MARVEL STUDIOS 「ブルーアーカイブ」 作:MAN
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トリニティを去ってから約1か月。まだまだ外では正義実現委員会が私を捜索しているそうだが、身元がバレることなく快適に過ごせている。
ただ全てが順風満帆というわけでもなく、私は思わぬところで足を止めざるを得ない状況に置かれていた。
「……学園に所属していないことが、ここまで信用情報に関わってくるとはね」
椅子に座りながら、持っていた紙ををデスクの上に投げ捨てる。
パサッと音を立てて机の上を滑ったA4サイズの用紙には、トリニティに所属していた際に使用していたクレジットカードが、使えなくなったという旨の内容が書かれていた。
「辛うじて口座の金は闇銀行に移せたが、そんなところにずっと大金を預けるわけにもいかないしな……」
そう。今まではキヴォトスでも最も大きい学校の1つであるトリニティ、そのティーパーティー候補というのもあり、銀行やカード会社の対応はVIPだった。借りたことは無かったが、ほぼ利子無しみたいな条件でお金を貸して貰えたし、カードも最も待遇の良いブラックカードだった。後者に関しては俺がカードで惜しまず金を使っていたからというのも大いにあるが。
ともかくトリニティから逃げ出し、進学申請を行っていない今の私は、どの学園にも所属していない状態になっているわけだ。前世でいう無職と同じ扱いというわけだね。
『やはり名前だけでもどこかに所属する必要があるのでは? 以前、ゲヘナ学園への進学を検討していましたよね?』
何故ゲヘナを候補に挙げていたかというと、生徒の個性を受け入れる校風というのもあるが、トリニティとゲヘナが犬猿の仲だというのが大きい。
ゲヘナは悪魔のような角と羽を生やした生徒が多く在籍しており、トリニティは対照的に、キリスト教をモチーフとしたであろう天使の羽が生えた生徒が多い。どういうルーツがあるのかは知らないが、モチーフ的には仲が悪いのも伺える。
両者の関係は、言わば冷戦下のソビエトとアメリカのようなもの。政治的にも溝が深いし、一部の生徒を除いてお互いに酷く差別し合っている点では、前世の国際問題よりも深刻と言っていいだろう。
「それはほとぼりが冷めてからの話だろう? ティーパーティーが各学園に懸賞金付きで捜索届を出してるんだぞ。身分の偽装なんてそう簡単にできっこないし、馬鹿正直に芙蓉アテネの名を出したら速攻縛り上げられるのがオチだ」
だが、完全に学園同士の交流が断絶されている訳じゃない。互いの領地で互いの生徒が犯罪を犯した場合、司法取引をする程度の交流はあるし、捜索届に関してはゲヘナにも行き渡っていると考えていいだろう。
「……それに残してきたミカやナギサにまで被害が及ぶ。ゲヘナに入学するのは、少なくとも身分を偽装できた前提での話だ」
だからといってこのまま放置しておくわけにもいかない。この土地は私が買い切ったものだから問題ないが、いつ電気と水道が止められるか分からない状況で研究を続けろというのも無理な話だ。
電力だったらアークリアクターで賄えるのだが、水道を止められるのは勘弁願いたい。風呂食事はもちろん、金属の加工にも水は必須なのだから。
「最悪ミレニアムに行くしかないな。最終手段だけど」
神秘とヘイローに関する研究資料を持ち込めば、入学を許可するどころかトリニティからも守ってもらえるだろう。神秘を機械の動力源とするということ自体、私の知る限りだと発想すら浮かんでいないはずだ。
人間には必ず何かを考える脳が付いているように、キヴォトスに通う生徒達には生まれた時からヘイローが付いている。その差異に気が付けたのは、単に私に前世の記憶があるからと言っていい。
『意外ですね。アテネ様が研究をする上で最も適した学園だと思ったのですが』
「この世界の科学技術はかなりチグハグだからね。自立型戦術ドローンやスマートフォンが普及し、大規模な高層ビル群が立ち並ぶ割に、空を制する兵器はせいぜいヘリコプターが関の山だ」
地理の特性上海軍なんてものも存在しないし、弾道ミサイル潜水艦なんてもってのほかだ。
「アークリアクターの改善が進めばヘリキャリアだって作れるようになるんだ。仮に、そんな技術が外に漏れ出たらどうなると思う?」
早すぎる技術革新は破滅をもたらすものだ。銃で撃たれても死なない人間が、逆に歩兵規模で小競り合いをしているからこそ、大事になっていないとも考えられるだろう? そう考えると、私の技術はキヴォトスに破滅をもたらす一手になりかねい。
研究の成果を報告させられるミレニアムに行くということは、そのリスクを抱えたまま開発を続けていかなければならない。
『……なるほど』
「そういうこと。後は単純に興味がある事だけを研究したいって言うのもあるけどね」
ということで、デスクの上の紙束をH.E.R.M.Aに掃除してもらい、横に立てかけておいたリュックサックのようなものを机の上に置く。
シャツの上に羽織っていたパーカーを脱ぎ、Tシャツとチノパンという極めてラフな部屋着姿になる。……最近顔を隠すためにパーカーばかり着てたし、偶には洒落た服でも見繕いに行くか。……まあ、人型のメンズ服なんて無いからユニセックスの服を選ぶしかないんだけど。
「辛気臭い話はこれで終わりだ。一応対策も立ててあるし、そこまで深刻に考える必要もないよ」
『はい。丁度
それと同時に、ラボにチャイムの音が大きく響き渡る。地下で作業をしているときに来られたときの為に音を大きめに設定したが、少し大きくしすぎたかもしれないね。
「ごめん。ちょっと待ってくれ」
『は、はい』
玄関のカメラに映る人の姿を確認し、インターホン越しに声をかける。客人を立って待たせるのは気が引けるが、こればっかりは許してほしい。
こういうの好きそうだから見せてあげたかったんだけど……まあ仕方ないね。
ちなみに先ほど言った、トリニティの学生に多く生えている天使の羽についてだが、私も例外なく肩甲骨から大きな羽が生えている。
キヴォトスの洋服屋は、裾上げをするような感覚で背中に羽を通すための穴を開けてくれるし、これ自体は珍しいものではない。問題はその色だ。
「この羽も邪魔だよなぁ……ったく」
ミカの様に真っ白でもなく、ナギサの様に乳白色でもなく、私の羽はそこに金箔を被せたようなゴールドで塗りたくられている。おかげで似合う服もなかなか無いし、これを見られただけで私だとバレてしまうのだ。……つまり、アイアンマンとして活動する際は、
机の上に置いたリュックサックを持ち、羽を折りたたんでその上から押さえつけるようにして背負う。
ガチャン、と機械が動く音がラボに響き、折りたたまれた羽を側方から囲う様にリュックが変形する。
「我ながらよく考えたものだよ」
リュックの肩掛けを両手で前に押し出すと、一気に背中のパーツが展開され、私の羽と胴体を囲う様にして展開される。
遅れて押し出した肩掛けのワイヤーを伝う様に装甲が腕を覆いつくし、最後は背中を降りて来たパーツが私の下半身を上から覆う。
最終的に15秒ほどで、私の全身は青と銀色の金属の装甲で覆われた。同様に先っぽまで覆われた羽をピコピコと動かしながら、上へと続く階段を上る。
「少し羽が窮屈だな。身体データを後で取り直そう」
『アテネ様は成長期ですからね。データを取り次第Mark4のモデルを修正させていただきます』
優秀な我が助手へ感謝の言葉を伝えた私は、羽を背中に固定して、待たせている客人の元へと向かう。
鍵を開け、扉を開けると、そこには2種間ほど前にお世話になった、赤い髪に角を生やした生徒の姿があった。
「こんにちはアル。わざわざ遠くから済まないね」
「依頼ともあれば当然よ! 報酬も貰ってることだしねっ」
満面の笑みで手に持ったライフルを抱え、こちらに身を乗り出すアル。
彼女の住んでいるゲヘナからD.U郊外にあるこの家までは距離的には近いが、1人で来るには不安もあっただろう。それを顧客に感じさせない信念の固さは、到底中学2年生とは思えない。
「立ち話もなんだ、どうぞ入ってくれ。1人で住むには些か広い家だから、窮屈にはならないはずだ」
「そ、そうね! ……お、おじゃまします……」
緊張した面持ちで靴を脱ぎ、かかとをこちらに向けて揃える。ゲヘナで滅茶苦茶やっている割には育ちの良さがよく出ていて何よりだ。
「凄い……こんな広い家初めてよ!」
リビングに入るなり、感動した様子で口元を押さえるアル。客人を呼ぶのは初めてだが、こんなに良い反応をしてくれると頑張って建てた甲斐がある。
土木、基礎、建築まで全て自分で……正確にはH.E.R.M.Aが所有する数十台のドローンによって建てたものだ。建築はド素人だったが、モデリングをした後H.E.R.M.Aと調べながら建てた思い出が詰まっている。
家具や家電はトリニティ時代によく使っていたブランドのものを使用しているため、ゲヘナ出身の彼女には合わないかとも心配したが、これを見る限り杞憂だったようだ。
「こ、これ……建てるのにいくらかかったの!?」
「んー? そこら辺気にしないで建てたから覚えてないんだ。全部自分でやったから、相場よりはかなり安くなってると思うんだけど」
「こ、これがお金持ちの発言……流石ね」
キラキラした瞳を向けてくるアルに小さく笑うと、ダイニングの椅子を引いて腰掛けるように促した。
それに従うアルだったが、私用に作られた椅子のためか高さが合わないようで、足をプラプラと揺らしている。
「昼食は済ませたかい?」
「ええ。駅で蕎麦を食べて来たわ。今日は奮発してかき揚げを付けたの!」
「……もう少し贅沢しても良いんじゃないか? 口座の凍結は解除されたのだろう?」
駅の蕎麦屋というと、ホームの中にある立ち食いのお店だった気がする。確かに美味しいし、私も1人で居るときはたまに食べていた。だが嬉々として100円のかき揚げを追加したことを言われると、普段何を食べているのか心配になってくる。
苦笑いをしながら……ってマスク越しだから関係ないのか。
ともかくそう問いかけると、アルは気まずそうに視線を右に逸らした。
「それが……この前の依頼で失敗しちゃって……壊した物の請求でほとんど」
「……なるほど。怪我は無かったかい?」
「そ、そうね。一応私たちは無事だった……けどせっかくのお金を……申し訳ないわ」
中学生が1000万も何をぶっ壊したんだと頭を抱えそうになったが、そう言って頭を下げるアルを見たら責める気にもなれなかった。
怪我がないならそれでいい。金なんて生きてればいくらでも稼げるんだからな。
「それは君たちの金だろう。私に頭を下げる必要はないさ」
「でも……」
「アウトローを目指しているなら、私の金を私がどう使っても勝手だろう。くらいは言えるようにならないとな」
世の中には社長の心臓を引っこ抜いて自分の兵器にくっ付ける悪人も居るんだ。あれに関しては元の性格に問題があったとは思うけど。
私は一目見て裏切りそうだと思ってたけどね。だって話し方とか表情が胡散臭ったし。
「少しお茶をしようか。お菓子も用意しているから、好きなものを食べるといい」
ケーキやマカロンなど、紅茶に合いそうなお菓子を冷蔵庫から取り出し、机の上に並べる。
「わぁ……! ありがたく頂くわ! ……美味しいっ!」
「あまり食べ過ぎるなよ? 飲む前に全部なくなりそうな勢いだが」
「わ、分かってるわ!」
マカロンを頬張って頬を落とすアルをキッチン越しに見ながら、棚から茶葉を取り出してティーポッドに入れる。
『随分と甘やかすのですね。アテナ様はアル様のような女性がタイプなのですか?』
「うるさいぞ。別にそんなんじゃない」
中学3年生に欲情するわけないだろう。主人を変態扱いするな。
ふざけたことを言うH.E.R.M.Aに、外に声が漏れないよう小声で言い返す。
『では、小さい頃のミカ様とナギサ様を重ねているのでしょうか』
「……かもな」
歳は1つしか変わらないはずだが、純粋な性格のアルを見ていると懐かしい気持ちになってくる。重ねるのはアルにとってもミカ達にとっても失礼な事だが、色々と思い出してしまうものだ。
まあ、あの子たちと違って私は性別も偽ってないし、そもそもアルは私が生徒だとすら思っていないだろう。キヴォトスに普通に居る、ちょっと戦闘向きなロボット型の人間だと思っているはずだ。
嘘をついていることには変わりないかもしれないが、女と偽って接していたミカ達に比べるとまだマシだろう。
「ほら、出来たぞ。これを飲んだらお待ちかねの依頼だ。終わったら夜ご飯作ってあげるから、ちゃんと頑張るんだよ?」
「任せて頂戴! 美味しいものを食べた私の力、見せてあげるんだから!」
――Mark3
リュックサック型スーツ。背負うときは羽がはみ出ないように折りたたんでその上から装着する。ヒフミを助けたときに装着していたMark2比べて、羽全体を囲ったことにより着用中に羽を広げることが可能になった。Mark2をずっと着用していると羽が痺れるらしい。
羽による攻撃や防御が可能になったほか、飛行姿勢を変更することで細かい制動が可能になっている。羽を背中の上に格納することも可能。
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