ブルアカ世界に、キーブレードそのものとして転生した件について   作:ニュームーン

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第十話 勇者と戦いました

 ドゴシャアアアアアンッ!!! 

 

『シ、シロコおおおおおッ?!! 大丈夫ぅ!?』

「ゴホッ?! ガハッ!! んっ……背中、打った……」

 

 私は気づいたら、背中を思いっきり離れていた筈の壁にぶつけていた。

 

「い、今のは……」

『防御自体は成功してた!! けどそのまま押し込まれたんだ!!』

 

 アリスの攻撃自体は、防げていた。前方に貼ったバリア、【リフレクトガード】で耐える事は出来ていたらしい。

 しかし、足の踏ん張りが効かなかった……バリアごと押し込まれた形だ。

 結果、バリアを貼っていない背中がおもっきり壁にぶつけて、勢いがそのままダメージになってしまっていた。

 直撃よりはマシだろうけど、それでもかなり痛い……というか吐きそう。

 

「う、うわーん!? 光の剣のチャージ攻撃でも直撃になってません!?」

「《壁を破ってもおかしくなかったアリスの攻撃を、あの程度で防げたのか……!!》」

「《凄いね! こらえる事は出来なかったけど、防御としては最高峰じゃない?》」

「《しかし、背中を思いっきり打ってしまったようです! 弱点が無いわけではなさそうですね!》」

 

「“アロナのバリアだったなら、全方位防げていただろうね。強力だけど、制限がありそうだ”」

 

 遠くで考察の声が聞こえてくる。

 けれど今の私は背中が痛くてそれどころじゃ無い。

 直撃は防げても、何度もくらったらこれだけでやられてしまいそうだ。

 

『ガ、ガード不可の攻撃じゃなかっただけまだマシと言うべきか……それにしても、あの吹っ飛びよう……』

「ど、どうしたの?」

『ううん、ただゲームだとガードは成功したら、あそこまで背後に吹っ飛ぶなんて事はなかった筈。のけぞりはあったけど……壁まで吹っ飛ばされることなんてなかった。やっぱり、全部は再現しきれていないんだ

「つまり……?」

『ガードの過信は禁物だって事だね。ごめんシロコ、これ私の想定ミス!!』

「ん、気にしなくていい。防げてたこと自体は合ってるから、堪えられなかった私のせい」

 

 私は体制を整えながら、ココロに気にしなくていいと伝える。

 実際、あの巨大光線の攻撃は防ぐこと自体は出来ていたのだ。盾として考えるなら優秀だろう。

 支えきれなかった私自身に問題がある。

 

「さっきまで調子に乗ってた。反省。ここからは、本気で攻めに行く!」

『了解! 気をつけて!』

 

 そう言って、私は思いっきり走り出した。

 もう防御オンリーなんて事はしない、ここからは隙があれば魔法も解禁だ。

 

「来ます! でも、アリスは諦めません! 攻撃を防がれたとしても、何度も吹っ飛ばせばこちらにも勝機はあります!!」

 

 アリスの持ってるレールガンから、小さな光の球が連続して放たれる。

 さっきは防いでいたそれを、大きく回り込みながら避けていく。

 やっぱりガードをする為には、完全に足を止めなくてはならないから近づく際にはちょっと手間取ってしまう。今は遠回りでも走ったほうがいい、そんな判断だった。

 

 しかし、アリスも馬鹿じゃ無い。

 回り込む私の先も狙うように、レールガンの砲身の旋回速度を上げている。

 あの重さをよくあんな簡単にブンブンと……!? 

 

 小さな光弾とは言え、直撃したらそれなりのダメージになってしまう。

 ガードなしで何度も喰らうのはそれはそれで危険だ。

 周りを走ってる私に、とうとう追いついてしまう……! 

 

「ッく! 【リフレクトガード】!」

「足を止めましたね!! 光よ──!!

『シロコ! 横に飛んで!!』

「っうあ!!」

 

 小さな光弾を防ぐ為にガードを行ったら、狙いすましたかのようにチャージ攻撃。

 それをココロの指示で思いっきり左に飛んだ。

 おかげでギリギリ避ける事は出来たけど、体勢は転んだ状態だ。

 でも──

 

「避けられましたが、転びました! 今がチャンスです! 連続攻げ──」

「こっちも射程圏内!! 【エアロラ】!!」

「っ!? 風が!?」

 

 私はキーブレードをアリスに向けて、信頼出来る魔法を放った。

 頑張って距離を縮めた甲斐があった、ここはもう私の射程圏内!! 

 

「《室内で竜巻が?! そんな機材はない筈なのに! ははッ!! これが魔法か!! 面白い!!》」

「《うん、ワクワクするね!!》」

「《謎のエネルギー反応の動きは感知致しました!! これは解析しがいがありそうです!!》」

 

「“不良達を倒したキーブレードの魔法、確かに強い。……けどシロコ、今回は不適切だ”」

 

 ……? 

 遠く離れた位置にいた先生から、よく聞こえなかったけど注意されたような気がした。

 一体何が……

 

「けどアリス、この程度の風へっちゃらです!! ムン!」

「っ!? 全然効いてない……!?」

重さだ!? あのレールガン、ただでさえ重いから風で動かす事が出来なかったんだ!!』

 

 もちろん、風の魔法そのものでのダメージは与えられているだろう。

 しかしこの魔法は、どちらかと言うと敵を強制移動させて集める魔法だ。

 重さ140kg以上のレールガンを持った状態じゃ、全然怯ませられない! 

 

「まだまだ行きますよ! えい、えい、えーい!!」

「っく!! それなら、【ファイア】!!」

「っ!? 炎の弾が出ました!? あわわ!!」

 

 小さな光弾が再度連発される中、私は逃げながら【ファイア】の魔法を唱えた。

 流石にこれには驚いたのか、レールガンを盾にして防いでいた。

 よかった、これなら効きそうだ。

 

 走りながら、私は冷静に今使える魔法について整理する。

 ・【ファイア】系、効果あり

 ・【サンダー】系、不明

 ・【ブリザド】系、不明

 ・【エアロ】系、効果薄い

 ・【ウォータ】系、多分効果薄い

 試してないけど、【ウォタラ】系はあまり意味ないだろう。【サンダー】系と【ブリザド】系が他に試す価値がありそうだ。

 

 私はとうとうにアリスに接近することが出来た。

 ここからなら、打撃も十分使えるようになる!! 

 

「えい、やあ、たあッ!!」

「あ、あう!! あうう!! 攻撃が意外と重いです!! 直撃はアリスでもキツそうです!」

 

 右手のキーブレードで、思う存分アリスを叩く、叩く、叩く! 

 アリスはレールガンを盾にしてなんとか防いでいるが、こちらが押し込めている!! 

 

 しかし、アリスもなかなかだ。

 あの重たい重量で、比較的軽い鍵の振りに追いついているのだから。

 私の攻撃をはじき返すようにアリスは大きくレールガンを持ち上げ、私をキーブレードごと仰け反らした。

 その一瞬でアリスは構え直す。

 

「まだです!! 近づかれても、まだ攻撃を放つ事は出来ます! えーい──」

「【ブリザド】!!」

「っ!? 射出口が凍らされました!?」

 

「《今度は氷の魔法かい!? ははっ、楽しくなってきたな!!》」

 

 不良達との戦いの時のように、射出口を凍らせた。

 これで光弾は発射出来ない──

 

「まだです!! 光よ──!!」

「っ!? 無理やり発射した──あああッ?!!」

 

 私はとっさにガードはした、が……再度壁際まで押し込まれてしまった。

 これで振り出しに戻ってしまった。また背中がすごく痛い……

 

『シロコ、大丈夫!?』

「だ、大丈夫。だけど、また最初から……うーん、ダメージを与えられない……」

 

 私はすでに二回背中を大ダメージ受けているのに、アリスにクリーンヒットが中々無い。

 もっとこう、こっちの攻撃を大幅に連続で与える事ができれば十分勝てそうなんだけど、意外と隙が無い……

 何かいい方法は……

 

『……ところでシロコ、思いついた事が一つあるんだけどいい?』

「ん、何?」

『【ウォータ】系を使ってみてくれない?』

「え? でもそれだと、多分アリスには効果がほとんどなさそうな気が……」

『狙いはそこじゃ無い。その上で……』

「……なるほど、分かった」

 

 私はココロの提案に頷いた。

 その後、私は再度走り出す。

 

「また来ますね! 迎撃します! えい、えい、えーい!!」

「ん! もう飽きた!」

「っ!? 飛びました!?」

 

 私はアリスの攻撃を、大きくジャンプして躱した。

 これで距離は一気に稼げる。

 けれど、このままじゃ格好の的だ。だから……

 

「空中じゃ身動きが取れません!! ひか──」

「【ウォタラ】!!」

「ッ水?! ぷはあッ?!」

 

 チャージ攻撃が発射される前に、大量の水をアリスにかけた。

 しかしこの程度じゃ止まらないだろう。だから──

 

「か、関係ありません!! ひか──」

「【サンダー】!!」

「雷まで!? うああ、ビリビリします?!」

 

「《風、火ときて、氷、水、雷!! はは、ハハハハハッ!! なんだこれは、ワクワクが止まらない!!》」

「《うん、凄く記録しがいがある!!》」

「《現象そのものは既知のものなのに、発生過程が不明です!! 魔法という事前情報通り、不可思議ですね!!》」

 

「“なるほど、考えたね”」

 

 水塗れにした状態で、電気を流す。理科の実験でよくやるような行為だ。

 その効果は抜群だった。アリスは通常よりビリビリしていた。

 しかも──

 

「ま、まだです!! 今度こそ、光よ──!!」

 

 ──プスン。

 

「──え? え? っああ!? 光の剣、電源が落ちましたー!?」

「ん! 狙い通り!!」

『やったね! 一応電化製品なら、電気流したら誤作動起こすと思ってたんだ!!』

「そんな! 光の剣がこの程度で壊れるなんて──あああ!? 元々ウタハ先輩にメンテ頼みに来てたの忘れてましたー!!

 

 なるほど、作戦が上手く行ったのはどうやらたまたまだったらしい。

 けれど、成功は成功。

 今がチャンスとばかりに、私はアリスを思いっきり叩きまくる!! 

 

「とうっ、たあっ、やあっ!!」

「くっ、あう! で、でも、光の剣はまだ楯としても使えます!! こうなったら、このまま砲身で殴って──」

「させない! 【サンダー】!!」

「また痺れましたー!?」

『楯越しでも、周囲に発生する電気は防げないでしょ! いまだシロコ!!』

「ん、畳み掛ける──!!」

「あわ、あわわ──ッ?!」

 

 そうして、私は痺れた状態のアリスをキーブレードでボコスカ殴りまくり──。

 

「キュウ。損傷率、70%──」

「ん! 勝った!!」

 

 私の勝利でこの決闘は勝利した。

 

「《お疲れ様、二人とも!! とても有意義な戦いだった!!》」

「《うん! 面白かった!》」

「《データが大量に集まってますよー! あとで整理しましょう!!》」

 

「“シロコ、ココロ。アリス、お疲れ様”」

 

 戦いが終わった私たちに、みんなが声を掛けてくる。

 そんな声に反応せず、アリスは俯いたまま。

 

「うう、アリスは……アリスは、真の勇者ではありませんでした……」

「……アリス」

「うう……はい?」

 

「──すっごく楽しかった。アリスも強かったよ。あなたも真の勇者、それを認めるよ」

「──!! 本当ですか!?」

『うんうん! アリスもすごかったよねー!!』

「ん。それに、元々私のは思いつきだったし……正直今更ながら申し訳なくなったと言うか……」

「いえ……いえ!! シロコもココロも、凄かったです! お二人も、キーブレードの勇者だと言う事がよく分かりました!」

 

 アリス、ようやく分かりました! そう言ってきた。

 

「勇者は、別に一人だけとは限らないと言うことを! 複数人勇者がいるゲームも見たことありました! アリスも、シロコも勇者なのです! 勇者仲間です!」

「ん、勇者仲間♪」

「はい! これから、勇者仲間としてパーティ組んでくれますか!? もちろん、ココロもです!」

『それって、友達って事?』

「ん、いいよ」

「わああっ!! パンパカパーン!! 勇者は、新しい勇者仲間を手に入れた!!」

 

「“あはは。すっごく楽しそうだね、3人とも”」

 

 遠くから、先生がそう声を掛けてきた。

 うん、とても楽しい。

 

「……そうだ。アリス、試しにココロ使ってみる?」

「え? いいんですか!?」

『シロコ? あー、でも、うん……そっか。アリスも声聞こえるから、試す価値あるかもね』

「ん、その通り。だから、はい。アリス。呪文はさっき言ってた言葉だけど、覚えてる?」

「はい、アリスしっかり覚えています! ココロ、失礼します! えい、【ファイア】!!」

 

 直後、ボウッ! という炎の弾が、鍵先から放たれた! 

 やっぱり! 

 

『おおー!? 出たー!!』

「わああああ!! パンパカパーン! アリスは魔法を覚えた!! これで魔法勇者に転職しました!!」

「“おめでとう、アリス!!”」

「はい!! ありがとうございます!!」

 

「《アリスにも使えるのか……私たちは無理なのかい?》」

「ん、声が聞こえないと無理な筈……そう言えば、先生も聞こえるようになったんだよね?」

「“ん? ああ、そう言えば聞こえるようになってからはまだ試していなかったね”」

「そうなのですか? じゃあはい、先生にもお渡しします!」

『ようし、先生いいよー』

「“それじゃあ、いくよ! 【エアロ】!!”」

 

 直後、鍵先からビュゴウ! っと旋風が! 

 ん! やっぱり、声が聞こえる事が条件っぽい! 

 

「“おお、今度は出た!! これが魔法か、テンション上がるね!”」

「パンパカパーン! 先生も、魔法使いにジョブチェンジした!!」

「ん、ココロモテモテ」

『いやあ、それほどでもー』

 

 これで私、アリス、先生の3人がキーブレードで魔法を使えるようになった。

 ん、キーブレード仲間だ。

 

「あの、すみません! アリス、もっとココロを使ってみたいです! それで……」

「ん?」

──私もココロを使って、戦ってみたいです!!

『それって、今の逆パターンをやってみたいって事?』

「はい、そうです!」

「“だってさ、シロコ。どうする?”」

「ん、いいよ。受けて立つ」

「わあ、ありがとうございます!!」

 

「《もう一試合やるのかい? 構わないよ、データはあるだけいいからね》」

 

「それじゃあ、許可を得たところでもう一回。先生、私の銃返してもらえる?」

「“分かった、はい”」

「ん、ありがとう」

 

 そうお礼を言って、私は愛銃を構える。

 ん、こっちはこっちでしっくりくる。

 

「“それじゃあ、改めて配置についてー”」

「了解です!」

「ん、分かった」

 

 

 ☆★☆

 

「《──準備は出来たかい? それじゃあ、バトルスタートだ!!》」

 

 ブザー音が鳴り響き、二戦目が開始する。

 

「ん、先手必勝!」

 

 私は愛銃のアサルトライフルでアリスに向かって連射する。

 今度は普通の銃だから、距離をあまり気にする必要は無かった。

 

「えい! 【リフレクトガード】!!」

「むう、敵になると本当に硬い……!!」

 

 私は、ココロが敵に回った時の恐ろしさをようやく実感することが出来た。

 キヴォトスで当たり前に出回ってる銃の攻撃が、一切通らないのだ。

 アリスのレールガンのチャージ攻撃は抜きにしても、これはかなりキツイ相手だ。

 

 そうこうしているうちに、弾切れとなってしまった。

 リロードリロード……

 

『アリス、風だ!!』

「えーい!! 【エアロラ】!!」

「っ?! まずい……!!」

 

 リロードの隙を狙われて、風の竜巻を放たれてしまった!! 

 私は体重が比較的軽いから、簡単に風に引き寄せられてしまう! 

 ついでに普通に風に当たるだけでも結構痛い! これ意外とダメージあったんだ!? 

 私はなすすべなく、竜巻にグルグルにさせられ……ようやく収まった時、フラフラだった。

 

『アリス、いまだ! 攻め込め!』

「はい! うおお──!!」

「んっ……!!」

 

 フラフラ状態の私に対して、アリスがココロを構えて走って来ていた。

 逃げるにしても、この状態じゃすぐには無理だろう。

 しょうがない、数発は殴られることを受け入れよう。

 

 そう思って、キーブレードで横のなぎ払いをアリスは放って──

 

 

※ところで、アリスは基本重量140kg以上、砲撃時の反動は200kgを超えるレールガンをいつも持ち歩いています。そんなアリスが、打撃力の強化されるキーブレードを持って振るうとどうなるでしょうか?

 

 

 ──私の、横っ腹にゴッ──と、めり込んだ──

 

「──こ、ポ──?」

 

 私は、何が起こったのか理解出来ないまま──

 

 ──壁まで、ぶっ飛ばされた。

 

 ドゴッ! ゴシャ! っと、壁に衝突、落下をスムーズに行い──動かなくなった。

 

※答え。こうなる。

 

「──あれ?」

『「“し、シロコおおおおおおおおおおおおおおッ?!!”」』

 

 叫び声が聞こえるけど、私はカヒュ、カヒュー……と声にならない声を上げる事しかできない。

 どうやら、アバラが何本か逝かれたらしい。

 こうして冷静に考えているようで、私自身大混乱している……

 

「《シロコ君、大丈夫かい!?》」

「《だ、ダメ!? データ上、骨が折れてる!?》」

「《あわ、あわわ!? びょ、病院!? 病院ですか!?》」

 

「“シロコ!? しっかりしてぇーッ!?”」

「あ、あわわ……! 大丈夫ですかシロコ!? か、回復魔法! 回復魔法は……!?」

『ある! あるよ!? 【ケアル】、いや【ケアルラ】だ!! シロコの近くで唱えて、唱えて!!』

「は、はい!! 【ケアルラ】ーッ!?」

 

 こうして私は、アリスに回復魔法を唱えてもらうまで、思いっきり身悶えたのだった……

 ん、調子に……調子に、乗り過ぎた……

 

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