初恋ゴースト空を飛ぶ   作:スイーツ阿修羅

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「奇怪な日常」

※この物語はフィクションです、実在の人物・団体・事件などとは一切関係ありません。また、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものでもありません。

─────

 

 

 僕の家には一年前からお化けが住み着いている。

 

『ほら(あきら)っ! もう学校行く時間じゃけぇ、早ぅ起きんさいっ!』

 

 お化けというにはいささか可愛らしい、美少女のお化けである。

 

「……分かっとる。今起きるけん」

 

 僕は独り言(・・・)を呟いて、眠い目を擦りベッドから出た。

 彼女の姿は一般人には見えない。

 彼女の声は一般人には聞こえない。

 

『おはよう(あきら)! 今日も早起きできて偉いねぇ! 

 朝ご飯にする? 着替えにする? それとも……わ・た・し?』

 

「……着替えかな。 つーかそれ、お前を選んだら何になるんだ?」

 

『そりゃあもう、同棲したての時みたく、一日中部屋でうちとあんなことやこんなことをっ……///』

 

「……耳元で囁くなっ! ……冗談言ってないで、早く学校に行くぞ」

 

『おうっ! 今日も楽しもーー!』

 

 お化けになった彼女の名前は、穂風千夏(ほかぜちなつ)

 小学生だった頃の、僕の初恋の女の子。

 一年前に亡くなった彼女のお化けを、何故だか僕は見ることができた。

 それからというもの、幽霊の千夏(ちなつ)と僕の、奇妙な同棲生活が始まって、今に至る。

 

 一年前、あの日あの場所で、僕たちは再会した。

 

 忘れるはずがない。

 あの日、崖の上で見たあの景色は、未だ脳裏に焼きついて離れない。

 

 ふわふわと黒髪を(なび)かせる彼女の泣き顔は、夜の闇よりずっと(くら)くて、魂が呑まれるような美しさだった。

 

 

 ★★★

 

 

【一年前】

 

ー遺書ー

 

 ごめんなさい、お母さん。

 僕はもう生きるのが耐えられません。

 お母さんに不満がある訳じゃないんです。

 お母さんには感謝しています。毎日僕のためにお金を稼いで、ご飯を作って置いててくれて、お母さんのお陰で僕は生きられています。

 でも、もう僕は、お母さんの優しさに耐えられないんです。

 僕は出来損ないだから、お母さんの期待に応えられません。どんなに励まされても、頑張る気力が沸かないんです。

 このまま僕が生きていたら、お母さんを死ぬまで苦労させてしまいます。

 僕がお母さんを楽にするためにできることは、もう死ぬしかないんです。

 先立つ不幸をお許しください。どうかお母さんは幸せに生きてください。

 

 森下彰(もりしたあきら)

――――――――

 

 机の引き出しの中に遺書を残して、オンボロアパートを見納めて、僕は半年ぶりに外に出た。

 

 もう迷いはない。後戻りなんてしない。

 

 ガタン、ゴトン、と車両が揺れる。

 お母さんから受け取ったお金で新幹線の切符を買って、僕は6年ぶりに故郷へと向かっていた。

 

 気分転換のために、祖父の家に行きたいと言ったら、お母さんは涙ながらにお金を出してくれた。

 僕が家に引きこもってから実に三ヶ月ぶりの外出である。

 何も知らない母さんは、息子の久々の外出に歓喜していた。

 

 僕にとっては、母さんの優しさがたまらなく痛かった。

 誰にも迷惑をかけたくなかった。

 この世界とは違うどこかに消えてしまいたかった。

 

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