MARVEL STUDIOS 「ブルーアーカイブ」   作:MAN

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人質救出

 

 

 

 春休みも終わりを迎えた頃。私、阿慈谷ヒフミはとある目的のためにブラックマーケットへと足を運んでいました。ブラックマーケットと言えばキヴォトスでも随一の治安が悪い地域。目的を果たして早く帰らないといけません。

 

「────なあ、知ってるか。青と銀色のロボットの奴。カイザーの新兵器って言われてるヤツ」

「噂程度にはな。治安を乱す輩を片っ端から更生局へ突き出してるそうじゃねえか」

「ああ。どうやらビリビリヘルメット団が接触に成功したみたいでよ。団に誘ったらしいんだ」

「あいつらと趣味合いそうだもんな。で、どうなったんだよ」

「それが一夜にして壊滅だとよ。おっかねぇよな────」

 

 流石に夜に行くのは怖かったので、朝早くに寮を出たのですが、これは正解だったみたいです。春休みということもあってか、ブラックマーケットのメインとなる通りには人が沢山いました。

 

「あの……すみません。このお店ってどの辺にあるとか分かりますか?」

 

「あ? ……右側にパチンコ屋が見えるだろ? そこの角を曲がってすぐだよ」

 

 みんな怖そうな見た目をしていましたが、その中でも話しかけやすそうな人がいたので、お店の写真を見せて場所を聞くことにします。

 怪訝そうな顔をされてしまいましたが、意外にも怒鳴られたりすることはなく、丁寧に指を指して教えてくれました。

 

「ぱ、ぱちんこ屋?」

 

「あのやけにギラギラ光ってるガラス張りの店だよ」

 

「あっ、ありがとうございます!」

 

 パチンコ屋も知らねえ奴がこんなとこ来るんじゃねえよ。なんて呆れられてしまいましたが、私はその親切なお姉さんにお礼を言ってお店に向かいます。

 シャッターとネオンサインが立ち並ぶ商店街を横道に入ると、裏通りに隣接している小さなお店の前へとたどり着きました。思っていたよりもこじんまりとした雰囲気で、本当にここにあるのか疑問に思えてきます。

 

「おじゃまします……あの、この前電話した阿慈谷なんですけど……」

 

 ですが、ここで諦めるわけにはいきません! ここで諦めてしまってはペロロ様ファンの名折れですから。

 恐る恐るお店のカウンターで新聞を読んでいる人に話しかけると、その人はジロリとこちらを睨んだのち、小さく鼻を鳴らしました。

 

「金は持ってきてるんだろうな?」

 

「は、はい! ここに……」

 

 リュックから封筒を取り出して渡すと、店員さんは中身を取り出してお札の枚数を数え出しました。

 

「よし。ピッタリそろってるな。ほら、お目当ての商品だぜ。……こんなののどこが良いんだか。お嬢様の趣味ってのは分かんねえな」

 

「ありがとうございます!」

 

 頂いた紙袋の中身を確認すると、思わず抱きしめてしまいました。

 店員さんにお礼を言って飛び出すようにお店を飛び出すと、お店の前にはさっき私に道を教えてくれたお姉さんが立っていました。

 

「よう。無事たどり着けたみたいだな。目的のもんは買えたか?」

 

「はい! ありがとうございます!」

 

「そうか。なら良かった。何を買ったんだ?」

 

 わざわざ私がたどり着けたかを確認しに来てくれるなんて、なんて良い人なのでしょうか。ブラックマーケットに居る人全員が怖い人ってわけじゃないみたいで、ちょっと安心しました。

 ささやかなお礼として買ったものを見せようと近づき、紙袋からプチプチで梱包された箱を取り出します。

 

「……何だこれ」

 

「知らないんですか! これは、ペロロ様の限定グッズ『全知全能の主神ペロロ様ぬいぐるみ』ですよ! モチーフ元が何かは調べても出てこなかったのですが、この愛くるしい見た目は変わりません」

 

 特にこの赤いマントと右目の眼帯がチャームポイントです! ほとんど流通していないとの噂がある中で入手できたのは奇跡でしょう。

 持っているお小遣いをすべて使ってしまいましたが、後悔はありません! 

 

「……まあ、何はともあれ良かったな。トリニティのお嬢様が話しかけてきた時は驚いたが」

 

「あれ? 私、トリニティって言いましたっけ?」

 

「制服で出歩いてて所属を言ってませんは通用しねえよ。しかも、それ中等部の制服だろ」

 

「そ、そっか……」

 

 ブラックマーケットではお金を持っていない場合、洋服まではぎ取られるとの噂を聞いていたので制服できたのですが、逆効果だったかもしれません。

 

「ちょっとあんたに用事があってな。なに、時間はかからねえから安心しろ」

 

「? はい。大丈夫ですよ」

 

 出会ったばかりの私に何の用事があるのか分かりませんが、お姉さんは悪い人ではなさそうなので二つ返事で受けました。

 

「ありがとな。よし。いつでもいいぞ」

 

 一言お礼を言うと、お姉さんは顔の前で両手を叩きました。

 突然の行動に首をかしげていると、その瞬間後ろから体を押さえつけられて、口元にハンカチを押し当てられます。

 

「!? むぐっ!」

 

「悪いな。あんたに恨みはないんだが、ちょっと金稼ぎのために付き合ってもらうぜ」

 

 優しいお姉さんだとおもってたのに……! あ……急に眠くなって────

 

「……眠ったか。よし、連れていけ」

 

 車のドアが開く音を最後に、私の意識は深い闇の中へと沈んでいくのでした。

 

 

 

 

 

「H.E.R.M.A、飛行可能時間を計算しろ」

『計算中……残り23分です』

「なら帰りは電車だな。よし、追跡装置を起動だ。あの不届き者どもを成敗しに行くぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん……」

 

 気が付けば、私は薄暗い工場で横たわっていました。コンクリートの硬さが伝わってきて体が痛いです。

 起き上がろうとしたのですが、両手足が拘束されているようで動かすことが叶いません。……っ、頭がジンジンします。

 

「目が覚めたみたいだな」

 

 声が聞こえてきた方を見ると、先ほどのお姉さんが廃材の上に座ってこちらを見ていました。更に、私を囲むようにしてヘイローを持った生徒が立っています。

 

「逃げようって考えは止めといた方が良いぜ。ここはブラックマーケットの外れだ。土地勘のないお前が逃げ出したところで、私達より質の悪い輩に連れ去られるのがオチだ」

 

 窓から差す日を見る限り、そこまで時間は経っていないようですが、ここがあのお店からどのくらい離れているかも私には分かりません。

 そう言うと、お姉さんは一枚の紙を私の前に放り投げました。

 両手でそれを持って広げると、そこには驚きの内容が書かれていました。

 

「2週間ほど前に正義実現委員会の奴らが来てな。そこら中で配ったり張り出したりしてたぜ」

 

 そこにはトリニティの生徒を探しているという文言と、見つけた際の連絡先が書かれていました。

 

「捜索届の癖して顔も名前もないのはおかしな話だが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ともあれば仕方のない話か」

 

「っ……何でそれを……」

 

 お姉さんの口から出るとは思えない発言だったため、思わず声を荒げてしまいました。

 そう。確かに彼女の言う通り、3週間ほど前に中等部を卒業したばかりの生徒が1人行方不明になりました。

 芙蓉アテネ。私の1つ上の先輩で、初等部から高等部まで広く親しまれていた人でした。私も実際にお話ししたのは一度だけですが、パテル分派の首長候補という優秀な人にも関わらず、私のような平凡な生徒に親しくしてくれた優しい方です。

 

 そんなお方が行方不明ともなれば、中等部のみならずトリニティ全体で騒ぎになります。

 ですが混乱が広まる前に、現ティーパーティーの方々から直々に緘口令が敷かれ、他校の生徒が知っているはずはないのですが……

 

「人の口に戸は立てられないってことだ。私は元トリニティ生だからな。そういう話も色々と入ってくるんだよ」

 

「……なるほど」

 

 ブラックマーケットは何らかの理由でキヴォトスの学園を追い出された人たちが集う場所。お姉さんのような人がいてもおかしくはないでしょう。

 

「そういうことだ。ここには私の仲間が十人以上いる。私の目的はあんたをここでトリニティに引き渡して報酬金を貰うこと。停学とか何かしらの罰は与えられるだろうが、それはこんな場所に護衛もつけずに来た自分を恨むんだな」

 

 暗に私の身に危害を加える気はないと言うお姉さん。

 その言葉にほっとしますが、隣に置かれた私の持ち物の中に、先ほど買った紙袋が無いことに気が付きました。

 

「ペロロ様はどこに……?」

 

「あ? ……ああ。お前が買った人形か。あれは私の車の中だ。調べたら高値で売れそうだったもんでな」

 

「そんな……! 返してください……痛っ!」

 

 せっかく手に入れたのにと声を荒げる私の肩を突き飛ばし、お姉さんは倒れた私の上に跨ってきました。

 

「自分の立場を理解してからものを言うんだな」

 

 私の髪を掴み、無理やり持ち上げて顔を合わせるお姉さん。

 そのあまりの迫力と痛みによって、自然と涙が出てきます。

 

「やだ……誰か、誰か助けてください……!」

 

 口ではそう言いつつも、こんな場所に誰かがヒーローみたいに助けてきてくれるなんて、都合のいい話があるわけないことは理解していました。

 ……ははっ、馬鹿だなぁ私。皆に黙ってこんなところに来て。結局ペロロ様も手に入らなくて……

 

「あんたを変態たちに売り飛ばさないのは私の優しさなんだぜ? だったら────」

 

 

 

 

 

『────見下げた悪党だな。正義実現委員会を相手にしたくないだけの小物が』

 

 

 

 

 

 そのとき、ガンッ! という金属を打ち付けるような音と共に、私の眼前に何かが落ちてきました。

 土煙が晴れると、そこには青と銀色のカラーリングをした、ゴツゴツした人型のロボットが立ってこちらを睨みつけています。

 

「テメェ! どっから来やがった……がっ!?」

 

 お姉さんが肩にかけたサブマシンガンを撃とうと構えますが、その間もなくロボットはお姉さんの顔を拳で打ち抜きます。

 そのままお姉さんは高さ5メートルはある工場の天井にぶつかって落下。そのまま意識を失ったのか動かなくなりました。

 

「お頭! ……何だこいつ……ぎゃっ!」

 

 呆気にとられた生徒達に、ロボットは手のひらを向けます。

 手のひらに付いたレンズのような何かが特徴的な音と共に光ると、そのまま爆発して2人を吹き飛ばしてしまいました。

 

「クソッ! 撃て! 穴だらけにしちまえ!」

 

 私の周りに立ってた生徒がロボットを撃ちますが、弾丸を食らっても全く効いていないようで、先ほどと同じく手のひらを向けて攻撃を加えます。両手で砲撃を食らった生徒は、そのまま工場の壁を破壊して外まで飛んでいきました。

 

「こいつただのマーケットガードじゃねえぞ! グレネードを使え!」

 

「Frag out!」

 

 掛け声と共にグレネードが投擲されますが、ロボットはそれを足で止め、サッカーボールの様に蹴り上げました。

 

『いいパスだ。返すぞ』

 

「はっ? ぎゃああああ!」

 

 蹴り返されたグレネードに対応できるわけもなく、投げた生徒とその近くにいた2人が爆発に巻き込まれ動かなくなりました。

 ……凄い。あれだけいっぱい人がいたのに、もう全員倒してしまうなんて。

 

 ……ってあれ? まだあと1人残っていたような……

 

「おい木偶の棒! こっちを見やがれ!」

 

「きゃ!」

 

 そのとき、どこかに隠れていた一人の生徒が、縛られて動けない私の首に手を回し、こめかみに銃を突き付けてきました。

 

「動くんじゃねえぞ……指先一本でも動かしたら、この女のこめかみをぶち抜いてやる」

 

『それ、銃で死なない奴にやっても意味ないんじゃないか?』

 

「黙れ! 本当に撃つぞ!」

 

 再度私に銃を突きつけて叫ぶ生徒。そんな彼女を横目に、私はロボットさんに向けて大声で叫びました。

 

「私は大丈夫ですっ! 気にせず倒しちゃってください!」

 

 絶対痛いですけど仕方ありません。せっかく助けてもらったのに、私のせいでロボットさんが手を出せなくなってしまいました。

 元はと言えばこれは私の不用心が招いたこと、この程度なら甘んじて受け入れます……でもやっぱりちょっと怖い……! 

 

「うぅ……」

 

 目をつぶって痛みに備える私でしたが、いつまでたっても痛みがこないどころか、私を押さえつける力が弱まるのを感じました。

 恐る恐る目を開けると、後ろには額を腫らして白目をむいている人の姿が見えます。

 

「あれ……?」

 

『これは指一本に入るのかな?』

 

 前を向くと、肩から小さなミサイルのようなものを展開したロボットさんがいました。その内の一本が空になっているのを見ると、そのミサイルで倒してくれたようです。

 ロボットさんはそのまま私の元へとゆっくり近づき、私の顔をジッと見つめてきました。

 

『君は……いや。何でもない。怪我は無いか?』

 

「は、はい! ありがとうございます! ……その、何てお礼を言ったらいいか……」

 

 もし彼が来てくれなかったら、私は先生に怒られるどころか、二度と学校へ帰れなかったかもしれません。

 そう思うと緊張が一気に解けたのか、急に足に力が入らなくなってしまいました。

 

『っとと。大丈夫か?』

 

「すみません……ちょっと腰が抜けちゃって」

 

 倒れそうになる私を片手で抱きかかえるように支えてくれたロボットさん。その腕は金属の武骨な感触でしたが、不思議と人の温かみを感じるような気がしました。

 ……って何してるの私! 知らない人に助けてもらった挙句、抱き着くなんて……! 

 

 そんな自分の行いに顔を赤くしていると、沢山の足音が工場内に響き渡りました。

 

「動くな! マーケットガードだ! お前たちを不法侵入で拘束する!」

 

 ロボットさんとはまた違う、盾や銃を持った黒いロボットが私たちを取り囲むように並びます。

 

「わわわっ……どうしましょう!」

 

『騒ぎ過ぎたか……仕方ない。ヒフミ、私にしっかり掴まるんだ』

 

「え? は、はい!」

 

 ロボットさんの指示に従い、彼の腰に手を回して抱き着くように掴まります。……あれ? 私この人に名前言ったっけ? 

 そんな疑問が遅れてやってきましたが、それをかき消すほどの出来事が起こりました。

 

「ええぇぇぇえええ!? 私っ、空飛んでるううぅぅ!」

 

 ロボットさんは両手足を地面に向けたかと思うと、そのまま空を飛んで行ったのです。

 

「は……? おい! こいつ飛びやがったぞ!」

 

『バイバイゴキブリ君。その見た目、もうちょっと変えたほうが良いと思うぞ!』

 

 天井を手のひらで打ち破り、あっという間に私がいた工場がどんどんと小さくなっていきます。

 

「ま、待ってください! まだペロロ様があの車の中に!」

 

『諦めろ! 捕まったら新学期早々停学になるぞ!』

 

「だったら私1人で行きます!」

 

『は? ……おい!』

 

 ロボットさんの腰を掴んでいた手を離すと、徐々に地面が近づいて行きます。この高さなら大丈夫……最悪足首を挫くだけで済むはずです! 

 衝撃に備えて受け身を取ろうとしたのですが、その前にロボットさんが横から飛んできて私を捕まえました。

 

『気でも狂ったか!? そもそも誰なんだペロロ様って、君の家族か!? ……は? キャラクターのぬいぐるみ? お前の冗談好きも大概にしろ!』

 

 地面スレスレを飛びながら、誰かと話しているかのように声を荒げるロボットさん。

 

「放してください! 大事なものなんです!」

 

『ちょ、お前……マジで! ……っ! 危ない!』

 

 飛びながら私を掴む腕を、引きはがそうとするとそこでバランスが崩れたのか、ロボットさんと私は工場の敷地に立っていた電柱にぶつかる。

 衝撃で吹き飛ばされ、地面に投げ出された私が最初に見たのは、無残に引きちぎられて地面に転がるロボットさんの左腕でした。

 

「っ! だ、大丈夫ですかロボットさん! 私のせいで……こんな」

 

 それを見て一気に血の気が引くのを感じ、私はうつ伏せに横たわるロボットさんの肩を揺すりました。

 

『痛ってぇ……帰ったら飛行制御システムをアップデートしないとな』

 

 ロボットさんは()()()使()()()上体を起こすと、軽く首をひねって立ち上がって……て、えぇ!? 

 

「えっ! ロボットさん、人間だったんですか!?」

 

 先っぽが吹き飛んだはずのロボットさんの左肩からは、色白な人間の腕と思われるものが生えていました。確かに、よく見れば吹き飛んだ腕も中身が空洞になっています。

 

『……イヤ、ボクニンゲンジャナイヨ』

 

 無言で吹き飛んだ腕を嵌め直すと、ロボットさん? は両手を本当のロボットの様に左右に振って答えました。

 

「いや大分無理ありますよね!? さっきまで凄い流暢に喋ってましたし!」

 

『だよね。流石に無理だよね……このことは誰にも言うなよ。良いな? でなければ、君がブラックマーケットに出入りしていたことを学校中に広めるからな!』

 

「はい……」

 

『そもそも! 君はなんて無茶をするんだ! 確かに死にはしない高さかもしれないが、当たり所が悪ければ障害が残るかもしれないんだぞ!? まったく……』

 

「ごめんなさい……」

 

 腰に手を当てて指を立てて声を荒げる姿は、まるで学校の先生のようです。ロボットさんにけがを負わせてしまった事実も含めて、その言葉は私の心に深く刺さりました。

 露骨に落ち込んだ私を見てため息を吐くと、ロボットさんは私に背を向けて歩き出しました。

 

「ど、どこに行くんですか?」

 

『君のペロロ様とやらを取りに行くんだ。大事なものなんだろう?』

 

「で、でも! 危ないですよ!」

 

 私のせいで腕も壊れちゃってますし、そんなロボットさんをあんな強そうな人たちの所へ向かわせるのは気が引けました。

 苦労して手に入れたペロロ様に未練が無いかと言われれば嘘になりますが、それでまたロボットさんを危ない目に遭わせたくはありませんでした。

 

『大丈夫だ。君もさっき見ただろう? 私はすっごく強いんだ。何せ、()()()()()()()()()()()()

 

「アイアン……マン?」

 

『ああ。最強のヒーロー集団の一人。この名前は直ぐにキヴォトス中に広まることになるだろうが、今のところこの名を知っているのは君だけだ』

 

 そんな不思議なことをいうロボット……アイアンマンさんは私の頭を左腕のパーツを外して、生身の手で撫でてきました。

 初めて会うはずの人なのに、何故かその言葉を聞いて不安の気持ちがスッと消えていきました。

 

「分かりました……ペロロ様のこと、よろしくお願いします!」

 

『いい子だ。昼食までには終わらせるさ。じゃあ、行って────』

 

「────あの……すみません」

 

 腕を付け直したアイアンマンさんが飛び立とうとしたそのとき、私たちに誰かが話しかけてきました。

 そちらを見ると、私と同い年くらいの角を生やした赤毛の女の子が、眼鏡越しに私たちを見つめていました。

 

「ペロロ様って……もしかしてこれのこと、ですか?」

 

 彼女の手には、私が買ったお店の紙袋が握られていました。

 

「えっと……その。私っ、ゲヘナで便利屋をやっていて、依頼を受けようとブラックマーケットに居たんですけど……」

 

『ヒフミが誘拐されたのを偶然目撃した?』

 

「はい! そ、そうです! ……マーケットガードに通報したのも私で、さっき中でのやり取りも見ちゃってて」

 

『……なるほど。便利屋をやっているといってたね。会社の名前は?』

 

 何処か気まずそうに問いかけるアイアンマンさん。そのマスク越しにその表情が浮かんで見えてくる程です。

 そんなアイアンマンさんと対照的に、女の子は興奮した様子で身を乗り出し、元気に答えました。

 

「便利屋68です! 私は陸八魔アルって言います!」

 

『そうか。では陸八魔君。便利屋68にアイアンマンから依頼をしよう。そこのペロロ狂信者ちゃんことヒフミを、最寄りの駅まで連れていくこと』

 

「えっ……ここでお別れですか?」

 

『ああそうさ。私は春休みを謳歌している生徒と違って忙しくてね。今すぐに家に帰らないといけないんだ』

 

「嘘ですよね!? 絶対アルちゃんに出鼻をくじかれて恥ずかしいだけですよね」

 

『うるさいぞペロロ狂信者。マーケットガードが騒ぎを聞きつける前にお口にチャックしろ』

 

「そ、そんな……まだお礼もできてないのに」

 

『ヒーローはいちいちお礼なんて求めないさ。では諸君、さらばだ』

 

 私の返答を待つ前に、アイアンマンさんははるか遠くへと飛んで行ってしまいました。

 そして、その場にポツンと残る私とアルちゃん。

 

「あの……これ」

 

「あ……ありがとうございます!」

 

 アルちゃんから紙袋を貰い、中身が無事な事を確認します。……良かった、プチプチはちょっと汚れてるけど、中身は大丈夫なはずです。

 

「……すみません。帰りの道が分からないので、案内してもらってもいいですか? 私からもちゃんとお礼はさせていただくので」

 

「ヒーローも格好良いなぁ……」

 

「……アルちゃん?」

 

「う、うん! もちろんよ! 依頼は確実に遂行するので!」

 

 敬語とタメ口が混ざった不思議な口調で宣言し、自分の胸をポンと叩くアルちゃんでした。

 

 

 

 

 

 ────────────────

 

 

 

 

 

 それから自宅に帰ってきた私は、作業台に向かって座り壊れた部品を修理していた。

 スーツよりも中身の方が頑丈だったら色々と察しがつかないな。ヒフミとアルに人間だとバレてしまったし、耐久性にはもっと重きを置く必要がありそうだ。

 

「ヒフミも無事に帰れたようだし。スーツの改善点も見つかってハッピーエンドだな。結局電車で帰ることになったが」

 

『帰宅分のエネルギーは、お二人を追跡するのに使ってしまいましたからね』

 

「仕方ないさ。あのまま放置するわけにもいかないだろう」

 

 ブラックマーケットの端にある工場とはいえ、どんな危険があるか分かったもんじゃないからな。ヒフミはもちろん、あんな場所で1人で依頼を探していると言ったアルも中々根性がある。

 

「そうだ。便利屋68と言っていたな。どういう会社なんだ」

 

『検索中です……会社というよりは、社長であるアル様と、その幼馴染との2人で構成された部活のようなものです。ですがゲヘナでは違法とされていて、正式な届け出すら出されていません。事務所などの借り入れ登録もされていませんし』

 

「なるほどねぇ……よし。ならアルの個人口座に報酬を振り込んでおいてくれ。今後とも長い付き合いになるだろうし、少し弾ませてもらおうか」

 

『余程気に入ったのですね。アル様のことが』

 

「言い方が悪いぞ。……まあいい。とりあえず手向けに1,000万ほど振り込んでおこうか」

 

 これだけあれば事務所も貸して貰えるだろうし、便利屋としての活動もある程度安泰に向かうだろう。

 見た感じミカやナギサよりも年下だろうし、そんな子が金を稼ぐためにブラックマーケットに入り浸るべきじゃない。

 

『では、アル様の口座に振り込み申請を……失敗しました』

 

「? どういうことだ? 残高はまだあるはずだが」

 

『いえ……どうやら口座の信用情報がレッドカラーのようで、振り込み申請を送ったと同時に凍結されてしまいました』

 

「……今すぐアルに電話をかけてくれ。今すぐにだ」

 

 

 





Mark2:アテナが開発した、神秘と初期型アークリアクターのハイブリッドを動力源とするスーツ。動力を分割することで出力と燃費を改善したモデル。アークリアクターが搭載されていないモデルがMark1である。武装としてリパルサー、小型ホーミングミサイルが装備されている。携帯型のため最低限の武装しかなく、装甲も薄い。装着方法や開発経緯については後ほど。



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