MARVEL STUDIOS 「ブルーアーカイブ」 作:MAN
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高評価、感想、ここ好き頂ける作者の励みになります。モチベは投稿頻度にも露骨に作用するので、面白いと思ったらよろしくお願いします!
「あー……あ、あー。マイクテスト、テスト……」
見慣れた寮の部屋とはまた別のラボを背景に、目の前に置かれたカメラに向かい合う。……椅子を持ってきた方が良いな。長い話になるだろうし、その方が何というか雰囲気が出る。
「H.E.R.M.A、椅子を持ってきてくれ」
そう言って手を一度パンと叩いて鳴らすと、2台のドローンが部屋の奥に置いてある椅子をアームで掴んで持ってきた。ドローンはそのまま画角の中心で停止し、ゆっくりと降下して椅子を正面に向ける。
「ありがとう。よし! では始めよう。録画は頼んだよ、H.E.R.M.A君」
『承知しました。では……3,2,1,アクション!』
「それ言う必要あったか……? ごほん」
AIの癖して形から入るタイプなのは不思議だ。
そんなチグハグで面白い我が子に苦笑いを浮かべながら、緩んだ空気を締めるように咳払いを挟む。……うむ。いざこうして喋るとなると、何から話すべきか迷うな。
『まずは自己紹介からするべきでは?』
「確かにまだだったね。私の名前は……まあ、アイアンマンと呼んでくれ。とある事情から身を隠していてね」
H.E.R.M.Aのアドバイスを受け、足を組んで身を乗り出しながら全て
「これを見れているということは、君がこの世界についてを知りたい人間だと仮定して話を進めるよ。だから私の話はこの辺にしておいて、私たちが今いるこの学園都市、キヴォトスについて説明しようと思う」
足を組み直しながら、長々と話を続ける……うん。やっぱりジッと座っているのは性に合わないな。
「H.E.R.M.A、カメラで私を追ってくれ」
『はい』
椅子から立ち上がり、背景の映り込みに気を付けて出来立てほやほやのラボの壁をゆっくりと歩く。色々とみられてはマズい物もあるからね。これを見ている人が地球の人間なら尚更だ。
「ここの街並みを一度でも見たことがあるのなら、その異様さにすぐ気づいたことだと思う。もしまだ一歩も外に出ていないのならば、少しこの映像を見てほしい」
手を払う様な動作を交えると、カメラの画角に収まり、かつ私に重ならないような位置にホログラムが投影された。
そこにはキヴォトスの主要な各街の映像が、分割されて流されている。ヴァルキューレのサーバーをクラックして流した、リアルタイムの街の映像だ。
「キヴォトスというのは言わば超巨大な学園都市だ。数千の学園がそれぞれに運営する自治区と、それらを統括する連邦生徒会が直接管理しているD.Uと呼ばれる地域で構成されている。アメリカの連邦制度を、さらに細かくしたようなものだと考えれば分かりやすいかな?」
16分割された映像はどれもバラバラな場所だが、これらの映像には1つだけ共通点が存在する。
「初めてこの光景を見ているなら、きっと作り込まれた映画のようだと感じるかもしれないが、これはCGでも、映像効果を使用したフィクションでもない。これは監視カメラの映像だ。……もし君がこの箱庭に突如として放り込まれて、周りに頼れる存在がいないのならば、真っ先にやるべきことを伝える。それは、治安の悪そうな場所を避け、自衛のための銃を手にすることだ」
作業台から一丁の小型拳銃を取り出し、コッキングして弾倉に入った弾をチャンバーへ込める。
部品同士が擦れ合う子気味いい音が鳴り響くのを確認し、セーフティをかけて再度作業台へと置く。
「大丈夫、少し探せば道端に落っこちているからすぐに見つかるよ。最悪弾が無くても見かけだけで大丈夫だ。映像を見ての通り、ここは義務教育すら終えていない子供たちが、当たり前の様に銃を持ち歩いている世界だ。見かけだけでもと言ったのは、自衛する手段を持っていないと判断され、不良の類に絡まれる確率が高くなるのを防ぐ目的ということ」
『ヴァルキューレのデータによると、銃を持ち歩かない人間は、全裸で徘徊する不審者よりも数が少ないそうですよ』
H.E.R.M.Aが補足するように、数字とグラフが書かれた画像をホログラムに投影する。
「……一応言っておくが、その他の常識については君の居たであろう世界とそこまで大きな変化はないからね。このデータは露出狂の多さではなく、銃不携帯の生徒の少なさを表しているデータだ。HENTAIの国である日本の言語を使っているからと言って、そこは勘違いしないでもらいたい」
正直、キヴォトスの公用語である日本語を知っている人間の方が少ないだろう。
日本語と英語を翻訳してくれるアプリか何かを作ってあげるのが親切なんだろうが、そうするとこの動画の内容がキヴォトスの人間にバレる危険性が高まる。日本語が分からない人は何とかコミュニケーションを取ってくれ。
「話が逸れたね。銃を持って街に出て警察機関に保護してもらう前に、もう2点だけ確認して欲しいものがある。まずは
ちなみに私のヘイローは水色と橙色に発光していて、主に3つのリングと中心にある橙色の石のようなもので構成されている。外側の円には10個のコイルのような線が巻かれており、その内側2つの円はプレートによって繋がれている。
……知る人が見れば分かるが、これはトニースタークが初めて作ったアークリアクターによく似ているのだ。
確かにヘイローはその人の心の中を投影しているとされており、成長段階で変わったりもするのだが、ここまで露骨だとちょっと笑えてくる。
一応違う所もあって、アークリアクターには中心に橙色の石なんてものは存在しない。そして不可解なのは、普通ヘイローは触れないはずなのに、この中心の石だけ実体があるということ。
これについては色々と研究を進めているところだが、今まで大した障害も無かったため優先度は低い。せいぜい眠るとき頭上のスペースに注意しないといけないくらいだ。
ミカやナギサによると、眠っているときもこの石だけ残るそうなので、根本的にヘイローとは異なる物質なのだろう。
「これが無かった場合、君は今まで人間として暮らしてきた常識を守って行動してほしい。間違っても生徒同士の銃撃戦に割り込んだりしないこと。そしてヘイローが確認できた場合、その辺の木でも岩でも何でもいいから、私のように怪我をしない程度に、殴ったり持ち上げたりしてみてくれ。……どうだい? 普通の人間からは想像できないほどの力が漲っているだろう?」
ラボを建設する際に余った、長さ3メートルの建築構造用鋼材……Hの字型の赤い鉄骨を掴んで軽々と持ち上げる。重さ100㎏を優に超える鉄骨を持ち上げる様はまるでキャプテン・アメリカのようだが、キヴォトスの生徒の間では割と普通だったりする。ミカだったらもっと重い物も持ち上げることができるだろう。
そして、先ほど弾を装填した9mm口径のハンドガンを片手で持ち、もう片方の開いた手のひらに向け、一切躊躇わず発射する。
耳をつんざく銃声がラボに鳴り響き、遅れて薬莢が地面に落ちる音と、漂ってきた火薬の匂いが鼻をくすぐる。普通なら痛みにのたうち回ることになるだろうが、生憎ここキヴォトスには地球の常識は通用しない。
「驚かせてすまないね。ヘイローを持つこの世界の生徒は、徹甲弾でブチ抜かれても、12.7mm弾で頭を打たれても、基本的には死にはしない。理由については現在突き止めている段階だ。あまり深くは聞かないでほしい」
私の手に走った衝撃は、スポンジでできたナーフ銃程度のもの。出血はおろか腫れも一切なく、私の足元には潰れた9mmパラべラムの弾頭が転がっていた。死にはしないとはいえ生徒に対しても銃器が武器として有効なのに、私の耐久力が高すぎると思うかもしれないが、実はこれには1つのからくりがある。
実のところ、私の腕力や耐久力はヘイローを持つ生徒の間でも一般的なものだ。だが、私はキヴォトスに生きる生徒にとして、致命的とまで言える欠点が1つ存在する。
────それは、
神秘……ヘイローから生成されるエネルギーを私はそう呼称している。生徒は皆、無意識に神秘を手に持った銃器を媒介して弾丸に込め、威力を高めている。
身体能力も神秘量によって左右されるため、バグみたいな神秘量を持つミカは私よりも圧倒的に力が強いし、多分彼女の持つ銃で撃たれたら滅茶苦茶痛いと思う。さっき手のひらを撃った拳銃と、同じ弾を使うサブマシンガンを愛用するミカだが、それ一丁で戦車を容易に吹き飛ばせるのだから恐ろしいものだ。
「……そして、こっちはある意味ヘイローの有無よりも大切なことかもしれない。それは、
私が寮を出て行った日、ミカが怒り悲しんでいたというのはヘルマから聞いている。その理由については聞く必要もないだろう。
スーツの開発を急がないといけないな。パテル分派の子たちもこぞって私を探し始めるだろうし、ミカに鉢合ったら今の私では背骨をおにぎりのように丸められてしまう。
「これに関してはヘイローよりももっと単純。君が男だったら今すぐ顔を隠すこと。その辺の布でも何でもいいから。
何故だか知らないが、この世界の人間型の住民は、
一通り説明すべきことをすべて話し終え録画を止める。
後はこれをネットにアップロードし、転生したであろう人間が検索しそうな言葉に紐づけすればOKだ。
地球人なら誰しもが答えられるであろう問題の答えをパスワードとして設定したし、仮に突破されたとしても英語で話しているため、公用語が日本語のキヴォトスでこの動画の意味を理解できる人は居ないはずだ。
「ふう。これでやるべきことは終わったな」
変声装置を取り付けたアイアンマンの頭部パーツを取り外し机に置く。急ピッチで撮影にこぎつけたため塗装もしてないし、その他の機能はARとオンライン環境下におけるH.E.R.M.Aのアシスタントのみだが、外見だけは形になったと言えるだろう。
『本日はどのようなご予定で?』
「今日もスラスターとリパルサーの開発を優先するつもりだ。他の武装も魅力的だが、自分の身を守る為ならリパルサーで吹っ飛ばすだけで十分だからな」
アイアンマンのメインの武器である、両手のひらについたリパルサーは、元々は飛行のために作られたものを武器と併用したものだ。トニーとその身を守るスーツを、両手足の4つのみでマッハまで容易に加速させられるその出力の高さは、いちいち説明しなくても分かるだろう。相手がキヴォトス人だから気兼ねなくブッ飛ばせるが、自動車だって吹っ飛ばせるものを人に向けるもんじゃない。
「ということで、トニーと同じく両手足から作るぞ。設計図を投影しろ。細かいサイズを調整する」
CADで設計した立体図をホログラムを使用しデスクの上に投影する。トニーが作ったアイアンマンを基に、私の体格や身体的特徴に合わせているため、
H.E.R.M.Aによる自動調整を済ませる間に、私は試作品として作ったリパルサーを手のひらにそのままバンドで取り付ける。反動や熱を考慮することなく開発に着工できるのは非常にありがたい。頭上のヘイローには感謝しなきゃいけないな。
「ヘイローからリパルサーへのエネルギー変換率はどの程度だ?」
『約15.2パーセントです』
「おいおい。今時ソーラーパネルでももっと高性能だぞ。それで飛行するなら15分で限界が来る」
活動時間が15分に限られていたMark1とどこかシンパシーを感じるが、それじゃ移動できる距離が大幅に狭くなる。……やっぱり見た目も含めて、アイアンマンにはアークリアクターは欠かせないな。
やはり稀代の天才トニー・スタークにはまだまだ追いつけないと自覚しながらも、それでも私の心はギラギラと熱が冷めることはない。時間はたっぷりあるんだ。ひとまずは王道を追い求めようじゃないか。
『スーツの装甲を薄くすることを提案します。トニー様と違い銃弾を食らっても大したダメージにならないでしょうし。こちらの設計では飛行時間を150パーセント長くすることが可能です』
投影されたのは、先ほどよりも一回りスリムになったスーツだった。最低限の厚みの装甲は、恐らく歩兵との戦闘を想定したものだろう。
「よし。ならひとまずそれで行こうか……いや、ちょっと待て」
投影されたモデルを眺めていると、1つの案が浮かんできた。
空中に絵を描くようにして外装と胸部パーツに変更を加え、各関節の可動域を広く設計し直す。
3時間ほどモデルをいじくり回し、想像していた通りの形が完成した。そして各パーツの位置を変更し外側に保護用のプレートを取り付けると、人の胴体よりも一回り程小さいサイズ感の、箱のような形になった。
『これは……』
「
ブラックマーケットとはその名の通りキヴォトスにある闇市だ。連邦生徒会の管理が及んでおらず、治外法権と言っていいこの場所では、違法な兵器や未承認の製品が横行している。普通じゃ手に入らないものを手に入れるのにはぴったりと言っていい。
以前トリニティの寮で作っていた物の中で、戦闘に使えそうな物品を漁りながら答える。……お、見つけたぞ。
『ブラックマーケットに? 一体何を入手するおつもりですか?』
そんな場所に行くメリットを見いだせないのか、H.E.R.M.Aは不思議そうな様子だ。
開いた段ボールからボタン電池のような円柱状の物体をいくつかと、手のひらに収まるサイズの特殊なリモコンを作業台の上に置く。
「
リパルサー:Mark2から搭載されている、ガントレットの掌から発射することができる光学兵器。初期型では両手足に装着されていて、出力を変えれば飛行することも可能。特徴的な飛行姿勢はこの飛行方法によるもの。
パラジウム:初期型アークリアクターに使われていた物質。『アイアンマン1』でトニースタークがテロリストに誘拐された際、テロリストが所有していたミサイルを分解して調達。幽閉されていた洞窟の中で永久機関を完成させた。
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