ブルアカ世界に、キーブレードそのものとして転生した件について   作:ニュームーン

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第十二話 検証しました

『──ただいまー!!』

「っ!! 戻って来た!」

「ココロ、お帰りなさい!」

「“お疲れ様。無事に戻って来てくれて良かった”」

 

 私は、アリスのキーホルダーの中から現実に戻って来て、元の鍵の体に戻って来た。

 そんな私に対して、シロコ達が出迎えてくれている。

 

「ど、どうでしたか? ケイは、無事に会えましたか……?」

『……うん。一応会えたけど、正直に言うと無事って訳じゃ無かったかな。会話は出来たけど、今必死に体修復中。上手くいくかは彼女次第って感じだった』

「っ! そうですか……でも、会話は出来たんですね! やっぱりケイは、そこにいたんですね……!」

 

 アリスは、多少ショックを受けたような表情をしながらも、ケイの存在を確認出来た事自体が、とても嬉しそうだった。

 

『そうだ、彼女から伝言があったよ。“あなたが無事で、良かった”、と伝えてだって。確かに伝えたよ』

「──! はい、はい! 私も、ケイが戻って来たら是非お礼を言いたいです!」

「ん。よく分からないけど、良かったね」

 

 アリスがとても嬉しそうな表情をしているのを見て、シロコも嬉しい事があったんだろうと何となく察していた。

 これでケイさんのこと自体は今出来ることはやったつもりだ。後は時間が解決してくれるだろう。

 

『……さて、と。あれ? 元々何の用事だったっけ? なんかやる事やったつもりになったから、忘れちゃったんだけど……』

「“いや、元々君の会話出来るようのロボットを用意しようって話だったよね? 後は、キーブレードから出る水とか氷が食べられるかどうかの検査だったかな? ”」

『あー、そうでした。もうケイちゃんのインパクトが強すぎて、もう今日の用事は終わったーって気分になっちゃってました……』

 

 いやー、この体になって私自身の力で人助け出来るなんて思ってもいなかったから、満足感すっごく高い。

 やっぱり良いことすると気持ちいいよねー。

 

「ん。けど、ロボットの方は確かあんまり芳しく無かったんだよね?」

「そうだね。少なくとも、今すぐは用意は出来なさそうだ。これから色々検査していけば、可能性はゼロじゃ無いかもしれないけど……」

 

 ウタハさんはそう難しそうな顔をしながら、現状を説明してくれた。

 うーん、まあ私自身特殊な事例すぎるし、あんまり期待しすぎない方が良いだろう。

 

『良いよ、そっちはゆっくりやって貰って。シロコに先生達、アリスと会話出来る人が多くなって来て十分満足だし。それより、水とかの検査を優先しようか』

「ん、ココロから伝言。ロボットはゆっくりで良いって。代わりに水の検査とかお願い」

「……そうだね。よし、じゃあ実戦のデータはさっき取れたから、ここからは魔法個別毎に詳細を検査して行こう。何度か魔法を放ってくれるかい?」

「あ! じゃあアリスがやりたいです! さっきの模擬戦だと、風の魔法しか使えなかったので、他の魔法も是非使って見たいです!」

『良いよー! 思う存分やっちゃって!』

「よし、それじゃあやって行こう! まずは希望通り、水質検査から……」

 

 ☆★☆

 

 そうして、アリス主体の魔法で検査が進んでいき……

 

「えい! 【ウォータ】!!」

「ふむふむ。水の成分は特筆すべき点は無し。ある意味普通の水だね。けれど、細菌などは全然見当たらない綺麗な水だ……」

 

「えい! 【ブリザド】!!」

「相変わらず凄いね。こんな氷が一瞬で作れちゃうなんて。成分自体は水の魔法と変わらない見たい。温度の違いくらいだね。氷を出すか、対象を凍らせるか選べるそうだけど」

 

「えい! 【サンダー】!!」

「おお! 最弱の雷の魔法でも、結構電力が溜まっています! 一般家庭の電力30分位は保つのでは無いでしょうか!?」

 

「えーい! 【ファイア】!!」

「基本中の基本とも言える魔法だね。炎を出す魔法。火力は、赤い炎だから青い炎に比べて比較的低めになるね。普通の炎と同様に、対象を燃やせる能力もある。火力発電とかもいけそうだけど、それなら直接雷の魔法を使った方が早そうだ……」

 

「やあっ! 【エアロ】!!」

「風の魔法だね! 気流が発生しているのに、気圧の温度の差とかが見られないのが凄い」

「まるで見えない扇風機を回している、と言った方が近そうですね! どの魔法も、現象の根本となる発生原因がない状態なのが凄いです!」

 

「フィニッシュです! 【ケアル】!!」

「これが一番魔法っぽくて、分からない……!! 回復魔法、実在するとこんなに不思議なものだとは! 治癒力がアップして、自己治癒の能力が一瞬になるように強化されてるとは思うんだけど……」

「けど、アリス自身も疲れが飛んだように思えるんだよね?」

「はい! アリス、すっごく元気になりました!」

「アリスの体にも効果があるとは、不思議中の不思議ですね!! 魔法の面目躍如と言ったところでしょうか!!」

 

「“【ファイア】!! おお、私も出るようになってる!? ”」

「ん、先生も声が聞こえるようになってから、やっぱり使えるようになってたね」

 

 途中先生も、改めて私を試しに使ってみて魔法が発動出来るようになっていたことを確認したり……

 

 そうして、一通り検証した後、“ラ級”との威力の違いなども詳しく検証していき……

 2時間ほど経った後、検証の時間は一旦終了していた。

 

「お待たせ。調査の結果だけど、水の魔法で飲み水は問題なくいけそうだね。氷も同様だ。後、蓄電器さえあれば、雷の魔法も十分使えそうだ」

「炎も、問題無さそうだねー。火種がないのに燃えてるのって、不思議な感じがしたけど、特に人体に影響を与えそうな煙とかは無かったよー」

「風の魔法も問題ないでしょう! 人体に影響のある空気などは発生しておりません!」

「回復魔法は……すまない、詳細はそこまで分からなかった。ただこれも、人体には悪影響は無さそうだと言っておこう」

「アリス、がんばりました! とても楽しかったです!」

「“お疲れ様、アリス”」

「ん、ありがとう。思った以上に普段使いいけそうだね」

 

 シロコはエンジニア部とアリスに嬉しそうにお礼を言っていた。

 ほえー。私自身自覚無かったけど、こんなに人体に優しい魔法だったんだね。ここまで詳細に確かめたことは無かったから新しい発見だったよ。

 

「ただ、これらの結果はコントロールの効く初級魔法だったからこそ、という事を覚えておいて欲しい。君たちの言う“ラ級”ともなると、性質自体は変わらないが、人体を傷つける可能性も十分出る威力になっていた」

「キヴォトス人でも、油断していると普通に怪我しそうだったね」

「結局、銃と一緒で使い方には気をつけた方が良さそうです!」

「ん、了解」

 

 確かに。“ラ級”はまだ完全なコントロールが出来なくて、定型通りの操作しか出来ない状態だった。少なくとも、初級魔法みたいに掃除に活用なんて事は今は無理だろう。

 ──となると、“ガ級”はやっぱりまだ使わない方がいいな。私は心の中でそう思った。

 

 さて、と。と、ウタハさんが話を切り替えていた。

 

「これで今日のところは、ひとまず検査は終了だ。なかなか有意義な時間だったよ」

「楽しかったねー」

「魔法というものを、実際に見れた事がとても良かったです! 調査のやりがいがありました!」

「そうだ、シロコ君。ちょっと待っててくれ」

 

 そう言って、ウタハさんが何かゴソゴソとしていると……比較的大きな機材を持って来てくれていた。

 

「さっき、蓄電器があれば雷魔法で充電出来ると言っただろう? 簡易的だが、作ってみたものだ。君の雷魔法を当てやすいよう、魔法を当てる避雷針となる箇所を付けている。実験の協力のお礼として、報酬代わりにこれを譲渡で良いだろうか?」

「良いの? ありがとう!」

『良かったねー、シロコ! けどこれ、持ち帰れる?』

「ん、大きめのリュックに入れれば、自転車でギリ帰れる。大丈夫、この程度の重さならまだ平気」

 

 さっすがシロコ。全体的にキヴォトス人って人は筋力が高いんだねー。

 その中でも、アリスはトップクラスに高いみたいだけど。

 

「“さて、そろそろ結構良い時間だ。今日のところは、これで大丈夫かな? ”」

「ん、とりあえず出来る事はやった筈」

「“それじゃあ、そろそろシャーレに戻ろっか”」

「おかえりですか? アリス、今日はとても楽しかったです! ケイの事も、ありがとうございます! またシロコとココロにお会いしたいです!」

「ん、こっちこそ」

「私たちも、とても楽しかったよ。またいつでも来てくれ。それまでにココロ君の声を聞くための、新しい検査方法も考えておこう」

「頑張って準備するねー」

「今日はありがとうございます! 私たちも新しい発見があって、とても興奮いたしました!」

 

 そうして、シロコと先生は、エンジニア部とアリスにお別れを言ってシャーレに戻って行った……

 

 ☆★☆

 

「“さて、シャーレに戻って来たけど……もうこんな時間か。シロコ、そろそろ勤務時間終了だね”」

 

 私はシャーレに戻って、そうシロコに促した。

 今日は色々あったからね。シロコも疲れているだろう。

 

「ん、確かにそうだけど……先生、仕事大丈夫? 私たちに付き合ってもらっちゃって、今日の分殆ど進んでないけど……」

「“大丈夫大丈夫。私自身、今日は見ててとても楽しかったしね。シロコは自転車で来たんでしょ? じゃあ、そろそろ帰らないと日が暮れちゃうよ”」

『そうだね、真っ暗の中だと自転車は危ないよ? ただでさえ、蓄電器の大荷物があるんだし』

「……ん、そうだね。それじゃあ悪いけど先生、今日は帰るね」

「“ああ。また次の機会に。近いうちにアビドスに顔を出すよ。ココロの様子も見たいしね”」

『あ、ありがとうございます! そうだ、私もまたシャーレに来て良いですか? アロナちゃん達にもまた会いたいです!』

「“もちろん! いつでも会いに来て良いよ! ”」

 

 私はココロに、是非来てくれと誘っていた。

 ココロ自体、前世も合わせると実年齢は分からないけど、他の生徒達と成熟性はほとんど変わらないような気がしていた。

 砂漠でずっと埋もれていた事もそうだけど、色々目を掛けて上げておかないといけない子だと、そう思っている。

 

「ん、それじゃあまた。先生」

 

 そうして、シロコはココロを背負って、自転車で帰って行った。

 無事に帰ってくれると良いけど。

 

「“さて、と……残った仕事を片付けないと。けど、うーん……なーんか、忘れているような”」

 

 なんか思いついていた事があったんだけど、何だったっけ……あ。

 

「“しまったあ!? ミレニアムで、ココロがくれたゲームのデータ、他の人にも出来るように頼むの忘れてた!!”」

 

 そうだ、つい自分の中で思いついていた事だったけど、模擬戦とかケイの事とかあったから、すっかり忘れてた!! 

 データを渡してヴェリタスあたりに頼めば、キヴォトスのゲーム機でも動かせるようデータ改竄してくれるかと思ってたのに! 

 

「“しまったなあ……シロコには勿論、アリスとかもすっごく喜んだだろうし……まあいっか、次に行った時で。アロナ、プラナ。またミレニアム行った時があったら、教えてくれるかい? ”」

『もう、仕方ないですね! 先生!』

『肯定。スケジュールの予定に追加しておきます』

 

 ありがとう。これでよし、と。

 そうして、私は自分の机に向かい合い、今日の分の仕事に取り掛かることにした……

 

 ☆★☆

 

『──大分日が暮れて来たねー』

「ん。でも、アビドス地区自体には既に入ってる。もうすぐ私の家」

 

 私はシロコに背負ってもらいながら、帰宅の道を悠々と帰っていた。

 今日は色々あって楽しかったー! 砂漠で一人だったときは、思いつかないような事ばかりだった。

 やっぱり、人と会うのはとても良いね。

 

 ──そう考えていると、向かいから別の自転車の人が現れた。

 

 ん? あれ? なんか雰囲気が……? 

 

「──あ。シロコ」

 

 そう違和感を感じていると、向かいの自転車の人からそう声を掛けられていた。

 銀髪の、黒いドレスを着ている女性? 

 凄い綺麗……ドレスで自転車乗ってるのがある意味凄いけど、なんかシロコに似ている? 

 

「ん。シロコだ」

『シロコ、シロコ。あの人、知り合い? というか、もしかしてシロコのお姉さんか何か? すっごく綺麗で、なんか似てる感じがするけど』

「ん。あの子もシロコ。前ちょっと話した、別世界線の私」

『へ!? という事は、あの子もシロコ自身!? 凄ーい!? けどおっきい!? 未来のシロコ!?』

「ん、いずれ私もすぐ追いつく」

 

 そんなことをシロコと話していると……

 

 

──ん。誰と話しているの?

 

「──え?」

『あれ?』

 

 そんなことを、おっきいシロコさんが話していた。

 あれ、もしかして──おっきいシロコさんには、私の声が聞こえていない?

 

「シロコ、聞こえないの?」

「ん、何が? さっきからシロコが、変な独り言言ってるようにしか聞こえてないけど」

「……よいしょっと。この鍵なんだけど……」

「何、それ? おっきい鍵だけど、どこで見つけたの?」

「砂漠だけど。実は……」

 

 カクカク、シカジカ。と、シロコはおっきいシロコさんにこれまであった事を話してくれていた。

 話を聞いていくにつれて、おっきいシロコさんはどんどん驚いた表情に変わっていく。

 

「そんな事が……!? それじゃあこの鍵、死んだ人が中に入ってるって事!?」

「ん、そういう事になる」

「そんな、そんな事が……というか、砂漠に埋まってたんだ。私の世界では、見つけれなかったけど……」

「見つけた時、結構深いところに埋まってたから仕方ない。もしくは……そっちの世界だと、ココロがいなかったかのどちらかかもしれない

「そっか。そうかもしれない。けど、これが……」

『……初めまして! 王国ココロです!』

「ん、聞こえた?」

「ん、やっぱり聞こえない……」

 

 おっきいシロコさんは、私を手にとって眺めながらそんな事を呟いていた。

 やっぱり、おっきいシロコさんには聞こえないんだ……

 一通り見渡した後、シロコにはいっと返された。

 

「けど、同じシロコなのに、何で私は聞こえないんだろう……」

「ん。才能の差。こればかりは仕方ない、えへん」

「ん、大して変わらない……よわシロコのくせに」

 

 一瞬、ムカっとシロコの頭の上に怒りのマークが見えたような気がした。

 けれど、すぐに落ち着いて……シロコは得意げな顔になっておっきいシロコに向き合い、

 

「……ふふん。そう言ってられるのも、今の内」

「ん?」

──すぐ、あなたを追い越す。見通しは立ってる

 

 そう、自信満々に言い切っていた。

 

「……そう。期待しないで待ってるね」

「うん、シロコが驚く顔が楽しみ」

「それじゃあ、そろそろ行くね。私はもともと買い出しに行く予定だった」

「ん。それじゃあまた」

 

 そうして、おっきいシロコは自転車に再度跨って、どこかに行ってしまった。

 にしても、あれが別世界のシロコか……キングダムハーツでも、闇の自分はいても、別世界の自分って存在はいなかった筈だから、新鮮だなあ。

 

 ところでシロコ、やけに強さに自信満々だったけど……? 

 

「ん、ココロ。それじゃあ、帰ろう」

『あ、うん』

 

 そうして私たちは、今度こそシロコの自宅へと帰っていった……

 

 ☆★☆

 

「ん、今日は疲れたね」

『だねー。でもとっても楽しかった!』

 

 私たちは、一緒のベットに入ってそう会話していた。

 と言っても、相変わらず私は鍵の状態だったけど。

 

「ココロ」

『何?』

「──キーブレードの事、もっと教えて。色々な事が、出来るようになりたい」

「良いよ。それじゃあ、特訓だね!」

「ん、頑張る」

 

 そうしてシロコは、ムンっと気合を入れていた。

 うんうん、やる気十分なようで何より。

 

『けど、今日のところはもう寝よっか。明日から頑張ろう』

「ん、楽しみにしてる。それじゃあ、おやすみ」

 

 そうして、私達は一緒に眠った。明日からの特訓を、楽しみにしていて。

 

 

 

 

 ──思えば、この時点で違和感を持つべきだったのかもしれない。

 

 シロコが何故、特訓にこれほど意欲的だったのか。

 

 私は、キーブレードを布教出来たことで浮かれきっていて気づかなかった。

 

 もっと、彼女の事情と内面に、向き合うべきだった……その事を知るのは、そう遠くない未来だった。

 

 

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