ダウナーTS干物少女はおっぱいが羨ましい   作:伝説の超TSスキー

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第七話「式神」

 

「酷い悪戯もあったものだ」

 

 若い警察官が、鴉の骸を見て顔をしかめた。

 

「親御さんには連絡したよね? もう遅いから送っていきますよ」

「ありがとうございます」

 

 磔にされた鴉の骸を見つけた後、アタシは警察と神社の管理者さんに連絡した。

 

 ……鳥居に釘を打っている時点で器物破損だし、野鳥を傷つけるのも法律違反だった筈だ。

 

 通報したらすぐにお巡りさんが駆けつけてきて、アタシにあれこれと事情を聞きながら、パシャパシャと写真を撮っていた。

 

「その鴉、どうするんですか」

「管理者さんが掃除すると思うよ」

 

 そのまま10分ほど事情聴取を受けた後、アタシは解放された。

 

 警察はこういう場合、犯人捜査はしてくれるけど掃除を手伝ったりはしないらしい。

 

 事情聴取を終えた警察は、鴉の磔をそのままにして立ち去ろうとした。

 

「お母さん、迎えに来てくれそう?」

「すみません。……ウチは共働きで、両親とも帰ってくるのが遅く」

「じゃ、パトカーで家まで送るよ。乗って」

「はい」

 

 鴉は害鳥だ。少なくとも、人間にとって友好的な鳥類ではない。

 

 しかしその様は、あまりにも哀れに感じた。

 

「……少しだけ、手を合わせていきます」

「そうかい」

 

 アタシはその鴉の前で手を合わせ、その冥福を祈った。

 

 いかに害になる存在とは言え、面白半分で奪われていい命などない。

 

「せめてその死後は、安らかであらんことを」

 

 アタシは小さく、そう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「と、言うことがあったんだ」

「ふぅん」

 

 翌日。

 

 朝一番に部室に行くと、涼加瀬鈴(すずかぜすず)がいつものように窓際の席で本を読んでいた。

 

「それで、何だか元気がないんだね」

「ああ、昨日から気分が最悪だ。グロいもん見せられて辟易としてるわけ」

 

 昨晩は、鴉の死骸の夢を見た。

 

 腸が垂れている鴉の磔は、かなりショッキングな光景だ。

 

 数日は魘されるかもしれん。

 

「あのさ、涼加瀬。鴉を磔にする儀式とか、あったりするのか?」

「動物を生贄に捧げる儀式は、世界のどこにでもある」

「そっか」

 

 気分が悪い理由は、それだけじゃない。

 

 磔にされた鴉を見て、アタシは『誰かが儀式を行った』可能性を考えたのだ。

 

 もちろん、愉快犯が悪戯で磔にしただけかもしれない。

 

 だけどわざわざ『神社の鳥居』に釘を以て鴉を磔にするという行為に、オカルト的な意味がありそうだと感じだ。

 

「そうしてそんな事を聞くの」

「もしかしたら他校の、どっかのオカルト研究部がやらかしたんじゃないかと」

「……ありえなくはない」

 

 もしそうだとしたら、ますます超常現象に対する世間の風が冷たくなる。

 

 オカルト的な現象に苦しめられている身とすれば、そういう偏見の種になりそうな行為はやめて欲しい。

 

「その、芦谷さん。オカルト界隈において、鴉がどういう扱いをされているか知ってる?」

「え? そりゃあ……」

 

 涼加瀬はそう言うと、机に突っ伏したアタシをジッと見つめていた。

 

「不気味、とか?」

「そう、不吉の象徴。ゴミや死肉を貪って繁栄する鴉は、昔から人間に忌み嫌われていた」

「そっかぁ。まぁ鴉だもんな」

 

 涼加瀬によると、鴉は中国では不吉な鳥と扱われているらしい。

 

 鴉が近づいてくる人間は死期が近いとか、色々な迷信があるそうだ。

 

「なので、鴉の死体はむしろ『縁起が良い』とされることも多いんだ」

「そうなの?」

「ああ。だから、気にすることはない」

 

 涼加瀬はそう言ったきり、黙り込んだ。

 

 ぶっきらぼうな言い方だが、元気づけてくれようとしたのかもしれない。

 

「なあ涼加瀬」

「なに?」

 

 いくら縁起が良いとしても、鴉の死骸なんぞみたくはない。

 

 ただ、ここは涼加瀬のフォローに乗っておこう。

 

「サンキューな」

「ん」

 

 面と向かって礼を言うと、涼加瀬は照れたように顔を背けた。

 

 

 

 

 

 

 

 その日の授業は、あまり身が入らなかった。

 

 まだ、あのおぞましい光景を見たショックが残っていたのだろう。

 

 三時間目に受けた英単語テストは、さんざんな出来だった。

 

「芦屋さん、今日は部活の日だけど……顔色悪いですね?」

「昨日、少し嫌なことがありまして」

「あまり、無理しなくていいですよ。体調が悪い日は、遠慮なく休んでください」

 

 放課後、アタシは部室に行こうとしたところを春鹿先輩に止められた。

 

 曰く、酷い顔色をしていたらしい。

 

「昨日、(からす)が殺されているのを見まして」

「……鴉が、ですか」

「アタシでも何でこんなに、気に病んでいるのか」

 

 鴉は確かに迷惑な鳥である。

 

 だけど、あそこまで悪意をぶつけられる謂れはないはずだ。

 

 おもちゃのように命を弄ばれた鴉に、アタシは言いようのない不快感を覚えていた。

 

「優しいんですね、芦谷さんは」

「優しい、ですかね」

「道端で鴉が死んでいても、気にしない人が大半ですから」

 

 そんなアタシを、春鹿先輩は優しく抱きしめてくれた。

 

 良い柔軟剤を使っているのか、春鹿先輩の体躯はおひさまクッションのようにフワフワだった。

 

「人間は嫌なものを見ると、心に傷を負うのです。芦谷さんは優しすぎるから、他の人より傷ついてしまっただけ」

「春鹿、先輩」

「今日はゆっくり、甘いものでも食べて休んでください。それで、リフレッシュしましょう」

 

 そう優しく、アタシを諭した。

 

「貴女が気にすることはありません。貴女は間違ったことをしていません」

 

 ……元男とは思えない包容力だ。なんだこの母性は。

 

 鴉なんかに気を病んでいたアタシが馬鹿みたい、という気持ちになっていく。

 

「ちょっとは元気が出ましたか」

「はい、ありがとうございます」

 

 気付けば、アタシの心を覆っていた鬱屈の殆どが晴れてしまっていた。

 

 本当に癒されるな、この人と話をするのは。

 

 この人と仲良くなりたいがため、たくさんの男がオカルト研究部に名前を貸した理由が分かる。

 

「じゃあ、僕はこれで。芦谷さん、今日は休んでね」

「は、はい」

 

 アタシは春鹿先輩と、手を振って別れた。

 

 うん、何だかもう気分がすっきりしている。

 

 きっと明日には、いつも通り吹っ切れるだろう。

 

 

 

 

 

「お、何だ帰るのかみちるちゃん」

「すみません深水(しみず)先輩、体調不良ッス」

「なんだ、大丈夫かオイ」

 

 そんな嬉しいイベントがあった後。

 

 部室棟の廊下で、アタシは金髪先輩とすれ違った。

 

「この時期の風邪はしつけーからな、部屋を温かくしてグッスリ寝ろよ」

「あざます」

 

 深水はそういうとニカっと笑った。

 

 女癖さえまともなら良い人なのだな、このチャラ男も。

 

「ん?」

「どした、みちるちゃん」

 

 彼に礼を言って、礼を言って立ち去ろうとしたら。

 

「そういう深水先輩、怪我してないです?」

「あ、頬のコレ?」

 

 アタシは深水の頬に、大きな痣があるコトに気が付いた。

 

 ……明らかに拳大の殴られたような痣だ。

 

「冷やした方が良いですよ。湿布上げましょうか」

「良いよ、こんくらいほっときゃ治る。てか何で湿布持ち歩いてんの」

「弟のハクがよく怪我するんで」

 

 アタシは鞄から湿布を取り出したが、深水は両手を振って何でもないと言った。

 

 ……どうして彼が、顔なんか殴られたのだろう。

 

 悪いことでもしたのだろうか。

 

「アレだよ。春鹿を独り占めしてるとな、やっかみを買うんだよ」

「……まさか同級生に?」

「イヤ、先輩。油断して一発貰っちまった」

 

 深水はそう言うと、忌々し気に三年の教室を睨んだ。

 

 ……なるほど、春鹿先輩を取り合って喧嘩をしたらしい。

 

 彼女/彼を独り占めしているとあれば嫉妬されるのもやむなしか。

 

「暴行事件じゃないッスか。先生に報告は」

「いいの、いいの」

「良くないです、怪我してるんですよ先輩」

「お相手さんは多分骨折れてるし。……表沙汰にされると、その、俺の方が立場が悪くなるっていうか」

 

 ……。

 

「何やってんすか」

「喧嘩売ってきたのは向こうだし。半殺しにしたって、文句言われる筋合いはねえ」

「恨み買いますよ」

「どんとこいだ」

 

 どうやら深水は、喧嘩した相手をボコボコの半殺しにしてしまったらしい。

 

 本当にこの男は、短絡的というか後先を考えないというか。

 

 元の身体に戻った時、人間関係で苦労するのは春鹿先輩なんだぞ。

 

「心配して損した、帰ります」

「おう、気を付けてな」

 

 アタシは呆れてため息を吐き、深水と手を振って別れた。

 

 どうしてこう、男は喧嘩っ早いのだろうか。

 

 アタシも男だったけど、よくわからない。

 

 

 

 

 そんなこんなで、いつも通りの一日が終わった。

 

 少し嫌なことはあったけど、その代わりにいいこともあった。

 

 正直、オカルト研究部に入って良かったと思う。

 

 今までの代わり映えのしない日々が、彩り鮮やかな楽しい学生生活に変貌した気がする。

 

 春鹿先輩は優しいし、深水先輩はチャラいけど面白い人だ。

 

 同級生の涼加瀬は物静かだが、意外と悪戯っぽいし付き合いやすい。

 

 アタシは存外に、オカルト研究部を気に入っていた。

 

 

「ん? メッセが来てる」

 

 帰り道。

 

 鴉が死んでいた神社の通りに差し掛かった頃、アタシは一件のメッセージを受け取った。

 

 春鹿先輩からだ。

 

『芦屋さんへ。知らなければ、それで構いませんが』

 

 アタシは少しドキドキしながら、そのメッセージを開いた。

 

 家族以外から個人メッセージを貰うなど、初めてのことかもしれない。

 

 ぼっち気質のアタシは、春鹿先輩からのメッセージを受け取ったことに浮かれていた。

 

 その内容を、読むまでは。

 

『静香がいつまで経っても部室に来ないし、連絡も通じないのです。どこかで見ませんでしたか』

 

 

 ────深水静香が、部活に顔を出していない。

 

 それは、ヘンだ。

 

『いつものようにナンパしているなら、良いのですが』

 

 アタシが深水とすれ違ったのは、部室棟の廊下だ。

 

 となればあの男は、部活に顔を出そうとしていた筈である。

 

『なんだか、妙に胸騒ぎがするんです────』

 

 

 

 

 アタシはすぐ、部長に返事を返した。

 

 深水先輩は、部室に顔を出そうとしていた筈だと。

 

「……」

 

 今日、彼は顔に大きな痣が出来ていた。

 

 恐らくソレは、喧嘩が原因だ。

 

 つまり深水は誰かに『報復』された可能性はある。

 

 だが、どうやってそれを確かめる? 

 

 

 深水はナンパが趣味の男だ。

 

 部室に顔を出す直前、気が変わってスマホの電源を切り、ナンパに繰り出した可能性もなくはない。

 

 だけど、そんなことがあるだろうか。

 

 あの春鹿先輩が大好きな深水静香が、彼女/彼と会える機会を放棄してまでナンパに繰り出すだろうか。

 

『ご協力ありがとうございます、芦谷さん。僕は学校内を探してみます』

 

 アタシにも、嫌な予感がした。

 

 放っておいたら取り返しがつかなくなるような、『第六感』とでもいう感覚が。

 

「……警察、は」

 

 警察に連絡をするべきか。

 

 だが、何て通報すればいい?

 

 学校の部活に来ていない奴がいるんです、なんて話で動いてくれるだろうか。

 

 まだ下校時刻の真っただ中。家に深水が帰り着いていなかったとしても、行方不明と断ずるには早すぎる。

 

 

 ……。

 

 

 

 

 神社の、鳥居をくぐる。

 

 深水のことなど、放っておく。それが、社会的に正しい筈だ。

 

 まだ彼が行方不明になった証拠などない。もう少しすればあっさり、家に帰ってくるかもしれない。

 

 だけど、そうじゃなかったら。アタシの嫌な予感が当たり、どこかで誰かから報復を受けているのだとすれば。

 

 

 鳥居の裏を見ると、鴉の遺骸は片付けられていた。

 

 拭き残った血痕と、打たれた釘の痕跡だけが残っていた。

 

 

 アタシは鳥居を進み、神社の本堂を参拝した。

 

 何の意味もないかもしれない、だけど何かをやった気になっておきたい。

 

 だからお参りをして、先輩の無事を祈ったのだ。

 

 もし明日、彼がひどい目に合っていたとしても、自分の心に言い訳が出来るように。

 

 

『学校内に、深水はいなさそうです。……芦屋さん、どこかで彼を見かけたらご一報いただけませんか』

 

 お参りを終えたころ、春鹿先輩から続いてメッセージが来ていた。

 

 春鹿先輩は、深水を心配して学校を駆けまわっているらしい。

 

 友人も総動員して、彼の行方を追っているのだそうだ。

 

『分かりました、帰り道でどこかにいないか探してみます』

『お願いします』

 

 アタシも探し回るべきだろうか。でも、仮に深水がリンチされている現場を見つけたとしてどうする。

 

 アタシの小柄な体躯で割って入れるはずがない。場合によっては巻き込まれ、アタシまで酷い目に合うかもしれない。

 

 警察に通報して、その場を離れるのが関の山。

 

 

 アタシは無力だ。何も出来ない。

 

 だから仕方ない。きっと大丈夫、深水はナンパしているだけだ。

 

 そう考えて、アタシは家に帰ることにした。

 

 嫌な予感はするけれど、アタシに出来ることは何もないのだから。

 

 

 

 街は、広い。

 

 もし深水が、どこかの誰かに拉致されて暴行を受けているとして、どうやって探し出すのか。

 

 アタシの足では、一日中駆け回ったとしてもそんな多くの場所を探せやしない。

 

 この町の人気のない場所を広く、まんべんなく探すなんて人間には不可能。

 

 『空でも飛べないと』無理だ。

 

 

「……式神」

 

 

 ス、と。アタシは深水に勝ってもらった陰陽術の一行を思い出した。

 

 陰陽道には、遠見の術がある。

 

 それは式神を飛ばし、視界を共有し、遠くを偵察することの出来る技法。

 

「……和紙なんて持ち歩いてない、けど」

 

 最初は、駄目もとでやってみるかという気持ちだった。

 

 何もしないより、何かした方が自分の心に言い訳が出来る。

 

 だけど、実際に深水のために危険を冒して探し回る程の度胸はない。

 

 そんな弱いアタシは、オカルト儀式をすることを選んだだけ。

 

 

 ────神社の境内という、神秘の本拠地のような場所で。

 

 

「う?」

 

 オカルトの儀式の素材は、意味不明なものを集めたように見せて、ちゃんと理由がある。

 

 それはありもしないデマカセ儀式を、馬鹿みたいな素材を提示することで『実行不能』と誤魔化すためであったり。

 

 当時、単に『ソレ』が最も手に入りやすかったからというだけであったり。

 

「あ、これ、って」

 

 アタシは昨晩、式神術というモノを浅くなぞった。

 

 式神は『低級神』を紙に憑依させる魔術である、と書かれていたのに。

 

 アタシは昨日、和紙しか用意していなかったのだから。

 

 そして今。目の前にいるモノこそが、儀式にかけていたのだと直感的に気が付いた。

 

「そうか。……そうか」

 

 アタシは、その場で釘を打ち据えられた鳥居に一礼した。

 

 ……正確には、そこにいるであろう『ソレ』に頭を下げた。

 

「頼む、お願い」

 

 温かい。気付けば、その鳥居は不思議な光と熱を帯びていた。

 

 オカルトが、不条理が、この現実世界に顕現した気がした。

 

 懐かしい感覚。恐ろしい感覚。

 

 この世ならざるモノの領域と、現実世界が交差している。

 

 ふわふわ、とした白いプラズマ。形がないが心はある、不思議なエネルギー。

 

 その光が、きっとこの『陰陽』に重要なのだとアタシは直感的に思った。

 

 

「……なあ。お前に、お願いがあるんだ」

 

 

 陰陽道では『詠唱』が使われた。

 

 当時は急急如律令など、漢語が用いられたらしい。

 

 だけど、アタシは漢語なんて分からないし、『そんなものを使う必要はない』。

 

 陰陽術大全の本にはいろいろと書いてあったが、そんなものは大樹の枝葉にすぎない。

 

「なんでも代償は支払うからさ」

 

 式神は和紙で作られたものが多かったという。

 

 ただそれは、当時は和紙しかなかったから。

 

 どちらも、当時使われていた言語や素材を式神術に利用していただけ。

 

 和紙でなければ式神を作れない道理も、漢語でなければ詠唱にならない道理もない。

 

「どうか力を、貸してくれないか」

 

 アタシはそう言って。

 

 ノートの切れ端を鳥型に千切/契(ちぎ)って、白いもやもやで包み込んだ。

 

 

 

 陰陽術は、案外に適当な魔術体系らしい。

 

 厳格な儀式や、手順通りの祭事は重要ではない。

 

 大事なのは作法ではなく、了承だった。

 

 式神の中に入る『存在』が仕事を了承してくれさえすれば、儀式なんて行わずとも言うことを聞いてくれるのだ。

 

「ああ、なるほど。髪の毛で紙を縛るのはアタシとの経路(ルート)なのか」

 

 陰陽術大全に書いてあった儀式を思い出しながら、アタシは色々と得心が言った。

 

 どうやら式神と意識を共有するには、術者が紙に触れている必要があるらしい。

 

 しかし『髪の毛』を括りつけることで、式神を遠隔操作可能にしたのだ。

 

 アタシの髪の毛という経路を使い、遠隔で意識を共有する。

 

 陰陽術大全に書いてあった『型紙を髪の毛で縛る』行為には、そんな意味があったのだ。

 

「式神術『鴉』」

 

 風に吹かれても外れぬよう、アタシはしっかりと紙に髪を『テープで貼り付けた』。

 

 いちいち括りつけずとも、現代には便利なものがたくさんある。

 

「────お願い」

 

 鳥の型紙を、はらりと手放した。

 

 何かに導かれるように。

 

 何かに誘導されているかのように。

 

 アタシはやったこともない式神術を、正しい手順で遂行して見せた。

 

 

 

 カァー、と(カラス)が啼く。

 

 その紙は黒い羽根を舞い散らせ、バサりとアタシの肩に乗った。

 

 それは不条理(オカルト)

 

 この世の常識では測れない、非現実的な現象。

 

「深水先輩を、探してほしい」

「カァ、カァ」

 

 本当にこんなことが起きるのか、という動揺はあった。

 

 だけどそれと同じくらい、『そりゃうまく行くよな』という納得も感じた。

 

「ありがとう」

 

 アタシの言葉に反応し、やがて式神(カラス)は空へと飛び立った。

 

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