一番星の王子さま   作:160万のワインを飲み損ねた

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 カメラの前で、可愛い服を着てガールズトークをする。苺プロのスタジオを少しアレンジして、ザ女の子って感じの部屋にしてある。ソファもカバーをかければ可愛い感じになるし、いくつか私物を持ち込めばそれっぽくなる。かなちゃん先輩もMEMちょも、耳がついたフードをかぶって動物を模したルームウェアを選んで可愛い。私のはウサギで、先輩のは猫、MEMちょのはパンダ。猫だから尻尾も付いてて、私は手持ち無沙汰になるとそれをいじる。生地がフワフワで、この触り心地がクセになりそう。

 

 立ち位置は毎回違う。前回はかなちゃんで、前々回はMEMちょ。上げる内容も話し合って決めるようにしてる。ピエヨンとコラボしたり、昔のB小町の曲を歌ってみたり。今回みたいにまったり話してる回もある。

 

 今回のトーク内容は、色恋とかじゃなくて最近ハマっていることがテーマ。興味はなくはないけど、アイドルだからしない方が良いよねってなった。MEMちょはイメージ通り。かなちゃんは運動って言ってボカしてるけど、ストレス発散兼ねてよくパパの所に通ってるのを知っている。私もたまにやるけどスッキリするのはわかるんだけど。そのうち本格的にやり始めてそっちでデビューしても、私は驚かない自信がある。私は最近、というかずっと変わらずアイドルにハマってるからそれを言って、二人がツッコミを入れてくる。

 

 締めの一言で撮影が終わった。

 

「お疲れー。二人ともやっぱり撮られるのに慣れてるねえ」

 

 ねぎらいの言葉に、私たちもお疲れと返す。

 

 ユーチューブの撮影に一番慣れているのはプロのMEMちょなんだけど、かなちゃんは役者で撮られることに慣れている。私はドラマなんて小さい頃にちょこっと出て、それ以降は何が多いかと言われるとモデル業。写真がメインだから動画とはまた違うけど、あんまり差は感じない。

 

「当然でしょ。でもなんかやっぱり違和感あるのよね。格好?」

「可愛いから良くない?」

「可愛いけど……私のキャラじゃないって言うか、なんか私生活切り売りしてる感が」

「そう言うのが受けるんだよぉ。可愛い子達が可愛い服着てワイワイするだけでも一定数は稼げるんだから。特に私たちはアイドルなんだからオフっぽい感じは受けるよ」

 

 MEMちょだけのファンは、新しく作って貰ったB小町のチャンネルにも大体登録してくれてる。最初の登録者数の伸びはそれもあるんだろうけど、今も順調に伸びてくれてる。推しても良いなって思ってくれて登録してくれると良いな。

 

「まだ実際に曲出したりはしてないけどね」

「またそんなこと言うんだから。今作って貰ってるってミヤコさんも言ってたよ」

「当面はB小町の使えばなんとかだけど、やっぱりデビューしたからには新しい楽曲は欲しいよねぇ」

「JIF前には間に合うって言うから、そこがお披露目だね」

 

 振り付けも覚えて、歌詞も覚えて。これまでのB小町の曲ならほとんど覚えているけど、それも細いところも見直さないといけない。

 

「新参者の私が言うのも失礼だけど、よくJIFに出れるねぇ。今は普通のグループが何年も必死に活動してやっと立てるかどうかって感じなのに」

「それだけ私たちの魅力が凄いってことだよ!」

「よく言うわよ。B小町って言ってもメンバーはど新人。絶対裏でコネコネ言われてるわよ」

「コネでも良いじゃん。せっかくの晴れ舞台なんだから、派手にデビューして楽しまなないと! それで見にきてくれた人たちを楽しんでくれたら嬉しいな」

 

 ママ達の過去実績と、今の苺プロの実績。その辺りがJIFに出られる要因だと思う。ありがたいことだし、私はそれに見合ったパフォーマンスをするためにも頑張ってきた。それにコネだって言われても、実力を見せつて逆にファンにしちゃえば良い。

 

「ルビーは輝いてるねぇ。お姉さん眩しいよ」

「MEMちょも推してくれて良いよ?」

「メンバー間で推すのってどうなのよ」

 

 しみじみと言うMEMちょに、呆れ口調の先輩。

 

「あんまりないかもねぇ。やっぱりアイドルは推される存在であって、誰かを推す存在じゃないしとは思うし。私個人としては二人を推すのもウェルカムなんだけどね」

 

 ギスギス感って、ずっと見続けているとなんとなくわかるんだよね。ちょっととした視線の合わせかとか、距離感とか。せっかくできた新しいB小町はそう言うのはなくしていきたし、ちゃんと仲良しで行きたい。

 

「じゃあ私もMEMちょ推すよ。ガチ恋のMEMちょのぶりっ子キャラは、あんまり好きじゃないけど」

「さらっと酷いこと言ってるわよー。好きじゃないのは私もだけど」

 

 ガチ恋はやっぱり私たちの世代だと今注目の番組で、学校でも結構話題になってる。誰と誰がくっつきそうとか、誰が可愛くて誰がかっこいいとか。芸能人とはいえ、皆もやっぱり興味あるんだなって思った。

 

 放課後のやりとりって体だけど、MEMちょ曰く撮影は土日らしい。学生の学業を考慮してるのかな、私は関係ないけどーって自虐しながら教えてくれた。

 

「今のはグサッときたよ……。良いんだよ、私はあれで。あれを通じて自分のチャンネルとかに引っ張ってくるのが目的だから、おバカ系癒し枠目指してるの!」

「じゃあ本当に恋愛する気はないんだ」

「まあねぇ。私もアイドルやるんだし、特定の相手を表立って作るのはまずいでしょ。嬉しすぎてアイドルやるって公表するタイミングはちょっとミスっちゃったけどー……」

「あー、初めからくっ付かないだろうって人にはあんまり注目されないのか」

「そりゃあそうでしょ。大々的に彼氏いるって公表してデビューするアイドルなんて、誰が推すのよ」

「……そうかも。そしたらガチ恋はやっぱりあかねちゃん推しかなー」

 

 私も最初はパパのこと認められなかったもんなあ。今みたいにネットが発展してたら、ママも当時は叩かれてたかもしれない。あれ? でも報道も全部仕合で報じないようにしたんだっけ? でもネットだと厳しいよね。

 

「はあ? なんでアイツになんのよ。もう一人の子で良いじゃない」

 

 ここで食いついてくるとは思わなかった。

 

「ゆきちゃんも可愛いけど、あかねちゃんは友達だし」

「へぇ〜。ルビーはあかねと友達だったんだ。昔、何かで共演したとか?」

「違うよ。ハワイ行った時にたまたま会って、可愛いかったから声かけてそこで友達になったの」

「何ナンパみたいなことしてんのよ」

 

 あの時連絡先を交換してから交友は続いてる。たまに遊びに行くこともあるし、あかねちゃんの舞台も見に行ったこともある。優しくて美人だから、こう言う子がモテるんだろうなってわかる。

 

「海外なんてお金持ちだねぇ。ちなみに、有馬ちゃんはあかねと何やら因縁あり?」

「因縁って言えば因縁かしらね。まあ……色々あるのよ」

 

 顔には思いっきり気に入らないって書いてあるけど、それは触れないでおいた方が良いかな。二人とも役者だし、二人とも天才って言われてるし、何かあったのかもね。

 

「それにしても、あの黒川あかねが恋愛リアリティーショーね。明らかに向いてないでしょ」

「そうなの?」

「プライベートの時に会ったならわかるでしょ? 演じ方は違うけど、演技の実力は私だって認めてるわ。徹底した役作り。役に対する深い考察と洞察、そしてそれらを完璧に演じられるセンス。癪だけど、紛れもなく本物よ。でもそれは、あくまで役に対して。何かを演じていない黒川あかねは、性格と顔は良いかもしれないけど引っ込み思案の小娘。この手の番組はね、自己プロデュースが上手くないとやっていけないのよ。そもそも黒川あかねはーーー」

 

 かなちゃんが饒舌に語り始める。

 

 MEMちょが肩を突いてきたので、耳を貸す。

 

「これ、どーゆー感情? 厄介オタ? 反転アンチ?」

「どうだろ。かなちゃん素直な性格じゃないからなー。ファンだけどライバル視してる的な?」

 

 思っていた以上に対抗意識バリバリありますって感じ。

 

「これ止めてよルビー」

 

 MEMちょが恐ろしいことを言ってくる。止めたら絶対面倒なことになるって。

 

「ええー、無理無理。MEMちょやってよ」

「そこは長い付き合いのルビーの方が適任だって」

「年長者のMEMちょがビシッと」

「聞こえてるわよ二人とも」

 

 反対側から肩を掴まれた。なんで今日に限って真ん中座っちゃったんだろう。

 

「ルビー? 誰が、誰の、ファンだって?」

 

 こっわ。笑顔なのに怖いよ。

 

 ほっぺを引っ張られる。なんで私だけ。

 

「いはい、いはい……!」

 

 私のほっぺから手が離される。本気じゃないのはわかるけど、赤くなってないかな、これ。

 

「全く。私は黒川あかねのファンでも何でもないわよ」

「じゃあ、なんでそんなに食いついたの?」

「……別に。ずっと前にオーディションで一緒に演じたことがあって、そこから気に入らないだけよ」

 

 気に入らないだけでそんなに詳しいかな、って言葉は言わないことにした。私の顔変になっちゃうよ。

 

「まぁまぁ。とりあえず落ち着きなよ。ほら、これでも一杯飲んで」

 

 手渡されたのはジュースだけど、かなちゃんはそれを一気に飲み干した。

 

 あーって、アイドルが出しちゃいけない声出してる。なんかビール飲んだ時のオジサン達みたい。

 

「とにかく! 私が言いたかったのは、黒川あかねは役者としての実力は認めるけど、ガチ恋には全然合ってないって事!」

「そうだねぇ〜」

「勿論、認めるって言っても実力で負けてるつもりなんてさらさらないわよ。それを元天才子役だ天才女優だとか勝手に周りに比べられて、やってらんないわよ」

「そだねぇ。大変だよねぇ」

 

 お酒、入ってないよね? いつに増して先輩の毒が吐き出されてる気がするし、MEMちょは完全に聞き役に回ってる。なんだこれ。

 

 ヒートアップして続く愚痴や文句のオンパレードを、MEMちょはすべて簡単な相槌で捌いてる。すごい、これが年長者の実力!

 

 十分くらい続いて、最後には業界の批判とかまで始まってた。知名度ばっかりで実力で採用されないとか、モデル上がりが文句ばっかりとか基礎もなってないとか。耳が少し痛いけど、私も半端な気持ちでアイドルやってる子達を見たら、きっと同じことを思うんだろうな。そう思うとどれだけ本気で取り組んでるかわかるし、そんなかなちゃんがアイドルをやるって言ってくれたのは本当に嬉しい。きっと本気で取り組んでくれるって信頼がある。

 

 さらに落ち着くのに五分くらい。

 

「落ち着いた?」

「……うん」

 

 ちょっと自己嫌悪入ってしょげてる先輩可愛いな。

 

 ガチ恋の話も終わって、次にいつ、なんの動画を撮るか話し合う。MEMちょは当面土日は厳しいし、かなちゃんもちょくちょく仕事が入ってるからすこし先になりそう。

 

 何が良いかな。MEMちょは一気に増やすなら有名なユーチューバーとコラボとかが良いって言ってたけど、有名なら誰でも良いのかな。

 

「ママに出てもらうとかどう? 一緒に昔の曲踊ってみるとか!」

「ちょっとリスクはあるけど良いねぇ! 頼んでみてもらえる?」

「オッケー。ん? リスク?」

 

 ママと一緒にやるのは数年ぶり。楽しみだけど、リスクってなんだろ。

 

「アイさん頼りになっちゃわないか、ってことじゃない?」

「そーそー。アイさんだけじゃないんだけど、あんまりコラボしすぎてもゲスト頼りになっちゃって、私たち自身のファンが付きにくくなっちゃうかもって事はあり得るよ」

「頼りきりじゃダメってことかー」

「そうだねぇ。でも結局は私たち次第ってことで」

「コラボしたいだけじゃないの?」

「それはあるぅ。なんならこれを機に、私の個人チャンネルにも出て欲しい」

「欲ダダ漏れね……」

 

 MEMちょも私に負けず劣らずのオタだったもんね。とりあえずMEMちょの分も頼んでみよーっと。

 

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