ブルアカ世界に、キーブレードそのものとして転生した件について 作:ニュームーン
「ほら、立てる?」
「あ、ありがとう……」
そう言って、ソラと名乗る少年に差し出された手を取って、引き上げてもらう。
私は砂浜から立ち上がって、改めてその少年と向き合った。
「……ねえ、ここって天国?」
「え? 違うよ、ここは俺の故郷。“デスティニーアイランド”って言うんだ」
と言っても、そっくりなだけの場所だけどね。と、ソラは付け足していた。
そっくりな場所……?
「……もしかして、ここも心の世界?」
「ん? そうだよ。ここは心の世界。“俺が作った空間”なんだ」
「作った?」
「そう。まあ、作ったって言うより、自然とそうなったって言うか……君と、シロコと話す為に空間を用意したら、なんかこんな形になっちゃってたんだ」
たはは、と片手で頭を掻きながら、照れ臭そうに少年は笑っていた。
私の名前を知っている……そして、ここも心の世界という事は……
「あなたも、もしかしてリクの関係者?」
「そうだよ、リクは俺の親友!! 大切な友達なんだ!」
ニカっ! と笑いながら言った彼の顔は、とても明るい表情だった。
そう言って、ソラは私に向き直って話を進めてくる。
「にしても、さっきは危なかったな」
「ん? もしかして、見てた?」
「ああ、悪いけどちょっと覗き見してた。危ない所だったから、俺がここに呼び寄せたんだ」
「……そっか」
つまり、私はソラに助けられたという事なんだろう。
その事は、お礼を言うべきだ。
「ありがとう……」
「良いって、良いって」
「…………」
「あれ、どうしたの?」
私はソラにお礼を言った後、つい俯いてしまっていた。
それを見て怪訝そうな顔で、ソラは質問して来た。
「……私は、失敗した」
さっきまで受けていた、試練のことを振り返って、私はそう呟いた。
「自分の心の闇を……弱さを、倒す事が出来なかった……」
「…………」
「私は……弱い」
ポツリポツリと話す私の言葉を、ソラは黙って聞いていてくれた。
「強ければ、こんなことにはならなかった……強さがあれば、あの状況を突破出来た……強さが、強さがあれば……あれ、ば……」
「……うーん」
そこまで聞いて、ソラはポリポリと頭を掻いていた。
なんて声を掛ければ良いか悩んでいるように。
「……ごめん、こんな事愚痴っちゃって。私は……」
「……ねえ、シロコ」
「──“ちょっと俺と、戦ってみない?”」
「……え?」
☆★☆
「はい、木剣。悪いな、俺銃って使った事なくて。キーブレード変形ので良いならあるんだけど、本物はなー」
「え、うん……」
そんな提案を、ソラからされて。
私はソラから木で出来た剣を貰って、私たちは砂浜で向き合っていた。
ソラもキーブレードではなく、木剣を持っている。
「それじゃ、勝負は先に3回相手に攻撃をヒットさせた方が勝ちって事で、いい?」
「うん」
私は言われるがまま準備をしていたけど、とりあえずこの勝負は受ける事にした。
今はちょっと気分を変えたいし、挑まれた勝負を逃げるような事はしたくない。
「よっし、いくぞー!」
「ん、受けて立つ」
そうして、私たちは互いに走り出した。
互いに木剣を振りかぶって、鍔迫り合いになる。
「へへ、どうだ!」
「ん、意外と力強い……!?」
ソラは見たところ、キヴォトス人じゃない筈なのに、私と同等の力を持っていた。
この時点で、私はソラに対する認識を変えていた。
力強く押し返して、ソラに一撃を見舞おうと大きく剣を振りかぶる。
「よっと!」
「ん! 防がれた……!!」
しかし、私の振りかぶった一撃を簡単にガードされて、逆に私が体勢を崩されてしまう。
そして、開いた胴にソラの木剣が叩き込まれていた。
「へへっ、まずは1ポイント!」
「ん、しまった……!!」
そこから、私はポイントを取り返すようにソラにラッシュを仕掛けて行った。
しかし、どれも簡単に回避やガードされ、逆に自分の隙を晒す始末。
何度目かの攻防で、再度できた隙を突かれ、あっという間に2ポイントに。
「ん、強い……!?」
「へへ、だろ!」
……こうして手を合わせてみて分かった。
確かに、私自身木剣の使い方が素人だという点は否定出来ない。
けれど、それ以上に“ソラの戦い方が上手い”。
力の逸らし方、体勢の維持、隙のつき方。
激しい動きをしているわけではない。時には大きな隙なように見える攻撃もある。
けれど、こちらの行動のタイミングに合わせて放たれるそれらの動きは、実質隙が無い動きとして成り立っている。
なんというか、技の練度が違う、といった印象だった。
戦いを知ってる動き、といえば良いのだろうか?
「凄い……」
私はそう、感嘆の声を漏らしていた。
目の前の同い年、あるいはちょっと年下のように見える男の子が、見た目と違ってとんでもない実力者だと。
そして……
「楽しそう……」
そう、ソラは“笑っていた”。
こうして手合わせしている間、距離を取って向かい合っている間にも、常に楽しそうな笑顔を浮かべていた。
まるで一瞬一瞬を楽しんでいるかのように。
……それが、とても羨ましく感じて。
「シロコ、まだやる? それとも諦める?」
「ん、そんなわけない!」
私は、気持ちを切り替える。目の前の少年が実力者だという事はよく分かった。
けれど、だからと言って諦める気は無い。
受けた勝負、何事も負けるつもりはない!
そう思って、私は大きく振りかぶって──
☆★☆
「──負けた」
「へへ、俺の勝ち」
私は砂浜に寝転がって、そう呟いていた。
悔しい、結局一点も奪えなかった。慣れない武器とはいえ、ここまで差があったなんて……
空を見上げると、果てしない青空が広がっているのが見えて、より負けたことが染み渡る。
「シロコ、楽しかった?」
「……うん、楽しかった」
「だろー? ちょっと運動できて、頭の中スッキリしたでしょ」
「ん、ありがとう」
ソラの言葉に、私は仰向けの状態のままそう返事をした。
これは確かにそう。負けたけど、ソラとの戦いは新鮮な気分で、とても楽しかったと言えるだろう。
良い気分転換にはなってくれた。
私はソラに差し出された手を握って、引っ張り上げてもらって立たして貰う。
「強いね、ソラ」
「へへ、そうだろー。俺だって、たくさんの修羅場を潜り抜けて来たんだからな」
といっても、この俺じゃない俺だけど。と、ソラは呟いていた。
確か、リクと親友という事は、ソラもゲームのキャラなのだろう。
ココロが知ってる記憶から、彼も作られた存在だと。
……けれど、だとしても先ほど戦った時に感じた強さがある事には変わらない。
「凄いね……どうすれば、あなたのように強くなれるかな?」
「……シロコ?」
「さっきの手合わせでよく分かった。あなたはとっても強い人。……それこそ、キーブレードを使ったらどれだけ強いか分からないくらいに」
そうだ。さっきは模擬戦で木剣同士の戦いだった。
それだけでも彼の強さが滲み出ていたのに、彼は自分のキーブレードを持っていた。
彼本来の武器で戦ったら、どれだけ強いのか想像出来ない。
私は、それが羨ましくて。
「……ねえ。あなたなら、あの試練を突破出来る? 私がさっきまで受けていた、あの試練を」
「……うん。多分余裕」
「ん、だよね。……私も、そうなりたい。どうすれば良い?」
私は、目の前の彼にそう聞いた。
強さを持っている彼なら、答えを知ってると信じて……
すると、しばらくソラはうーん……と考え込み。
話し出した言葉は……
「──“シロコにとって、強さって何?”」
「……え?」
ソラは、真っ直ぐな目で私を見つめて、そう聞いて来た。
「ちょっと答えてみてくれる?」
「……えっと」
その言葉に一瞬呆けるけど、私はよくよく考えて見て……
「……“倒す強さ”。襲ってくる敵や、私より強い人を倒す為」
私は、そう答えを出した。ヘルメット団や、カイザーに学校を襲撃された事。
飛び出していくホシノ先輩を止める為に、戦った事。
その時の事を思い出して、そう呟いた。
その答えを聞いて、ソラは……
「……うーん。もう少し聞いて良い?」
「ん、何?」
「どうして、敵を倒す必要があるの?」
「え? なんで当たり前のことを……?」
「良いから良いから。ちょっとシロコなりの理由を聞かせて欲しいんだ」
敵を倒す。当たり前の言葉に対して、ソラはそれに理由を聞きたいと言う。
……確かに、改めて深く考えた事は無かったかもしれない。
私は、更に考えて……
「……“奪われない為”、かな」
「奪われない為?」
「そう。私の持っているものを、私達の居場所を、守る為」
私は、アビドス学園を……私を拾ってくれたホシノ先輩とノノミの事を思い出す。
あそこは……私の全てだから。
思えば、ずっとそうだった。私は拾われる前から、私の持っている物を奪われない為に強くなりたかった。
ホシノ先輩達が、私に居場所を与えてくれたんだ。
「だから……私は強くなりたい。学校を守って、自分の居場所を守れるように」
私は、そうはっきりとソラに伝えた。
私なりの、答えを。
「……そっか。シロコは、強さを求める理由をはっきり持ってるんだね」
「……うん」
「うん。その考えは、間違ってないと思うよ」
私はつい、顔を上げる。
ソラは、そう肯定してくれた。
私の事を、間違っていないって──
「……けれど」
「……けれど?」
「“強さを求める理由”は、間違っていない。けど、“求める強さの方向”が、ずれてるんだと思う」
「──え?」
強さの、方向……?
「“倒す強さ”。それも間違ってるわけじゃないと思う」
「なら……」
「俺も、君の事はココロを通して知ってる。だから、ちょっと聞いて良い?」
そう前置きをして、ソラはこう言って来た。
「──その“倒す強さ”って、君の先輩、“ホシノが既に持っている”と思うんだ」
「……ん、うん」
それは……その通りだ。ホシノ先輩の強さが、私にとって理想の先にあると言って良い。
だから、ホシノ先輩は既に持ってると言っても過言じゃないと思う。
「……けどさ。既にホシノが持ってるなら、全て問題ないんじゃないの?」
「……え? いや……」
「だってそうでしょ? “君の求める強さが先輩が持っているなら、全て上手くいってる筈”。違う?」
「……ち、違う」
「なんで?」
「だ、だって……」
まだ、借金の問題も解決していない。
それに、最初にカイザーが学校を奪おうと直接仕掛けて来た時、ホシノ先輩は囚われていた。
列車砲の時だって、ホシノ先輩一人で突っ走って行って……反転して、大変な事になっていた。
「だから、ホシノ先輩だけが“倒す強さ”を持っていても、意味がない……」
「でも、それじゃあなんで君もその力が欲しいの? 意味がないって分かってるのに」
「それ、は……」
私は、思い返す。
列車砲の騒動の時に、無意識に強く思った事。
「……“頼って、欲しかった”」
ポツリと、その言葉が溢れる。
「もっと、ホシノ先輩に……私達を、頼って欲しかった!! 一人で突っ走らずに、私たちと一緒に協力して欲しかった!!」
私は、矢継ぎ早に言葉を喋りだす。
ずっとずっと、思っていた本当の事を。
「でも、弱いから! 私たちが、私が弱いから!! ホシノ先輩は、私たちを頼ってくれない! 置いて行っちゃう! 全部一人でなんとかしようとしちゃう!!」
だから、だから……!!
「──ホシノ先輩に頼られる程の力が。“並び立てる力”が、欲しい」
……ああ、やっと腑に落ちた。
私は、ホシノ先輩に、頼られたかったんだ。
ソラに話していて、ようやく実感出来た事だった。
「……そっか。それがシロコの本音なんだね」
「……うん」
「……うん。分かるよ。俺も一時期“目覚めの力”っていうのを失ってた時、歯痒い思いをしていた経験があったから」
そういって、ソラは私の肩をポンっと叩いてくれた。
優しい目つきで、そう慰めて。
「シロコ。俺にとって力は、“つながる心”だ。一人では無理なことでも、みんなとなら一緒に乗り越えられる。つながる心が俺の力だ」
「……つながる、心」
私は、ソラの言葉を繰り返して噛み締める。
ああ、そっか。私が欲しい力って、本当は……
「良いね、それ……」
「だろ? 君は、ホシノに並び立ちたいんだ。彼女とつながりたいんだ。一緒に横で、戦えるくらいに」
「うん……うん!」
私は涙を流しながら、その事を実感した。
これが私の、本当に欲しかったもの……
その事に気づいていると、ソラが呟き始める。
「……“強さを求める理由”は、初めから持っていた。“求める強さの方向”も、修正出来た。これなら、大丈夫かな」
そう言うと、ソラは肩に置いていた手を離して、私と向き合った。
「シロコ、両手を出して!」
「……? うん……」
私は言われるがまま、両手を差し出した。
そこに、ソラが手をかざすと────“彼の手に、キーブレードが現れた”。
「ん!? 何処から……!?」
そういえば、バトルで木剣を持った時、いつの間にか何処かに行っていた。
てっきり離れた所に置いていたのかと思ってたけど、今のは……?
瞬間転移? それとも収納?
「へへっ、これがキーブレード使いの力なんだよなー。さて、と。本来の“継承”の仕方とはちょっと違うけど……」
そうしてソラは、手に持ったキーブレードを、私の両手の上に持って来て……
「──キーブレード。“キングダムチェーン”は、砂狼シロコを認めるよ。受け取って!!」
……そうして、そっと私の両手の上に、キーブレードを乗せてくれた。
「────っ」
その瞬間、私はキーブレードから、暖かい光が流れ込んでくるのを感じ取った。
ココロを持った時とは違う……手に馴染むなんてものじゃない。
……これは“私”だ。
私の一部が、手に乗せられたように錯覚する程馴染んでいた。
「おめでとうシロコ。そのキーブレードは、もう君の物だ」
「えっ……けど、その……いい、の?」
「良いんだ。“キーブレード自体が、君を認めたんだから”」
「〜〜〜〜っ!!」
私はその言葉に感動して、ギュッとキーブレードを握りしめた。
私は、間違いなく一歩を、踏み出せたような気がしたから。
……そう思っていたら、キーブレードがフッと消えてしまった。
「あっ……?!」
「大丈夫、仕舞っちゃっただけだよ。念じればまた出てくる。手をかざしてみて!」
「えっと、こう……!?」
言う通りにすると、シャンッ! っと、私の右手にキーブレードが現れた。
……確かに出せた。自分の意思で、しっかり取り出せた実感が感じられる!
「へへー、便利でしょ? 遠くにあるキーブレードを、呼び戻せたりも出来るんだよ。それがキーブレード使いの力の一つ」
「凄い……!!」
私は調子に乗って、キーブレードを出し入れしたりして見せた。
ん! 本当に取り出せたり、仕舞える!
「シロコ、ちょっと魔法を撃ってみてよ。初級でいいから」
「ん、分かった。【ファイア】!! ッ!?」
言われた通りに魔法を放ってみると、それだけで違いが分かる。
威力の向上と、私の意思での操作性の向上。どちらも大きく変わっていると。
「“真のキーブレード使い”になれたからね。今までよりはるかに魔法が使いやすくなってる筈だよ」
「じゃあ、“ガ級”も……!!」
「練習は必要だけど、定型発動まではいけるんじゃないかな? 少なくとも、暴発は無いよ」
「ん! 嬉しい!」
私はぴょんぴょん飛び跳ねそうなくらい嬉しくなっていた。
望んでいた力が、一気に手に入って来る!!
「シロコ」
そう思っていると、ソラが静かにそう呼びかけて来た。
「これで君は、キーブレードという、新たな力をはっきり手に入れた」
けどね、と……
「“こっち”も、忘れないであげて。ホラ」
そういって、ソラが取り出したのは……!!
「“私の銃”……!! “WHITE FANG 465”!!」
「凄い名前だね、それ。さっきシロコを呼び出した時、一緒に持って来たんだ」
そういって、ソラは私の銃をマジマジと見つめていた。
「スッゲー、本物の銃なんて初めて触ったよ。シロコはこの銃、何処で手に入れたの?」
「それは……ホシノ先輩に拾われた時、ホシノ先輩とノノミが買ってくれて……」
「そっか。じゃあこれも、大切な物だよね?」
「うん……」
そうして、私は左手でその銃を受け取った。
そうだ、初めてこの銃を貰った時、嬉しくって二人に抱きついちゃったっけ……
「……“それ”も、シロコの力だよ。キーブレードとは違う、シロコが昔から持ってた力」
「……うん」
「えっと……俺、“神秘”ってのはよく分からないんだけど、キヴォトス人って銃の威力が変わったりするよね? 多分、キーブレード使いになった影響で、そこも少し変わると思う」
「おお……」
じゃあやっぱり、この子も必要だ。
新しい力が手に入ったからポイなんて、そんな事はするつもり無かったけど、どっちにしろありがたい。
「うん。……そして、シロコ。君に、言わなきゃいけないことがある」
「……ん?」
そう噛み締めていると、ソラが表情を変えて真剣な目で私を見つめて……
「──“まだ、君の試練は終わっていない”」
そんな事を、言い出した。
「──え?」
「思い出して。君は元々、“自分の心の闇”を乗り越えるための試練を受けていた。ここでの俺との会話は、その合間なだけ。君は“試練とは無関係に、キーブレード使いになっただけ”なんだ」
「──ッ?!」
……え? そう、なの?
言われてみれば、確かに試練とソラとの問答は全然関係無いような……?
「……“強さを求める理由”を振り返った。“求める強さの方向”も修正した。なら次は、“自分の心の闇”と向き合ってくるべきなんだ」
「……!」
「まあ、“そこはリクの方が適任”そうなんだけどね。悪いけど、あとはリクに任せるよ」
たはは、と照れ臭そうに頭を掻いた後、ソラは私に向き直り……
「……忘れないで。本当の強さは、キーブレードでも、強い武器なんかじゃない。“つながる心”が、本当の強さだって」
「……ん」
大丈夫、分かってる。
私が本当に求めていた、ホシノ先輩に並び立ちたい。それを、理解してるから。
「──よし! それじゃあ、シロコ! キーブレードを横に構えて!!」
「ん、こう?」
そうして、私は言われた通り片手でキーブレードを目の前で横に構える。
「そうそう、そのままそのまま! ……シロコ」
「──頑張ってね!!」
その言葉を、最後に……
☆★☆
──直後、構えたキーブレードに衝撃が走る。
見ると、目の前に“闇の私”が偽物のキーブレードを振り下ろしており──
「────ンンンンンンンんんんんッッッ??!!!」
大混乱のまま、私はとっさにキーブレードで振り上げた!!
片手で全力で押し返し、闇の私は空中で複数回回転しながら、離れた所に着地していた。
び、ビックリしたぁ……!?
「ここは……!?」
あたりを見渡すと、ステンドグラスの世界。
試練の場所に、戻って来ていた。
さっきの状況、確か私は攻撃を振り下ろされるところでソラの所に行っていた……え? 時間全然経ってなかったって事?
「大丈夫か、砂狼シロコ!?」
「あ、リク!」
そう戸惑っていると、リクが焦った声を出しながら近づいて来てくれた。
ん、私にとってさっきぶり。
「っ!? そのキーブレードは……!!」
「これ? ソラがくれたの。私を認めるって」
「ソラが……!?」
そう言うと、リクは驚いたような表情になった後、だんだん納得したような顔になっていく。
「……そうか、別で来てたんだなアイツ。全く……」
「……リク」
呆れたように呟くリクに対して、私は声を掛ける。
私の意思を、伝える為に。
「──“試練を、もう一度受けたい”。私は、このままじゃ終われない」
「──っ。……良いんだな?」
その言葉に、私はコクリ、と頷いた。
さっきは逃げるしか出来なかった……けれど、今なら。
「……そうか」
そういって、リクは一度目を閉じて……ゆっくりと開いて、私と向き合った。
「よし! なら、試練続行だ!! 砂狼シロコ、その新たに手に入ったキーブレードの力で、再度自分の心の闇と向き合って来い!!」
「ん!」
「先ほどと違って、お前はキーブレード使いとなった! キーブレード使いとしての戦い方なら、俺が教える!! 戦いながら聞いていけ!」
「分かった!!」
簡潔に、指示を受けていく。
それを全て了承し、リクは闇の私の方に振り向いた。
「よし! 行ってこい!!」
「ん!!」
そうして私は、再度飛び出して行った。
今度はもう、負けない。
今出来る私の全力で、倒し──倒、し?
──“本当に?”
……私は再度、脳裏によぎった疑問を浮かび上がらせた。
本当に、それで良いのか。
その事に、一瞬足を止めようとして……
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
『……ねえ、シロコ。──“ちょっと俺と、戦ってみない?”』
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「──ん! 戦ってから、考える!!」
そう決め直し、今度こそ力強く踏み込んでいった……