ブルアカ世界に、キーブレードそのものとして転生した件について 作:ニュームーン
「はああああああッ!!」
『──────!!』
闇の私と、キーブレード同士がぶつかり合う。
鍔迫り合いの状態になり、互いに拮抗する。
いける……戦えてる!! さっきまで簡単に吹っ飛ばされていたのが、耐えられるようになっている!!
そんな私達の状態に、横方向から“テラー化したホシノ先輩”と“もう一つの世界の私”が狙い撃とうとしている。
私はその前に、左手の銃で闇の私の胴体にダダダンッ! っとゼロ距離射撃して、大きくバク転しながら離脱する。
『──────!?』
「凄い……!! さっきまでと、全然違う……ッ!?」
私は、この一瞬の攻防だけで自分の力が大きく違っているのを実感していた。
具体的に何が違うかはまだ言葉に表せないけれど、少なくともさっきまでの自分とは明らかに違う。
なんか、全体的にパワーアップしているような感じだ。銃の威力も、アップしている感じがする。
それに、他にも何かいつもと違うような……
「砂狼シロコ!! 戦いながらでいい、聞け!!」
そんな私に、離れた位置からリクが声を掛けてくる。
それを聞きながら、私は次の攻防の為に武器を構え直す。
「今のお前は、正式なキーブレード使いになっている! そのおかげでお前に“様々な強化”が与えられている!!」
「強化……!!」
「キーブレードは、“キングダムハーツというゲームの武器”であるという事は知っているな!! だが、普通に考えて“ゲームの武器を現実化するなど出来ない!!” ゲームという架空だからこそ描写出来た事象、システムなどが存在する!! しかし現に、キーブレードは今現実にある!! これは“ココロが、神様に転生特典として望んだ”結果だ!」
リクの言葉に、私はそう言えば、と思い出す。
元々キーブレードは、ココロが神様に望んだから手に入った物だと。
「架空にしか存在しなかった筈の物を、無理やり神様の力で現実に落とし込んだんだ!! その際に発生する矛盾を解消する為、“解釈”が生まれた!!」
「“解釈”……?」
私はその言葉に、疑問の声を上げる。
振り返って聞きたかったけれど、闇の私達3人が構え直しているのを見て、目を離せなかった。
「“架空の事象を、現実で説明する”にはどうすればいいか……これは“ココロの認識を中心”として、解釈されている! この“解釈”により、この世界のキーブレード使いには“様々な影響が発生”した! その影響を持って、砂狼シロコ、お前に様々な強化が施されている!!」
……つまりよく分からないけど、“ゲームを無理やり現実化したから、その解釈で私が強くなった?”
「“最低5つ!!”」
「っ!!」
「俺が見たところ、砂狼シロコが真のキーブレード使いとなって得られた強化だ!」
「そんなに……!?」
「詳細を今から教える!! 戦いながら実感しろ!!」
「んっ!!」
その言葉を聞いて、俄然やる気が出て来た。
そう思っていると、闇の私が走り出してくる。
私は襲いかかってくる闇の私を迎撃するために、キーブレードを再度振り回して対抗する。
ガキンッガキンッ!! っと、キーブレード同士のぶつけ合いが発生している。
「まずは一つ目!! “身体能力の強化”だ!! ゲームの描写から考えると、キーブレード使いは明らかに並の人間より身体能力が高い!! これはお前達キヴォトス人が外の世界の人間より強いように、キーブレード使いというだけで身体能力がアップしていると“解釈”出来る! 出なければ、当時14歳の
「っやああ!!!」
その言葉を聞き、私は鍔迫り合いの状態から思いっきり力を込めて、闇の私を偽のキーブレード事吹っ飛ばした!!
確かに、腕力が思いっきり上がっている気がする! いや、気がするじゃない、絶対そう!!
「っ!?」
『■■■■■■■■──ッ!!!』
そう考えていると、テラー化したホシノ先輩が“巨大な火の玉”を作り上げていた。
あれは……!? 以前反転していたときに見た、炎の衝撃波を出す技!?
しかし、あの時と違ってその炎は“青く”見えた。
「ん、けど問題ない……!」
私はキーブレードを横に構えて、ガードの体制を取る。
アリスの砲撃すらガード自体は成功していたのだ。吹っ飛ぶのは仕方ないにしても、ダメージは大きく防げ……
「違う!? 避けろッ!!」
「えっ──?」
そのリクの言葉を聞き返す前に……テラー化したホシノ先輩の腕が振り上げられる。
青い炎の衝撃波がやって来て……“ガードごと打ち壊された”!!
「う、アアアアアぁぁぁぁあぁッ?!!」
私は、炎の衝撃波をモロに受けてしまい、“キーブレードを取り落としてしまう”。
そのまま何回かバウンドして、リクの所まで吹っ飛ばされてしまった!
「大丈夫か、砂狼シロコ!?」
「だ、大丈夫……耐久力も、以前より上がってるみたい……」
私はボロボロになりながらも、想定よりダメージが少なかった事を実感する。
これが身体能力の強化……耐久も確実に上がっている。
今なら、ミレニアムのアリスにキーブレードで殴られたとしても、ある程度耐えることが出来そうだった。
「にしても、なんでキーブレードで防げなかったんだろう? それだけ強力だったって事……?」
「ああ、その通りだ。“キーブレードで防げない攻撃も存在する”。そして砂狼シロコ、“防げなかった攻撃は青く見えなかったか?”」
「ん? うん、見えた。以前本物の攻撃を見た時は、赤かったなって。偽物だから、色が違うのかと思ってたけど……」
「いや、実際の色は今回も赤だ。ただ“砂狼シロコから見て、青色だった”んだ」
「……どういう事?」
私はリクに視線を向けると、彼はコクリと頷き……
「ゲームでは、“ガード不可の攻撃を青色で描写されている”。これを現実化した結果、“キーブレード使いは耐えきれない攻撃を見ると、青く見える”と“解釈”されたんだ」
「……っ!?」
「つまり、“強力な技、体勢を崩すほどの攻撃ほど青く見える”。これはもう、避けるしかない。その攻撃の判断が、キーブレード使いは出来るんだ。これが2つ目の強化点だ」
「な、なるほど……」
つまり、強力な攻撃の判別。危ない攻撃を見分けられるという事なのだろう。
確かに最低限、避けなくてはいけない攻撃が分かるというのは便利だ。
「っあ、キーブレードは……」
『──────』
「んん!? シロコに取られた……!!」
私は落としたキーブレードを探すと、“もう一つの世界の私”が拾っていたのが見えた。
うう、キングダムチェーンが……!
「今すぐ取り返しに行く!! まだ銃は持ってるから、なんとかなる筈……」
「いや、必要ない」
「……え?」
そう走り出そうとすると、リクに肩を掴まれた。
振り返ると、真剣な表情で説明を開始される。
「3つ目の解釈。“キーブレードは、使い手の心と同一”という解釈がある。砂狼シロコ、あのキングダムチェーンは、お前の心そのものと思え」
「う、うん……?」
「だから、“呼び戻せ”」
「……呼び、戻す?」
私は一瞬、よく分からずに聞き返す。
するとリクは、丁寧に……
「ああ、“自分の心が、体から離れているのは異常”と思わないか? 自分の手元に、心があるべきではないか? だから、“離れた心を、あるべき位置に呼び戻せ”。そう、念じてみろ」
「────……」
私はその言葉を聞いて、目を瞑り胸に手を当てた。
心があるとすれば、この位置にあるべき。
だから、シロコに奪われたキーブレードは、ここにあるべき、と心の中で唱えて見て……
シャンッ!
「──っ!! でき、た……!?」
私の右手に、キングダムチェーンが戻って来た……!!
そう言えば、ソラも言っていた。遠くにあるキーブレードを、呼び戻せたりも出来るんだよって。
あれはこういう事だったんだ……!
見ると、向こうのシロコの手からキーブレードが無くなってる。
相手も、なぜ消えたのか分からないのか戸惑っているようだった。
「それが3つ目の強化点、“キーブレードをいつでも呼び戻せる力”だ。どんな離れた位置でも、手元に呼び出せる。例えぶん投げたとしても、すぐ手元に戻せるぞ」
「うん、すごく便利……!!」
「ちなみに、キーブレードを出し入れ出来たりする理屈も、同じような理由だ。“自分の心なら、体の中に仕舞える”だろうという、解釈だな」
うん、これは中々便利だ。
銃撃に集中したい場合は、キーブレードを一旦しまう事も出来るし、すぐに切り替える事も出来る。
持ち運びもとても楽だ。
『『『──────ッ!!』』』
「おっと、流石に悠長に話しすぎたか。敵の3人も、本気になって来たな」
「ん、確かに怒ってそう」
見ると、今にも飛びかかって来そうな雰囲気になっていた。
うん、向こうから襲い掛かられる前に、こっちから向かって上げよう。
「砂狼シロコ、“キーブレードは、お前の心そのもの”。さっき言ったこの言葉をよく覚えておけ。残り二つの強化点にも大きく関係する」
「分かった。行ってくる!」
そう言って、私は再度飛び出していく。
今度は、テラー化したホシノ先輩に対して、キーブレードを振り下ろした。
さっきの青い攻撃が出来ることを考えると、真っ先に倒しておきたい相手だったからだ。
キーブレードを振り下ろすと、ショットガンを横向きに持って防いでくる。
私はそのまま、押し込むように力を込み続ける。
『──────ッ!』
「ん、させない!!」
離れた位置から、シロコが狙撃しようと狙って来ていた。
だから私は先に、左手の銃で牽制射撃をシロコに向かって放った。
これでホシノ先輩、シロコは抑えられた。けど……
『──────ッ!』
「ぐうッ!?」
いつの間にか、背中から接近していた闇の私に気付かなかった。
偽物のキーブレードを頭に振り下ろされ、ガツンと衝撃が走る。
いったあ……!! 今のは、効いた……!!
私は、ホシノ先輩と闇の私を両方キーブレードで殴り飛ばすように吹っ飛ばす!!
これで一旦距離は開いた!!
「【ケアルラ】ッ!!」
今のうちに回復呪文を唱え、体力を回復する。
うん、今殴られた分と、さっき炎の衝撃波を受けた分がすっかり回復した。
やっぱりこの回復魔法が、ある意味一番凄いと思う。
そんなことを思いながら、あたりを見渡すと……
『『『──────』』』
「ん……完全に、囲まれた」
私は闇の私、ホシノ先輩、シロコの3人に、常に3画形になるような位置どりをされている事に気づいた。
二人までなら視界に入る、けれど3人目はちょっとキツい……
さっきみたいに背後から襲撃をされたら、ダメージを受けてしまう。
回復魔法も今使ってしまったから、魔力がスッカラカンだ。最低少しは時間を稼がないといけないけれど……
「砂狼シロコ!! 4つ目のアドバイスだ!!」
「ん、待ってた! 次はどんな……」
「“周囲を見ながら、背中を見ろ!!”」
「結構な無茶振り……!?」
私はその言葉に、物理的に無理と最初に思った。
それが出来れば苦労はしない、そう思ってしまった。
「なら、イメージしろ!! “脳内で、周囲の状況を見下ろす”イメージで、周辺状況を把握してみろ!」
「それなら、まあ……」
私は言われた通りに、脳内で周辺状況をイメージしてみる。
目の前両端に、闇の私とホシノ先輩。そして背後にシロコ。
その状況が────“見える”。
──あれ?
まって、本当に“見える?”
さっき無茶振りだと思った言葉が、実際に出来る? というか、“私の背中が見えてない、これ?”
私は自分の目がおかしくなったのかと思い、ゴシゴシと擦ってみる。
けれど、目を擦っている間も“見下ろしの視点”が消えていない……!?
『『『──────ッ!!』』』
そう驚いていると、3人同時に襲いかかってくる!
闇の私はキーブレードで防ぎ、ホシノ先輩は銃で牽制。そしてシロコは……
「────そこッ!!」
『──────ッ!?』
私は、“見下ろしの視点”でシロコが銃を放った瞬間に、立ち位置をずらす。
そうして、鍔迫り合い状態だった闇の私に、フレンドリーファイアを誘発させた!
凄い、見える……本当に、“自分の背中を含めた周囲一帯が見える!!”
「……お前は経験した筈だ。ココロと一緒に戦ったときの事を。彼女に危険な場面を、教えてもらった事を」
離れた位置から、リクのそんな言葉が聞こえて来た。
それと同じ事だ、と続けて。
「“キーブレードは、お前の心そのもの”、これはつまり、“お前の心そのものが周囲を見てくれている”と解釈出来る。これが4つ目の強化点、“キーブレードによる周辺視野”だ!!」
「キーブレードが、見てくれる……!?」
「これはキングダムハーツが、元々テレビゲームだった事から発生した“解釈”!! テレビ画面越しに見た
テレビゲーム、というのはよく分からないけれど。(キヴォトスだとレトロゲーム扱い)
この周辺視野も、とても凄い。乱戦だと特に、重宝しそうな能力だった。
「さあ、最後の5つ目だ!! 敵をよく見ろシロコ! またくるぞ!!」
「んっ!!」
『『『──────ッ!!』』』
リクの言う通りに、また3人が同時に襲いかかってくる。
それをよく見て──
──“光が、見えた”
「(あれ……なんだろう、あの光……?)」
飛びかかってくる闇の私の体に、光ってる箇所が見える。
見ると、ホシノ先輩やシロコにもあった。
──その光を見ると、“どう体を動かせばいいか直感的に分かった”
「はああああああッ!!」
『──────ッ!?』
私はまず、闇のシロコの胴体にキーブレードでカウンターをくらわせ。
『──────ッ!?』
振り向きざま、ホシノ先輩に銃を連射して彼女のショットガンを落とし。
『──────ッ!?』
その場でバク転して、オーバーヘッドキックでシロコを大きく蹴り飛ばし。
“3人まとめて、返り討ちにした”。
「──っ今のは……!?」
今のは、直感的な動きだった。
光に従って、思いついた動きをそのままトレースしたら上手く行った。
まさか無傷で乗り切るだけでなく、3人にカウンターまで与えるなんて……!!
「それが5つ目……“リアクションコマンド”だ」
「“リアクションコマンド”……?」
「キングダムハーツでは、特定のシチュエーションに対してボタンを押すと、自動的にアクションムーブに移る。これを、“キーブレード自身が、先に気づいた直感”と“解釈”している。つまり、人が時折感じる直感を、“キーブレードという心そのものが先に気づいた状態”。それを光のマークで指し示すのが、“リアクションコマンド”だ」
「キーブレード自身が、先に気づいた直感……」
私は、手元のキングダムチェーンに視線を落とす。
このキーブレード自身が、常に見て、考えてくれていると言う事なのだろうか?
「その直感は大いに“格上”との戦いで役に立つ。キーブレードの声に耳を傾け続けろ。そうすればお前は常に、“格上との戦いで勝ちの目があり続ける”手段を得られるだろう──」
「────ッ!!」
「もちろん、あえて“リアクションコマンド”に従わない選択肢もある。あくまで自分の心が先に気づいた直感というだけだ。常に正しいとは限らない、もっと別のいいルートがあるかもしれない。最終的に従うか判断するのは、お前次第だ」
「……分かった」
私はその言葉を、深く刻み込んだ。
キーブレードは私の心。
私の心が気づいた事に、耳を傾き続ける事を……
「さあ……これで、お前が正式なキーブレード使いになった事で得られた強化は、全て説明した」
リクはそう言って、姿勢を直していた。
説明すべきことは、全てしたと言うように。
「本来は、まだ他にもある筈なんだが……今の砂狼シロコに発現したのは、この5つだ。他はいずれ、お前の成長と共に自然に発現するだろう。覚えておけ」
「うん……ありがとう、リク。ここまで教えてくれて」
私は、彼にそう感謝する。
彼の説明の仕方は、とても丁寧だった。
感覚的な部分も、分かりやすい例え話でとても再現しやすかった。
おかげで、漠然としたままだった自分の体の変化の理由も、よく理解出来た。
「……気にするな。俺自身、物事を教えるのは初めてだったんだ。砂狼シロコ、お前は俺にとって、“キーブレードマスター”としての“初めての弟子”のようなものに感じ取っていたんだ……」
ま、俺自身本物のリクではないんだけどな、と照れ臭そうに付け足していた。
“キーブレードマスター”、というのはよく分からないけれど、確かに私は、彼の教え子のようなものだったと思う。
「つい、張り切ってしまったな……ここまでは、お前が手に入れた強化点だ。後は様子を見て、簡単な戦い方の指導やテクニックを指導するつもりだ。教えることは、まだまだある」
「うん……」
「さあ、砂狼シロコ……いや、“シロコ”。まだ試練は終わっていない。あとはお前次第だ。あの3人を……お前の闇を乗り越えて見ろ!!」
「分かった……!!」
そうして、私は飛び出していく。
彼に恥じない弟子として、私の成長を見せるために──
シロコのキーブレード使いになった強化点
・身体能力強化
・青色攻撃判別
・キーブレード呼び戻し
・360度周辺視野
・リアクションコマンド
独自解釈のバーゲンセールになりました。
実際にキーブレード使いになったら、こうなるだろうという想像を詰め込んでみました。