ブルアカ世界に、キーブレードそのものとして転生した件について   作:ニュームーン

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第四話 聞こえませんでした

 

「お帰りなさい、ホシノ先輩」

「いやー、買い出し疲れたよー。ノノミちゃん達はもう少し個人的に買うものあるって言ってたから、後から来るよー」

 

 部屋に入って来たのは、小柄なピンク髪の女の子だった。

 オッドアイで、すっごい可愛らしい。

 

『この子が、さっき言ってたホシノ先輩って人?』

「ん、そう」

『なるほど。はじめましてホシノさん! 私は王国ココロ! 見ての通り鍵です! よろしくね!!

「ん、うるさ」

「え? なんで急にディスられたの私? なんかした?」

 

 目の前のホシノさんが、急に戸惑ったような表情になっていた。

 ……おや? 

 

「シロコちゃん、一体どうし……うわっ、何そのおっきい鍵!? そんなおっきいの見たことないよ〜」

「ん、拾った」

『……はじめましてホシノさん! 私は王国ココロ! 見ての通り鍵です! よろしくね!!』

「さっきよりうるさっ」

「ねえ、シロコちゃん。おじさん何かしちゃったかな……? そんなに気に触るようなことした?」

「……?」

 

 ……おやおや? 

 あれ、これもしかして……

 

「……ホシノ先輩、“もしかして聞こえてないの?”」

「え、何が? ……シロコちゃんの声と、外の風の音くらい? 他に何があるの?」

「ん……っ」

 

 ……あ、やっぱりこれ聞こえてないや。

 ホシノさんに私の声聞こえていない! 

 

「シロコちゃん、もしかして幻聴? 体調悪い?」

「ん、大丈夫、だと思う……ごめん、気のせいだったかもしれない」

『シロコ!? シロコちゃん!? シロコちゃんは聞こえてるよね! 聞こえてるなら鍵握ってくれない!?』

 

 そういうと、シロコは片手で鍵の持ち手を握ってくれた。

 あ、良かった。シロコには聞こえたままだった。

 でも、えー……、ホシノさんには聞こえないのー……? 

 

『あれ、じゃあこれ、私のことあんまり話さない方がいい感じ?』

「(だと思う。信じられないだろうし、今は黙っておいた方が良さそう)」ボソ

「そっか、それなら良かったけど……それにしても、本当に大きい鍵だね。拾ったって言ってたっけ?」

「うん、砂漠の砂の中に埋まってた。私の宝物」

「へー、そんなの埋まってたんだ!! ビックリだよー、まさにお宝だね! 良かったねー、シロコちゃん」

 

 そう言うと、ホシノさんはふと机の上に氷が置いてあるのを気づいた。

 

「あれ? おっきい氷だねー、これどうしたの?」

「ん、えっと……暑かったから、用意した」

「この部屋、クーラーあるのに? あ、けど氷で涼むのもたまにはいいねー。心なしか、この部屋涼しく感じるし。今クーラーつけてないんだね? けどこの涼しさはいい感じだよー」

 

 あ、そういえばさー、とホシノさんは話を続ける。

 

「この部屋に来るまで、校舎の至る所にあった砂がほとんどなくなったんだけど、シロコちゃんが掃除してくれたの?」

「ん、頑張った」

「うへー、偉いねー、ありがとうー。けど、急にどうしたの? こんなにしっかり掃除するなんて、しかも一人で」

「ん……そんな気分だったから」

「ふーん、でもありがとねー」

 

「ただいまです〜☆」

「ただいま戻りました」

 

 ホシノさんと話していると、後から二人が入って来た。

 確か、ノノミさんとアヤネさんだっけ? シロコの話だと。

 よし。

 

『はじめまして二人とも! 私は王国ココロ! 見ての通り鍵です! よろしくね!!』

「(耳に響く……!)」

「たくさん買っちゃいましたー。ノートとかボールペンとかの備品とかありますよー☆」

「とりあえず、しばらく校舎内の必要なもので買い出しは必要なくなる程度には集まったかと思います」

『あ、ダメだやっぱ聞こえてないや、アハハ! ……はぁっ』

「(ココロ、元気出して)」ボソッ

 

 試しに再度大声出して見たけど、やっぱり無反応。

 やはり聞こえていないらしい、すごくがっかり……

 

「あれ? シロコちゃんどうしたんですかその大きい鍵?」

「確かにおっきいです。このサイズのものは見たことないですね。何かのインテリアでしょうか……?」

「ん、拾った」

「あーそうだ。二人とも校舎の中綺麗だったでしょー。シロコちゃんが掃除してくれたんだってー」

「そうなんですか? ありがとうございます!」

「シロコちゃん、偉いですねー。ピッカピカでしたー」

 

「ただいま!! ね、ねえ! みんないる!?」

 

 そう言って、新しい人がまた入って来た。

 多分、セリカさんって人だ。

 

「あ、セリカちゃんバイトお疲れ様ー。どうしたのそんなに慌てて」

「ちょっと、みんな聞いて!? 校舎の外の砂に埋れていた屋外プールが、いつの間にか出てたんだけど!?」

「へ?」

「あら☆?」

「はい?」

 

 ☆★☆

 

 そうセリカさんに言われて、全員が校舎の外に出て行った。

 私もシロコに握られた状態のまま連れ出されている。

 

「うへー……!? 本当に砂が消えてる! あれだけ大量の砂に埋もれてたのに……」

「でしょ!? 私ビックリしたわよ! ホシノ先輩たちが掘り起こしたの?」

「いえ、私たちは買い出しに言ってたので全然知りません……」

「備品買ってましたもんねー。シロコちゃんは砂漠で希少鉱物探しでしたよね?」

「ん……」

 

 私たちが掘り起こしたプールを見て、みんな驚いていた。

 ノノミさんの問いかけに、シロコは明後日の方向を見て空返事をしていた。

 

「……シロコちゃーん、何か知らない?」

「し、知らない」

「先に校舎に戻ってたのはシロコちゃんだったよね? その時何か気づいたことなかった?」

「ん、特には。直接部室に戻ってたから、プールのことなんて気づかなかったし」

「校舎のあちこち掃除したって言ってなかったっけ? ……急な掃除もそうだし、なーんか隠してない?」

「ん、……」

 

 ホシノさんにそう詰め寄られているシロコ。

 目をそらし続けて……観念したようにあっさり話す。

 

「……ん、そう。私がやった。このプールを掘り起こした」

「ええ!? そうなんですか!?」

「……シロコちゃん、流石に全部がそうじゃないでしょ? あれだけの砂があったんだし、一人でどかすのは作業的に無理だよ。しかもこんな一日も経ってない時間で。……他に一体誰がいたの? というか何があったの?」

 

「ん、魔法を使った」

「ものすごい誤魔化し方でおじさん逆にビックリだよー? 一体何を隠して……」

 

「【エアロ】」

 

 めんどくさいと言うように、私を掲げて呪文を唱えるシロコ。

 直後、プールの上空に大気の渦が発生する。

 急に小さな竜巻が発生して、それを見てシロコ以外の4人が「え?」っと呆けた。

 

「ん。【ファイア】、【ブリザド】、【サンダー】、【ウォータ】!」

 

「【エアロラ】!!」

 

 そして、畳み掛けるように炎、氷、雷、水を放出。

 締めにさっきより大きめの風の竜巻を出して、フィニッシュ。

 

「……ん! スッキリ! どう?」

 

 魔法を連発して、フンスっと胸を張っている。

 それに対して、他4人は口をアングリと開けて無言のまま……そしてようやく再起動したようだ。

 

「……え、え? 嘘でしょ? う、うへえ……!?」

「し、シロコちゃん! い、今の一体どうやったんですかー!?」

「嘘でしょ!? 本当に魔法!? 風とか、炎とか氷とかも出してたわよ!?」

「み、ミレニアム製の最新武器とかなのでしょうか……!?」

 

「ん、キーブレード。砂漠で見つけた私の宝物」

 

 誇らしいように、私を掲げて見せ付けるようにするシロコ。

 その表情には宝物を自慢する子供のような表情だった。

 

「うへえ……本当に、お宝だったんだね?」

「ん。凄く便利、これで校舎の掃除とプールの砂を片付けた」

「そうですねー。そんな魔法が使えるならとっても便利ですねー☆」

「いや、めっちゃ凄いわよ!? 本当にそんなのが砂漠に埋まってたの!?」

「まさか、これほど本当に凄いものを見つけてくるなんて思っていませんでした……!」

 

 シロコが実際に魔法を見せたことで、全員凄く興奮した様子だった。

 ふふん、当然だね。キーブレードを実際に使えて、興奮しない人なんていないよ。

 

「ねえシロコ先輩!! 私にも使わせて貰える? 私もやって見たい!」

「ん、いいよ。はい」

「やった! ……えーと、どうやって使えばいいの?」

「鍵先を向けて、呪文を唱えればいい。【エアロ】が、風を起こす魔法」

「よーし、いくわよ! 【エアロ】!!」

 

 そう元気よく、セリカさんが声を上げる。

 

 ……しかし、シーンと何も起こらない。

 

 あれ? 

 

「……あれ? 【エアロ】! 【エアロ】!! ……シロコ先輩、何も起こらないわよ?」

「え? ……ちょっと一旦返して。【エアロ】」

 

 そう言って、セリカさんから私を返してもらったシロコ。

 そして再度呪文を唱えると、ちゃんと風の竜巻が起こっていた。

 

「ん、ちゃんと出る」

「えー!? 私の何が悪かったの!?」

「(ココロ、どういうこと?)」ボソ

『わ、分かんない。少なくとも、シロコに唱えられた時魔力の反応が感じられたんだけど、セリカさんだとそれが感じられなかったんだ』

「シロコちゃん、試しに私も試していいですか〜?」

「良いよ」

 

 そう言ってノノミさんにも貸し出されたが、さっきと同じで何も起こらない。

 アヤネさん、ホシノさんにも試してもらったが、反応無し。

 

「【エアロ】! ……うへー、やっぱりダメだね。私達だと反応しないや」

「【エアロ】! ん、私だとちゃんと反応する」

「どう言うこと? 発音とか? それともシロコ先輩専用?」

「もしかして、最初の使用者が自動的に登録とかされる仕組みなんでしょうか……?」

「少し、残念ですねー」

 

 ノノミさんが本当にそう残念そうに声を漏らす。

 けれどまあ、と話を続ける。

 

「でも、シロコちゃんだけでも魔法が使えるなんて凄いですー☆ とっても面白いですねー」

「ん、お気に入り」

「けど、なんでこんな凄い鍵が砂漠なんかに埋まってたのかしら……」

「そうですね。さっきも言ったように、ミレニアムの最新技術で作られた、とかなら分かるのですが……シロコ先輩、本当に砂漠に埋まってたんですよね?」

「うん。砂漠の大オアシスに埋まってた。結構深いところにあったけど」

 

 シロコは後輩たちの質問にそう答える。嘘は言っていない。

 実際私が、突然あの場に大昔リポップした形だ。

 ミレニアム? というのはよく分からないけど、神様転生で手に入れたキーブレードだ。詳細なんてよく分からない。

 

「んー、となるとミレニアムの線は薄いでしょうか? そうなると、他に考えられるのは……」

 

「──“雷帝の遺産”、とか?」

 

 すると、ホシノさんがそう呟いた。

 さっきとは違って、真剣な表情でそう言っている。

 

「ホシノ先輩、それは……」

『雷帝の遺産? 何それ?』

「(ん、ちょっとこの間、それ関連の騒動があって……)」

「……うん、ごめんちょっと言って見ただけ。砂漠に埋まってた凄い兵器って事で連想して見たけど、シェマタに比べてちっちゃいし。それに出来ることが違い過ぎるというか、なんとなく毛色が違うね。そもそも兵器なら鍵の形にする意味が分からないし」

「そりゃそうよ! あんなのがポンポン転がっててたまるもんですか!」

「とりあえず、シロコちゃん使ってて大丈夫? 問題ない?」

「うん、特に問題無いよ」

「そっか。……確かシロコちゃん、明日シャーレの当番だったよね? そこにその鍵持っていって、先生に調べてもらうのが良いかも」

「ん、わかった。そうしてみる」

 

 そう言って、コクリとうなづくシロコ。

 正体自体は大体私から教えてはいるけど、とりあえずポーズだけでも確認する様子を見せた方が良さそうだ。

 

「それはそれとして、シロコ先輩他にどんなことが出来るの? なんか色々出してたけど、あれ以外何か出せる?」

「ん、とりあえずさっきので一通りだしたつもり。覚えている魔法は大体使った」

「……そういえば、シロコちゃんさっきの魔法ってどうやって知ったの? 鍵見つけただけじゃ分かんない筈だよね?」

「ん? んー……取り扱い説明書が付いてた」

「説明書ー? その紙今ある?」

「ごめん、風に煽られてどこか飛んで行った」

『凄い雑な理由だ……』

 

 そりゃあ、シロコにしか聞こえない声が教えてくれた、なんて言ったら病気を疑われるよね……

 ……というか、さっきから私何度か堂々と喋っているけど、やっぱりシロコ以外聞こえていないらしい。

 えー、じゃあ魔法他の人は使えないのも、これが理由? 

 

 ……はっ!? “キーブレード使いの、素質”……!? 

 

 もしかして、たまたまシロコがキーブレード使いの素質が高かっただけ!? 

 だから私の声が聞こえたとか!? 

 キングダムハーツでも、アクセルとか確かすぐには使えなかった筈だし、それが理由なら分かるかも……!! 

 確か継承自体は簡単だけど、使えるようになるかは別の話だった筈だし! 

 

「そっかー。けど、さっきのだけでも十分凄いわよ! もっと出してくれない? 何か利用出来るかも!」

「良いですねー! もっとさっきの私も見たいです☆」

「うへえ。あんまり正体分からないやつ使うのもどうかと思うけどねー」

「そうですね、流石にここではなんですし、せめて校庭に移ってから使いませんか? 何があっても大丈夫なように」

「ん、分かった」

 

 そう言って、5人は校庭に場所を移す。

 そこでキーブレードの魔法を一通り使って、いろいろ試して遊んでいく。

 それはそれはとても盛り上がっていた……

 

 

 ☆★☆

 

「──ん、楽しかった」

『ね。とても盛り上がってたね』

「けど、みんなココロの声が聞こえなかったのはとても残念だった……」

『うん、凄くショック……やっぱり素質なのかなあ、キーブレード使いの……』

 

 そんなことを話しながら、シロコは自転車を漕いでいた。

 私はシロコに背負われた状態で揺られている。

 

「ということは……ん、私は選ばれた……!」

『選ばれたかどうかは分からないけど、シロコだけでも私の声を聞いてくれて本当に嬉しいよ!』

「ん、ちょっとポジティブ風に言って見た。けど、やっぱりみんなに知ってもらうのが良いね。……いつか、みんなにも聞こえると良いけど。っと、着いた」

 

 シロコが自転車を止めると、目の前にはマンションが。

 ここがシロコが住んでる場所かー。

 

 階段を上がって行って、とある階の扉の前に向かい合った。

 

「えっと、家の鍵は……」

『あ、そうだ。シロコ、ちょっと試したいことがあるんだけど』

「ん、何?」

 

 そう言って、私はシロコにキーブレードを扉……正確には、取手の鍵の部分に鍵先を向けてもらうよう頼んだ。

 よしよし、あとは……

 

『あとは、ちょっと念じて見て。“開け”って』

「……え? ちょっと待って、まさか……」

『うん、想像してるかもしれないけど、その通りに考えて見て』

「…………うん」

 

 そう言って、シロコは集中して鍵先に目を向けて……

 

 ──光が鍵先から放たれる。それに合わせて、シロコは無意識にキーブレードを捻る。

 

 ……ガチャリ、と扉の鍵が開いた。

 

『開いたー♪』

「────…………っ」

『どう? これがキーブレードと言われる所以! 鍵という概念なら、なんでも開閉出来る能力! いちいち鍵を持ち帰る必要の無いマスターキー! 便利でしょ!』

「……なん、でも?」

『うん、なんでも。よっぽど特殊な事情とか無い限りは、大体開くよ。扉も、宝箱も』

「……自転車の鍵も?」

『うん。それくらいなら簡単に』

「……南京錠も?」

『うん。余裕余裕』

「……シャッターとかも?」

『うん? 多分。鍵付きのやつなら。鍵なくても開くかもしれないけど』

「……金庫とかも?」

『うん? 多分。ダイヤル式とかも、多分開くと思うよ?』

 

「……つまり」

「うん?」

 

 

「──銀行強盗、し放題……ッ!?」

 

『うん……うん!?』

 

 

 ちょっと待って、シロコなんて言った今? 

 

「ちょっと待って。────……あ、開いたのも閉じれた」

『そうだよ。閉じる事も出来るんだよ』

「……つまり、中身を取ったあと鍵を閉めれば、誰にもバレない…… !!」

『シロコー、シロコちゃん? ねえ、さっきから何言ってるの? ねえ?』

 

「……ココロ。ちょっと用事が出来た。付き合ってくれる?」

『……ちなみにどこ行くの?』

「……ん。銀行強盗……!!」

『やって良いのそれ!? ねえ!!』

 

 え、待って! この世界ってそれやっても大丈夫なの、ねえ!? ずっと砂の中にいたから判断出来ないんだけど!! 

 本気で困惑した私の様子が伝わったのか、シロコがあー、うー……と狼狽たあと、何かを諦めたように声を出す。

 

「……ん、冗談。ホシノ先輩に怒られるから」

『あ、冗談なんだ。良かったー。……なんかめっちゃ葛藤してたけど』

「ん、魅力的過ぎる。すっごい魅力的……目の前に高級ショートケーキ置かれて、お預けを言われてる気分……!!」

『ねえ、それ本当に大丈夫? ねえ?』

 

 あれ、もしかして教えちゃ不味かった? 

 キーブレードの代表機能を教えただけのつもりだったんだけど、私なんかやっちゃった? 

 ずっと前世病院暮らしだったから、なんか常識欠けてる私? 

 

「……とりあえず、この機能は絶対内緒にしておいた方がいいと思う。魔法なんかよりよっぽどヤバイ」

『あ、やっぱり? よく分からないけど、ぶっちゃけセキュリティって概念が、キーブレード使いには一切関係無いようなもんだよね、それ』

「……キヴォトスだと、需要があり過ぎる。この機能自由に使える状態でばら撒いたら、あっという間に大混乱。……正直、借金返せるかも。いや、その前に鍵自体強奪されるか

『こわー。シロコに拾われて良かったー。まあなんやかんか、シロコはそんなことしないでしょ?』

「ん、無根拠の信頼が凄く辛い……!!」

 

 私の言葉にシロコは冷や汗を掻きながらうろたえていた。

 気を取り直して、扉の前に立つ。

 

「ん、とりあえず今日はもう入ろう。ここが私の家、ようこそ」

『お邪魔しまーす』

 

 そう言って、シロコは扉を開ける。

 友達の家に入るのって、初めてだから凄く楽しみー♪ 

 

 ☆★☆

 

「ん、ここが私の部屋」

『おー。女の子の部屋って感じがする』

「何それ」

『ごめん、適当言った。友達の家に入るのって初めてだったから』

「時々、ココロって凄く闇深そうな事言うよね」

 

 うん、中は凄く綺麗。

 ベットがあって、そこそこ生活用具が置いてある。

 玄関には、さっき乗ってた自転車が置かれていた。

 

「さて、と。お風呂入ってくるね」

『お風呂! 私も入りたい!』

「え……? その姿で?」

『いや、だって。ずっと砂の中にいたから、一応全身丸洗いしたいし』

「……ココロって、性別どっちだっけ?」

『一応前世は女の子。鍵の体で性別も何も無いかもしれないけど』

「……ならいっか。分かった、一緒に入ろう」

 

 

 ──少女と鍵、入浴中。

 

「ん、ココロ。どう?」

『あー、いい感じー。石鹸で体中洗われるの気持ちいー』

「お風呂場でおっきい鍵を丸洗いする経験なんて初めて……」

 

「ん。湯船に浸かる」

『あー、極楽極楽……ぶくぶく』

「ん!? ココロ、大丈夫!? 溺れてる!?」

『うっそー! 別に全身沈んでも溺れませーん! じゃ無いと砂の中でとっくに終わってるしー』

「ん、湯船の底にあるのに声が頭に響いてくるのすっごい変な感じ……!?」

 

『バスタオルで拭いてくれてありがとうー♪』

「ん、しっかり水気を取るね」

 

 

『あー、気持ちよかった♪』

「ん、夜ご飯にしよう。今日は軽めにカップラーメン……」

 

 そう言って、シロコははたと立ち止まった。

 どしたん? 

 

「……ココロ。ココロって、食事は……?」

『逆に聞くけど、鍵の体で食べられると思う?』

「ん、ゴメン。……辛く無い?」

『もう慣れちゃった。それに、実はね。心の世界にダイブ出来るから、そこで食事を取ることが出来るのだ。だから食べようと思ったら食べられるから大丈夫』

「ココロの世界?」

『心の世界。若干ニュアンスが違う。まあ、また今度説明するから、シロコは気にせず食べちゃっていいよ』

「ん、それじゃあ遠慮無く……」

 

 そう言って、シロコはカップラーメンを作って食べていた。

 うーん、いい匂い。鍵の体でも匂い感じ取れるんだ……自分でもビックリ。

 

 さて、食事も終わったところで。

 

「ん、それじゃあそろそろ寝よっか。ココロは……?」

『ああ、いいよ。私はベットの中の隅で、お構いなく』

「ん……ん? 遠慮してるように見えて、結構図々しい事言ってない? 普通にベットに入ってるよね、それ?」

『だって、フカフカのベットで寝るなんて本当に久々で……!! ずっと砂の中だったんだよ!』

「さっきから思ってたけど、布の感触感じるの?」

『少しは。大分鈍い感覚だけど、一応判別出来るってくらいかな』

「……まあ、それなら意味あるか。じゃあ、いいよ」

『お邪魔しまーす♪』

 

 そう言って、シロコは私をベットの上に置いてくれた。

 うおう、フカフカだあ……♪ 

 

『砂の中じゃ無い、ふかふかベット……!! ああ忘れていたこの感覚! すっごくいい感じありがとう! これならすぐ眠れそう、おやすみぐう……っZZZ』

「ココロ、ココロ……? 嘘でしょ、本当にすぐ寝た……!? ビックリする……」

 

 私はもう意識がなかったけど、シロコはふう、とため息をついた後、私を慈しむような表情を浮かべていた。

 そして部屋の電気を消して、ベットに乗って掛け布団をシロコと私に掛ける。

 

「……ん。おやすみ、ココロ」

 

 こうして、シロコと運命的な出会いを果たした一日はようやく終わりを迎えたのだった……

 

 

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