シングルファザーが不老アルビノ美少女になって学校に通う話 作:ケーツー
時刻は午後4時頃。病室の窓から差し込む日の光も徐々に弱まり、空気も冷たくなってきた。しかし今の俺は寒いとは感じない。布団をかけているから?それもあるだろう。だがそれ以上に…
すや…すや…
隣で寝ている百合が、俺の身体に抱きついているのである!しかし幼稚園児ならいざ知らず、もうすぐ中学生になる多感な年頃の娘と父親の距離感ではないような。これも女の子になって同性になった故のスキンシップか。中身は42歳の男なんですよ?そこんとこ忘れないでね百合さんや。
まぁなんだ。そんな俺に引っ付いて離れない百合を起こさずにご飯を食べるのは少々難儀だったが、病院食は無事完食。味は、なんとも言えないが味付けは薄い気がした。早く退院して百合の作るご飯が食べたいぜ。
「よお、兄貴。戻ったぜ。これ、百合ちゃんの分な」
お、隆二とお袋も遅めの昼飯を食べて戻って来たな。隆二からコンビニの袋に入ったお茶やらおにぎりを受け取る。
「ありがとう、そろそろ百合を起こすか…。百合、起きて」
百合の身体を優しく揺らす。
「んっ…ん…ふぁ…」
寝ぼけ眼な百合がのそりと身体を起こし、こちらを見る。
「起きたか?随分気持ちよさそうに寝てたから、起こすのを躊躇ったんだが…お腹空いてないか?隆二が色々買ってきて…」
「…お母さん…?」
「え?」
百合、今なんて…
「…ご、ごめん、お父さんだった…寝過ぎて、寝ぼけてたみたい…もう、起きるから」
「そ、そうか…」
百合がベッドから出て、隆二が買ってきた飯を食べ始める。俺はその様子をただ見つめることしか出来ない。すると百合が若干俯きながらポツリポツリと俺に話しかけて来た。
「…夢を見たの」
「夢?どんな夢だい?」
「女の子になったお父さんと、男のお父さんと、小さいあたしが手を繋いで一緒にいる夢。普通の、だけど幸せそうな家族。お父さんがいて、お母さんがいて、そして子供がいる。けどおかしいよね。あたしを産んでくれたお母さんの顔は毎日仏壇で見てるのに。でも、あたしはもう赤ちゃんの頃の記憶なんてない。お母さんの声も、どんな人だったのかもわからない」
「百合…」
「女の子になったお父さんに抱きついたとき、すごく安心したの。もしかしてこれがお母さんの温もりなのかなって…。酷いよね…。写真でしか知らないお母さんより、今の女の子になったお父さんがお母さんだったらなって…一瞬、思っちゃった。だからかな。あんな夢を見たのは」
「酷くない」
「え?」
「酷くないよ、百合は。百合は今までいっぱい頑張ってきたじゃないか。勉強も、料理も。俺が仕事でいない間に家事をやってくれたりもした。本当はもっと友達と遊んだりしたかっただろうに、色々我慢して俺について来てくれた。けど、これからはもっと甘えても良いんだよ。幸いといってはアレだけど、暫くは仕事も出来そうにないし。俺も家事に専念出来るから百合の負担を減らせる。これからは俺が、私が、百合のお父さんで、お母さんだ!!」
「お父さん…!」
百合が感極まった目で見つめてくる。ううっ、こっちまでまた泣きそうだぜ…
「まぁ、今の兄貴の場合お母さんというよりお姉ちゃんだけどな。百合ちゃんと並んでも姉妹にしかみえんぞ」
はいそこ無粋なこと言わないの!!
それからしばらくして。
「皆さん、お揃いですかな?」
病室のドアが開き、篠田医師と武井医師が入ってきた。
「もう
「俺は大丈夫です。隆二とお袋は平気か?」
「とりあえず今日はこっちの家に泊まるから、多少遅くなっても大丈夫だぞ。それよりも、これからどうすれば良いのか早くはっきりさせておきたいな」
隆二の言葉に家族全員が頷く。
「わかりました…まず最初に、白石透さんの女性としての新しい名前を決めていただきたいのです」
「名前…」
「そうです。ご家族の方にも既に伝えてありますが、白石透は死亡扱いにします。ですので、いつまでもあなたを白石透と呼ぶのは好ましくないのです。出来れば今この場で決めていただければありがたいです。気持ちの整理や色々思うところもあるでしょうが…」
「いえ、大丈夫です。もう
「あんたの名付け親としては、なるべく元の形を崩したくはないから…透子とかはどうだい?」
透子か。女の子の名前に子をつけるのはオーソドックスではあるけど、変に凝るよりはマシか。響きも可愛らしいし、普通にアリだな。
「隆二はなんかないか?」
「芦花とかどうだ?」
「却下」
「可愛いだろ、何が不満なんだ」
「原型留めてない上に、俺知ってるぞ。その名前お前が昔好きだったアニメのヒロインの名前だろ」
「バレたか」
「真面目にやってくれまったく…百合は、何か良い名前思いついたか?」
「…
「透華?」
「うん。お母さんの名前が華だったから。お父さんとお母さんの名前を合わせてみたの。さっきお父さん言ったよね?これからは自分がお母さんもやるって。だから…」
透華か。今風の名前で綺麗な響きだ。それに、天国にいる妻も見守ってくれているような気になれる、と思う。
「いいね、透華。それでいこう。決めた」
「早いな。まさに鶴の一声か。百合ちゃんには甘々だな」
「いいだろ別に。これが一番だと直感でそう思ったんだ。お袋もそれでいいか?」
「あんたがそれで良いというなら、あたしゃ何も言わないよ。その名前にふさわしいと思えるような、立派な女性になんなさい」
「決まりましたか?」
篠田医師の問いに、俺ははっきりと宣言する。
「はい、これから俺は、白石透華です!」