ブルアカ世界に、キーブレードそのものとして転生した件について 作:ニュームーン
『結局希少鉱物見つからなかったねー』
「ん、残念……」
魔法で大分砂をどかしたりして手伝ったけど、当初の目的だった希少鉱物は結局見つからず。
シロコに背負われた状態で、私はシロコの言うアビドス学校というところに向かっていた。
「けど、別にいい。もっと凄いお宝を見つけたし、今日はこれで十分」
『シロコ……』
背中の鍵に触りながらのその発言にキュンとしてしまう。
我ながら単純だが、ルンルン気分が湧き上がってくる。
「ん。着いた」
『おー。ここがアビドス高校、シロコが言ってた学校だね』
「……今更だけど、その鍵の状態でも見えるんだね?」
『ん? 言われてみれば。……私の今の位置から、360度大体分かるな。意識して見れば、大体全方位把握できるね? あまり遠くは流石に無理だけど』
「ん、単純に私の死角潰すのにも役立ちそう」
そんな会話をしながら、校舎を見渡す。
うん、所々砂が多いけど、しっかりした校舎だ。
これぞ学び舎って感じがすっごくする。高校直接行った記憶ないけど。
「それじゃあ、ようこそ。私たちのアビドス高校へ」
『うん! お邪魔しまーす!』
そう言って、私はシロコに背負われたまま校舎に入って行った……
☆★☆
「ただいま」
シロコは扉を開けてそう言って入って行った。
確か「廃校対策委員会」? とか紙で書かれていた部屋に入って行ったが、誰もいない。
「ん。まだ誰も帰っていないみたい」
『そうなんだね。というか、学校という割には他の場所にも誰もいないね? もしかして休日?』
私は素直に疑問に思った事とシロコに質問した。
校舎内を通ってきたけど、途中の教室に誰も居なかった。
生徒はおろか、教師、用務員さんらしき人も。
「もともと、この高校には私含めて5人しかいない」
『そうなの? こんなに大きな学校なのに。……ここ、田舎だったりする?』
「これでも、元々はキヴォトスでも有数の大きな学校だったらしい。……今は、砂漠が広がって小さくなっちゃったけど」
『ふーん……大変そうだね』
私は他人事のようにそう言った。
砂漠が広がっちゃってるのか……それは本当に大変だ。
確かに、校舎のあちこちに砂が大量に入っているのは見えたけど……
『……よし! シロコ、提案なんだけど掃除しない? 私の魔法で、砂とかまとめて集めて放り出せるかも』
「ん、いいね。私ももっと魔法でいろいろやって見たかった。今は私達以外誰もいないし、今のうちにやっちゃおう」
『了解! ふふん、原作ゲームでは細かいところまでは調節出来なかった筈だけど、今はコントロールは私! 微調整は任せて! さっき砂漠で【エアロ】使いまくってもらった時、大体感覚は掴めてきたから!』
「ん、頼りにしてる」
そうして、私とシロコは早速校舎の大掃除を始める事にした。
「まずは廊下からだね」
『よし。シロコ、【エアロ】を唱えて。微調整は私がするから』
「うん。【エアロ】!」
そう言って、廊下の真ん中に小さな旋風が巻き起こる。
それでも吸引力はそこそこで、あたりの砂をグングン吸い込んでいく。
「おおー」
『うん、これくらいなら楽勝だね。効果持続をメインに調整して……ちょっと吸引力をアップ。シロコー、窓開けてくれない?』
「分かった」
コクリとうなずき、窓を開けるシロコ。
そして私はシロコに指示して、鍵先を窓の外に向けるようにしてもらう。
すると、砂を掻き集めていた旋風が窓の外に飛んでいき、そこでバサアッと砂をばら撒いた。
『うん! うまく行ったね!』
「うん、これは便利。いつもは箒と塵取りを使ってるから、大分効率が違う。普通に掃除機を使っちゃうと、砂が詰まってすぐ動かなくなっちゃうから」
『あー、なるほど……けど、これなら砂詰まりは起こさないね! どんどんやっちゃおう!』
「ん!」
そうして、私たちは廊下の次に各教室、体育館など室内の砂を隅々まで取っていった。
流石に細かい書類とかが多い、廃校対策委員会とか言う部屋はあまり大きな風は巻き起こせなかったけど。
それでも、それ以外の部屋は強めの風でどんどん片付けが終わっていった。
さらに、途中で汚れを発見すれば……
『シロコ、シロコー。そこ、汚れが付いてるね。【ウォータ】使ってくれる?』
「ん、【ウォータ】!!」
『よっしゃ放水!! さらに、絞り口を細くするようにして、圧縮水を発射! 高圧洗浄だー!』
「おー、みるみる汚れが取れていく……!」
このように、魔改造【ウォータ】で綺麗さっぱりにしていく。
乾燥には、【エアロ】で風を当てればOK! ……流石に、校舎内で【ファイア】を使わせるほど、危険な事はさせたく無かった。
魔法だから流石に校舎全焼まではいかないかもしれないけど、慣れないうちに使わせる方法じゃない。
それはそれとして、どんどん綺麗になっていく校舎を見て、調子に乗ったシロコが張り切った結果……校舎内の大半がピカピカになっていた。
「ん! スッキリ!」
『いやー、めっちゃ魔法使ったねー。どうだった、魔法で校舎を掃除して見て?』
「すっごい楽しかった! もう少し、どうせなら校舎外も掃除を……あ、そうだ」
そう言って、シロコは校舎の外に出てある場所に向かう。
これは……室外プール? めっちゃ大量の砂に埋もれてるけど。
「ん! ここ、ここも綺麗にしたい! すごく砂が多くて、片付けが大変そうだから今までやってなかったんだけど……」
『OK! うーん、それにしてもガッツリ埋まってる。これ【エアロ】だけだと大変そうだなあ……』
うーん、大分慣れてきたし……そろそろ試していいかな?
『シロコー、今度は【エアロ】じゃなくて、【エアロラ】って言ってくれない?』
「分かった。これがもしかしてさっき言ってた“ラ”級って奴?」
『そう。威力アップしてるから気をつけてね』
「うん、了解。【エアロラ】!!」
そう言って、シロコは強化風魔法を唱えた。
予想通り、ビュゴウッと大きめの旋風が発生して、砂を吸い取っていく。が……
『あ、ダメだ。これ細かい微調整効かない!』
「ん、ちょっとヤバイ?」
『単純に砂かき集めるだけならいけるけど……出力調整出来ないから、威力ほぼ一定だと思って! ぎり、どかすだけならいけるかな……!?』
「とりあえず、プールの外側に放るね!」
そう言って、急いで鍵の先を向けて竜巻を外に放り投げる。
バッサアアアッ!! と、集めた大量の砂がプールの外に大量に落ちていった。
「けほ、けほっ……ん、なんとか間に合った」
『うーん、やっぱ“ラ”級はまだコントロールが効かないかも……レベルが足りないのかなあ』
「でも、おかげで砂が結構大量に無くなった」
『そうだね。掃除と言うより、ショベルカー感覚で考えた方がいいかも。一応続けるなら、気をつけてね』
「了解」
そう相談して、シロコと一緒に【エアロラ】を休憩しながら連発する。
結局、細かいコントールは出来ないまま終わってしまった。けれど、砂山からプールを掘り起こすには十分だった。
「ん、ほとんど無くなった!」
『あとは【エアロ】で細かい砂を取り除けば……よし、完了ー!!』
よっし、完璧!!
目の前の砂山だったプールは、見事に全て掘り起こされた!
「あとは水を入れるだけ。けど、水道の水を大量に使うのはちょっともったいない……」
『じゃあ、やっぱり魔法だね! 今度は【ウォタラ】って唱えて!!』
「ん! 【ウォタラ】!!」
シロコは言うとおりに唱えてくれて、大きめの水の球が放出された。
それがプールに入って、バシャアッと破裂した。
しかし……
『んー……“ラ”級でもあんまり水貯まらないね』
「ん、プールに対してちょっとしか入らない……」
『“ラ”級だと出力調整が出来ないから、出し続ける事が難しいし……このペースだと、2~3時間は繰り返さないと溜まりきらなさそう』
「ん、しょうがない。ここまで掘り起こせたし、今日はこれで十分。……ところで、この水って消えるの?」
『ん? ゲームだと直ぐ消えてたけど……消えてないね、これ』
「……と言うことは、出した分ずっと残り続ける感じ?」
『この分だと、多分』
「ん……時間かかるとはいえ、タダの水が大量に手に入るって、大分お得」
『だねー』
「……本当にヤバイお宝かもしれない、ココロ」
『へへー、もっと褒めて褒めてー♪ まあこれでも、神様転生だから! これぐらいはねー』
「ん、本当にそれくらい調子に乗ってもいいくらい凄いよ」
ふふん♪ シロコの褒め言葉に私はすごく気分を良くしていた。
まあ、私自身の力というより、神様の力が凄いんだけど。
でもこうして、使いたかったゲームの技が使えて、しかもそれが誰かの役に立ってるなんて、凄く嬉しい事だった。
「とりあえず、いったん部室に戻ろう。……ととっ」
『大丈夫?』
「ん、ちょっと疲れた……」
『魔法唱えていただけとはいえ、集中と鍵先操作とかやってたからねえ……あ、そうだ。【ケアル】って唱えて見て』
「ん、【ケアル】。今度はどんな魔法……」
直後、シロコの体を光が包み込む。
「…………今、何したの?」
『回復魔法。体力回復した?』
「……ん。めっちゃ元気になった」
『本当? 良かったー、これも上手くいってよかったよ、うん』
「ココロ」
『うん?』
「……今のが一番、本気で本物の魔法っぽいと思った」
『でしょー?』
そんなレベルじゃないと思う……そんなことをシロコは呟いていた。
そう会話しながら、私たちはプールを後にして校舎に入っていった……
☆★☆
「はあ、涼しい……」
『【ブリザド】で氷を作って、【エアロ】で室内の空気を掻き回す。上手くいったねー』
「ん、エアコンいらず。電気代節約になる」
シロコの言う部室に戻ったあと、バケツに向けて大きな氷を作ったあと、風を暫く当てていた。
うーん、大分使いこなして来てない? 日常生活でここまで便利だとは、我ながら予想外だった。
「ココロ、確か【サンダー】もあったよね。ひょっとして、電気そのものも貯められる? ケータイ充電出来るかな」
『いや、うーん……ごめん、ちょっとそれ自信無い。そこまでコントロール出来るとは思えないし、電圧とか電流とか分からないから、壊しちゃいそう。蓄電器とかに一旦溜める形ならいけるかもだけど』
「なるほど、今度試そう。シロコに相談して蓄電器用意してもらってもいいかも」
『シロコ? シロコはシロコでしょ? 自分に相談?』
「あ。そうじゃなくて……ちょっと説明が難しいんだけど、もう一人の私がいるの」
『何それ? そんなもう一人の闇の自分、見たいな存在が?』
「ん。さっき言った、別世界線の例。その世界の私がいるの」
『へええぇぇ──!!? それはビックリ! 異世界凄ーい、そんな技術まであるなんて』
「例外だけどね。今度機会があったら、詳しく話す」
シロコの爆弾発言に驚きながらも、会話は弾んでいく。
今度はシロコから、今のアビドスの状況に関して少し話してくれた。
『へー。それで9億の借金があるんだ。いや、桁凄っ。それをたった5人で? めっちゃ大変な世界だ……』
「ん。最近はこれでもいろいろマシになった。“先生”のおかげ」
『あー、さっき言ってたシャーレって所の? 先生が一人しかいないってのも変わってるねー』
と、このような会話を続けていた。
久々の人との会話だけでも十分嬉しいのに、シロコの会話の内容が荒唐無稽な内容も大量だったから、リアクションに事欠かなかった。
とりあえず、この会話のおかげである程度キヴォトスというのがどういう場所か分かったような気がする。
このアビドス砂漠が特殊なだけで、技術レベルはある意味私のいた世界より全体的に突出している。
あと、治安が割と終わっている、という事も分かった。
そうなると、ある意味鍵の体って丁度良かったのかな……?
生身の体で出歩いていたら、即第二の生の終了だった。いや、もしくは砂漠の時点で終わってたか?
まあある意味、終わらせて欲しいレベルで発狂はしてたような気もするけど、今はもうそんな思いは無かった。
嘘。心の奥底に埋めてるだけ。
「ところで……この【ウォータ】で出てくる水って飲めるのかな?」
『あー。心の世界で私は良く飲んでたな、そういえば。けど一応攻撃技だし、リアルの世界だとどうだろ、言われてみれば……』
「ん。飲めるなら飲み水の節約になる……!」
『待って待って、今更かもしれないけど一応検査してからにしよう? 検査する方法この世界にあるでしょ多分? これでお腹壊したら申し訳なさすぎるよ』
「むう。しょうがない、今度先生に頼んでミレニアムあたりに検査して貰おう」
そんな他愛のない話をシロコと続けていた。
他にも、【ファイア】で焚火出来そうとか、【ブリザド】の氷でかき氷作れるんじゃないかとか、魔法で何が出来るかいろいろ相談するのがとても楽しかった。
そんなことを話していると……
「ただいまー。いや~、疲れたよー」
この部室に、誰かが入って来た。