ブルアカ世界に、キーブレードそのものとして転生した件について   作:ニュームーン

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第十三話 プールで遊びました

 ──調査の結果だけど、水の魔法で飲み水は問題なくいけそうだね。氷も同様だ。

 

 これが、エンジニア部の部長さんに見てもらったキーブレードの魔法の結果だった。

 つまり、【ウォータ】や【ブリザド】で出した水や氷を口に含んでも、問題ないという事が証明された。

 というわけで……

 

「ん! 【ウォタラ】! 【ウォタラ】!」

『無理しないでね〜』

 

 アビドスの学校のプール。そこでシロコが、一生懸命水の魔法を放ちまくっていた。

 朝9時から開始して、今は10時ほど。既に1時間は魔法を打ち続けていた。

 それなのに、シロコは魔力が回復するインターバル以外、魔法を放つのを止めようとしていなかった。

 

「【ウォタラ】! 【ウォタラ】! 【ウォタラ】! 【ウォタラ】! 【ウォタラ】! ……ふう」

 

 ……そして1分経った後。

 

「【ウォタラ】! 【ウォタラ】! 【ウォタラ】! 【ウォタラ】! 【ウォタラ】! ゲホッゴホっ……【ケアル】! ん、直った!」

『喉痛めたでしょ、絶対』

 

 そうして、再度水の魔法を放ち続ける。

 無理しないで、て言ったのに、回復魔法を使ってまで無理やり魔法を唱え続けている。

 ちょっとは休みなよー、と言ったが、シロコは、ん! と返事なのかどうかよく分からない言葉で濁していた。

 

 しかしそれは置いておいて、シロコの頑張りによりプールの水は半分近く溜まって来ていた。

 水の魔法で少ししか貯まらないとは言ってたけど、流石に1時間半も放ち続けていたらそれくらいは貯まるという事がよく分かった。

 これならお昼ちょうどにはプールは満杯になるだろう。シロコがこのペースを維持できるなら、だが。

 

『シロコ、ちょっとは休んだら? 何度も魔法唱え続けて、飽きて来るでしょ?』

「ん。逆にちょっと楽しくなって来た。だんだん、魔法の撃ち方の差異がわかる様になって来て、いろいろ試してる。成長が実感出来て楽しい!」

『そう? それなら良いんだけど……熱中症には気をつけなよー』

「うん。【ウォータ】! ……ゴクゴク、ぷはあ。大丈夫、水分補給はしっかりしてる」

『早速とばかりに飲んでいるね』

 

 そうして、用意していたコップに水の初級魔法を放って、飲み水として飲んでいるシロコ。

 水道代の節約になると、大層喜んでいた。

 まあ、プールの水も水道水で全部やろうとすると、結構お金かかりそうだしねえ……

 それを考えると、時間がかかるとはいえ魔法で貯められるのは、凄い破格とも言える。

 それでも、めっちゃ頑張る必要があるから、すごく大変そうだったけど……

 

 そんなこんなで、お昼ちょうど。

 

「ん! 完璧に貯まった!!」

『おー! お疲れ様ー!!』

 

 そこには、見事プールいっぱいに水を貯めた様子が。

 これなら普通に水泳しても問題ないだろう。

 

「あらかじめ、みんなに連絡しておいた。お昼過ぎたら、みんな来ると思う」

『じゃあ、それまでは休憩だね。お昼ご飯用意してる?』

「ん。大丈夫、コンビニでおにぎり買っておいた」

 

 そんなことを話しながら、アビドスのみんなが来るまでシロコと一緒に話しながら過ごしていた。

 シロコはお昼を買った際、他にもシロップや、かき氷機も買っていたらしい。

 

 みんなが来るのを楽しみ、と一緒にワクワクしていると、とうとうお昼過ぎの時間帯となった。

 プールサイドに、アビドスのみんなが水着姿で並んでいる。

 

「うへえ……! 本当に水が貼ってあるねえ!」

「最高ですー☆」

「まさか、学校でも泳げる様になるなんて思ってもいなかったわ!」

「そうだね、セリカちゃん。学校のプールが使える様になるなんて……」

「ん。頑張った」

 

 アビドスのみんなも、思い思いに喜んでいる様だった。

 これを見るだけでも、シロコが頑張った理由が分かったような気がした。

 

「ようし、早速泳ごっか〜」

「「「「賛成〜!」」」」

 

 ──そうして、みんなアビドスのプールに飛び込んだ。

 その顔は、みんなキラキラしていた。

 

「うっひゃあ〜! 海で泳ぐのも楽しかったけど、学校のプールで泳ぐのもある意味味があって良いねー」

「本当ですねー♣︎ 熱い気温の中、水で泳ぐの最高ですー☆」

「でも、ちょーっとぬるいわねー。まあ、熱で水があったかくなっちゃってるのは仕方ない、か」

「ん。じゃあ冷たくする」

「え? シロコ先輩?」

 

 疑問の声を上げるアヤネさんを他所に、シロコはキーブレードを構えた。

 というか、水の中にまで私を持って来たんだね。まあ、溺れないから別に良いけど。

 プールの中心部に向かって私を向けて、一言魔法を唱える。

 

「【ブリザラ】!!」

 

 その言葉とともに、ピキーンッ!! とプールの中心あたりが凍り始める。

 プールのど真ん中に、小さな氷山が出来たような状態だ。

 

「うっわ!? 一瞬で凍った!? というか巨大な氷になった!?」

「うへえ……!? 相変わらず凄いねえ、その鍵」

「うわあ〜! ヒンヤリして気持ちいいですよ〜☆」

「ほ、本当です! 生温い水の部分と、氷に近い部分で冷たい冷気が漂って、全然水温が違います……!」

「ん。もっと出せる」

 

 そうして、凍った中心部に近づいたり、離れたりして気温の変化を楽しんだりしているアビドスの面々。

 時々、シロコが小さく初級氷魔法を唱え続け、あたり一面に氷の塊をたくさん浮かばせたりしていた。

 ある意味、砂漠のど真ん中で南極か北極の環境を再現してみた、ような感じだろう。

 

 しかし、調子にノリすぎて……

 

「へっくし! いや〜、ちょっと寒過ぎたねー……」

「まさか冬でもないのに、アビドスで凍えることになるとは思っていませんでしたー。それも真っ昼間に……」

「ん、ごめん……【ファイア】。これで暖まって」

「うー、寒寒! けど、炎まで出せて暖まれるって本当不思議な鍵よね、それ」

「すっごいですね、魔法。本当に魔法かどうかはさておいて、プールでこんな事まで出来るなんて……!」

 

 そうして、体を温め終わった後、すぐに全員またあっつい状態になっていた。

 プールに再度飛び込んだりしたり、持って来たハンモックでゆったりしている子もいた。

 

「シロコ先輩、何やってるの?」

「【ブリザラ】。ん、かき氷作ってる」

「かき氷!? 食べられるの、それ!?」

「大丈夫。ミレニアムで検査して来た」

 

 セリカさんが質問して来る中、シロコは小さな氷を作って、それをかき氷機に放り込んでいた。

 それをガリガリと削って、あらかじめ買って来たシロップを掛けて、出来たかき氷をはいっと渡していた。

 

「あ、ありがとう。うわー、美味しいー! 学校のプールで食べるかき氷って、面白いわねー」

「シロコちゃーん、おじさんにもちょうだーい」

「私にもくださいなー♣︎」

「ただで氷がこんなに手に入るなんて……」

「ん。たくさん出せるから平気」

 

 そうして、全員にかき氷を配って、欲しい人はおかわりをして。

 食べ過ぎちゃって頭がキーン! ってなっちゃった人は、また炎の魔法で暖まったりして。

 

「けど、学校のプールはプールで楽しいけど、やっぱり波とかないとちょっと味気ないわねー」

「ん、分かった。じゃあ要望に答えるね」

「え? シロコ先輩?」

「【エアロラ】!!」

 

 アヤネさんが戸惑ってる中、シロコは遠慮なく風の中級魔法をプールの中心部に放っていた。

 しかも対象が水の中だから、そこがかき混ぜられて大きめの渦潮に! 

 

「うわ、わっ! 学校のプールで渦潮だよー!?」

「ちょっと!? 波じゃなくて、吸い込まれてるんだけどー!?」

「あはは! 楽しいですねー!」

 

 プールにクジラの浮き輪に乗っていたホシノさんが、真っ先に渦潮の中心に連れて行かれていた。

 他のみんなも、どんどん吸い込まれていってグルグル回っている。

 けれど、その顔はみんな慌てながらも、楽しい表情を浮かべていた。

 

「ホシノ先輩、ちょっといい?」

「ん? なあに、シロコちゃん」

「【サンダー】」

「おああああ。シロコちゃん、何やったののの〜」

「ん。電気風呂ならぬ、電気プール。どう?」

「あああ。肩のコリがほぐれそううう〜」

 

 プールの中で、まさかの雷魔法を最弱コントロールで放ち、電気プールにする事まで。

 私のアイデアだったけど、思った以上に活用していてシロコは本当に凄かった。

 

 そんなこんなで、時間はあっという間に過ぎていき……

 

「いやー、楽しかったねー。学校のプール」

「はい! 満喫出来ました〜☆」

「とっても面白かったわ!」

「はい! また是非、やりたいですね!」

「ん、好評なようで何より」

 

 思う存分楽しんだ後、全員水着から着替えてプールが出ていた。

 大分みんな遊んだようで、疲れた様子を見せながらもみんなとってもいい笑顔だった。

 

『うん。これだよこれ。これが私のやって欲しかったことだった……!!』

 

 私はこれらの光景を見て、とても満足していた。

 キーブレードで、ここまでみんなの笑顔を引き出せたことにとっても喜ばしい思いだった。

 ……キーブレードは、元々ハートレス、闇と戦うのに必要なものだったかもしれない。

 

 けれど、それはこの世界では関係のない事だ。

 

 私が持って来たコレは、そんな世界の使命とか関係なく、ただ自他共に楽しめる事、笑顔にすることこそが役割と言えるだろう。

 そういう意味では、シロコは思う存分理想通りに活用してくれている。

 私の理想の光景がここにあった……!! 

 これだけでも、私がここにこうしている意味があると言えるだろう。

 

『ありがとう、シロコ!』

「ん? ……ん。どういたしまして」

 

 私はシロコに、心の底からのお礼を言っていた。

 私自身が、この世界に来た意味が証明してくれたような気がして。

 これこそ、キーブレードとしての役割だと思わせてくれたようで。

 

「それじゃあ、この後はどうするー? 柴関ラーメン寄っちゃう?」

「ん。いいね、みんなで食べよっか」

「賛成ですー☆ それじゃあ、向かいましょう〜」

 

 そうして、みんなでご飯を食べに向かって行った。

 私も一緒に食べられないのは残念だったけど、この光景を見られただけでも今は満足だ。

 

 ……そう、それだけで満足だったんだ。

 少なくとも、私にとっては。

 

 ──シロコが、キーブレードに対して他の役割を求めていた事に、気づかずに。

 

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