※この物語はフィクションです、実在の人物・団体・事件などとは一切関係ありません。また、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものでもありません。
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僕の家には一年前からお化けが住み着いている。
『ほら
お化けというにはいささか可愛らしい、美少女のお化けである。
「……分かっとる。今起きるけん」
僕は
彼女の姿は一般人には見えない。
彼女の声は一般人には聞こえない。
『おはよう
朝ご飯にする? 着替えにする? それとも……わ・た・し?』
「……着替えかな。 つーかそれ、お前を選んだら何になるんだ?」
『そりゃあもう、同棲したての時みたく、一日中部屋でうちとあんなことやこんなことをっ……///』
「……耳元で囁くなっ! ……冗談言ってないで、早く学校に行くぞ」
『おうっ! 今日も楽しもーー!』
お化けになった彼女の名前は、
小学生だった頃の、僕の初恋の女の子。
一年前に亡くなった彼女のお化けを、何故だか僕は見ることができた。
それからというもの、幽霊の
一年前、あの日あの場所で、僕たちは再会した。
忘れるはずがない。
あの日、崖の上で見たあの景色は、未だ脳裏に焼きついて離れない。
ふわふわと黒髪を
★★★
【一年前】
ー遺書ー
ごめんなさい、お母さん。
僕はもう生きるのが耐えられません。
お母さんに不満がある訳じゃないんです。
お母さんには感謝しています。毎日僕のためにお金を稼いで、ご飯を作って置いててくれて、お母さんのお陰で僕は生きられています。
でも、もう僕は、お母さんの優しさに耐えられないんです。
僕は出来損ないだから、お母さんの期待に応えられません。どんなに励まされても、頑張る気力が沸かないんです。
このまま僕が生きていたら、お母さんを死ぬまで苦労させてしまいます。
僕がお母さんを楽にするためにできることは、もう死ぬしかないんです。
先立つ不幸をお許しください。どうかお母さんは幸せに生きてください。
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机の引き出しの中に遺書を残して、オンボロアパートを見納めて、僕は半年ぶりに外に出た。
もう迷いはない。後戻りなんてしない。
ガタン、ゴトン、と車両が揺れる。
お母さんから受け取ったお金で新幹線の切符を買って、僕は6年ぶりに故郷へと向かっていた。
気分転換のために、祖父の家に行きたいと言ったら、お母さんは涙ながらにお金を出してくれた。
僕が家に引きこもってから実に三ヶ月ぶりの外出である。
何も知らない母さんは、息子の久々の外出に歓喜していた。
僕にとっては、母さんの優しさがたまらなく痛かった。
誰にも迷惑をかけたくなかった。
この世界とは違うどこかに消えてしまいたかった。