ブルアカ世界に、キーブレードそのものとして転生した件について 作:ニュームーン
お待たせしました。
「やああッ!!」
『■■■■──ッ!!?』
私の銃が、テラー化したホシノ先輩を狙い撃つ。
左手で連射して、強化した弾丸で行動を阻害する。
「……本当の、ホシノ先輩ならこんな弾丸へっちゃらだった」
ホシノ先輩を足止めしている最中、離れた位置で、“もう一つの世界の私”がガトリングを準備しているのが見えた。
そっか。あのシロコは、最近いつの間にか使わなくなった、アビドスのみんなの装備を使う頃のシロコなんだ。
『■■■■■■──ッ!!!!』
「ん、当たらない」
ガトリングの一斉掃射。
“広くなった視界”でタイミングがよく見えた私は、強化した脚力で大ジャンプする。
そのままの勢いで、シロコに向かって右手のキーブレードを振り下ろす!!
けれど、振り下ろしたキーブレードは、シロコが取り出したホシノ先輩の盾に阻まれた。
が……
「はああああああッ!!」
『──────!?』
私は盾ごと、シロコを叩き潰した。
強化した身体能力、キーブレードによる打撃なら、防がれた上で押し込む事も十分可能。
「……本当のシロコなら、この程度の動き簡単に捌いていた」
『■■──ッ!?』
シロコが叩き潰された盾の裏から、アサルトライフルで反撃をしてくる。
それをキーブレードを横に構えてガードする。
そうしていると、真後ろにテラー化したホシノ先輩も近づいて来たのがで分かった。
その場から、ホシノ先輩は何かを投げてくる……手榴弾だ!!
きっと、シロコの方しか見えていなかったのなら当たってたと思う……けれど、“広くなった視界”を持つ私にはバレバレ。
私はタイミングを見計って、その場から離脱する。
私と入れ替わりのようにやって来た手榴弾が丁度……爆発した。
残ったシロコだけ、爆発に巻き込まれた形だ。
『■■■■──ッ!??』
『■■■■──ッ!!!』
「やっぱりあなた達は、私の知ってる二人と全然違う。もっと二人は強かった」
そう言いながら、私はテラー化したホシノ先輩をキーブレードで斬り飛ばす。
ホシノ先輩は、シロコと衝突して一緒に倒れ込む。大きな隙だ。
「そんな偽物のあなた達に……私は、負けない」
『『──────!!』』
「【ファイガ】ッ!!」
そうしてその呪文と共に、初めてみる大きな火球がホシノ先輩とシロコに飛んでいって──爆発した。
これが、“ガ級”の呪文の威力……!? 明らかに“ラ級”と全然違う!!
私は、ただ真っ直ぐ飛ばしただけの炎の火球が、今までのどんな技より強力だった事を実感した。
『『■■■■■■■■──ッ?!!』』
私の呪文に当たった二人は炎に包まれて……倒れ込んだ。
倒せた……! まずは二人に勝った!
『──────!!』
「ん!?」
そんな私に対して、闇の私が偽のキーブレードを振り下ろしてくる。
それを横ステップで躱すと、追撃をせずに闇の私は倒れたホシノ先輩とシロコに近づいていく。
助けに行った……いや、違う!!
『──────』
「させない!! 【ファイガ】ッ!!」
きっと、さっきの対策委員会のみんなのように、倒して糧にするつもりだ!!
私は、闇のシロコがやろうとしている事に気づいて、それを妨害する!
さっきと同様のサイズの火球が、闇の私に向かって──
『『ッ■■■■──ッ!!』』
「なっ?!」
それを、倒れてた筈のホシノ先輩とシロコに防がれた。
二人のそれぞれの盾を合わせ、並べた状態で完璧に防がれた。
それでも火球の火力が高かったのか、元々再現度が低いのか、二人の盾は溶けるように壊れていく。
けれど、問題はそこじゃ無い──
『──────』
『『■■■■──』』
闇の私を庇ったホシノ先輩とシロコは、コクリと頷き合い、闇の私を見た。
それを見た闇の私も頷き、両手をそれぞれ二人の肩に置く。
その後、二人の体は崩壊して──闇の私に吸収された。
「──自分から、吸収された……!?」
さっきのは、無理やり闇の私に吸収されたと言うより、明らかに自分達から納得したように吸収されていった。
どう言う事……アビドスのみんなも、無理矢理吸収していた訳じゃなかったの?
一瞬の混乱が走る中……状況は大きく変わった。
『■■■■■■■■■──ッ!!!!』
「ぐうっ!!?」
二人を吸収した、闇の私のオーラのようなものが更に強大化する!!
闇の私は、その状態でキーブレードの先を私に向けて──
『【ファイガ】』
「え──!?」
今まで意味を持たない鳴き声しか発せなかったソレが、はっきりと意味の分かる言葉を口にした。
その呪文とともに、“黒い炎”が私に襲い掛かる!!
「ぐうううううッ!??」
ギリギリ、ガードが間に合った……!!
青い光が見えなかったから、とっさの判断でキーブレードで防いだけど、成功だった。
しかし威力が強大で、私は防いだ衝撃で数メートル後ろに押され込んでしまっていた。
「今度は、呪文まで使えるように……!?」
さっきの黒い炎は、私の【ファイガ】と全く同等の規模だった。
せっかく上級の魔法を使えるようになったのに、もう模倣された……!?
「それもただの再現だ!! あくまで真似、魔法のような物を行なっているに過ぎない!! だが、今の強化状態のシロコと同等の身体能力、魔法能力があると思え!!」
遠くから、リクのそのアドバイスが聞こえてくる。この魔法のようなものも、あくまで再現。
けれど、私の使う魔法と同等規模の威力があるのは事実。
正真正銘、今の私のコピーとなったんだ。闇の私は。
「これで今度こそ最後だ!! その状態のソイツを倒せば、試練は終わる! 正念場だ、シロコ!!」
「ん!!」
その言葉に、私は元気よく返事をする。
そうだ、これで最後だ。終わりが見えて来た。
この闇の私に勝って、私は試練を乗り越える──!!
「【エアロガ】ぁッ!!」
私は、上級魔法の風を発生させる。
狙った位置に、局所的な台風のような竜巻が発生する。
おそらく巻き込まれたら、風の刃で大ダメージを受けるそれ──を、闇の私は回避していた。
「んん──ッ!?」
『──【ブリザガ】』
簡単に回避された事を驚く暇も無く、今度は巨大な氷の塊が飛んでくる!?
避ける暇も無く、再度キーブレードのガードで防ぐが、また結構な距離を押し込まれる!!
「ック!! 【ウォタガ】ッ!!」
『──【ウォタガ】』
苦し紛れに、水の上級魔法を発動するけど、向こうも全く同じタイミングで放ってくる。
互いに放った水球が空中でぶつかり合い、あたり一面にちょっとした津波が巻き起こる。
膝下まで浸かるほどの大量の水が、ばしゃあっと広がった!
「大洪水……! っ!?」
「──【サンダガ】」
「まずッ!?」
一瞬気を取られていると、闇の私はいつの間にか高く飛び上がり、雷の上級魔法を放とうとしていた。
この状態は、不味い──!?
私は無我夢中で、大きく後ろに浮かぶように全力で飛び上がり、離脱した。
私のいた所を、周囲一帯大きな雷が降ってくる!!
そして、大量の水に塗れた地面を、そのまま通電してあたり一面に広がっていた!
あのまま水に入ったままだと、そのまま感電して終わっていただろう。私は空中で冷や汗を垂らした。
「この!! 【ファイガ】!!」
「──【ファイガ】」
空中で互いに身動きが出来ない状態ならと、【ファイガ】を狙い撃つ。
しかしそれも、同じ魔法を放たれて空中で相殺されてしまう。
私たちは、既に水が引いた地面に距離を取って着地した……
☆★☆
「──当たらない。当たらないっ!! 攻撃魔法が、全然ヒットしない……!?」
私は、だんだん焦りを感じていた。
せっかく習得した上級魔法が、闇の私に全然通用しない。
あれだけ憧れて、せっかく使えるようになったのに……私は歯痒い思いをした。
当たれば、当たれば勝ちなのに! 全然当たらない……!!
せっかく強い魔法を覚えても、私には使いこなせない──?
そうして、だんだん絶望感が湧いてくる中……
「シロコ」
「っ! リク……」
いつの間にか、リクが近くまでやって来ていた。
そうして、私の肩をポンっと叩き……
「──“魔法を、必殺技だと思い込むな”」
そんな、アドバイスを貰った。
「え──?」
「魔法は、結局の所“攻撃手段の一つ”でしかない。例え“ガ級”と言えどだ。お前の世界はどうだ? キヴォトスでは、“銃弾を1発当てただけで勝敗が付くのか? ”」
「──ん、違う……」
私は、リクのその言葉を聞いていくたびに、興奮していた頭が冷えて行くような感覚を感じていた。
まるで客観的に、自分を見れて来たような感覚……
「それと一緒だ。キヴォトスでは、銃弾も何発も当てなくちゃ相手を倒せない。そもそもキングダムハーツでは、“一つ当たったら勝ちと言う攻撃は存在しない”。魔法も含めて全ての攻撃手段は、ただの選択肢の一つでしかない──」
だが……と。
「“選択肢を、組み合わせる事は出来る”」
「組み合わせ──?」
「物理と魔法を組み合わせる。あるいは、さっき迄のシロコのように銃とキーブレードを組み合わせたり。あるいは、“複数の魔法を組み合わせ”たり──」
「じゃあ、上級魔法を組み合わせれば……!」
いや、とリクはかぶりを振った。
そうじゃ無い、と。
「それも選択肢の一つとしてありではあるだろう。けど今のシロコには、上級魔法の連続発動はまだ出来ない。定型発動しか出来ないからな」
「それじゃあ、どうすれば……」
「シロコ、お前はまだ強さにこだわりが捨て切れていないな」
そう言って、リクは私を見つめて……
「──ココロとの遊びを思い出せ」
「ココロとの……? ──あっ」
……その言葉に、私はようやく思いついたような気がした。
「気がついたか。学校の掃除の時。あるいは、プールで遊んだ時。お前は、魔法を必殺技としては使ってなかった筈だ。ただ楽しんで、組み合わせて使っていた」
「……そう、そっか……」
「あの遊びは、無駄じゃない。やるべき事が見えたか?」
「……ん」
私は、その言葉にコクリと頷いた。
「よし。なら追加でアドバイスだ。“魔法は、正式な呪文を唱えなくても使える”。燃えろ、とか、凍りつけ、とかな。イメージさえはっきりしていればいい。代わりに誤射に気を付けろよ。後は、慣れれば無言で“連続発動”も可能だ。……ここまで言えば、大丈夫だな?」
「ん、ありがとう」
「よし。なら見せてみろ! シロコの魔法を!!」
そう言って、リクはバシッと私の背中を叩いてくれる。
私はそれを受けて、前に飛び出して行った──
☆★☆
『────!!』
「これが最後の攻防! 決着を付ける!」
私は、闇の私に向かって一気に距離を詰めて行く。
その私に対して、闇の私は黒いキーブレードで狙いを定めて来た。
『【ファイガ】』
巨大な黒い炎が、私に向かって真っ直ぐ飛んでくる。
ガードしてもいいが、それだとまた距離を離されてしまう。ここは……
「【ウォタガ】!!」
『────!?』
私は、水の上級魔法を放って撃ち落とす。
ん、火には水。こんな当たり前な事も、さっきまで考える余裕が無かった。
属性さえ勝っているなら、同じ上級魔法でも、簡単に勝ち越せる!
火を飲み込んだ私の水魔法は、そのまま闇の私に向かって飛んでいく。
濡れるのが嫌だったのか、闇の私はそのまま飛び上がって避ける。
ん、狙い通り……!
「【ファイラ】!!」
私は、炎の上級魔法では無く、中級魔法を放つ。
ただし、“10発程”。
『────!??』
その数に驚いたのか、闇の私は空中で動揺しているように見える。
けれど、よく見たのか闇のシロコはそこから行動しない。
ほとんどの魔法は扇状に放っている。火球が真っ直ぐにしか飛ばない事を考えると、全然当たらないと判断したのだろう。
うん、それは正しい──上級魔法だったなら。
「集まれ!!」
その掛け声とともに、扇状に開いて飛んで行った火球10発は──闇の私に向かって、収束した。
『────!??』
その全ての火球を、闇の私はクリーンヒットする事になった。
狙い通り。もともと私は、下級の魔法ならココロとの遊びで精密操作出来るくらいだった。
真のキーブレード使いになった今、中級の魔法の軌道を変える事くらい朝飯前!!
そして、まだ終わらない!!
「凍れ!! 【ブリザラ】!」
私は、“濡れている”地面に向かって氷の魔法を放つ。
上級魔法なら、ただ巨大な氷塊が飛んでいくだけだろう。しかし敢えて中級発動する事で、濡れている地面をあたり一面凍らせて行く。
一瞬にして、小さなスケートリンクの完成だ。
『────?!!』
着地した闇の私は、そのままスッテンコロリン。見事に転んでいた。
動きは封じた! 今の内!!
「【ファイガ】!!」
『──!! 【ウォタガ】!!』
私の火の上級魔法に対して、今度は向こうが水の魔法で相殺しようとしてくる。
ん、やっぱり学習速度が早い! すぐ真似してくる! でも……
「私が先にやったから、真似される事は予想してた!! 【エアロラ】!!」
『────!?』
私は続け様、風の中級魔法を闇の私を包むように放つ。
相殺して、私まで飛んでくる相手の水の魔法は、そのまま私の風に引き寄せられて水の竜巻となる。
これで闇の私はずぶ濡れだ!!
「今度はこっちが真似する番! 【サンダガ】ァッ!!」
そうして、水の竜巻ごと──巨大な雷で全てを飲み込んだ。
『■■■■■■■■■──ッ??!!』
闇の私は、甲高い叫び声を上げている。
一気に大ダメージを与えられた!!
これでもう決める!!
私は闇のシロコに接近して、キーブレードを下から掬い上げるように振り上げる!!
闇の私はギリギリガードした……関係無い! そのまま飛ばす!!
そのままガードごと、闇の私を空中に打ち上げた!!
落ちてくるのを待ってるつもりは無い!!
「【ファイラ】!! 【ブリザラ】!! 【ウォタラ】!! 一斉掃射!! こっちも!!」
そうして、私は中級魔法を複数種類連打、同時に左手でのアサルトライフルで真上に連射。
二刀流の攻撃を惜しみなく連打した。
『────?!』
複数種類の魔法に対して、相殺魔法を選ぼうとしたのか闇の私は一瞬戸惑った。
その戸惑いが致命的!! 全ての攻撃が闇の私に入る!!
『■■■■■──ッ??!!』
「これ、で──」
落ちて来た私に対して、キーブレードを大きく振りかぶる!!
「終わりぃ────ッ!!」
『■■■■■■■■■──ッ??!!』
そうして、銃を離して両手で持ったキーブレードを全力で振り抜き。
闇の私を、全力で吹っ飛ばした。
ドッドット……と、数度バウンドしながら飛んでいき。
闇の私は、倒れたまま動かなくなった。
「────っ、はあああああああ!!!」
私は思わず、決着がついた事を確信し、大いに雄叫びを上げていた……
決着。そして……