MARVEL STUDIOS 「ブルーアーカイブ」   作:MAN

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奇妙な出会い

 

 

 

 依頼を終え、アルに夕食を振る舞ってゲヘナまで送り届けた。

 想定より遅くなってしまい、4月ということもあって暗くなってしまった為、背中に乗せて飛んで行ったのだが、思いの他好感触なのは嬉しかった。スーツを見た時の反応もそうだし、女子ばかりのキヴォトスでは数少ない理解者に出会えたのは喜ばしいことだ

 そしてその後家に戻ってきた私は、相も変わらずラボにて以来の成果を確かめている最中というわけだ。

 

「さーて今夜は眠れないぞH.E.R.M.A。まだまだ改善するべきところは沢山あるからな」

 

 外見だけは完成したMark4のモデルをスワイプして回し、椅子によりかかってアイデアを練る。

 

『今回の測定結果をまとめたデータを表示します』

 

「ありがとう。さて……どこから見ていくべきか」

 

 眼前に画像としてまとめられたデータが投影される。親指と人差し指でその図を拡大し、手元の部品とモデルと比較してみる。

 いくつか分けられた状態で表示されていたが、その中で最も目を引く形をしたグラフをタップし、それ以外を視界の隅に追いやった。

 

「最も損壊率の高かった攻撃のデータを詳細表示してくれ」

 

『最後のテスト時の狙撃ですね。着弾時と爆発時に合計して想定の400パーセントのダメージを受けました。変換後のエネルギー充填率も60パーセントを超え、変換後には整流回路、ストレージ、インバータ等の機器がオーバーヒートを起こしています』

 

「保護機構のキャパを上回るエネルギーが舞い込んできたからだろうな。薄型の装甲に取り付けられるのはこれが限界か」

 

 そう。私がアルに依頼した内容は、試作品である弾丸に込められた神秘を動力として吸収する機構のテストだ。様々な条件で攻撃を加えてもらい、着弾時のエネルギー分布のデータを取ることを目標としていた。だが思いのほか攻撃が強く装置が破壊されてしまったのだ。

 轟音を立てて爆発する装置を見て、白目をむいて狼狽えるアルだったが、想定外の事態は大歓迎なのでテストは上々といったところだろう。ご褒美として部屋で同居しているという友人の分も含めて、高級なケーキを大量に買ってあげた。

 

「副次効果として攻撃力の減少も確認。減少率は1発に込められたエネルギー量が小さければ小さいほど大きいと……一定以下のダメージを吸収するRPGのクソボスみたいな性能してんな」

 

 狙撃したときの「どう? かっこいいでしょ……えぇ!?」みたいな反応は中々面白かった。

 不服そうにしていたがテストなんだから仕方がない。というより下がった状態であの強さとは驚きだ。便利屋よりも傭兵の方が向いてるんじゃないかとも思ってしまう。 

 

 温度上昇や損壊率のデータを見ながら、浮かんだ対処法を言葉に出し続ける。

 

「────まず冷却システムの強化が必要だな。液体冷却システムを導入して、熱をより効率的に放散するようにしよう。ヒートシンクは高熱伝導性素材に変更。銅やグラフェン、ありとあらゆる素材パターンを検討してくれ」

 

『熱が一定温度に達した際にエネルギーを吸収し、相変化で温度上昇を抑制するのはどうでしょう?』

 

「フェーズチェンジ素材か、悪くない提案だ。その場合は性能よりも使用環境を優先してくれ。冬場に使えないとなったらお笑いだからな」

 

 エネルギーストレージのキャパシティを拡張する必要があるな。バッテリーバンクの容量を増やすことで、エネルギーを一時的に蓄えるスペースを確保。スーパーキャパシタも導入しよう。

 

「エネルギー分散システムの実装も考えたい。キャパシティを超えるエネルギーが入力された場合、他のデバイスやシステムにエネルギーを分散させるんだ。仕組みを取り入れれば、オーバーヒートを防げる。さらに消費回路を追加して、余剰エネルギーを即座に消費するような回路を設計してみてくれ」

 

 素材や構造の改良も重要だな。高温に耐える新素材を導入して、全体の耐久性を向上させよう。

 

「断熱材もふんだんに使ってくれ。内部の熱が他の部分に伝わるのを防ぐんだ」

 

『ですが、その場合設計を大幅に超える厚みになってしまいます』

 

「……なら、他の部品に影響がない場所に搭載すればいいだろう?」

 

 背中から生えている黄金の羽をピコピコと動かし、小さく笑う。

 今まで鬱陶しいとしか思わなかったこの羽だが、こんな形で役に立つとは思わぬ発見だ。

 

 

 

 

 

 

 

 そうして設計案の改良を重ねること数日。私は羽を含めた全身をピッタリと覆う特注のタイツを着用し、ラボの一室で準備が整うのを心待ちにしていた。

 ガチャガチャと視界の端で動くマニピュレータをあえて見ないようにしながら、髪の毛をポニーテールにまとめ、タイツの背中に開けた穴に通す。

 

『最終調整が完了しました』 

 

 よし来た! 

 まったく。安全に配慮するのは大事だが、待たせすぎるのもどうかと思うぞ? 

 

「記念すべき初装着だ。H.E.R.M.A、録画を忘れるなよ?」

 

 私を取り囲むように飛び回るドローン一台一台に目を配りながら、肩や羽を動かしてストレッチを行う。

 初めての携帯型じゃないスーツを着れる興奮からか、羽がブンブンと犬の尻尾の様に忙しなく動いている。感情が昂ると私の意志とは関係なく動くため、よくミカに「機械いじりしてるときのアテちゃんの羽、ハエみたいだよね」なんて煽られていたのが懐かしい。

 

「よし。────ではこれより、Mark4の装着テストを行う!」

 

 ラボの一室、そこに不自然に空けられたスペースの端に立つ。

 すると眼前の床がガチャガチャと音を立てて開き、そこからチタン合金を溶接して作られたブーツがゆっくりと昇ってくる。そこに足を入れると、下からふくらはぎと腿を覆うように分割されたスーツが、マニピュレータによって自動で装着された。

 

 分割されたスーツを固定する音がラボ中に響き渡るのを聞きながら、両側から出てきたグローブに手を入れる。合わせて前腕、二の腕、肩の部品がカチャカチャと金属のぶつかる音と共に取り付けられた。

 腕の部品が取り付け終わる頃には羽を含めた胴体の基礎の装着が完了しており、各部に取り付けられたボルトが締められ、タイツの上から程よい圧迫を感じる程度で終わった。よし。サイズの調整も完璧だな。

 動力源となる新型アークリアクター、青と銀色のカラーリングの装甲を装着。最後にお馴染みのマスクを装着して……っ! 

 

「痛たたたたっ! かみっ! 髪の毛挟まってるって!」

 

 下ろした前髪の部分が顔を覆うマスクに挟まって凄いことになっている。

 私の叫び声と共にマスクが上がり、前に転ぶような姿勢で飛び出してしまう。

 

『申し訳ございません。前髪に関しては想定していませんでした』

 

 ……そうか、トニーは私と違って短髪だからな。 私の髪の毛は胸にかかる程度のロングヘアとなっている。輪郭や体つきを誤魔化し、少しでも女性に近づけるため伸ばしていたのだが、やってみるとこれが案外楽しいのだ。小さい頃はよくミカとナギサの髪をアイロンで巻いていたのが懐かしい。 後ろに関しては纏めて服の下に潜り込ませたが、まさかこんなところで躓くとは思わなかったぞ……

 

「……いや、大丈夫だ。ちょっと横に逸らせば……よし」

 

 再度マスクを下ろし、装着が完了した。……締まらない雰囲気になってしまったが、概ね成功と言っていいだろう。

 ラボの壁に取り付けた、ダンスの練習で使える程の大きい鏡の前に立ってみる。

 

「ふおぉぉぉ……! かっけぇ……!」

 

 背中の羽を広げて適当なポーズを取ってみる。 我ながら素晴らしいデザインだ。ヘイローから動力を得る際に出る、水色の淡い光もアークリアクターの光と合わさって雰囲気が出ている。

 トニーのような金色と赤いカラーリングではなく、銀色と青で塗装したのもこれと合わせるためだ。背中のデカい羽も合わさって北欧神話のヴァルキリーみたいだな。

 

「モデルで見るのと実物じゃ全然違うな! 厚みのある装甲の方がやっぱりカッコいいし!」

 

 太ももやふくらはぎの補助翼を展開したり、両手のリパルサーを構えたりしていると、H.E.R.M.Aのドローンが鏡越しに私を撮影している姿が見えた。

 

「……撮ってたのか?」

 

『はい。アテネ様が記録を残すようにとおっしゃっていたので』

 

「ここは撮らなくていいだろうが!? 早く消せ! 今すぐにだ!」

 

 年甲斐性もなくはしゃいでしまった事実に顔が火照るのを感じる。体温上昇を感じ取ってスーツから冷たい風が吹いて来るのも何だか腹が立つ。

 

『世間ではアテネ様は高校生なので、そこまでおかしな絵図ではないと思われますが』

 

「……飛行テストだ」

 

 すかした態度で弄ってくるH.E.R.M.Aを無視しながら、ラボの端の方に立つ。

 ガコンという音と共に天井が開き、少しづつ星空と巨大なヘイローが見えてきた。

 Mark3と比べて飛行速度も持続時間も桁違いだが、飛行プログラムもそれに対応できるようアップデートを済ませている。マッハで飛ぶのは初めてだが、ぶっつけ本番でもなんとかなるだろう。

 

「行くぞ!」

 

 両手足に一気に力がかかるのを感じ、それに任せて一気に出力を最大まで上げる。体に凄まじいGが掛かるが、ヘイローのあるこの体にその程度何の負担にもなっていない。

 そのまま高度1,000メートルほどで上昇し、体を水平に向けてさらに加速する。遠くに見える大都会D.Uの街並みに向かって、マッハを優に超える速度で突っ切って行った。

 

「yeahhhhh! 生身で聞くソニックブームは格別だな! 見ろH.E.R.M.A、D.Uの夜景は綺麗だぞ! 写真を撮れ!」

 

『承知しました。アーカイブに記録しておきます』

 

 耳元に走る衝撃波に叫びながら、周囲に走行する車が無いことを確認した後、羽を折りたたんで動力を切り落下。

 サンクトゥムタワーに繋がる4車線の道路に激突しそうになる直前で、再度リパルサーを最大まで出力。羽を展開して速度を揚力に変換し上昇する。

 さっき0から上昇したときとは比べ物にならない圧力と衝撃が体に伝わる様は、前世で乗ったジェットコースターを思い出させる。

 

「HAHAHA! スリル満点だっ!」

 

 激突すればヴァルキューレの交通局が泣くことになるが、H.E.R.M.Aによる飛行サポートが搭載されているためそんな心配は無用だ。

 

「よし! このままアビドスの砂漠まで行くとしよう! あそこなら誰も居ないだろうし、星空が綺麗に見えるぞ」

 

『承知しました。砂嵐にご注意ください』

 

「分かってるさ!」

 

 戦闘機と同等の飛行能力を持つこのスーツが砂嵐程度に負けるとは思えないけど。

 あっという間にD.Uの区画を抜け、辺りが一気に暗くなる。

 マスクの暗視ゴーグルを起動し飛行を続けること数分。寂れたアビドス鉄道の線路と、その奥にある市街地の明かりが見えてきた。

 

 そのまま市街地を抜けると広大な砂漠が視界一面に広がっていく。よく見ると市街地の端まで砂が進行しており、道路の一部に侵食するように砂が被さっている。

 

『アビドス……かつてはキヴォトスで最も長い歴史を持った最大の学園として名を馳せていた自治区でしたが、数十年前から頻発し始めた砂嵐によって環境は激減。私立ネフティス中学校、アビドス公立第一中学校、アビドス高等学校を除いて現在は廃校となっております。治安も相当に悪い地域となっているため、町に降り立つ際は注意してください』

 

「自然災害というのは恐ろしいな……ん? あれは……」

 

 速度を落として飛行しながらH.E.R.M.Aの解説に耳を傾けていると、奥の方で小さな光が点滅しているのが見えた。

 カメラを拡大してモニタリングすると、ヘルメットをかぶった生徒たちが奥に見える学校らしき建物に発砲していた。

 

「こんな時間に銃撃戦とは物騒だな」

 

 校舎の屋上に降り立って集音マイクをオンにすると、銃撃戦と共に怒号が飛び交う様子が聞き取れた。

 眼下には背の低い桃色の髪をした小さな子供が、遮蔽物に身を隠しながら手に持ったショットガンで応戦している。……寄って集って子供を撃つとか、こいつらには恥という感情は無いのか?

 

『はぁ……ユメ先輩が居ない時に限って襲撃なんて、ついてないですね』

 

『ぎゃはははは! どうした! 抵抗しないとお前らの学校は、このカタカタヘルメット団によって奪われてしまうぞ!』

 

 ヘルメット団……ブラックマーケット以外でも活動してるのか。

 

『カタカタヘルメット団……主にアビドス自治区で活動を行っているヘルメット団です。バンクを調べてみたところ、複数の企業との取引履歴が確認できました。連邦生徒会へ送られた支援要請を確認する限り、このような襲撃は初めてではないようです』

 

「当たり前のようにクラッキングするな。……ということは、懲らしめても良い集団ってことだよな?」 どちらにせよ絵面が酷すぎるので助けるつもりではあったが。

 

『問題ありません。スーツのテストを行いますか?』

 

 H.E.R.M.Aもノリノリのようだし、ここはスーパーヒーローとしてスマートに解決してみよう。

 校舎の裏側から飛び降り、補助翼と羽を展開して飛び立つ。リパルサーの轟音が辺りに響き渡り、ヘルメット団の視線が空中を旋回する私へと向けられる。

 

「な、なんだ!?」

 

 撃ち落とそうとするヘルメット団の弾丸が飛んでくるが、三次元的に動き回る物体に当てるのはほぼ不可能。仮に当たったところで、分厚い装甲で守られた体には何のダメージにも届かない。

 

「あれは……連邦生徒会の応援ですか?」

 

 ピンク髪の女の子は何やら盛大な勘違いをしているようだ。確かにカラーリングはちょっと似てるけども。

 

「少し卑怯だが、恨むなら大勢で寄ってたかって攻撃する自分たちを恨むんだな」

 

 大腿部、翼部の装甲が展開し、地上の目標に向かって小型のミサイルが展開される。

 着弾と同時に爆発したミサイルは、ヘルメット団や彼らが乗って来たであろうトラックを吹き飛ばした。

 

「ぎゃああああ!?」

 

 夜の校門を照らす光は月明りのみ。そんな状況で響き渡る爆発音と閃光に、ヘルメット団の叫びが混じって耳をつんざく。

 土嚢やがれきで体を隠してこちらを撃つヘルメット団員を、地面を滑空しながら翼で4人まとめて吹き飛ばし地上に降り立つと、アサルトライフルやサブマシンガンの弾丸の嵐がスーツを襲った。

 

「何だコイツ!? カイザーのオートマタか!?」

 

「あんな低スペックなロボットと一緒にしないでもらいたいね」

 

 背後からの銃撃を羽で防ぎ、遠くから撃ってくる敵をリパルサーで吹き飛ばす。Mark3のときとは比べ物にならない轟音が轟き、ヘルメット団は絶叫しながら吹き飛んでいった。

 

「ぎええええ!?」

 

「おいおい!? あの子死んでないだろうな!?」

 

『問題ありません。ここ一週間うつ伏せで眠れなくなる程度でしょう。傷跡も残りませんので安心してください』

 

「そうか! なら良かった!」

 

 その程度なら程よい罰にもなるだろう。ということで一応頭を避けながらリパルサーをぶち込んでいく。すると、瓦礫に隠れていたであろうヘルメット団が、私の頭に向かって銃を構えた。

 

「動くな! お前いきなり来て邪魔しやがって! ……ぎゃあ!?」

 

 こちらが反撃する前にヘルメット団がその場に倒れる。後ろを振り返ると、先ほどの少女がショットガンを構えて立っていた。

 

「油断してるからそうなるんですよ! 私も加勢します。後ろは任せてください!」

 

「危険だぞ! 子供は……」

 

 高校生どころか中学生にも見えない小さな体格から止めようとしたが、ホルスターから引き抜いたハンドガンで的確にヘルメット団にヘッドショットを決める様を見て言葉を止める。

 ……なるほど。何回も襲撃から守ってきただけあって、中々パワフルな子みたいだね。

 

「誰が子供ですか! 今年高校入学したんですけど! ……この翼良いですね。ちょっと貸してください」

 

「ちょ、引っ張るな!」

 

 同い年かよ……って力つっよ!? 

 合計数百キロあるスーツの羽を引っ張って弾を防ぐ馬鹿力を見せる少女。その小さな体のどこに力を持っているのか気になる所だが、今はこの激化しつつあるヘルメット団の攻撃を凌ぐのが先だ。

 

『彼女、凄まじい神秘です。アテネ様、提案があるのですが────』

 

 H.E.R.M.Aが驚いた様子で呟いた後、一見とち狂ったかのような作戦を提案してくる。

 普通ならあり得ない作戦だが、開発者は自分が作ったモノの可能性を限界まで追い求めたくなる生き物。私もその例に漏れずリスクよりも好奇心が上回った。

 

「乗った。……君! ちょっと俺の羽に思いっきり銃をぶっ放してくれないか!」

 

「何言ってるんですかこんな時に!」

 

「いいから!」

 

 気狂いを見るような瞳で見上げてくる少女だが、気にせず大声で催促する。

 

「……もう! どうなっても知らないですからね!?」

 

 そういうと少女は私の羽を掴み、至近距離で引き金を引いて発砲した。

 凄まじい衝撃が羽に伝い、眼前のモニターが赤くエラーを伝えてくる。

 

『充填率143パーセント! UNI-ビーム発射可能です!』

 

「来た来た来たぁ! 掴まってろよ!」

 

「へっ? ……きゃあああぁぁ!」

 

 翼で少女の腰を巻き付け、背中に乗せて急上昇する。

 10メートルほど飛び上がると、両手足を地面に向けてホバリングした状態で姿勢を保つ。

 

「最大出力だ! 行くぞ!」

 

『お待ちくださいアテナ様! 動力を全て使い切っては────』

 

 何やらH.E.R.M.Aが叫んでいるが気にしない。私は地面に胸部のリアクターを向け、最大出力でUNI-ビームを放った。

 

「おいおい何だ……ぎゃあああああ!!!!」

 

 光線は真下のトラクターを木っ端みじんに粉砕し、爆発と共にヘルメット団を全てのみ込んだ。

 

 砂埃が晴れ見えてきたのは、跡形もなくなったトラクターの残骸と、直径5メートルほどの範囲で地面がむき出しになった道路。ヘルメット団は爆発の余波で吹き飛ばされたのか、積もった砂や瓦礫と化した家に頭を突っ込んで痙攣している。

 

「なんて威力……あなた、一体何者ですか?」

 

 それを見た私の中で興奮と寒気が交互に脳を駆け巡った。もちろん直接当たらないように調整して撃ったが、万が一当たっていたら、キヴォトスの生徒でもどうなっていたか分からない。

 充填したエネルギーとアークリアクター。そして私の神秘を全て込めたとはいえ、ここまでの力とは。

 

 ……待てよ? 私の神秘も使うということは……あ、ヤバい。

 

「……もしもし? 聞いてますか……うわわわわっ!?」

 

「クソッ! ……がはっ」

 

 エネルギー切れを起こした両手足のリパルサーが光を失い、少女を背中に乗せたまま落下する。

 重さ数百キロのスーツの下敷きにするわけにはいかないため、何とかうつ伏せで落下できたが、衝撃を吸収しきれず肺の空気が外に漏れ出た。

 

『申し訳────。窒息の危──、マス────』

 

 H.E.R.M.Aが途切れ途切れに何か喋っているが、脳震盪を起こした影響もあり何も聞こえない。

 

「大丈夫ですか? 何とか言ってください! ……重っ!」

 

 うつ伏せに倒れる私の体を転がし上を向かせる少女。心配した様子の顔がモニター越しによく見える。

 ……ん? ()()()()()()? カメラもオフなのに何で見えるんだ? 

 

「あなた、人間だったんですか!?」

 

「……どうも」

 

 あー……やらかしたなこれ。

 恐らく空気循環システムの停止を恐れたH.E.R.M.Aがマスクを開けたのだろう。空にはアビドスの綺麗な星たちと、こちらを覗き込む2色の綺麗な瞳を持つ少女の顔が見えた。

 

「……ちょっと眠くなってきたから寝るね」

 

「……本気で言ってます? この状況で?」

 

 仕方ないだろ……神秘を使い切ると意識が……

 

「ごめ、ん……」

 

「……嘘ですよね? 寝たらこのまま置いて行きますから……ちょっと!?」

 

 がくがくと肩を揺らす少女の叫びを聞きながら、私は眠気に身をゆだねるのであった。

 

 

 





 装着シーンはアイアンマン1のMark3のオマージュです!
 アマプラで見れるから是非見てみよう!

 高評価、感想、ここ好き頂ける作者の励みになります。モチベは投稿頻度にも露骨に作用するので、面白いと思ったらよろしくお願いします!
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