ブルアカ世界に、キーブレードそのものとして転生した件について   作:ニュームーン

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第十一話 鍵に出会いました

『シ、シロコ!? 大丈夫!? 本当に大丈夫?!』

「だ、大丈夫……今は……」

「シロコ、立ち上がりました!?」

 

 アリスに【ケアルラ】を唱えて貰ったシロコは、ヨロヨロと立ち上がる。

 アリスの打撃が当たった横っ腹を、サスサスと摩っている。

 本当に大丈夫? 

 

『回復魔法あって本当に良かったね……【ケアル】系って、パーティ全体に効果及ぶことが出来るから、味方回復出来るんだよね』

「寧ろ、今は大丈夫になった事が逆に怖い……多分だけど、骨にヒビ入ってたと思うくらい痛かったのが、今は全然無い……」

「アリス、知ってます。骨折はとても重症だと。それすら治してしまうなんて、キーブレードは凄いです!」

「ん、本当にそう……」

 

 シロコは冷や汗を掻きながら、改めてキーブレードの凄さを実感したようだった。

 私も、まさかあれほどの重傷を治す事が出来るとは……

 ゲームでも、HP1から全回復する事は当たり前にあったけど、現実に置き換えるとあんな感じになるのか……私自身ビックリだった。

 

「“シロコ、大丈夫かい?!”」

「ん、今は平気。回復魔法凄い」

「悲しい、事件だったね……いや、光の剣を振り回せるアリスが、打撃武器を使ったらどうなるかなんて、少し考えれば分かる事だったよ。迂闊だった……」

「凄かったね、人一人思いっ切りぶっ飛んでた……」

「トラックに轢かれた時って、あんな感じなんでしょうね!」

 

 シロコの様子を見に、先生とエンジニア部の3人がやって来てくれた。

 流石にあんな大事故があったからか、みんな心配そうな顔をしている。

 本当に回復魔法があって良かったよ……

 

「しかし、短いながらも良いデータが取れた。一応、シロコ君の体調もモニタリングしてたけど、重大なダメージがあったにも関わらず、今は全く問題無くなってる! コレは凄い、本当に文字通り回復魔法だ!」

「うん、医者いらずだね!」

「外傷のダメージとかは回復出来ましたが、病気などはどうなのでしょうか? そこら辺も検証したいですね!」

「“盛り上がってるね”」

「ん、文字通り体を張った甲斐があった」

「シロコ、元気になって良かったです! アリス、もっと魔法を使いたいです!」

「ん……!? 模擬戦は、一旦ちょっと遠慮したい……回復出来るとは言え、何の対策もない状態でもう一度食らうのはちょっと……」

 

 珍しく、シロコが弱気な発言になっている。

 よっぽどさっきのダメージが堪えたらしい。

 

『そうだね……アリス、実戦はともかく、とりあえずそこらへんで試し打ちしてみる?』

「はい! アリス、もっと試し打ちがしたいです!」

「それじゃあ、いったん別の機材を用意しようか。雷の電圧や、水質検査、火力の高さ、持続性とかを細かく調べたいしね」

「あ、そうだ。ついでに水が飲めるのかどうかも調べて欲しい。飲み水にしたい。あと、氷も」

「なるほど、それくらいならお安い御用さ。データ取りのついでに、調べて上げよう」

 

 シロコがウタハさんにそんな事を頼んでいた。

 これで当初の目的が果たせて良かった……うん? 

 

「“あ、そうだウタハ。ちょっといいかい?”」

「ん? 何かな?」

「“さっきちょっと話してたけど、『ココロの精神を入れられるロボット』が欲しいんだ。ココロの声が聞こえない人でも、直接会話出来るように”」

「ん、それ大事」

『そうだ! 私の体の件だった!?』

 

 私が会話出来るようロボットの体を用意してもらうという件! 

 ダメ元だったけど、一応それを相談しに来たんだった! 

 

「そうか、確かにそれは重要だね。しかし……」

「“やっぱり、難しそうかい?”」

「というより、どうアプローチすれば良いかが……発声機能を付けたロボットを用意するだけなら、直ぐには出来るさ。けれど、肝心の私たちに聞こえない声を聞こえるようにする、というのが……」

「シンプルに考えると、そのキーブレードから発生されてる筈の音声、それを波形でもなんでも良いから計測して、それをもとに音声流せば良いだけだよね?」

「しかし、肝心の音声に該当するデータがまだ観測出来ていません! コレでは機能があっても、どう発音すれば良いのかがわかりません! 幽霊の声を探知して欲しい、と言われているようなものです!」

「特定の波長のリズムでもあれば、サンプルを集めれるだけ集めればある程度推測は出来るんだけど……観測自体出来ないのであれば、すぐには厳しいね」

「“そっか……”」

「一応、片手間に作った発声機能が付いてる掃除ロボットはあるけど、みるかい?」

 

 そう言って、ウタハさんはミレニアムのあちこちで見かけた掃除ロボットを一台、目の前に持って来てくれた。

 けど、うーん……

 

「“どうだい、ココロ? 入れそうかい?”」

『うーん、やっぱり無理そう。【シッテムの箱】の時みたいに、心を感じ取れないから入れるって気配自体がしない』

「ん、やっぱり無理か……」

 

『──いや、寧ろ心を感じる、って意味なら、アリスのキーホルダーから何か感じ取れるんだけど、それって何?』

「「“え?”」」

「え!?」

 

 私の疑問の声に、シロコと先生はハテナを浮かびあげていた。

 対して、アリスはビックリしたように私に詰め寄って来た。

 

『アリスの光の剣に付いてる、ちっちゃいロボットのキーホルダーあるでしょ? そこから、微弱だけどアロナちゃん達を感じ取った時のような感覚がするから、誰か入ってるのそれ?』

「ココロは、ケイを……ケイを感じ取れるのですか!? ケイがやはりそこにいるのですね!?」

『え? ケイ? 何それ? 誰?』

「教えてくださいココロ!! ケイは、ケイは無事なのですか!?」

『あ、アリスちょっと待って!? ブンブン、ブンブンむやみやたらに振り回さないでー!? 戦闘中ならともかく、会話中だとちょっとー!?』

「ん、アリス落ち着いて……」

 

 そうして、急に取り乱したアリスをなんとかみんなでなだめ、ようやくアリスは落ち着いた……

 

「ご、ごめんなさい。つい、ケイとまた会えるかもしれないと思って……」

『いや、良いよ。……ところで、ケイって子について、詳しく教えてくれる?』

「はい! ケイは……ケイは、私の大事な仲間です! 詳しい説明は、複雑すぎて簡単には難しいんですけど……」

『……そっか。いや、それを聞けただけで十分! アリスの大事な人なんでしょ! よく分かった!』

 

 元気いっぱいのアリスが、あんなに取り乱していた。

 ケイの事について、すっごく真剣に話していた。

 だから、私が手を貸したくなる理由としてはコレで十分。

 

『アリス。お願いがあるんだけど、良い?』

「はい、なんでしょうか?」

『そのキーホルダーの中に……ケイって子に、私が入って会いに行っても良い?』

「──!! 会いに、いけるのですか?」

『うん! 既に似たような事経験済みだから、行けると思う! ケイって子が無事かどうか、確認してくるよ!』

「──っ。お、お願いします! ケイを、私の仲間をよろしくお願いします!」

 

『……というわけで、先生、シロコ。予定変更、ちょっと私こっちの用に行ってくるね』

「ん、しょうがない。あんなに真剣だったし、気持ちが少し分かる気がするから」

「“ああ、行ってらっしゃい。ココロ”」

『うん! それじゃあ、行って来ます!!』

 

 そう言って、私は【シッテムの箱】の時と同じように、キーブレードから自分の心を移して、アリスのキーホルダーの中にダイブして行ったのだった……

 

 ☆★☆

 

「──よっと」

 

 スタッと、私は上手く着地する。今度は頭からベシャッと行く事は無くなった。ふふん。

 とか思っていたら……

 

 バフッ!! 

 

「っ!? ゲホッ、ゴホッ! ほ、ホコリが……!? それに、真っ暗!!」

 

 私の着地の衝撃のせいか、地面に溜まっていたホコリのようなものがブワッと舞い上がっていた。

 それに、あたりが真っ暗なせいで何も見えない。

 

「ここは……【シッテムの箱】の中の青空教室とは、全然違う雰囲気だね。しょうがない……【ファイア】! これを最弱にして、持続してっと……」

 

 私はキーブレードを取り出して、炎の魔法で明かり代わりにつける事にした。

 これである程度視界は確保出来た。

 キングダムハーツで、直接光系の魔法とかがあれば良いんだけど、大抵特殊な攻撃技とかだから、普段使い用に活かせそうな魔法や技がすぐには思いつかなかったんだよなあ……

 なんかこの状況でもっとちょうど良いのあったっけ? あとで調べ直そう。

 

 それはともかく、ケイだケイ。

 

「なんかホコリっていうか、よく見たら砂まみれだし……どういう世界? ここ? キングダムハーツでよくある、ステンドグラスとかじゃないの?」

 

 私は意識を集中して、外で感じた時のように、ケイの心がどこにあるか感じ取ろうとする。

 なんらかの心がこの世界にあることだけは確定してる、それが本当にケイって子なのかどうかは分からないけど……可能性は高いと思う。

 

 けれど……なんか外で感じた時のように、心を感じ取れない。

 いや、感じ取れてはいる。けど……なんか薄いっていうか、全面? あたり一面から感じる? 何コレ? 

 

 ──いや。え? ちょっと待って、まさか……

 

 私はしゃがみ込んで、下にあった砂を少し掬って見た。

 より意識を集中して確かめてみると……“その砂から、外で感じた心と同質のものを感じられた

 

 ──ッ!? 

 

「いや、ちょ、ま……待って、待って、これそう言うこと!?」

 

「これ全部、ケイの心ってこと!? 砂だと思ってたもの、全部!? 粉々になってる!?

 

 私はその事実に気付いて、酷く驚愕した。

 嘘でしょ!? これ心が割れてる感じ!? 

 パッと思いつく症例としては、キングダムハーツ3の追加コンテンツで、ヒロインのカイリがバラバラになった時、カイリの心のカケラを集めたイベントがあったけど……あれに似た状況!? 

 

「いや、にしてもバラバラ過ぎでしょうが?! ほとんど砂じゃんもう!?」

 

 いや、どうしようこれ!? これ、もど、戻る!? 

 カイリは元に戻ってたけど、あれ確かパーツ7個までだったけど、こっちはもう砂じゃん!? 

 どうやって集めれば良いのさ!? いやある意味集め放題ではあるけど!? 

 

「待って!? 私吸った!? 吸っちゃった!? さっきケイのココロの一部、吸っちゃった!? ねえ!?」

 

 着地の際、バフって舞ったケイの心、私咳き込んじゃってなかったっけ!? 

 うっわやば!? これ本当に無事に元に戻る、ねえ!? 

 私が飲み込んだ分、パーツ足りなくて元に戻らないなんて事にならないよね!? 

 

「いや、どうしようこれ……アリスにあんな事言った手前、簡単に諦めるのはアレだし……」

 

 と、とりあえずあたりの砂全部一箇所に集めれば良いのかな? 

 ひとまず、思いつく事は全部やってみよう。

 

『──誰、です、か』

 

 そう思っていると……声が、聞こえた。

 

「──っ!? 声、誰!? まさか、ケイって子!?」

 

『──あな、たは、知りません……けれ、ど。なぜ、その呼び名を、知ってる、のですか……?』

「……やっぱり、あなたがケイって子なんですね。私はココロ。王国ココロ。アリスに頼まれて、あなたに会いに来ました」

 

 私は、辺りの砂に向けてそう呼びかけていた。

 そうすると、微かな声だけどはっきりと聞こえて来た。

 

『アリス……ああ、アリス……彼女は、無事なのですか……?』

「少なくとも、私が見たときは元気一杯でした。寧ろ、あなたのその状態の方が心配です」

『──ああ、良かった。アリスは、無事に生き残れたのですね……』

「……? 詳細は知らないけど、アリスはあなたの事を心配していました。だから、私が様子を見に来たんです」

『…………』

「……ケイ、さん?」

 

…………私は、もう、アリスには、会えません

「……それは、どう言う事、ですか」

 

 私は冷静になりながら、彼女に言葉の続きを促した。

 ポツリ、ポツリと、彼女は理由を話していく。

 

『ここにあるのは、私の構成データの集合体、でした……それが、ここまでバラバラになってしまったのです』

「……らしいですね。これ等からあなたの心を感じたのは、良く分かりました」

『ここまでバラバラになると、修復は絶望的です……こうして会話出来るのが、不思議なくらいです』

 

 なんで急に声が聞こえるようになったかは分からない……ひょっとして、ケイの心の一部を吸い込んじゃったから、その繋がりで? 

 

『ココロ、と言いましたか……アリスに、伝えてくれませんか? あなたが無事で、良かった、と……』

「……あなたは、それで良いんですか? アリスに会えなくて良いんですか?」

『……良いのです。彼女が無事な事が知れただけで。それに、これで良かったのかも知れません』

「良かった? 何がですか?」

 

 会えなくて、良かった? 

 その理由を、私は問い詰める。

 

『……あなたは、知らないでしょうが。私は、元々王女の、“”でした。世界を滅ぼす為に存在したものでした』

「……!?」

『王女は、アリスはそれを超えて、“なりたい自分になっていいと決めました”。そうして、アリスは勇者を選びました。アリスには最早、世界を滅ぼす役割だった“”は必要ないのです』

「……だから、自分は消えるべきだと? もう会わないほうがいいって事ですか?」

『ええ……こうして言葉を伝えられる機会を得られただけでも、望外の奇跡です。だから……』

 

 ……その言葉を聞いて、私は……

 

「……私は、あなたの言うとおり、何も知りません。あなたが世界を滅ぼす為に存在した、と言うのも初耳でした」

『…………』

「けれど、とても短い付き合いだけど、分かっている事はあります。アリスが、とてもあなたに会いたがっていたと」

『……!』

「私は事情を何も知りません。けど、それでも、あなたはもう一度、アリスに会ってあげるべきだと思います。あんな可愛い子が、真剣に私にお願いして来たんですから。あなたが消え去るべきなどと言う話は、もう一度会って話してから、それから考えればいい」

 

 それともう一つ。個人的に気になる点があった。

 

「……ところで、ふと気になったのですが。仮にこのまま私が立ち去ったとして、あなたはずっとここで一人でいる気ですか?」

『……ええ、そうなるでしょうね。私はこのまま、一人でこの空間にずっといるのでしょう』

「……そっか。じゃあ、言わせてください」

 

──一人ぼっちの孤独を、舐めてんじゃねえですよ。延々と、長い間誰にも会えない、話せない時間がどれだけ苦しかったか分かりますか?

 

『……?!』

 

 私の強く感情のこもった言葉に、ケイさんが動揺したのを感じ取った。

 もうアリスの事とか関係ない。あなたは私の地雷を踏み抜いた。

 

「あったま来ました。もう細かい事は気にしません。何がなんでもあなたにアリスを会わせてやりたくなりました。どんな手段を使ってでも」

『ふ、不可能です。もうここまでバラバラになった、私自身の再構成など出来る可能性は限りなく低いです。せめて、なんらかの“”がないと……』

「器。器……ん?」

 

 そう悩んでいると、私の手元のキーブレードが光始めた。

 何かを、伝えようとしている……? 

 

『それは……!? 特殊な性質、個体を感じます。なんですか、なんなのですか? その鍵は……?』

「……あなたと同じ、“”ですよ。キーブレードっていう、勇者の鍵です」

『キーブレード? 勇者の……鍵?』

 

 私は、自分のキーブレードに意識を傾ける。

 ……ああ、伝わってくる。キーブレードそのものが、教えてくれる。俺を使えって……

 

「……ケイさん」

 

 私は、キーブレードを前に掲げる。

 砂の状態でも、ケイさんによく見えるように。

 

仮に、このキーブレードは、あなたの器になり得ますか?

『……断言は、出来ません。しかし、それを素体にすれば、意識データを固めるだけならば、あるいは……』

「なるほど……そういえば知ってますか? 私って、実は外の世界で自分の肉体を持ってないんですよ」

『っ?!』

「外の世界の、キーブレードが私の体です。なるほど、なるほど……つまり、ケイさんは私と同じように、キーブレードの体を持った存在として確立するわけですね

『それは……そう、なのでしょうか?』

「多分そうですね。なら、決まり♪」

 

 ケイさん。私はそう、改めて呼びかける。

 

「今から、私の持ってるキーブレードをあなたに譲渡します。それを使って、あなたの体を再構築してください」

『──っ!! 良いの、ですか……? それは、貴重なものではないのですか?』

「大丈夫です」

 

──めっちゃいっぱいありますので

 

『っ??!』

 

 私は次から次へと、キングダムチェーン以外の大量のキーブレードを出していく。

 んー、これが良いかなー? あれが良いかなー? 

 

『ま、待ってください? 何本……何本あると言うのですか!?』

「え? 沢山としか」

『たく……!?』

 

 実は私、一番のお気に入りがキングダムチェーンだったからそれしか使ってなかったけど、実際は様々な種類のキーブレードを持っていたのだ。

 少なくとも、キングダムハーツのゲーム中に出てくるキーブレードは、大体網羅している筈だ。

 しかも同じもののダブりが結構ある。

 

 キングダムハーツ中では、心一つにつき一本しか同時には使用できない制限が基本的にあったが、キーブレード自体は、チェーンの先のキーホルダーを付け替える事で切り替えることが出来る。

 しかし、それ以外にも“持つだけなら複数持ちもいける筈だ”。

 描写的に、そうでないと譲渡や何かも出来ない箇所がいくつかあった覚えがある。

 リク自身、一度壊れたウェイトゥザドーンを手放して置いて行ったり、新たなキーブレードを受け取ったりしてたりするんだから。

 

 なので、私自身が一本程度、ここで手放すくらい訳はないのだ。

 

「ちなみにケイさんは、どれが良いですか? なんか好きなキーブレードってあります?」

『そう言われても……!?』

 

 そんな会話をしながら、どんどんキーブレードを出し続けていく。

 そして、“ある”キーブレードを取り出した時……

 

『あっ……』

「ん? これがいいんですか?」

『いえ、その……なんとなく、です』

「……なら、その直感を大事にした方がいいですよ。それじゃあ、これに決定ー♪ 念のため、予備として別のものも置いていきますねー」

 

 そう言って、私は二本のキーブレードを、この砂場に突き刺した。

 この二本は、もうケイさんのものだ。

 

「さて、と。器にするとの話ですが、これこのままここに差しっぱなしで大丈夫ですか?」

『いえ、その……せめて、砂になった私全てに触れさせる必要があります。せめて、砂が全て舞い上がっていれば、時間は掛かりますが、自力で集まる事は出来るでしょうが……』

「そっか。なら、ちょっと乱暴でもいいですか?」

『はい? 乱暴、とは……?』

 

 そうして、私は置いたキーブレードとは別に、いつものキングダムチェーンを持った。

 

「これこそ、キーブレードの力! 見ててください! 巻き上げろ! 【エアロガ】ッ!!」

『こ……これは!?』

 

 そうして私は、あたり一面の砂となったケイさんを、強力な風の魔法で全てを巻き上げていく。

 そして、砂で埋まっていた地面の姿があらわになる。

 

「──なんだ。やっぱりステンドグラスの世界だったんじゃん」

 

 そうして、私は。

 足元に、見覚えのある大きなステンドグラスの全体像を見た。

 

 それは、眠っているアリスに向かい合うように向いている、紫色の瞳をしたもう一人のアリスと言える少女がいるステンドグラスだった。

 

 ふと、横を見ると、置いたキーブレードに対して、巻き上げた砂が少しずつ吸い込まれていく様子が見えた。

 

「なるほど、あんな感じなんだ……あとはもう大丈夫ですか?」

『──はい。時間はかかりますが、なんとか形にはなるでしょう』

「そっか。数時間で出来る?」

『流石にそれは……十数日はかかる見込みかと』

「そっかー……じゃあ、流石に一旦私は帰りますね」

 

 そうして、私は一旦この空間から離れようとすると……

 

『──ココロ』

「ん、何?」

『……ありがとう、ございます。私に、もう一度アリスに会える可能性を残してくれて』

「ふふ、別にいいですよ。だって私、ハッピーエンドが好きだもん! 成功したら、また会いましょうね!」

『……良いでしょう、成功したら、またあなたに会おうと思います。直接、お礼を言う為に』

「ええ! それじゃあ、また今度!」

 

 そうして、私はこの空間から去っていった。

 出来る限りの事はやった。あとは、ケイさん次第だ。

 私は無事、成功してくれるよう祈る事にした──

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