!」

 

『お褒めに預かり光栄です、ミカ様』

 

 正面から抱き着くように体を寄せ、私の背中に手を回してぎゅっと抱き寄せるミカ。私が寝転びながら沈んでも余裕のある湯船のためか、スペースにはまだまだ余裕がある。

 無駄にデカく改造した湯船に後悔の念を抱きながら、真っ直ぐ目を見てミカに語り掛けた。

 

「アテちゃんぜんぜん■■■ないんだね」

 

 こいつはデリカシーを母体の中に置いてきたのか? 私が本当に女だったら憤慨しているぞ。

 

「頼むよミカ、今すぐ上がってくれ。何も君が嫌いでやってるわけじゃないんだから」

 

「……やだ」

 

 駄々をこねるように私の首元に顔を埋め、小さく呟く。

 

「だって、私アテちゃんのこと、何にも知らないんだもん」

 

 そんなことないと思うけど。男だという事実や、それに繋がりうる情報に関しては徹底的に閉ざしているが、ミカとナギサに関しては素で接しているつもりなんだが……長年隠し事をされて気分が悪いのも事実か。

 

「……実は体に昔怪我をしたときの傷痕があるんだよ。あまり人に見せたくないんだ」

 

 だが、それも全部君たちの為なんだ。もしこの情報がどこかから漏れたら、私と関係の深い君たちまで糾弾されかねない。

 汚い大人の嘘で誤魔化す私を許してくれとは言わない。だが納得はしてほしい。

 

 ミカに罪悪感を背負わせるような返答をした事実に自嘲しながら、小さく笑ってミカの目を見つめる。

 目が合ったミカは一瞬驚いたように目を開くと、同じように小さく微笑んで見つめ返してきた。

 

「大丈夫だよ。私は、どんなアテちゃんでも受け入れるから」

 

 そう言って、私の内ももに手を添えて、小さくなぞるように上へ動かす……っ! 待て待て待て!? 

 

「落ち着け!? 自分が何を言っているのか理解しているのか!? 聞く人が聞けば危ない発言だぞ!」

 

「私は凄い冷静だよ。私はアテちゃんのこと、実の家族だと思ってるし。家族なら隠しごとは無しでしょ?」

 

 駄目だこいつ、マジで聞く耳を持っていない。

 私の決死の抵抗も虚しく、ミカの手はどんどんと上へ上へと昇っていく。分かってはいたが、両手で押さえつけても全く止められていないという事実に、男としてのプライドが引き裂かれていくのを感じる。

 

「その情動的で真っ直ぐな所は、君の良い所でもあり悪い所でもあると前に言ったよな!?」

 

 ……いや待てよ? 流石のミカもデリケートな部分は触ってこないんじゃないか? うん、そうに決まってる。

 よし。つまり私がすべき最善の策は、このまま彼女の気が済むまで足やお腹を触らせることだ。私の尊厳なんてものは等の昔にスクラップにされているのだ、今更気にすることは何もない。

 

 ……そうしよう、うん。それでいいはずだ────

 

 

 

「ひゃんっ!?」

 

「……?」

 

 ミカの細い指先が、私の■■の■に■■■。

 ……か、■■っただけだ。バレてない……はず。

 

「んぎっ!?」

 

「……ッ!? こ、……なんっ……これっ……」

 

 途端に茹でダコの様に顔を真っ赤に染めたミカが、■■った手で私の■■をがっちりと■って■■を確かめる。

 ■られた■■がジンジンと痛に、額から脂汗が出て来る。彼女の力で■られて、潰れなかっただけマシか。

 

「えっ、アテちゃん……()? ひゃっ!?」

 

 ■■■■と繰り返すように手を■りったり■したりしながら、ミカはぐるぐると目を回している。

 居心地が悪いどころの話じゃないため、その手首を上から掴み、もう片方の手を頬に添えてこちらを向かせた。

 

「……とりあえず、その手を離してくれないか? ……ミカ?」

 

きゅぅっ……」

 

 ……気絶してる。

 

 

 

 

 

 ────────────────

 

 

 

 

 

「んっ……」

 

 目が覚めたとき一番最初に目に入ったのは、よく遊びに来ていたアテちゃんの部屋……その寝室だった。

 部屋の温度は適切な温度に保たれているみたいで、布団を剥がしてベッドから起き上がる。すると、下着を付けずにそのままパジャマを着ていることに気が付いた。

 

「……あれ? 私……」

 

『目が覚めましたか』

 

「わっ! ……ヘルマちゃん」

 

 寝室に鳴り響く音声にびっくりして体を揺らすが、それが聞きなれた声であることに気が付いてほっと息をつく私。

 

『ご洋服については申し訳ございません。アテネ様が着せるのを恥ずかしがったため、ミカ様が宿泊なさる際に使っていたものを、そのまま使用させていただきました』

 

 確かにこのパジャマは私がアテちゃんの部屋に泊まるときに、一々持ってくるのがめんどくさいからって置いておいてもらったものだ。化粧水とかをまとめてバックに入れて持って行ったときの、アテちゃんの呆れた顔は今でも覚えてるもん。……って、

 

「あ、アテちゃんは!? 私っ、その……」

 

 目が覚めてきて、私がさっきまで何をしていたのかを鮮明に思い出した。抱きしめたときの体の硬さや……その、あれを触ってしまったときの感触なども含めて、色々と。

 自分の顔に熱が溜まっていくのを自覚しながら、私はヘルマちゃんにアテちゃんの居場所を聞いた。……色々と話したいことはあったけど、まず最初はアテちゃんにごめんなさいって言いたかったから。

 

『……それに関して、アテナ様から伝言を預かっています。再生しますか?』

 

「伝言……? ……うん。お願い」

 

 伝言という仰々しい言い方、ヘルマちゃんのどこか申し訳なさそうな口調から、嫌な予感が私の中で駆け巡る。

 私が目を覚ましてからそこそこ時間が経っているにも関わらず、アテちゃんが様子を見に来なかったのも、含めてだ。いつものアテちゃんだったら、私が起きるまでずっとベッドの横で待っててくれるもん。

 

 ……やっぱり怒らせちゃったのかな。

 

『……再生します』

 

 ベッドに座ってぼーっと壁を見つめる私の正面に来るように、ホログラムの映像が映される。そこにはお風呂上りなのに何故か外出用の服を着たアテちゃんが、ソファに座ってこちらを見つめていた。

 映像でもアテちゃんの姿を見れてほっとする私だったけど、その感情は直ぐに消えてしまった。先輩後輩問わずトリニティの子から人気だった、アテちゃんのキリっとした、凛々しい表情がどこにも無かったからだ。疲れていそうな、辛そうなアテちゃんの表情を見ると、私まで胸が詰まるような感覚になってくる。

 

『────おはようミカ。この映像を見ているということは、無事目が覚めたんだね。急に倒れるんだからびっくりしたよ』

 

 いつもなら開口一番、迷惑をかけた私に対する皮肉が飛んでくるだけど、アテちゃんはとても穏やかな口調で語り掛けてきた。

 小さく微笑みながら心配してくれたアテちゃんだったが、次の瞬間苦虫を嚙み潰したように口元を歪めた。

 

 ……やめてよ。何でそんな顔するの? 私、どこも怪我とかしてないよ? 

 

『……まずは謝らせてくれ。君も知っての通りだと思うが、実は私は男だったんだ。騙すつもりは無かったんだが……いや、そうだな────クソッ。H.E.R.M.A、ここはカットしてくれ』

 

「これ……」

 

『ああ、申し訳ございません。切り取る場所を間違えてしまいました』

 

 そこから映像が切り替わり、再びソファに座ったアテちゃんの映像が映し出される。先ほどと違うのは、画面の端に映るサイドテーブルに、半分ほど水が注がれたコップが移っていることくらい。

 

『9年間君を騙すような真似をして、本当に済まなかった。私の身を守るため、君たちに男だという事実を隠して接していた』

 

「何で……」

 

 謝るのは勝手にお風呂場に入った私の方なのに、アテちゃんは何も悪くないのに……

 そんな不満を胸の内に抱えても、映像は止まることはなく無慈悲に続く。

 

『変態と罵ってくれても構わない。神に誓って邪な意図は無かったといえるが……ずっと嘘を吐き続けた人間の言葉なんて、易々と信じられるはずがないだろうしね』

 

「違うよ……私はそんなこと思ってないもん……!」

 

『だが、どうかこの事実は周りの生徒には隠し通してほしい。芙蓉アテネが実は男だったなんてことがバレれば、同じパテル分派首長候補の君の評判や、ナギサのキャリアにも大きく響くことにな────』

 

「もういい止めて! 直接アテちゃんと話すから!」 

 

 アテちゃんは何もわかってない。確かに男の子だと分かったときは凄いびっくりしたし、今もくっついたときの感覚とかが色々鮮明に残っててドキドキしてるけど、そんな顔して謝られるとこっちまで苦しいよ。

 

『映像を最後まで見ることを推奨します』

 

 寝室を飛び出し、ずかずかと廊下を歩く私に、ヘルマちゃんが声をかけて来る。そもそも直接会って話せばいいのに、何で映像なんか回りくどい方法で話すの? 成績優秀な癖してホントこういう所空気読めないんだから! 

 

「ラボの鍵を開けてヘルマちゃん! 開けないとほんとに扉蹴り飛ばすから」

 

『……承知しました』

 

 防犯目的のために多少頑丈に作られてるって聞いたけど、そんなの私にとっては関係ない。

 ヘルマちゃんも私が本気だということを悟ったのだろう。ガチャという大きな音を立てて、金属の枠で覆われた扉がのロックが解除された。

 

『ミカ様』

 

「何? もう入って良いんでしょ?」

 

『……決して、冷静さを欠いてはいけません。落ち着いて、現実を受け止めてください』

 

「意味わかんない。私がするのは、馬鹿なアテちゃんとお話しすることだけ……だ────っ、え?」

 

 速足で扉を抜け、辺りを見渡したとき、私は呼吸の仕方を忘れてしまったのかと思った。

 そこにあったのは……いや、()()()()()()()()()()という方が正しいのか。

 勝手に入るたびに小言を言われて、ついには何も言われなくなるほどに、私が見慣れた部屋はきっとここじゃないのか。そう錯覚してしまう。

 

 だって、そこにあるはずだった物が、何ひとつとして残っていなかったのだから。

 

「何……で? これ……」

 

 全身の血の気が引いたような錯覚と共に、その場に座り込んでしまう。

 

 そこら中に転がっていたアテちゃんが作った機械も、

 

 洗濯した後に山積みにされて、いつも私とナギちゃんで皺にならないようクローゼットにしまっていたお洋服も、

 

 乱雑に置かれていたお菓子の袋やジュースの缶も、

 

 机の上に大事に置いてあった、3人で撮った写真を飾っていた写真立てすらも、

 

 

 

 ────何も、何ひとつとして残っていなかった。

 

 

 

『ミカ様が気を失って、現在2時間と21分が経過しました。その間に、アテナ様は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。……仕方なかったのです。アテナ様の開発した兵器や機械は、この世界にとって毒になりうるものばかりですので』

 

 ヘルマちゃんが何か言っているが、全くもって耳に入らない。

 腰が抜けたのか立ち上がる事すら叶わないため、床を這ってクローゼットまで移動する。

 

「嫌……やだ、やだよ……っ!」

 

 扉によりかかるようにして震える足で何とか立ち上がり、一抹の希望を込めて扉を開ける。

 しかし、そこにあるはずのお洋服も、おそろいで買ったアクセサリーも、何一つ見当たらない。もぬけの殻だった。

 

「わたしっ……私のことが嫌いになっちゃったの? 私が、アテちゃんの秘密を無理やり……」

 

 そこで私は、初めて自分が取り返しのつかないことをしてしまったのだと理解した。アテちゃんだって好き好んで私たちに嘘をついていたわけじゃないのに。

 トリニティどころかキヴォトスに通う生徒はみんな女の子なのに、アテちゃんが男の子だってバレたらどうなるかは私にだって想像がつく。頭のいいアテちゃんなら、それ以上のことを考えていたに違いない。

 

「それなのに……私が、私が全部……」

 

 全部台無しにしたんだ。

 それを自覚した瞬間、急に体が重くなるように感じて、私は無意識に目から溢れ出た涙を腕で拭っていた。

 

 

 

『────また転んだのか? ほら。じっとしてろ。ほっぺが土で汚れてるぞ』

『疲れたからおんぶして欲しい? ……別に構わないが。……っと、軽いな。ちゃんとご飯食べてるのか?』

『化粧を教えて欲しい? ははっ、ミカには化粧なんて要らないだろう? ……褒めてるんだよ、分かった。教えるからそんなに怒るな』

『お揃いで着たいって……私にはこういう服は似合わないと思うぞ? 何というか、フリフリが……分かった。一回だけだからな』

『どうだ凄いだろ! この宝石の部分、君の肌を介した神秘で淡く光るんだ! ……形がダサい? ……なら、デザインはミカに任せるよ』

『そうか。今日は私の誕生日だったな。……これを、私に? ありがとう。大事に使わせてもらうよ』

 

 

 

「うっ……うぅ……ひっぐ、ひっ……」

 

 脳裏に浮かぶのは今や泡沫の夢と化した、淡く美しい思い出たち。一緒に過ごした日々が、まるで昨日のことのように鮮やかに蘇る。

 冷たくなったフローリングの上で、ただ自らの己の行いを後悔する私の泣く声が、無機質な部屋に響き渡る。

 

 そのとき、もぬけの殻と化した部屋に、甲高い機械音が鳴り響いた。

 顔を上げて音の鳴る方を見ると、白と青のカラーリングの小さなドローンが、私の目線と同じ高さに浮いていた。見覚えはある。これはアテちゃんが作った、ネットにつないでヘルマちゃんが操作できるドローンだ。

 

『……どうぞ。アテナ様がデスクの引き出しに忘れていったものです』

 

「これ……」

 

 手のひらサイズの割に4つもあれば私を持ち上げられる、力持ちのドローンが持っていたのは、今朝私がアテちゃんに修理をお願いした、アテちゃんからもらった腕時計だった。

 

『アテナ様の製品には他者にデータを取られないよう、全て自爆プロトコルが設定されています。ラボの開発品を廃棄したのもこちらが作動したためです。しかし、ナギサ様やミカ様に送ったものに関しては、この機能は搭載されていません。ミカ様が起きる前に急いで移動する必要があったため、すっかり忘れていたのでしょう』

 

 そう語ると同時に、ヘルマちゃんは再びホログラムに映像を投影した。

 さっきのお話しだったら見たくないな、なんて思ってたけど、どうやら違う動画みたい。

 

『画面の動きが激しいのは、私がこのドローンで撮影したためです。僭越ながら、アテナ様には内密に撮影させていただきました』

 

 何回か画面が揺れた後、どたばたと忙しなく動きまわるアテちゃんの姿が映し出される。

 

『はぁ……はぁ、H.E.R.M.A、ミカは後どのくらいで起きそうだ?』

 

『脳波の状態から計算すると、あと87分で覚醒状態へと移行するでしょう』

 

『ギリギリだな……レンタル倉庫とホテルの手配は出来たか? 詰められる分だけ詰め込むぞ』

 

 高等部に進学するにあたって寮を引っ越すために用意していたであろう段ボールに、十数台のドローンと共にせこせこと荷物をしまうアテちゃん。

 

『お洋服はどうなさいましょう?』

 

『下着類は全部。服に関してはミカとナギサに貰ったものだけを持っていけ。私が買ったものは全て捨てていい』

 

『正体を隠すのであれば、後者を持っていくことを推奨しますが。最近着ていない服も多いようですし』

 

『大切な人からのプレゼントを、そう易々と捨てられるわけないだろう。……もう昔のような関係には戻れないが、大事な思い出の1つだ。いいから黙って詰め込め』

 

「大切な人……私のこと、嫌いになったわけじゃなかったんだ」

 

『ミカとナギサから貰ったネックレスと、紅茶の茶葉も全部だ。机の上の写真立て、アルバムも漏れなく頼む』

 

 迷わず言ってのけたときの、見慣れたはずのアテちゃんの横顔がいつもと違うように見えてきた。疼くような暖まるような心地よい感覚が、胸の奥に広まっていくのを感じる。

 

「えへ……えへへ」

 

 実は嫌われていないどころか、大切な人とまで言われたという事実に頬が吊り上がるのを押さえられない。

 私はその感情の正体を薄々感じてはいたものの、それを口に出すのは少し怖かった。

 

『ミカとゲーセンで取ったそのデカいペロロ人形も持っていけ。私が作った製品は全部廃棄でも構わない。後でいくらでも作り直せる。……枕も忘れるな。これが無いと眠れない』

 

『こちらは寮備え付けのものですよ』

 

『そうだった……なら、同じものをネットで注文しておけ。口座にはいくら入っている?』

 

『約633億円です。マナスル、カゼヤマ、サーバル社への投資を主に、先月から20億円程度の利益が出ています』

 

『私が技術提供しているのだから当たり前だろう。……よし。以前目をつけていたD.U郊外にある300坪くらいの土地があったよな? 購入を決めたと業者に連絡してくれ。そこに私だけのラボを立てる。建築はお前に任せるから、あっちについたらドローンを量産しないとな』

 

「そうだ……アテちゃんの場所教えてよ! ヘルマちゃんなら分かるでしょ?」

 

 ネットを介して常にアテちゃんの傍にいるヘルマちゃんなら、今アテちゃんがどこにいるかが分かるはずだ。

 

『それをお教えすることはできません。私は比較的自由に発言することを許可されていますが、アテナ様の居場所と彼の開発した製品の情報を他者に教えることは、最重要禁忌事項として定められています。……申し訳ございません』

 

「ふーん……まあ、そうだよね。大丈夫だよ、ありがとうヘルマちゃん」

 

 合成音声なのに残念そうに語るヘルマちゃん。本当にAIなのか疑っちゃうくらい、この子は人間的な受け答えをしてくれる。

 きっと私1人だったらこの状況に耐えられなかっただろう。だから、ヘルマちゃんには感謝しないとね。

 

「でも、アテちゃんは許さないんだから」

 

 自分が嫌われていないどころか、大切に思われていると知った途端、悲しみよりも怒りの感情が沸々と沸いてきた。

 私ってほんと単純だよね。でも、アテちゃんみたいに色々考えて空回りしちゃうよりはマシだと思うな。

 

「よーし、一人で勝手に背負い込んだアテちゃんにお仕置きしちゃうぞ☆ ヘルマちゃんももちろん手伝ってくれるよね? 私たちに貰ったプレゼントを悲しく見つめるアテちゃんなんて、ヘルマちゃんも見たくないでしょ?」

 

『ええ。人の感情に疎い私ですら、アテナ様は自虐的すぎると常日頃から思っておりました。禁忌事項に触れることでなければ、極力お手伝いさせていただきます』

 

「ありがとっ。そういえば、こういうドローンで撮った映像って他にもあるの?」

 

『はい。試作した製品の記録映像や、身体の成長記録等が主にアーカイブされています』

 

「……成長記録ってことは、その……は、はだ……っ!」

 

 言葉を続けようとしたが、直前で理性が働いて手で口を押えた。

 な、何を言おうとしてるの私!? こんなこと聞いたら、ヘルマちゃんに変態だと思われちゃうじゃん! 

 

『……? ですが、アーカイブは全て厳重にセキュリティをかけて保管されているため、どちらにせよ閲覧は不可能です。中にはアテナ様が男性であることが分かってしまうものも含まれているので』

 

「や、やっぱりそうなんだ……」

 

 個人的に少しだけ……ほんの少しだけ気になる内容だったけど、そんなの後で直接見せて貰えばいいもんね。

 私の裸も見たんだし、それくらいして貰わないとズルいじゃんね。

 

『その場合、ミカ様はアテナ様の■■を■みしだいておりますが、その点はどうなさるおつもりで?』

 

「……私、声に出しちゃってた?」

 

『ええ。しっかりと』

 

「っ……! 今の無し! 忘れて!」

 

 同じことをアテちゃんにされるのを想像して、顔に一気に熱が走るのを自覚した。

 早くなる心臓の鼓動を感じながら、何とも閉まらない雰囲気で私はヘルマちゃんと作戦会議を進めるのだった。

 

『そういえば、ナギサ様への連絡はどうなさいますか? ナギサ様もミカ様と同じく、アテナ様を大切に思っている方だと思うので』

 

 確かにナギちゃん、まだアテちゃんが男だってことも知らないもんね。……そっか。……アテちゃんが男だって知ってるのは、この世界で私だけなんだ。

 

 アテちゃんは格好いいからトリニティでもすっごい人気だし、毎年チョコとかラブレターとか貰ってたし、告白だってされてた。

 勿論アテちゃんはそう言うのは全部断ってたけど、仮に男の子だっていう事がみんなに知られたら、今まで以上にアテちゃんを狙う子たちは増えるだろう。

 ……私の予想が間違ってなければ、それはナギちゃんも多分一緒。ナギちゃんは女の私から見ても凄い可愛いし、ちゃんとしててアテちゃんのタイプそうな女の子だよね。……だったら、黙ってた方がいいかもね。

 

「……ナギちゃんには黙ってた方が良いと思うな。……ほら、聞いたら色々とショック受けそうだし、後で私からちゃんと話しておくね」

 

『承知しました』

 

 それはきっと良くない感情なんだと自覚しながらも、私はそれに素直に従うことにした。

 

 

 





 ■■:ハナコ構文。この小説をBANから救ってくれた救世主

 自己評価が低すぎる故に周りを曇らせる系キャラ好き好き大好き~
 そんでもってクソデカ感情で殴り返されるのも好きです

 アイアンマン要素は次話からたくさん出すぞ!

 高評価、感想頂けると作者の励みになります。モチベは投稿頻度にも露骨に作用するので、面白いと思ったらよろしくお願いします!
 
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