ブルアカ世界に、キーブレードそのものとして転生した件について 作:ニュームーン
「んっ──!!」
『────』
心の闇の、自分自身との戦いが続いていく。
私が自分の銃で撃っていくと、闇の私も銃を持って放ってくる。
リク曰く、闇が銃そっくりの形として現れて、結果的に似た攻撃になっているらしい。
だから互いに、障害物のない銃撃戦だ。
『────っ』
「んっ! しつこい!!」
流石自分自身と言うべきか、思った以上に目の前の闇の私は手強かった。
さっきのシャドウと呼ばれたハートレスの時みたいに、既に6発は弾丸を当てていても、全然倒れない。
その間、私も何発か喰らってしまい、ダメージが蓄積していく。
やはり並の雑魚とは訳が違う、と言う事だろう。
しかし、それでも私たちの間には、致命的な差がある。それは……
「そっちは、ヘイローが無い!」
『────』
そう、目の前の闇の私には、“ヘイロー”が無い。戦ってみて気づいたけど、キヴォトス人特有の身体能力強化の恩恵が、得られていないように思える。
もちろん、ハートレスなのは変わらないからその分の耐久力はあるっぽいけど……総合的なパワーやスピードはそこそこだ。
確かに私もノーダメージとは行かないが、この分なら……
「これで、どう!!」
『────っ!』
そうして、私が最後に放った弾丸を受けて、闇の私は膝を付いた。
まだ完全に倒れてはいないけど、ほぼこれで勝ちだろう。
「ん、結果的に見れば、さっきより楽だったかも。これで、あとは完全にトドメをさせば……」
私は、強くなれる。
その事を、実感し──
「まだだ!! “次”が現れるぞ!!」
「……え?」
背後のリクの言葉に、私はそんな声を漏らす。
闇の私の方を見てみると……周囲に黒いシミが。
そこから……
『────』
『────』
『────』
『────』
「ホシノ先輩、ノノミ、セリカ、アヤネ──?」
今度は、闇の私だけでなく、みんなを模したハートレスまで現れた。
全員、闇で構成されたいつもの武器を持っている。
ん……やっぱり、まだ終わらない、か……
「そう、だよね。そう簡単に、強くはなれないよね……」
確かに、大変ではあったけど、これではまだあっさりだと思っていた。
これなら、本気のホシノ先輩と戦った時の方がよっぽど試練だった。
「ん、なら頑張る……!」
そうして、私は自分の銃を再度握り直して、突撃する。
新たに現れた4人を倒すために。
“自分の弱さ”を、倒すために──
☆★☆
「──今のところ順調、か……」
リクは、離れた箇所でシロコを観察していた。
戦い自体は、シロコがダメージを受けながらも、押している。
闇のアビドスメンバー4人が相手になったとしても、所詮模倣した偽物。
ヘイローが無い以上、シロコにとっては本物より比較的楽な相手らしい。
このままいけば、順調に4人も倒す事が出来るだろう。
だが……
「……嫌な予感が消えないな」
リクは、今のシロコを見てそう呟く。
このままいけば、シロコは“闇を拒絶”する力は手に入るだろう。
最低限、本当に最低限だが、今回の目標は達成出来る筈だ。
しかしそれを想定しても、今のシロコは“危うい”。
「……砂狼シロコ、お前は気づいているか? 分かった上で、戦っているのか?」
リクは、そう静かに問いかける。シロコ本人には聞こえないとしても。
「……お前は今、“アビドスの仲間”と戦っているんだぞ──?」
何故、力を手に入れるのに仲間と戦う必要がある?
……所詮は偽物。そう言えばそうかもしれない。
しかし、多少の疑問も持っていないのか? そんなものと戦わなければいけない現状に。
偽物と分かった上で、戦ってるだけと言うのなら問題ないかもしれない。
しかし、本当にそれを考えているのか──?
「……俺の考えすぎか? だとしたら良いが……」
まあ、偽物相手に、しかもはっきりと敵として出ている存在だ。
それを疑問に思え、そうじゃないとおかしい、と指摘するのも無茶な話かもしれない。
「……このまま、何事もなければ良いが」
リクはキーブレードをいつでも放つ準備をしながら、決して見逃さないよう見つめ続けていく。
……そして彼の懸念の答えは、思ったより早く現れる事になる──
☆★☆
「──これで、どう!?」
タタタンッ!! っと、私は最後の射撃を放っていた。
闇のホシノ先輩に当たったそれは、彼女に十分なダメージを与えるに至り、戦闘不能に追い込んだ。
闇のホシノ先輩は、他のみんなと同様倒れて動かなくなる。
「っはあ、っはあ、っはあ……」
私も、片膝を付いて荒い息を吐いてしまう。
なんとか、全員倒す事が出来た。まだ、消滅はしていないが、勝ちは勝ちだろう。
「ん、動けなくなる前に、トドメを──」
そうして、私はゆっくり立ち上がって、倒れた闇のアビドスのみんなに近づいていく。
そうして、私は闇のホシノ先輩に銃を向ける。
これでトドメを刺せば、完全に倒す事が出来る──
──“本当に? ”
「……ん、これで、合ってる、筈……」
私は、自分でやっている事が、少し分からなくなってきた。
自分の闇を、弱さを倒すために、ハートレスを倒していく。それは間違いない筈。
だから、このハートレス達のアビドスのみんなを倒すのは、間違っていない筈……
──“本当に? ”
「……ん」
……正直、あまり気分が良いものでは無いのは確か。
なんでわざわざ、アビドスのみんなのそっくりさんを倒す必要があるんだろう?
それに、疑問を思わなかったわけではない。
けど、強くなるには仕方ない事だから
だから私は、トドメを刺そうと……
『────』
「え──?」
見ると、闇の私たちが、真上を見上げていた。
それに釣られて、私も上を見てしまう。
そこには──
──丸い、黒い、球体のような存在が。
私は、あれを見た事がある。あれは、ホシノ先輩が反転した時に、私が触ろうとした──
「色彩──?」
なんで、あれが、ここに──?
「あれも偽物だ! 砂狼シロコの記録から作られたものに過ぎない! 闇が形だけを似せたもの! だが……」
アレの正体は、リクが教えてくれた。
けれど、彼には何か懸念があるようで。
偽物の色彩が、降ってくる。
その先は──
『────』
「闇の、私──?」
闇の私が、手を伸ばしていた。
そして、偽物の色彩に“触れる”。
──直後、あたりに衝撃波が走る。
私は思わず後退りをしてしまっていた。
『──────!!』
闇の私に、“オーラ”のようなものが宿る。明らかにさっきと違うプレッシャー。
一目で分かる、強くなったって。
「……そう。ここからが、本当に本番、なんだ」
私はそう、理解した。
アレこそが、本当の試練。
あの状態の闇の私を倒す事こそが、本当に私がやらなきゃいけない事。
「やっとやるべき事が分かった。それなら、今度こそ倒してやる──!」
私はそう固く誓い、銃を構える。
そして闇の私は、ゆっくり歩いて……
『────』
「……? 何処、いくの?」
“何故か、私の方に来ない”。
闇の私が歩いて行った先は────闇のアビドスのみんなのいる所。
『────』
闇の私は、倒れたアビドスのみんなに近づき──
────みんなに向かって、銃を放った
「──────え?」
……私は、その光景が最初意味が分からなかった。
最初は、ノノミだった。
倒れた闇のノノミに向かって、弾丸を躊躇なく大量に放つ。
闇のノノミは耐えきれず、黒いモヤとなって崩壊して──それが“闇の私に吸い込まれていく”。
「な、に……を……?」
次は、セリカだった。
セリカも同様に撃ち込まれ、崩壊し、消えていく。
それが、同様に闇の私に吸い込まれていく。……“その度に、闇の私が纏うオーラが強くなる”。
「や、めて…………」
その次は、アヤネ。
頭に熱心に撃ち込まれ、崩壊していく。
そこから全体が崩壊していき、同様に闇の私に吸い込まれて……
「──っやめ、ろおおおおおおお!!」
最後は、ホシノ先輩。
私は叫びだし、ただ咄嗟に止めようと走り出して、闇の私に銃を放っていた。
……しかし既に遅く、ホシノ先輩も闇の私にトドメを刺され、吸収されていった。
「ああああああああッ!!!」
……一見、ただ“敵が同士討ち”しているだけで。
それは私にとって得になる筈なのに。試練の達成に近づく筈なのに。
私は、目の前の光景が見たくなくて。
“私”が、“みんなを殺す”光景を否定したくて。
闇の私に全力で走り出しながら、銃を連発していた。
『────ッ!!』
しかし、その弾丸も効かないとばかりに、闇の私は一切怯まず。
全力でそいつに蹴りを入れられる。
「っか、はッ──?!!」
酷く重い一撃。明らかにさっきよりパワーが桁違い。
そんな状態の蹴りをくらい、私は何度かバウンドしながら後ろに吹っ飛ばされてしまっていた。
鳩尾を蹴られ、ゲホッゴホッと咳き込む。
急いで立ち上がって襲撃に備えようとすると……闇の私は、追撃しようともしない。
『────』
闇の私は追いかけず、その場に立ったままだった。
何をしている、そう思っていると──周囲に黒いシミが再度現れる。
『────』
『────』
『────』
『────』
シャドウ達だ。今度はアビドスのメンバーを模していない、最初に戦った小さい奴ら。
それらが大量に闇の私の周囲に現れ、そして……
『──────』
“闇の私が、撃ち倒していく”
一匹一匹、丁寧に。倒して、ソレを吸収していく。
「──なん、で……」
私は、その光景を呆然とした表情で見ていた。
目の前の光景が、信じられなくて。
……闇の私は、ハートレスだ。
だから、周囲のシャドウもハートレスなのだから、“あの彼女に”とって仲間も言える筈じゃないの?
……そう思っているのに、闇の私は淡々と撃ち続けていく。
一体一体。一人ずつ、一人ずつ……まるで同族を、“撃ち殺し続けていくように”。
「なん、で……こんなのを、見せてくるの……?」
私はそう、自然と声を溢していた。
……確かに、意味はあるのかもしれない。
あの闇の私が、他のハートレスを倒して行った分、明らかにオーラが強くなっている。
倒せば倒すほど、強さになると言うならば。その意味は、分かる。
けれど、何故それを見せつけてくるような事をする?
ただ単に、ここに現れる前に予め合体した状態でやってきても、同じじゃないの?
何故こんな、私にとって嫌な光景を──
「──アレは、“もしもの砂狼シロコ”じゃ無いのか?」
「え……?」
そう思っていると、リクが近づいてきて、そう言ってきた。
もしもの、私……?
「それって……別世界の、シロコの事……?」
「違う。“この世界の砂狼シロコ”のことだ」
俺が直接見たわけじゃ無いが……と前置きをされる。
アビドスの面々に起こった事は、ココロが先生から聞いている。それ経由で、彼もある程度知っている、と。
思い出せ、とリクは言ってくる。
「君は小鳥遊ホシノが反転した時、力を求めたな? それで、“色彩に触れようとした”──」
「──そ、れは……」
……そう、だ。私は、求めた。
力を。ホシノ先輩を止めるために、色彩に頼ろうとした……
「あの闇の砂狼シロコは、“君が色彩に触れたと仮定した姿”を模しているんだと思う。だから、同族に手をかけ始めた──」
「そんな、何で……!!」
「なんで、だと?」
そう言うと、リクは私の真正面にくるようにやってきて、視線を合わせてきた。
その顔は、まるで咎めるように。
「君は知っていた筈だ。色彩に触れたもう一人の砂狼シロコの末路を。“キヴォトスの住人を、殺して周ったと言う情報を”──」
「あ──」
「“なのに、君は色彩を求めた”。結果はどうなるか知ってる筈なのに。──それとも、自分なら大丈夫だと思ったか? 色彩に飲まれず、力だけを受け取りコントロール出来ると?」
そうリクは、全てを見通すような青い目で見つめて来る。
目を背けるな、とでも言うように。
「……なるほど、確かにその可能性も無くはない。現に、今のもう一人の砂狼シロコは安定しているようだしな。……けれど当時、“色彩に飲み込まれて、周囲の仲間を殺しに掛かっていた可能性”もあった事は、考慮すべきだろう」
「──わた、し、は……わたし、は……」
そんなつもりじゃ……そう言いたかったが、声が出なかった。
私は体中から力が抜けて、膝を付いている。
手元から既に、銃も離れてしまっていた……
「……すまない、厳しく言い過ぎた」
そう言うと、リクは背を背けてキーブレードを構え始めていた。
その視線の先は、闇の私がいる方角。
「──試練は中断だ。すまない、俺の見通しが甘過ぎた。今の君に、この試練は重すぎる」
「──っ! まっ、て……」
私はつい、リクの背中に手を伸ばしてしまう。
ダメだ、ここで終わったら私は、何も、なに、も──
「──大丈夫だ。“君はまだ、何も失っていない”」
そう、リクは優しく問いかける。
背中を向けたまま、迷子を促すように。
「君にはまだ、アビドスの面々が生きている。実際に取り返しのつかないミスをした訳じゃ無い。それは事実だ」
「……っ!!」
「だから、一度戻ってアビドスのみんなと向き合え。本当に自分の大切なものを──ッ!?」
……そう、リクが話を続けようとした瞬間。
闇の私の、プレッシャーが跳ね上がった。離れた位置にいる、私たちにも届くくらいに。
「ッチ!! 充分な量を吸収したか!?」
リクはキーブレードを片手で構え、闇の私を睨み付けていた。
『────』
闇の私は、ゆっくり片手を前にかざす。
そこには……
「キー、ブレード……? ココロ……?」
「アレも模造品だ!! 形だけを真似たもの……最近の砂狼シロコの、強さの象徴とも言えるものか!!」
闇の私は、片手に銃、片手にキーブレードを持った、最近私がよく使ってたスタイルに変わっていた。
その状態になって構えて────“その場から消えた”
まるで地面にトプッと溶けるように。
「消え、た……?」
「一体何処に……?! 後ろだ!?」
「っ?!」
気づくと、私は“殴り飛ばされていた”。
いつの間にか背後にいた、闇の私のキーブレードによって。
「がぁっ?!!」
「砂狼シロコ!! くそッ!! 俺を無視か! そこまでして、“弱い自分が憎いか”!!」
吹っ飛ばされた私を庇うように、リクが闇の私と鍔迫り合いをする。
私は、離れた場所でゴロゴロと転がり……ようやく止まった。
「っはあ、っはあ……!!」
呼吸が、安定しない。
心が、落ち着かない。
目の前の状況に、対応出来ない。
ただ、それでもなんとかしなければと。じっとしていたらやられると、そう思って立ち上がろうとすると……
新しい、黒シミが二つ現れる。そこから……
『────』
『────』
「──ホシノ、先輩……シロ、コ……!!」
そこには、“テラー化したホシノ先輩”と“もう一つの世界の私”が立っていた。
「砂狼シロコ!? くそ、“君にとっての恐怖、恐れの象徴!! ” それまで来たか!?」
鍔迫り合いをしながら、リクは顔だけ後ろを見てそう叫ぶ。
リクは目の前の闇の私を全力で蹴り飛ばすと、すかさず私たちの方に振り返る。
「【ダーク・ファイガ!!】」
『────っ!!』
『────っ!!』
すると、リクのキーブレードから複数の青白い炎が飛んできた。
それらが追尾するように、テラー化したホシノ先輩と、シロコに迫っていく。
二人はその場からジャンプで離れていくが、避けきれずヒットされていった。
私の近くに、リクが急いでやって来る。
「大丈夫か!?」
「……っ」
私は、大丈夫とは、言えなかった。
俯いて、下を向き続けてしまっている。
「くっ!」
リクは私に背を向けて、周囲を警戒し出していた。
私たちを囲うように、三角形に闇の私、テラー化したホシノ先輩、もう一人のシロコが囲っていた。
『────』
『────』
『────』
「……囲まれたな」
「……っ」
「立てるか、砂狼シロコ」
「……うん」
私は、リクに言われるがまま立ち上がった。
正直、気力はほとんど無かったけれど……座りこんだままなのも、嫌だったから。
「……来たときの階段を覚えているか? アレを登って、上層に戻れ。そこからなら、念じればこの世界から抜け出せる」
「あなたは……?」
「俺は、ここでこいつらの足止めをする。試練を出したのは俺だ。その責任はとるべきだろう」
リクは、そう静かに呟いていた。
……違う、悪いのは私だ。
彼は、ただ私を強くしようとこの場を整えてくれた。
ただ私が思ったより弱いせいで、この状況に陥ったんだ。
だから本当は、私が謝りたかった。
「よし、走れ!!」
「……ッ」
その掛け声とともに、私は走り出す。
ここに来た時に降りた、階段に向かって。
『────』
『────』
「お前達の相手はこっちだ!! 【ダーク・ファイガ!!】」
そう言って、リクは階段前を遮ろうとしたホシノ先輩とシロコを、魔法で牽制していた。
その横を、私は走り抜けていく。
「……ッ! ……ッ!!」
悔しい。
悔しいッ、悔しいッ、悔しいッ!!
弱い自分が恨めしい。
せっかくのチャンスをモノに出来なかった自分に悔しい。
色彩に安易に頼ろうとした過去が恥ずかしい。
私は……弱い
強ければ、こんなことにはならなかった。
強さがあれば、あの状況を突破出来た。
強さが、強さがあれば……あれ、ば……
『────ッ!!!』
「っ!? 待てッ?!」
「っ?!」
そう思っていると、闇の私が“更に強化される”。
瞬間的な強化にリクは対応出来ず、ガードをすり抜けられる。
そうして……背中を向けていた私を、攻撃する。
「がはあッ?!!」
私は、前のめりに倒れてしまう。
急いで振り向くと、闇の私がそこに立っている。
その目は相変わらず黄色の目で、まるでただただ私を無感情に、けれど、何処か殺意を込めているように見つめているような気がした。
『────ッ!!!』
そうして、闇の私は大きく飛び上がる。
闇に染まったキーブレードを両手で構え、それを勢いよく振り下ろしてきた。
私には、もうそれを避ける体力も、気力も無い──
「砂狼シロコ!!」
「──ッッ!!」
私には、何も出来ずに。
ただ目を瞑って腕で遮るしか方法が無く。
そのまま、そのキーブレードが頭に振り下ろされ──
☆★☆
──何も、起きない。
「────?」
いつまで待っても、来るはずの衝撃が来ない。
それに疑問に思った私は、恐る恐る目を開ける。
「────え?」
そこは────“砂浜”だった。
先ほどまでいた、ステンドグラスの世界じゃ無い。
砂浜がある。海がある。青空がある。ヤシの木がある。
「──何処、ここ?」
私は混乱した。
さっきまで、闇の私に追い込まれていた状況だったのに。
あたりを見渡しても、闇の私達や、リクすらいない。
「ここは……?」
私は改めて、周囲を観察する。
ここはまるで、アビドスのみんなで夏に行った無人島を思い返すような場所だった。
白い砂浜で、海の水がとても透き通っている。
「──綺麗」
私は、自然とそんな言葉が浮かんでいた。
さっきまで、そんな状況じゃなかった筈なのに。ここの景色を見ると、心が洗われるようで……
改めて、ここが何処だか考えてみる。思いつく案としては……
「……私、死んだ?」
闇のシロコの攻撃で、死んでしまった?
ここはまさか、天国というやつなのだろうか?
それとも、やられる直前の走馬灯?
……考えれば考えるほど、ネガティブな考えばかりが浮き上がってしまう。
「──ねえ。君、大丈夫?」
「──え?」
そんな私に、背後から声が掛けられる。
さっきまで誰もいなかった筈なのに。
リクの声じゃ無い。誰……?
……振り返ると、一人の少年が立っていた。
茶髪のトゲトゲしい髪型。
黒い服に、所々赤いラインの入った服装。
王冠のような、銀のネックレスを付けている。
そして何より……
「キー、ブレード……ココロ?」
「ああ、これ? 悪いけど、これはココロじゃ無いよ。俺のキーブレード」
そう言った彼は、ココロの姿と全く同じ形の、キーブレードを持っていた。
「あなたは、一体……?」
私は、リクにやったのと同じように問いかける。
「俺? ──俺は【ソラ】!! よろしくな!!」
そう言って、【ソラ】と名乗った少年は、輝くような笑顔で手を差し出してきたのだった……