人気ロボアニメ続編の上司キャラに転生したので、不遇主人公を導きたい 作:聖成 家康
『ルナ・ハルカ、〈アストラル〉行きます!!』
活気と確かなる信念に満ちたあの声に、私は一瞬にして”恋に落ちた”。
『武装天兵ダグラスARK REBIRTH』
当時ごく一部のマニアしか見ていなかったとされるロボットアニメである『武装天兵ダグラス』シリーズを、そのキャラクターとストーリーの魅力を持ってして、大勢のファンを獲得した大人気作品『双導機兵ダグラスARK』の続編だ。
無論、当時根暗な中学生だった私もその魅力に取り憑かれた人間の一人だ。
なんにも興味が沸かず、ただ惰性の日々を過ごしていた私を照らしてくれたのが『武装天兵ダグラスARK』という作品。プラモデルにも手を出し、無我夢中で作中シーンを再現しようとした熱情は、今でも思い出せる。
ARKが終わり、間もなくして続編であるARK REBIRTHが発表された。
――しかし、その出来は最悪だった。
そもそも、企画が出されてから公開までが早すぎた。脚本・構成も上手くまとまっていないし、何よりも本社が『上手くいったタイトルを適当に使ってお金稼ぎしたい』という気持ちが透けて見えるような作品なのが最悪だ。
だが、何よりも許せないのは
ARKの主人公 リアム・カナタはその座を降り、新たな主人公 ルナ・ハルカの物語が始まった……はずだったのに。
いつの間にか、ルナは主人公としてではなく、あたかも”悪役”のように描かれた。前作の主人公に過ぎなかったリアムの出番が極端に多くなり、ルナは最後まで報われることなく、ARK REBIRTHは終わった。
最終話は、主人公であった筈のルナがその目に宿った輝きを失い、絶望に打ちひしがれるシーンを映した後、前作の主人公であるリアムが希望に満ちた微笑みを浮かべて終わる。
ルナがそれまで苦労してきた事が、まるでウソかのように。荒野に跪いて、全身を誰かの血で濡らした彼は空を見上げていた。
――あんなに苦しんだのに? こんな終わり方なの?
それを見て漏れた言葉は、それだった。
はじめは、確かにルナが主人公だった。
何者にもなれず、無力な自分に嫌気が差しているのに、それでも誰かの役に立ちたいと願う彼の健気でがむしゃらな姿は、悩んでいた私の心を揺さぶってくれた。
苦しんで、苦しんで、苦しんで……その結果が、都合の良いように敵役として扱われて終わり……?
心底、失望した。
金のことしか考えていない会社、それに刃向かえない脚本家や監督、そんな風潮を汲み取ることもせずキャラを罵倒するファン。
いくら創作上の人物だからって、あんまりだ。
私はルナが大好きだった。
でも、ある日言われた言葉が頭を離れずに、ひたすらに私を蝕み続けた。
――なんであんなキャラ好きなの?
好きで何が悪いんだ……!!
そんな思いを抱きながら、私は病院の一室でそのしょうもない生涯に幕を下ろした。
次に目覚めた時、私は――。
「〈ゲイズチェイサ〉のコックピットの中でお眠りになるのはよしてください、マルス・バジーナ大尉」
聞き覚えのある単語と、全く身に覚えのない鉄で覆われた広々とした空間が一気に私の中へと飛び込んできた。
コックピット、と呼ばれる鉄の狭い空間を覗き込むのは、黒い軍服のようなものを纏った青年だ。
瞬きを数回して、ようやく分かった。
――そう、私は『武装天兵ダグラスARK REBIRTH』の世界に転生してしまったのだ。