『現代文を古文にする』(https://catincat.jp/javascript/kogo3.html)
文体が間違ってるかどうかは僕には判断できないのでご容赦ください。
都度、注釈を入れるので言ってる内容がわかんなかったら見てね。
良秀語? 気合いで読め。読むのだ。
あ、でも要望が多かったら注釈付けます……スイマセン。
あとなるべく本編と同じような口調を作りましたが、二人称とかおかしかったら感想辺りで報告くれれば治すのでヨロシクネ
「あー……。ダンテー、私歩き疲れちゃった!」
ロージャが嘆きの愚痴をあげるが、そうは言っても何もしてやれないのが答えだった。
上層部の協力者から情報を得るための対価として、ねじれをひとつ解決しろ、という例の嫌味なLCCAチーフから投げ渡された指令をこなしている現在。休憩中にいきなり投げられた依頼だったため、丁度いた五人で該当者の心象ダンジョンに入ってみたはいいものの、やけに道のりが長く、ひたすら徒歩で進むだけとなっている。のだが――
「同じ思ひなれど、いかでこの迷路抜けいだすや分かりたらぬ以上せむかたなし」*1
イサンの言うとおり、いつまでたってもこの裏路地のような風景をした謎の道から抜け出せずにいる。一本道の迷路という矛盾は置いといて、いったいどうしてなのか、それを攻略しない限り依頼を達成出来そうにはなかった。
「そんなこと言ったって、意味もなく歩き続けても同じでしょ~。もう一時間も歩きっぱなしだっていうのに」
「……喋・歩」
「だからこうやって喋ってるんじゃないの」
「いや、今のは喋りながら歩けじゃなくて喋らず歩けだと思います」
苛立ちはロージャだけでなく、良秀にも表れていた。人どころか生物すらも見当たらず、戦闘のせの字も発生せず血の一つも見れない状況で、ただ退屈に歩くだけ。発言内容はともかく、それほど問題行動は――ドンキホーテやヒースクリフと比べると――起こさない彼女とは言え、しかしそろそろ限界なのは確かだろう。彼女がキレると何が起こるか本当に分かったもんじゃないから早急にどうにかすることが必要となった。
幸いなのは残りのメンバーがイサンとシンクレアという扱いに困らない面子だったことだ。これがヒースクリフだったら暴れ倒していても違和感はない。
しかしどうしたものか。
『一度戻ってみる?』
カチコチと針を鳴らしながら囚人達に聞いてみる。
「でもでも、また一時間かけて戻って、ヴェルに怒られるのってもっと嫌かも」
「そうですね……。せめて達成してから帰りたいと僕も思います」
二人の発言ももっともだった。私にはまだ甘いとはいえ、あの血のように真っ赤な眼光で睨まれると、足が竦んでしまうので同感ではあった。
「戻るべしとも限らず」*2
「まあ確かに前に進んでも進んでるのか怪しい以上、後ろに進めるかも怪しいところではありますね」
四人でうーんと唸って考えていると、限界に達したらしい良秀が傍にあったゴミ箱を蹴り飛ばし、びくぅと驚いた私に意に介さず倒れた側面に座って新しい煙草を吸い始める。戦々恐々としながら一挙一動を見ていると、一息二息吸って落ち着いた後、建物群の壁面を指で挟んだタバコで差した。
「壊してみろ」
『えぇ……』
壊していいのだろうか。いや駄目に決まっている。いくら心象のダンジョン内とはいえ、裏路地の市民が住んでいるだろうからロクなことが起きないはずだ。それが厄介な奴だったときにはもう目も当てられない。
「じゃあ何だ。さっきまでみたいに死ぬまで歩き続ける気か? 笑・千」
笑止千万という割には一切笑っていないのがこれまた恐ろしい。道がこれ以外なかったとはいえ彼女も相当に歩きたくなかったのだろう。とはいえ良秀の言う事も確かだ。無暗に歩いて解決しなかった以上、これ以上歩いたところで無駄になるかもというのは当然の発想と言える。この道には分岐路がまったく無いので工夫の仕様が無い。ひたすら歩くかひたすら戻るかあるいは――。
ガシャアン!
許可するかどうか考えていると、側で物と物が大きくぶつかり合う音が発生した。慌てて目を向けると、自前の武器を思いっきり壁面にぶち当て、豪快に空いた穴を満足そうに眺めるロージャが視界に映った。
ロージャは自信ありげにこちらに顔を向け、へへ、と笑って報告してきた。
「開けちゃった。えへ」
『……やっちゃったなら仕方ないな!』
おろおろと落ち着かないシンクレアと呆れた様子のイサンを余所に、私は前向きに受け入れることにしたのだった。ちなみに良秀は笑ってた。
それはそれとして建物の壁面に出来た直径1mぐらいの穴を覗いてみると、一体どうしたことか、今いる道と似たような、しかし明確に違う道が伸びていた。
元の道から見る建物の壁面は、換気口があったり頭上にベランダがあったりと裏路地らしい生活している様子があったが、穴の中には生活空間など欠片も存在していない。ただ壁にそれっぽい風景が張り付けられているだけかのようだ。
一方の穴の奥側の雰囲気は、言うなればそう。巣だ。
K社の巣で見た様な高級感ある建物の外壁が並んでいる。しかしやっぱり誰か人がいる雰囲気はカケラもしていない。
心象風景とは言え人っ子一人見当たらないとは、少し不思議な感覚になる。ウンボンのチキン屋も剣契の長も、両方共の心象風景内に人がいただけに。
「……さっぱり分かりませんが、これもモノリスだかなんだかみたいな何かの影響だったりするんでしょうか」
「LCCAはここにマナレスありとは言はざりき」*3
「本当にあるなら五人でなんて行かせなさそうだしね~」
モノリスがあるのだとしたら、失敗をさせないために十二人全員を送り込むことだろう。そうでないという事はつまり無いと思っていいはずだ。あの嫌味ったらしい、海綿だか開門だかいう名前のLCCAチーフもさっさと行けという以外に重要性は言わなかった。
『……ねじれ、ねえ』
「ねじれって変なのいっぱいよね。あのチキン屋さんとかは楽しかったけど」
あれはひどかった。囚人が半分ずつに分かれて謎の料理バトルが始まるだなんて、囚人たちに出会った当初は想像もつかなかっただろう。加えて出来もひどいという始末。まとも寄りだと思ってたグレゴールですらああだったのだから、実に恐ろしい出来事だった。
それはともかく、あの件でも不思議なことは色々と起きた。生きたチキンが暴れて人を襲ったり、
「すなはち落居するには、元凶をいかでかする要あらむ」*4
『うん。まあその元凶を探すにはこの迷路をどうにかする必要がありそうだけど……』
そうしてねじれについて相談していると、穴の先から何か音が聞こえたような気がした。耳を澄まして、がりがりと削るような音だなと思った瞬間、何かが穴から飛び出して側にいたロージャの首もとへと襲い掛かった。
「あぐぅっ……かはっ……!」
「ロージャさん!」
それはいびつな亀だった。片側だけの翼や頭が二つだったり前後だけでなく真ん中にまで足があったりとむちゃくちゃではあったが、おそらく亀だった。
それがロージャの首を噛みちぎり、溢れた血が首から、そして口からこぼれ出す。
『クソッ、あれを倒――し、て?』
尚も首に張り付いて食い散らかす亀に慌てて、シンクレアとイサンに指示を出そうとしたその時。鋭い剣閃が煌めいて亀がロージャの首ごと真っ二つに切り裂かれた。後ろを見てみればにやりと笑った良秀が刀を振って血を落とした所であった。一服を終えて満足したらしい良秀がやったようだ。
「煩い口もこれで黙ったな」
『……まあどのみち手遅れだったろうけども』
はあ、と溜息をつきながら、首だけとなったロージャと分断した胴体を
「ダンテありがと~」
『うう、痛いねホント』
ぎしぎしと響いた首を抑えながら、今しがた分断された亀をみんなで観察してみる。
「亀なり。されど、げにいびつなり」*5
「翼が生えた亀なんて見たことないですよ。ましてや頭が二本あったりこんな気持ち悪いの……」
「え、翼が生えた亀見たことないの? 私は見たことあるわよ。歩くの遅いのに飛んでも遅いんだよね~」
「美しさに欠ける。なんでもただ付け加えればいいというような中途半端さが気に食わない」
それぞれが好きなように見ていると、イサンが何かに気付いて甲羅に指をさした。
「……甲羅の綾が迷路のごとし。さるは良く見ると一本道のうねるばかりの」*6
その言葉に促されるように割れた甲羅をくっつけて眺めてみると、確かにそのようだった。道自体はうねりくねりとしており、分岐路がある場所は一点も存在していないようだった。試しにずーっと道をたどっていくと、端のスタートのような開けた部分から、中央部の丸い空間に繋がることと、もう一つの何かを発見できた。
「この赤い点はなんでしょうか?」
『今斬った時の血じゃない?』
それは甲羅迷路の入り口からそれなりに進んだ辺りで淡く光っていて、あるいはインクのような不自然さがあった。拭おうと指で擦ってみても取れることもなく、乾いた血程に黒くもなく、何も分からないままただ手に亀の生臭さが移っただけという始末。
一体なんなのかを考えていると、それを邪魔するかのようにまたもや何かの音が聞こえた。
「おかわりだって。でも亀はあんまり食べたくないかも」
「亀も案外悪しくはあらぬ物なり」
『腐った物でも大丈夫なイサンはあんまりアテにならないかな』
「……少しわびし」*7
ほんのり悲しげなイサンを尻目に新たに飛び掛かってくる亀。しかも今度は複数体。
「ギュアアオ!」
『来るって分かってれば対処のしようもあるよね。ロージャとシンクレアで受け止めて。良秀はそれを
「分かりました!」
指示に合わせてみんなが動き出す。
武器が大きめのロージャとシンクレアが威嚇するように振り回し、向かってくる亀を叩いて怯ませていく。隙を見せた亀を良秀が素早く斬撃を加えて数を減らし、二人の死角から飛んでくる亀などはイサンが的確に防いでいく。
完璧なコンビネーションだ。
「ひ・な」
「暇つぶしにもならない、ですか。まあ確かに僕にとってもそんなに手強いようには思えませんでした」
その言葉通りに今度はみんな無傷で立っている。一方亀は無惨に散らかされ、生きていたりいなかったり。
相性が良かったのかもしれない。亀の甲羅のような硬い物に対しては、イシュメールのメイスのような打撃武器の方が相性が良さそうに思ったが、しかしどれもさっくりと綺麗な切断面が見える。これもまたこの亀の特徴の一つと言えるだろうか。幻想体もそうだが、弱点というのは存在の根幹に関わっていることも多く、如何にして対処するかの指標になる。覚えておくことにしよう。
そう思いながら散らばった亀の一つを手に取って観察していく。亀の姿はこれ、というものが無いようで、相変わらず腕や頭の個数がおかしかったり、翼や毛、果ては鋭いトゲ等普通は付いていない物が存在しており、それらが個体によってあったりなかったりという感じだった。
「気持ち悪いって統一感ならあるね~」
そのくせ亀らしいぬめぬめ感だけは依然としてあるのが悩みものだった。
だが、よく見るとさらにもう一つ、統一されているのが分かった。それは迷路のような甲羅の模様と赤い点だ。
『うーん、甲羅の模様だけは最初のやつと見比べてもまったく同じに見えるね』
「何の模様なんでしょう。不自然ですけど意味があるんでしょうか」
「……甲羅を持ちて穴の向かふへ行かばいかがなる?」*8
『甲羅を持って? それじゃ、シンクレアお願い出来る?』
「これを一つ持っていけばいいんですね? わかりました」
シンクレアがイサンの指示通り甲羅を手に持って穴を通り抜ける。自分が行っても良かったのだが、通った先で亀が待ち受けていると死にかねないので囚人にパスだ。自分が死ぬと全てが終わってしまうのでそうせざるを得ない。
穴を通り抜けたシンクレアが甲羅を改めて見てみると、彼は驚いたような顔をして、イサンに顔を向けた。
「赤い点の位置が変わりました。いったいどうしてなんでしょう」
「おそらくはそれが今地ならむ」*9
「あ、ほんとですね。穴を移動すると赤い点も一緒に移動します。つまりこれって、この一本道の地図と現在地っていうことなのかもしれません」
「一本道なのに地図っていうのも変な話だけど、それがあればここの謎も解けるってこと?」
『まあ少なくとも、真ん中の空洞部分には辿りつけるんじゃないかな』
とはいえ迷路と現在地マークを見る限り、今までの数倍は歩かなければならなそうだったが。終わりが見えている分心持的には楽か、と前を向き直ると後ろから良秀に声を掛けられる。
「何処へ行くつもりだ?」
『いや道順通りだけど?』
そう返答すると良秀は呆れたように溜息をついて、切れ長の目を更に尖らせ阿呆と罵ってきた。
「地図を参考にして壁を突っ切ればいい」
『いやでもまた亀とか出て来たら厄介じゃない』
「愚・極。鳴き声が聞こえないのか? 時間が過ぎるだけで襲いに来るというのに、時間をかけるつもりだとは恐れ入る。まさか頭の針が進めば快感を得られるとも言わないだろうな時計ヅラ」
罵倒が豊富で非常に心が痛いです良秀さん。
それはさておき言われて気付いたが、確かにぎぃぎぃというような鳴き声や、何かが壁や地面を擦るような音が辺りを反響していることに今更気づいた。いつからだろうか。壁を壊してすぐだろうか。確かにこんな状況であれば、時間をかけるのは愚かかもしれなかった。
「ここのねじれってのは、つまりはこいつらを作った主ってことだろう。芸術家として少し話を聞いてやらんでも無い。さっさと行くぞ」
……どうやら理由はそれだけじゃなかったらしい。
芸術家として歪な亀という芸術を作り上げたアーティストにさっさと会いたいと。そういう事らしい。
この亀も多分芸術として作ったわけじゃ無いと思うんですが……。
ま、まあ珍しく良秀がやる気になってくれたと思って前向きに捉えることにしよう。
「チビ。お前が亀を持っていろ」
「……持つのは構いませんけど、チビって呼ぶのはやめませんか?」
「ハッ! 小・事」
事実だからって言っていいとは限らないのだが、彼女にとってはそんな気遣いは犬にでも食わせろといったところか。
口角を上げながら歩む良秀に対して不満そうなシンクレアが彼女の後ろを付いて行った。
「なんだかんだで仲良いよね~」
『末っ子って感じだよね。ロージャはみんなのお姉さんって感じ』
「ふっふーん。ダンテもイサンもお姉さんが守ってあげるからね」
「……ノォコメントなり」*10
『良秀の監視も頼んでもいいかな』
「……私もノーコメント!」
見合わせて同時にふっと笑い、三人で二人の後を追った。