ダウナーTS干物少女はおっぱいが羨ましい 作:伝説の超TSスキー
そのあと春鹿先輩は、このオカルト研究部というクラブについて詳しく教えてくれた。
「じゃあ、新入部員の芦屋さんに改めて活動内容を紹介しますね」
「お願いします」
オカルト研究部は同好会などではなく、れっきと学校に認められた文化系クラブだそうだ。
実は十人以上の部員がいるらしいが、殆どが幽霊部員らしい。
「去年、僕が作った部活なんです。同級生にお願いして、名前を貸してもらって」
「春鹿は男にモテるからねぇ。面白いくらい男が名前貸してくれたよ」
「あはは、は」
春鹿先輩は優しそうで、ふわふわした美少女だ。
確かに、この人に「部活を作りたいので名前貸してくれませんか?」と頼まれたら、思春期男子が二つ返事で頷くのも分かる。
「最初のうちは、ちゃんと部室にも顔出してくれていたんですよ?」
「ただみんな来なくなって、殆ど幽霊部員になっちゃった。……というかまあ、俺が追っ払ったんだけど」
金髪男の深水先輩は、ニンマリと悪い笑顔を浮かべ、
「春鹿を指さして『その女の身体は俺のモンだ。触るんじゃねぇ』とクラスで宣言してやった」
「なんてことを」
去年に行われた、非人道的な蛮行を教えてくれた。
「やめて欲しかったなぁ……、本当に」
「でもまぁ、冷やかしが減ったじゃん」
「冷やかしでも良いから、部員は多い方が良いですよぅ」
春鹿先輩は思い出してしまったのか、顔を真っ赤にして俯いている。
「てか、嘘は言ってねぇし」
「そうなんですよね……。一片の曇りなく、この体は彼女のものなので否定できなくて。……押し黙ってしまい、みんなに完全に誤解されてしまいました」
「春鹿をデートに誘いたいバカ男ばっかりだったしな。いい気味だ、ガハハ」
そんな事になれば、まぁナンパ男はいなくまるわな。
深水先輩なりに、春鹿先輩を守ろうとしたのかもしれない。
「そろそろ一回ヤらせてくれよ。俺の身体なんだしいいだろ」
「……君が使っているのは僕の身体だからだめ」
「チェー、けち」
それか、深水先輩自体が悪質なナンパ男なのか。
「あ、そうそう芦屋。俺と春鹿の名前を呼ぶときは気を付けろよ」
「気を付ける、ですか」
「対外的には春鹿が『深水静香』で、俺が『春鹿大輔』だから」
「ああ、そっか。了解です」
「俺のことは気安く『大輔先輩』とでも呼んでくれ☆」
深水先輩はきゅぴーんと、決めポーズを取った。
春鹿先輩はそれを見て、苦笑している。
自分の身体で変なポーズをされるって、どんな気分なのだろう。
「僕は
「某国民的アニメのヒロインみたいですね」
「そのくせ、覗いたら怒るんだぜ。この間なんか風呂場から変な声が聴こえたと思ったら……」
「んんっ!」
────鈍い音が響く。
直後、金髪の顎が揺れて床に沈んだ。
そして壮絶な笑顔で、アッパーカットの残心を取る深窓の令嬢がそこにいた。
「クラブ活動は週に二回。月曜日と木曜日に集まって成果を報告します」
「……はあ」
「報告はどんな資料を見つけただとか、どんな素材を手に入れたとかそんなのですね。土人形以外でも、出来そうな儀式があれば積極的に執り行っていく予定ですよ」
春鹿先輩はそのまま流れをぶった切って、部活の説明に戻った。
お風呂場の変な声には、あまり触れられたくないらしい。
「話は以上です、何か質問はありますか」
「えー、と。特に思いつかないです」
「じゃあ、また困ったことがあったら聞いてくださいね」
まだ耳が赤い春鹿先輩が、アタシを見てニコニコしている。
その背後では『大輔先輩』が白目を剥いて痙攣していた。
「それは大丈夫なのですか」
「ああ、これは僕の身体なので気にしなくていいですよ」
「う、うっす」
……この人には逆らわないようにしよう、と思った。
「とりあえず今日は、顔合わせと……。興味があれば、活動日誌とか見てみますか」
「活動日誌ですか」
「ええ、今までどんな儀式をして、どんな結果になったか────」
春鹿先輩はそう言い、部室の棚からノートを取り出した。
棚には青や赤色の、さまざまな色合いの旧いノートが数冊並んでいる。
「この儀式なんか、結構大掛かりだったんですよ」
そういって部長が開いたノートには、何やら複雑な魔法陣が描かれていた。
アタシも、そのノートを覗き込もうとすると……。
「……お?」
トントン、と部室のドアを叩く音がした。
「……失礼します」
そして部室に、小柄な生徒が入ってきていた。
ピカピカの男子制服を着た、小柄で童顔の少年だ。
「ああ、スズ君か。いらっしゃい」
「ん……誰、ですか」
「ああ! この人は芦屋さんといって、今入部してくれた一年生です」
「そう……」
彼はしげしげと数秒ほど不審そうにアタシを見つめたあと、部室の端っこの席に座った。
春鹿先輩の態度を見るに、彼も部員っぽいな。
「紹介します。彼は芦屋さんと同じ1年生、涼加瀬さんです。オカルト好きだそうで入部してくれました」
「なるほど」
「僕たちの事情も話しています」
「……とても、興味深いと思った」
スズ君と呼ばれた男子生徒は、紹介に合わせペコリとアタシに頭を下げた。
釣られてアタシも、会釈を返した。
「スズ君、芦屋さん。初対面なら、ご挨拶してはどうでしょうか」
「は、はい。初めまして、かな。アタシは芦屋、みちると言います」
「……
アタシの自己紹介に、スズ君はちょっと気まずそうに目を逸らした。
「たしか芦屋ハク君の双子の姉、だっけ」
「ああ、そうそう。ハクはアタシの弟」
どうやら彼は、ハクのことを知っているらしい。
同じクラスなのだろうか。
「……あまり、似てないね」
「あ、ああ。正反対だと、よく言われる」
「私も、そう思う」
無表情だが、よく見るとなかなかに中性的で可愛い顔をしている。
女装させたら、美少女偏差値はアタシより高くなるかもしれない。
「……これから、よろしく」
「お、おう」
自己紹介をして、義理を果たしたとでも思ったのだろうか。
彼が喋ったのはそれっきりで、そのまま黙り込んで読書をし始めた。
どうやらあまり、社交的な性格ではないようだ。
「じゃあ紹介も終わったし、活動日誌を見せてあげるね」
「どうも、よろしくお願いします」
こっちに目もくれなくなったスズ君を置いて、アタシは部長の隣に座った。
そして今までどんな儀式があったのかという怪しい資料を、部長の解説付きで教えてもらった。
「芦屋さんはそのまま帰って良いよ。部室の鍵と、バカの処理は僕がやっておくから」
ウチの学校の部活は、18時まで終わる。
下校時刻までオカルト話を聞かせて貰った後、アタシは春鹿部長と部室で別れ、帰路に就いた。
「え、みちる? こんな時間まで何やってんの」
「おお、ハクか」
帰り道、その下駄箱でアタシは汗臭い男子集団に囲まれた。
その中には一人、見知った顔がいた。
「おー、これが噂のハクのねーちゃん?」
「おっす、よろしくー」
双子の弟、芦屋ハクだ。
その弟の周囲には、金髪の猿どもが並んで歩いていた。
「なんか似てねぇな! あははは」
「いや、目つき怖っ!」
見た感じ、ハクはサッカー部の帰りらしい。
ハクの顔に泥が付いていたので、アタシは黙ってハンカチで拭いてやった。
「みちる、答えてよ。こんな時間まで何やってたの」
「アタシも、部活入っただけ」
「え!? 何部?」
「オカルト研究部……」
「そんなー! サッカー部は?」
オカ研に入ったと告げると、ハクはショックを受けた顔をした。
そんなにサッカー部に入ってほしかったのだろうか。
「ハク! お前のねーちゃん、女子マネやってくれるって話じゃなかったのかよ」
「そのはずだったのに」
「アタシはそんなこと了承してない」
「みちるを全国に連れていきたかったのに……」
アタシなんかを全国に連れていかれても困る。
彼女をつくって連れていってくれ。
アタシ、サッカー興味ないし。
「オカ研ってアレでしょ、確か残念な美人がいるとこでしょ」
「あー! 静ちゃんいるんだっけ」
部員の一人(おそらく二年の人?)が、オカルト研究部と聞いて思い出したようにそう言った。
……静ちゃん先輩、同級生からそんな扱いなのか。
「残念な美人って?」
「すごく可愛いのに、ヤンキーに調教されてる娘がいるらしい」
「何それ可哀想」
大体あってる。
「みちる! 何でそんな変な部活に入ったの!」
「あー、静ちゃん先輩はすごくいい人だったぞ? 物腰柔らかいし、可愛らしいし」
「そうなんだよな、本当に静ちゃん可愛いんだよなぁ」
「もったいない」
部長が残念扱いされているのは、金髪に『俺の
可哀そうだが、そのお陰で人避けになっていそうだ。
放っておいたら無限にモテそうだからな、あの人。
「みちるまでヤンキーに絡まれたらどうするの」
「まぁもう絡まれたんだけど」
「え! それでどうしたの」
「静ちゃん先輩にブン殴られて失神してたよ」
「想像の斜め上!」
あの時の部長の動きは、マジで見えなかった。
世界を狙えそうなアッパーカットだった。
「どうしてそんなことに」
「つまりアレでしょ。ヤンキー君がみちるちゃん口説いてるを見て、静ちゃんが嫉妬したと」
「あー。ヤンキーと静ちゃんバカップル説は本当だったのか」
「あ、いや」
アタシが変なことを言ったせいで、部長と金髪が付き合っていることになりかけていた。
否定しようと思ったけど……。
「……どうしたの、みちるちゃん」
「あーいえ。そうです、そんな感じです」
事情を弁明しようとすると、春鹿部長が風呂場で変な声を出していた件に言及せねばならない。
そっとしておこう。
「まぁそんな訳だから」
「あ、みちる! ちょっと、どこいくの」
「お前は友達とゆっくり帰ってこい。アタシは先に帰って、メシの準備しておくからさ」
これ以上変な話になる前に、アタシは逃げ出すことにした。
触らぬ神に祟りなしだ。
「え、一緒に帰ろうよ」
「じゃあ、さよなら」
「みちるー!!」
それに、見知らぬ人に囲まれて帰れるほど、アタシのコミュ力は高くない。
おそらく途中から無言になって、気まずくなる。
「最近みちるに避けられてるなぁ」
「元気出せハクやん」
アタシは弟の伸ばした手を振りきり、自宅へ早歩きで帰った。
ハクには悪いが、アタシは一人が良い。
別にアタシが、社会不適合というワケではない。
ただ、一人でいる方が落ち着くというだけの個性の範疇。
「というかハクとみちるちゃん、十分仲良いと思うぞ」
「え、本当に」
「うち、姉ちゃんとマジで口効かんし。飯作ってくれるとかむしろ愛されてるだろ」
「そうかな? そうかも?」
「溺愛されてるだろ」
……いや、料理が趣味なだけだけど。