ブルアカ世界に、キーブレードそのものとして転生した件について 作:ニュームーン
──勝っ、た……
私は、キーブレードを床に突き刺して寄りかかりながら、そう実感していた。
ん、とても激しい戦いだった……ココロじゃない、自分専用のキーブレードを手に入れてからの、そのまま初めての実践。
自分の実力が、大幅に上がったことは実感した。さっきまでの私自身と、比べ物にならないほどに強く。
それほど、真のキーブレード使いになったという意味が、ここまで凄かったんだと実感する。
けれど、それはそれとして、凄く疲れた……
「……ん、【ケアルガ】」
私は、回復魔法を自分に使う。上級の、最大回復魔法。
私の傷が、あっという間になくなっていく。疲労感も含めて、完全回復だ。
あれだけの戦闘をしたとしても、一瞬で全快する……コレも、信じられないくらいの強みの一つだ。
「……けど、やっぱりまだ疲れてる……?」
私は自分の手を見つめながら、回復した筈の体を改めて確認しながら違和感を感じる。
体力と傷は、確かに回復している。けれど、やはりどこか疲労感と言った感覚が残っている。
もしかしたら、戦闘という集中力のいる行為をして、精神的な面でも疲れているのかもしれない。
集中力、と言ったものだろうか? それが、回復魔法を使っても回復し切れないものなのかもしれない。
回復魔法は確かに凄いけど、過信は禁物かもしれない。そうシロコは思い始めていた。
ひとまず、寄りかかっていたキーブレードから体を起こし、立ち上がる。
『──────っ』
「ん……っ!?」
遠くで、倒した筈闇の私が、体を起こそうとしている。
私はそれに気付いて、急いで武器を構えたけれど……闇の私は、立ち上がらない。
それを疑問に思った私は、警戒はした上で……なんとなく、闇の私に近づいてみた。
『────っ、────』
「……まだ、諦めてないの……?」
目の前の闇の私は、ボロボロの状態だった。
両手両膝を床に付いた状態で立ち上がろうとしているけど、力が入らないのか、そこまでだった。
それでも、まだ戦いを諦めていないのか、腕に力を込めようとするのを止めていない。
その姿を、滑稽……なんて、そう思うことは、出来なかった。
「……決着は付いた」
「っ、リク……」
そんな私たちの近くまで、リクがやってきた。
キーブレードを構えずゆっくりと歩いて、闇の私を見下ろしながら話し出す。
「後、一撃でも入れれば終わりだろう。それで試練は、終わる」
「一、撃……」
「ああ。それで、お前は、“心の闇を打倒”したことになる」
……心の闇を、打倒。この試練の当初の目的。
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「つまり、“自分の心の闇を倒していって、自分の心を強くする事が試練”って事?」
「…………まあ、平たく言えば、そうなるな」
「ん、なら分かりやすい」
“これは自分自身の弱さを倒すための戦いなんだ”。それを倒せば、確かに強くなれるだろう。
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……私は、試練開始前にリクと話した事を思い出す。
弱い自分を倒せば、強くなれる。
──本当に?
…… 戦いの最中、何度も何度も、脳裏に過ったその言葉。
その問いかけに、私はもうはっきりとこう言える。
──違う。
「…………」
「……どうした、シロコ」
「……ねえ、リク」
「……ここで“この子”にトドメを刺したら、どうなるの?」
「──“消えるだろう”」
私の問い掛けに、リクはシンプルにそう答えた。
「“今の”お前の中にある心の闇が、消滅する。それだけの話だ」
「…………」
「どうした? お前はもう、十分な強さを得た。今更心の闇なんかに、気にする部分でもあるのか?」
リクは私の方に視線を向けながら、そう聞いてくる。
……けれどその目は、しっかりと私を見つめていて。私がどうするのか、見定めるように。
「……ねえ。思ったことがあるんだけど」
「……なんだ」
「あなたは、試練をする前にこう言った……“自分の心の闇を、打ち倒す覚悟は出来ているか?” って……」
「……ああ、言ったな」
その私の言葉に、リクは否定しない。
でも……
「でも、今思えば。あの時のあなたの態度は、何処かおかしかった」
「……そうか。気のせいじゃないのか」
「その後、続けてあなたはこう言った。──“自分自身と、向き合うんだ”って……」
「……ああ。よく覚えていたな」
私の言葉を、また否定しなかった。
だから、私は本題を聞く。
「もう一つ。聞いていい? 最初に聞くべきだった事かもしれないけど……」
「ああ」
「────“心の闇”って、何?」
……それを聞いた瞬間、リクは静かに目を閉じた。
まるで何かを、深く考え込んでいるように。
「……“俺達の世界では”、闇は光と相反するもの。敵対するもの。心の闇は、人の心に巣食う負の感情。欲望。渇望。……自分の、弱さ。乗り越えなくては、ならないもの」
ポツリポツリと、リクがそう呟いていく。
闇に関して、一般的な知識を話すように。
「……これは、“リク”が直接知らないココロの記憶からの話だが。かつて、“闇を悪とし、光こそが絶対”と掲げたマスターがいた。その人は“心の闇を拒絶し、闇を抱える事こそ間違い”としていた。その教えを、弟子に強く教えていたという……」
「……………………」
「実際、強さに渇望しすぎたものは闇に墜ちるケースは少なくない。実例は、実際いた」
「……………………」
「……これが、大体の心の闇についてだ。本当はいろいろ複雑だったり、説明が難しいところがあったから、軽くまとめてみた。参考になったか?」
「……うん、ありがとう」
私は、リクの言葉を聞いてお礼の言葉を言った。
そして少しだけ、目を瞑る。
「……ねえ。私の考えを、言っていい?」
「ああ」
「……負の感情と言っても、それは私から湧き出たものだよね?」
「……ああ、そうだな」
「じゃあ……」
私は、はっきりと口にする。
「──“倒さない。私はこの子を、消さない”」
「……何故だ」
私のその言葉に、リクは驚いた様子も無く問いかける。
それに私は、はっきりと答える。
「……“この子は私だ”。弱い自分が嫌で、大事な居場所を奪われたくなくて、それに抗った自分……だから強さが欲しくて、我武者羅に力を求めた……」
「…………」
「そんな心の象徴が、この子なんだ。闇の私と言っても、この子も確かに、“私の半分”なんだ……」
私は、キーブレードと銃を置いて、しゃがみ込む。
闇の私と、向き合うように。
「この子を消したら、私の中から“強くなりたい理由”すら、消えてしまいそうで。私の望んだものが、分からなくなってしまいそうで……怖い」
『──────……』
気付いたら、闇の私は立ち上がろうとするのを止めていた。
まるで、私の言葉をよく聞こうとしているように……
私はそんな彼女の頬に、片手を添えた。
「……でもね。確かに君も、明確に間違えた部分はあるよ」
『────…………』
「……アビドスのみんなを倒して吸収したのは、強さだけを見つめていたから。だから本当の大事なものを忘れて、取りこぼして行った。さっきのあなたは、まさにそれ。それだけは、明確な間違いだった……」
……私のその言葉を聞いて、闇の私はわずかに顔を逸らしたように見えた。
この子も、実感しているようだった。
「あなたは、大事なものを忘れていた。私も、あなたを消して“私の望んだものが、分からなくなってしまいそう”になっていた。……私たちは、どっちも間違えていた」
『────…………』
「──だから、片方だけじゃ駄目。あなたもいないと、ダメなんだ」
『────……ッ!?』
私の言葉に、驚いたような表情を浮かべる闇の私。
闇の私でも、そんな表情が出来るんだと、少しおかしく思えて。
私は、闇の私を抱きしめる。
「弱い自分を認めて、その上で。前に進もう? 大事なものを見失わず、守るために……」
「────“一緒に、強くなろう?”」
『────────っ』
その言葉を聞いた瞬間、闇の私から力が抜けていく。
そして、闇の私から“光”が漏れ出していく。
「これ、は……っ?」
『────、あ……』
『──あ、リガ、とウ──……』
……そう、闇の私は言って。
その体は、内側から湧き出た光に包まれて────光そのものに、変わっていた。
「────」
私は、それを驚いた表情で見て。
光に変わったそれが、天高く登っていくのを、静かに見送っていた……
☆★☆
「──おめでとう、シロコ」
ボーッとしている私に対して、リクがそう声を掛けてくる。
「お前は、“お前なり”の、“闇を喰らい、光に変える
「……これが、目的だったの?」
私は、そうリクに問いかける。
初めから、この結末を求めていたのか、と。
そう聞くと、リクは首を軽く振って否定する。
「理想はそうだったけどな。初回でそこまでは求めていなかった。せいぜい、“今の”心の闇に囚われない程度の強さを身に付けてもらおうと思っていた」
「今、の……」
「……“闇は、無くならない”」
リクは、否定出来ない事実を言うように、そう強く言った。
「人の心から、本当の意味で心の闇がなくなる事はないと思う。経験や状況、それによって強弱も変わって来る。その場凌ぎで凌いでも、また再度心の闇は湧き上がってくるだろう……」
だからこそ……
「闇を恐れ、無理に消そうとしたり、目を背けて遠ざけようとするべきじゃない。常に向き合い、それと付き合っていく事こそが大事だと、俺はそう気付いた」
「……それを、あなたは教えたかったんだね」
「ああ。強さに囚われているお前にとっては、必要な事だと思ってな」
まあ、最初は失敗しそうで焦ったんだがな、とリクは照れ臭そうに話している。
「正直、お前が先にキーブレードを使えるようになって良かったと思ってる。そのおかげで、お前の心に余裕が出来ていた」
「ん。それは……」
彼のおかげ。そう言おうとすると……
空中に、鍵のマークが現れた。
「っ! あれは……?」
「……キーブレード使いの、移動方法の一つだ。けど、と言う事は……」
鍵のマークが現れたところから、“空間が割れる”。
そこから、誰かが降ってくる。それは──
「──やったな! シロコ!」
「──ソラッ!!」
そこには、彼が。キーブレードを授けてくれた、ソラがいた。
「ソラ、やっぱりお前も来ていたのか!!」
「へへ、まあね。シロコの試練、見ていたよ!」
「……なるほどな。途中でシロコがキーブレードを使えるようになったのも、お前のおかげか。全く……」
そう言ったリクは困ったような口調とは裏腹に、何処か嬉しそうな表情をしていた。
ソラは私の方に向き合って、祝ってくれた。
「シロコ、改めて試練の合格、おめでとう!」
「ん、ありがとう……! あなたのおかげでキーブレードを使えるようになって、試練を突破出来た。本当に、感謝してる」
「いやあ、シロコ自身がちゃんと頑張ったおかげだよ!」
「それに、リク。あなたも、私に試練を与えてくれて、他にもいろいろ教えてくれてありがとう。私ははっきりと、自分が強くなったと自信を持って言えるようになった」
「ああ。お前の力になれたようで何よりだ」
私の言葉に、二人は嬉しそうな表情で答えてくれる。
本当に、私が試練を乗り越えて喜んでくれているようだった。
「……シロコ。お前に一つ、言っておきたいことがある。キーブレードについてだ」
「リク……?」
すると、改まってリクがそう切り出し始める。
ソラも、雰囲気を感じ取ったのか大人しくしている。
「お前も実感した通り、キーブレードは強大だ。キーブレードは本来、闇と戦うための武器。その使い手は、光を守る使命を持った者と言えるだろう。──まあ、ココロの記憶を覗くと、キーブレードの切っ掛けは色々複雑らしいが、今はそれは置いておこう。とにかく、現代のキーブレード使いとしての使命を帯びる訳だが……」
「キーブレード使いの、使命……」
その言葉を、私はしっかりと聞こうとする。
キーブレードで強さを得たからには、その事を大事にしないといけないと思い込んで。
……しかし、リクはフッと軽く笑い。続く言葉は。
「──だが、“そんなものはお前には関係が無い”」
そんな、真逆の言葉だった。
「え──?」
その言葉に、私は大いに驚いた。
そんな私に、リクは続けて言葉を言う。
「そもそも、お前が手に入れたキーブレードは。ココロが神様転生で得られたものから影響してこぼれ落ちたものだ。本来のキーブレードの成り立ちからすると、一切が関係が無いもの。極論、よく似た紛い物と言ってもいい。だから、そのキーブレードには“使命がない”」
「使命が、無い……」
その言葉の意味を、理解しようと考えていると。
すると今度は、ソラが言葉を続ける。
「だからシロコ。シロコは好きにそのキーブレードを使っていいんだよ。敢えて言うなら、そのキーブレードは“シロコを楽しませる為だけ”にあるんだから」
「私を、楽しませる為だけに……?」
私は思わず、手元の自分のキーブレードを見つめてしまう。
このキーブレードは、私のためだけに、存在するもの……
私が、楽しむ為だけに来てくれたもの。その事実を、目を瞑って深く噛み締める。
「……ん、そっか」
「ああ。人助けでも、金稼ぎでも、遊びでも。なんでも好きなように使え。お前が楽しければそれでいい。その方がココロも喜ぶだろう。きっと、元々その為に自身の体を使わせていただろうしな」
「ん、ありがとう。大事に使う」
私はそう言って、キーブレードをその場から消してしまう。
もう自分の手足のように、自由に出し入れ出来る。それ自体が、本当に私のものになったんだなと実感する。
「……さて、そろそろ目覚めの時間だ。俺達も、ココロの記憶に戻る頃だ」
「そうだな。いやー、楽しかったな!」
その言葉を聞いて、私は思い出した。
二人はもともと、ココロの記憶から作られた存在だった事を。
私は二人との別れを実感して、なんだか寂しくなって。
「……また、会える?」
そんな事を、問いかけていた。
それを聞くと、二人は困ったように顔を合わせて。
「……少し、難しいかもな。元々俺たちは、ただの記憶でしかない。もちろん何かあったら、また現れるつもりだが……」
「基本的には、記憶の存在のままだろーな。じゃ無いとココロ、俺達の事完全にと言う訳じゃ無いけど、ほとんど覚えていないだろうし」
「そっか……」
せっかく二人と仲良くなったのに、もう会えないのは残念……
そう思ってると、ソラがニッと笑って。
「でもさ! それなら、シロコの中に作ってよ! “シロコの俺達をさ!”」
「え……? 作る?」
その言葉に、リクは納得したように言葉を続けた。
「ああ、そうか。俺達も、元々は“キングダムハーツ”と言うゲームの中に出てくるキャラクター。それを見たココロが覚えた記憶に過ぎない。つまり……」
「“シロコもやってよ!” キングダムハーツを! そうすれば、君の中にも俺達が生まれるからさ!」
私が、キングダムハーツを……? ココロの言っているゲームを?
「で、でも。私はそのゲームを知らないし……何より、異世界のゲームなんでしょ? 私には手に入らないから、やれないんじゃ……」
「心配するな。ココロが持ってる。彼女の中に、ゲームは確かに存在する」
「ココロの、中に……?」
「……そうだな。追加レッスンだ」
「──お前に、“人の心の中にダイブする方法”を教えよう」
☆★☆
「──どうだ、覚えたか?」
「う、うん。とりあえず、なんとか」
私は、リクに貰った“ソレ”をしまい、先ほど教えてもらった方法を忘れないように意識する。
するとソラが、私の事を呼びかける。
「シロコ! その方法を使えば、ココロの中に潜り込める! キーブレードの体じゃ無い彼女と直接話せるようになるよ!」
「本当ッ!?」
「ああ、こうして俺達と会話するようにな!」
そっか……! ソラ達とこうして話すように、ココロと……!
そう思っていると、リクから声をかけられる。
「シロコ。頼みがある。──ココロを、頼んだ。彼女は、記憶に過ぎない俺たちにとって主人なんだ」
「シロコには、ココロの友達としてこれからもずっと仲良くしていて欲しいんだ! ココロって、結構寂しがりやだからさ!」
「ん、分かった。言われなくても、そのつもり」
私は、二人の頼み事を快諾する。
「──さて、そろそろ目覚めの時間だ」
「シロコ! キーブレードを天に向けて!」
「ん!」
私は、ソラに言われた通り、天に向けてキーブレードを向ける。
するとその先に、先ほどソラが現れた時のような鍵穴のマークが現れる。
「やり方は、分かるな?」
「大丈夫。なんとなく、分かる」
私はそう言って、キーブレードの先から光を放つ。
それが鍵穴に命中し、空間が割れる。
「それじゃあ、さよならだ。シロコ」
「シロコ! 元気でね!」
「ん。ありがとう。二人とも──」
そうして、私の体が宙に浮かぶ。
空中の裂けた割れ目に向かって、飛んで行き──
☆★☆
「────…………ん」
私は、ベットの上で起きた。
まだ、外は日が登り始めたばかりで、少し暗い。
私はムクリと、上半身を起こす。
「────夢……?」
私は、先ほどまでの光景を思い返して、そんな事を一瞬思ってしまう。
なんとなく目の前に、片手を差し出して──キーブレードが、現れる。
「──!! やっぱり、夢じゃなかった……!!」
私はその事実に深く喜び、自分のキーブレード、キングダムチェーンを抱きしめる。
嬉しい、嬉しい、嬉しい……!!
そこでふと、横を見る。
そこには、もう一つのキーブレード。つまり、ココロがいた。
『────うーん……もう食べられないよう……』
「ん、とてもベタ」
ムニャムニャと、よくある寝言を言ってるココロを見て、私はクスリと笑ってしまう。
そして私はリクに教わった事を思い出す。
「ん、早速試してみる……!」
そうして、キーブレードを両手で構え、目の前の手頃な空間に向ける。
その場所に、“ポータル”が現れる。リクから貰ったものだった。
「ココロ。まだ寝ている所悪いけど……ちょっと、お邪魔するね?」
そう言って、私はキーブレードをポータルに向けて光を放った。
その後、辺り一面が光に包まれて──
☆★☆
──私は、気がつくと暗闇の世界をゆっくり降りていた。
降りていく先をよく見ると、また新たなステンドグラスが。
そこにゆっくりと、着地する。
そこには……
「──うーん、シロコ、ダメだってばあ……」
ステンドグラスの上で、雑魚寝している少女と。
その周囲に、“テレビやら雑貨やらが散乱”している様子が見えた。
ちょっと待って、ゴチャゴチャし過ぎ……
「ん、ここって心の世界でしょ……?」
なんか、凄く生活感がめっちゃすると言うか、幻想的な空間が台無しというか……
なんと言うか、なんだかなあと言う感じだった。
それはそれで、なんかちょっと面白くて、クスリと笑ってしまう。
それはそれとして、その寝言を言ってる少女をよく見てみる。
「──あなたが、ココロ?」
茶髪の少女を見て、私はそう声を出す。
キーブレードの姿では無い、普通の少女の姿。
「──ん。初めて、こうして直接出会えた」
その事が、何より嬉しく感じて。
ふと、足元に落ちている“ソレ”が気になった。
テレビの近くに置いてあるパッケージを取ると……そこには、“見覚えのある彼ら”の姿が。
「これって、もしかして──」
「──んーん、ん……? ふわあ、おはようー」
そう思っていると、ココロが起き上がる。
眠い目をコシコシ擦るようにして、上半身を起こして。
「──あ、シロコおはようー。あれ、もう制服着替えてたんだ。早いねー」
「ん。おはよう、ココロ」
そう私が返事をすると、ココロはンー、と伸び上がる。
ん、まだ気づいていないっぽい。
「ココロ、ココロっ」
「ん、どうしたのシロコ?」
「手を出して?」
「手? はい……え?」
そう言って、ココロに手を出して貰って。──それを、握り返す。
そこでココロは、ようやく気付いたようで。
「え? え? ──え!? えッ?! シロコ、なんっ、なんで!? ええ!?」
「ん。こうして直接会うのは初めてだね。やっと会えた」
「ええ!? シロコ!? え、ここ“シッテムの箱”!? いや、違う!? ここ心の世界?! じゃあなんでシロコが────シロコ、それ?!」
そう言うと、ココロは私の手に持っている物にようやく気づいた。
するとココロは、あたりを激しく見渡し始める。
「えっ、キーブレード……私の、ある!! あった!? え、じゃあ二本目!? 無意識に出しちゃった!? それとも……まさか──!?」
「ん。そのまさか」
私はココロの前で、堂々とキーブレードを横にして見せる。
「──私のキーブレード。キングダムチェーン。手に入れたよ、ココロ。真のキーブレード使いになった」
「────ッ?!! ええええェェェ────ッ!?? すご、凄いっ、凄いよシロコッ!? え、本当!? スゴ────いッ!!」
そう言うと、ココロは私の手をつかんでブンブンと振り上げながら、ピョンピョンと飛び跳ねる。
「はは、あはは!? 凄いよ本当に!? 私以外のキーブレード使いがこの世界で出来るなんて!? え? いつ継承した!? キーブレード使いのキーブレードに、シロコ触ったっけ……!? あ、私か!? キーブレードの時の私に触ったから、継承扱いになったのかな!? うっわー!?」
「ふふん、頑張った」
「本当に頑張ったよシロコ!? いや本当、おめでとうッ!? すごいすごーい!!」
そうして暫く、ココロは自分の事のように喜び、飛び跳ねていた。
……それがようやく落ち着いて、話が出来るようになった頃。
「はー……びっくりしたあ。そういえばシロコ、どうしてここに?」
「ん。色々詳細は後で話すけど……ココロに、直接会ってみたくて。後、教えて欲しくて」
「え? 会うのはともかく……教えて欲しい?」
そう言うと、ココロはちょっと考えた後……直ぐああ、と思いつく。
「なるほど、キーブレードについてもっと教えて欲しいと。そっか、シロコ色々魔法とか教えて欲しかったもんね。いいよ、魔法以外の技とかもじっくり……」
「ううん、そうじゃ無い」
「……へ?」
そう言うと、ココロは戸惑ったようにこちらを振り向いた。
ん、確かにそれも教えて欲しい。けど……
「今はそれより、“コレ”について教えて欲しい」
「これっ、て……!? ソレは──!!」
すると、ココロは私の持ってる物にようやく気づく。
私の拾ったパッケージを見て……
「──“キングダムハーツ!!” その第一作目!?」
「ん、複数種類あるんだ? まあ、よくわからないんだけど、それを含めて……」
そうして、私は改めてココロにお願いする。
「ココロの言う、キングダムハーツ。──“そのゲームの事を、教えて欲しい”」
その言葉を聞いたココロは、驚き、そして徐々に笑っていき……
「──いいよ!! うん! じっくり教えてあげる! 早速やろう!!」
とびっきりの笑顔で、そう答えてくれた。
「はい! これがゲーム機とコントローラー! パッケージからディスクを取り出して!!」
「ん、こう?」
そうして、私は言われた通りにパッケージを開く。
そこには、CDみたいなディスクが入っている。
ソレをココロに言われるがまま、ゲーム機と言っていたソレに挿入する。
「はい、コントローラー持って! 電源オン!」
「ん!」
「シロコ……」
「──ようこそ! キングダムハーツの世界へ!!」
そう言ったココロの顔は、初めて出会った中でも、とびっきりの笑顔だった。