シングルファザーが不老アルビノ美少女になって学校に通う話 作:ケーツー
「では名前も決まりましたので、これからあなたのことを白石透華さんとお呼びします。早速ですが、透華さん。あなたの戸籍をでっちあげると言った話、覚えてますか?」
「はい、覚えています。でも、そんなことできるんですか?」
俺の問いに、篠田医師が神妙に頷く。
「通常、無戸籍者が戸籍を取得するのは容易なことではありません。無戸籍者の多くは、自身の生まれを客観的に証明できるものを持っていないからです。また、親がなんらかの理由で子の出生届を役所に提出しなかった場合も無戸籍になります」
「ふむふむ」
「逆に言えばキチンとした出生届及び出生証明書があれば、戸籍を取得出来ます。そしてそれを作成出来るのは他ならぬ、我々医師や看護師です。つまりこちらで白石透華の出生届と出生証明書を捏造します。捏造といっても正規の機関が作成するので、役所の人にそれが偽物であるかどうかは判別出来ません。また、原則として出生届は出産から14日以内に役所へ提出するように定められていますが、その期間を過ぎたからといって受理してもらえなくなる訳ではありません。罰金はありますが、それも精々5万円程です」
「へ、へぇ…」
戸籍取得に協力してくれるのは大変有難いが、この人達中々のアウトローだな。
「まぁ役所からは何故こんなに提出が遅れたんだとか色々聞かれるでしょうから、こちらである程度白石透華の設定及びバックグラウンドを考えてきました。それに関連していくつか質問があるのですが、よろしいですか?」
「は、はい」
「まず、白石百合さんが生まれたのは結婚してから何年目ですか?」
「えーと、確か三年目ですね」
「出産はこちらの地域でされましたか?」
「そうですね。結婚から出産、マイホームの購入まで全てここで済ませてます」
「わかりました…であるならば、我々が考えてきた設定が使えそうですね」
篠田医師がニヤリと笑う。え、設定ってこの人何考えてきたんだ…
「まず、白石透華は結婚一年目に生まれたことにしましょう。百合さんが12歳ですから、透華さんは現時点で14歳ということになります。そして何故白石透華の出生届が提出されなかったのか…それは…」
「それは?」
「白石透華がアルビノだったからです」
「へ?アルビノだったから?」
どゆこと?
「アルビノは基本的に日の光に弱く、視力も良くありません。また、見た目が他の人とは明らかに違います。今でこそ美しく成長しましたが、当時の両親は初めて生まれた我が子がアルビノという障害を持って生まれてきたことを認めたくなかった。故に出生届も出さず、小学校にも通わせず家に閉じ込めた。白石透華が今まで人目につかなかったのはその為です」
えぇ…その設定だと両親、つまり男の俺と妻の華が唯のサイコパス野郎になるじゃん。なんてことを考えついてくれたんだこの医者は。というかこれもう医者の仕事というより脚本家の仕事だろう。篠田医師も半分楽しんでないかこれ。
「しかし白石透華が14歳になったある日、転機が訪れる。例の爆発事故です。この事故により父親の白石透は行方不明、事実上死亡したことにより両親を失います。そして後見人である白石隆二の意向により透華さんは晴れて自由の身になり、中学校に通うことを許されるのです」
なるほどなるほど、男の俺がゲス野郎になっている点に目を瞑れば比較的無理のないストーリーラインだ。しかし最後に聞き捨てならない言葉があったぞ。
「ちょっと待って下さい、中学校に通う?誰が?」
「あなたしかいないでしょう、透華さん。今のあなたは学歴も資格もない未就学児です。しかし中学までは義務教育です。なので透華さんには中学校に通ってもらいます。本来であれば14歳だと中2か中3ですが、せっかくですから娘さんと同じ中1からやり直してみてはどうでしょう?入学が遅れた理由については先程言った通り、父親に幽閉されていたからとでも言っておきましょう」
ちょっと待って、さっきから怒涛の展開過ぎて頭がパンク寸前なんだが。
「お父さん一緒に中学に行くの〜?やったー!」
「ゆ、百合?喜んでるけど父親が同じ学校にいるの嫌じゃないの?」
「むしろ同じクラスがいい。そうなれたらずっと、ずーっと一緒だね、お父さん。いや、お姉ちゃんかな?」
「ははは、娘さんにここまで思われてるなんて、父親冥利に尽きますなぁ。羨ましい限りですぞ」
ホントに?これホントに父親だと思われてる?
「お父さんだったりお母さんだったり、今度はお姉ちゃんか。忙しいな兄貴」
隆二、今はお前のおちゃらけた態度が逆に癒しに感じるよ…
「さて、白石透華のキャラクリが済んだところで、今度は明日の予定について話しておきましょう」
キャラクリ?今キャラクリ言ったかこの人。
「透華さんは今日はゆっくり休んで経過を見ましょう。明日の朝問題がなさそうでしたら身体検査をします。採血やレントゲンなど、まぁ一般的な健康診断と然程変わらない内容ですので、気楽にしといて下さい」
「わかりました」
「検査は午前中には終わると思います。その結果次第ではありますが、午後には退院できるかと」
明日には退院できるのか。それは素直に嬉しいな。
「しかし退院後が結構大変ですよ。特に弟の隆二さんには名目上とはいえ後見人になってもらいますから、透華さんの戸籍取得の為の手続きや入学手続きをお願いしなくてはなりません」
「そうか…隆二、悪いけど頼めるか?情けない話だが、この手のアレコレは今や隆二だけが頼りなんだ」
「それはしょうがないさ。とりあえず会社の方には休みを延長してもらうように連絡するから、しばらくはこっちにいるよ。その間に面倒くさい手続きを全て終わらせちまおう」
「隆二ぃ…」
なんだかんだで結構頼りになるんだよな隆二は。気配りもできる方だし、顔も若干強面だけど整ってるし、歳の割に見た目若いし、俺が男じゃなかったら惚れてたかもしれん。…いや、今は女だけど。女だけど!弟に惚れるなんてないない!これはあくまで兄弟の絆なのだ!
「あ、それと一つ言い忘れていたことがあります」
俺が悶々としていると篠田医師が何か思い出したようだ。なんだ、まだ何かあるのか。もう俺はいっぱいいっぱいなんだが…
「先程でも少し触れましたが、白石透の扱いについてです。これは現時点ではあくまで行方不明扱いです。救助もされていない、遺体も見つかっていないということですね。しかし数ヶ月後には死亡認定が下されると思います」
「なるほど、すぐには死亡扱いにはならないんですね」
「最初は死亡診断書をでっちあげようかと思っていましたが、そうなると今度は遺体の火葬手続きを取らなくてはなりません。流石に遺体をでっちあげることはできませんので、行方不明からの死亡認定を狙うことにしました。今回の工場の爆発はかなり大規模なもので、身元が特定できないほど損傷した遺体も発見されています。ですのでそもそも遺体が見つからなくとも当日の出社記録さえ残っていれば、白石透は事故に巻き込まれて死亡したのだと容易に推察できる。テレビでも報道されていますが事故の規模が規模ですので、まず間違いなく死亡認定を受けるはずです」
この部屋テレビがないから情報が入ってこなかったけど、そんなヤバいことになってたのか。しかし…
「あの、ちょっと質問いいですか?」
「なんです?」
「戸籍のこととか俺の身の振りを考えてくれるのは非常に有難いんですが、これって明らかに医者としての領分を超えている気がするんですけど。いったい何故そこまでしてくれるんですか?」
「ああ、それもいずれ言おうと思ってたんですよね。まぁ一言で言えば、下心ですかね」
「へ?」
「我々はあなたの身体に興味津々なんですよ」
え、それって…。戸籍を作ってやるから身体を差し出せということか!?確かに俺の身体は異性にとって大変魅力的であることに疑いの余地はないが!いくらイケおじといえどそう簡単には抱かれないぞ!
「何か勘違いしているようですが、決していやらしい意味ではありませんよ。あなたの生活基盤を整える見返りとして、あなたの身体を研究させてほしいのです。手足を潰され全身大火傷を負った状態から数時間で全快したその回復力、何故性転換したのか、その謎が解ければ医学は確実に進歩するでしょう」
ああ、そういう意味ね…。なら最初からそう言えや!紛らわしいんじゃ言い方が!ただ、俺の身体を調べても何も出ないと思うんだよな。俺の回復力の所以は女神様の加護、ぶっちゃけチートだし。そこに科学的な何かがあるとは思えん。まぁ、それを言うのは野暮か。もしかしたら本当に超回復や不老を司る因子があるのかもしれんし。
「研究に協力するのはやぶさかではありませんが、具体的に何をすればいいんですか?腕を切られたり腹を裂かれたりするのは御免ですが」
「いやいや、そんなバイオレンスなことはしませんよ。ただ定期的にあなたの血液や唾液を頂ければ十分です」
まぁ、それだけなら…
「ですので退院した後も月に一回、当院へ足を運んで下されば幸いです。一応定期検診も兼ねてですが、主目的はあなたの血やDNAを頂戴することですので、診察代は頂きません。どうですか?」
「わかりました、協力します」
「ありがとうございます。で、ここからはさらに踏み込んだ話になるのですが…」
ん?
「あなたの身体の研究を、当院と取引のある製薬会社に依頼しようと思っているのです」
「ええ?いやでもそれって…」
「あなたの懸念することは勿論わかっています。例の映像やあなたの個人情報を製薬会社に渡すことは当然リスクを伴います。その会社のセキュリティによっては情報漏洩の可能性もゼロとは言い切れない」
「なら…」
「本音を言えば私自らが研究したいぐらいです。しかし我々医者の本業は患者を診察し、治療することです。研究ではありません。それに研究設備も当院より製薬会社の方が遥かに充実しています」
「………」
「…申し訳ありません。こちらの都合ばかり押し付けて。今あなたはこう思っているでしょう。それでは自分には情報漏洩のリスクばかりでメリットがないと」
「…はい…」
「ですので、あなたにとってわかりやすいメリットを用意しようと思っています」
「…それは?」
「身も蓋も無い言い方をするとお金ですね。つまりあなたの血液や唾液を製薬会社に買い取ってもらう、ということです」
「はい?買い取り?」
「そうです。それがいくらになるかは交渉次第ですが、任せておいて下さい。10万円は最低でも引き出してみせます」
「10万!?」
マジで!?血液や唾液を渡すだけで10万貰えるの!?
「それだけの価値があなたにはあると思っておいて下さい。映像や個人情報も最重要機密事項とします。絶対に悪いようにはいたしません。足元を見るようで申し訳ないのですが、仕事を失い収入がなくなった今、不労所得に近い形で毎月10万円を得ることができるのはかなり魅力的な提案だと思いますが」
正直言うとこれはかなり有難い提案だ。中学校の教育費は塾などの習い事をしない場合でも年間約20万はかかる。二人で40万。しかし年収120万あれば教育費だけでなく年間の光熱費や食費も賄えるだろう。勿論貯金もそれなりにあるが、それでも収入があるのと無いのとでは大きな差だ。気持ちの面でも継続的な収入は欲しい。それに経済的なことで百合に迷惑をかけたくない。
「…わかりました。精々俺の血や唾液を高値で売り付けられるように頑張って下さい。期待してますよ、篠田先生」
「ええ、任せて下さい!」
こうして俺は自分の身体(の一部)を売る契約をするのだった。
戸籍関連に関しては割とガバガバ理論ですがご容赦ください。