ブルアカ世界に、キーブレードそのものとして転生した件について   作:ニュームーン

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第五話 人に会えました

『……ふわあー。おはようー、シロコ』

「……うん、おはよう、ココロ」

『……へへ』

「どうかした?」

『いや、こうしておはようって挨拶出来るのって、なんか凄くありがたかったんだなあって実感してて』

「ん、これから何度も言える」

 

 ベットの上で目覚めて、一緒に起きたシロコに声を掛けた。

 シロコは眠そうな目を擦りながらも起き上がり、キッチンに向かっていく。

 

「ん、頂きます」

『それって、ゼリー飲料って奴だっけ? それだけで足りるのー?』

「朝はこれくらいで大丈夫。お昼にはしっかり食べるつもり」

『そっか、それならまあいいけど』

「今日はシャーレに行くよ。結構遠いから、しばらく背中に背負うことになるけど大丈夫?」

『大丈夫。というか、もしかして自転車で行くの?』

「ん、そのつもり。大丈夫、今度はライディングウェアを着ていく」

『思ったよりしっかりした装備だ……!』

 

 そう言って、ご飯を食べたシロコは早速着替えていき、自転車に最適な格好となっていった。

 おおー、すごく似合うー! 

 

「ん、準備はいい? ココロ」

『OK。行こうか、シャーレに!!』

「ん!」

 

 そう言って、玄関から自転車を出してシロコの自宅から出発して行った……

 

 

 ☆★☆

 

 

『シロコー、あれ何ー?』

「あれは……」

『シロコ、戦車! 戦車が走ってるよ!?』

「ん、よく見る光景」

『うわっ、ロボだ!? 嘘、犬とか猫とか立って歩いてる!??』

「ん、それもよく見る光景」

『思った以上にファンタジー要素たっぷりなんだねここ!?』

「そう?」

 

 そんな会話をしながら、長時間揺られていき……

 

 

 ☆★☆

 

 

『おおー、高い建物がいっぱいだー! まさに都会って感じー!』

「ここはD.U.地区、キヴォトスの中心都市だよ」

『へー! 砂漠ばっか見てたからあれが当たり前の世界かと思ってたけど、ここに来ると前の世界に近くて安心するなー! けど、いくつかの建物の構造が変わってるー! 近未来って感じー!』

「ん、楽しんでくれてそうでよかった」

 

 やっと都会らしき場所に到着していた。

 シロコは長い時間背負いっぱなしになることを気遣ってくれていたけど、あの砂の暗闇にずっといた頃に比べたら、周りの風景がどんどん変わっていってそれだけでも大いに楽しめる。

 あれほどずっと恋しかったお外!! これだけでもうテンションがバク上がりだ。

 そもそもロボとか獣人とかいる時点で、驚きだらけで飽きる筈が無い。

 

「もうすぐシャーレに着くよ」

『うん! 確か先生って人に会うんだよね?』

「うん。ちょっとココロの事も相談してみようと思う」

『ありがとうー。でも声聞こえるかな……? 多分聞こえないんだろうなあ……』

「大丈夫、先生なら聞こえなくても信じてくれると思う。具体的な案が出るかどうかは分からないけど、話してみて損は無いと思う」

『……そうだね。気楽に感じていくよ』

「っと、着いたよ」

 

 そう言ってシロコが自転車を止め、目の前にはそこそこ大きなビルが。

 わあ、綺麗なビル。

 

『ピッカピカだねえ! あれ、一部の階も特にピッカピカ! まるでそこだけ新しく作ったみたい!』

「ん……そういえば、ガス爆発が起こったってニュースが……」

『……え? それって大丈夫?』

「今は点検と、耐久工事をし直したらしいから大丈夫だと思うけど。けど先生がそれに巻き込まれて一時期大変だった……」

『よくガス爆発に当たって無事で済んだねその人……あれ、もしかして人間じゃ無い感じ?』

 

 ここまで遭遇していたロボや獣人みたいな感じかな? 

 想像の中の先生は、大きなライオンみたいな獣人が二足歩行で立っているイメージだった。

 それか、めっちゃ武装した大きなロボットか……

 

「違うよ、ちゃんと大人の男の人だよ」

『なあんだ、良かったー。逆にどういう人か気になってきたな……』

「ん、もう直ぐ会えるよ。さ、入ろう」

『お邪魔しまーす♪』

 

 そう言って、シロコはロードバイクを担いでシャーレの建物に入って行った……

 

 

 ☆★☆

 

 

「“……もうすぐシロコがやってくるね”」

『はい! シロコさんから先程の連絡で、到着予定時間があと1分ほどです! 間も無く扉を開けて入ってくるかと!』

『先生、今日のシロコさんに任せる予定の仕事データを割り振って置きました。ご確認下さい』

「ありがとう。アロナ、プラナ」

 

 私はシャーレのオフィスで仕事をしながら、今日の予定を二人に確認した。

【シッテムの箱】の中にいるAI、アロナとプラナ。

 私以外の人には声は聞こえないけど……私にとって欠かせない、二人とも大事な相棒だ。

 

 他の人に声が聞こえないせいで、この端末に二人が入っているって言っても、殆ど信じてくれなかったっけ。

 ……いや、ナラム・シンの玉座で当時プラナは現実世界に出ていたから、一緒にいたシロコは知ってる筈かな? 

 それに、あの時増援に来てくれてた他の生徒達も……って、あー。そっちは流石に状況が切迫中だったから詳細は知らないか……

 おっきいシロコの方が、今でもプラナのことは認識してるんだっけ? 数少ない例外だ。

 

 そんなことをふと考えていると、ガチャリと扉が開く音が聞こえた。

 

「ん。おはよう先生」

「“おはよう、シロコ”」

 

 ライディングウェアを着た、銀髪の狼耳の少女が入って来る。

 私の大切な生徒の一人、シロコだ。

 

「ごめんなさい、ちょっと遅れちゃった」

「“気にしないで。けど、シロコが遅れるなんて珍しいね? 何かあった?”」

「ん、ちょっと寄り道しちゃって。ところで、コレに関して話があるんだけど……」

「“コレ?”」

 

 そう言ってシロコが背負っていた背中から取り出したのは、謎の大きな鍵だった。

 それを目の前で水平の形で持って見せられる。

 

「“わあ、すっごい大きな鍵だね? どうしたのコレ?”」

「ん、砂漠で拾った。………………………………」

「“……シロコ? どうしたの急に黙って”」

「……やっぱり、先生にも何も聞こえない?」

「“聞こえないって、何が?”」

 

 シロコの言葉に私は疑問を覚える。

 聞こえないことを正直にいうと、シロコは心なしかガッカリした表情を見せていた。

 

「……先生、信じられないかもしれないけど」

「“うん、何?”」

「──もし、この鍵に人の精神が入っているって言ったら、信じられる?」

「“……なんだって?”」

 

 そう言ったシロコの表情は、いつも以上に真剣な表情だった。

 

「先生は聞こえていないけど、私には聞こえる声。……それが、今でも私には聞こえている。そうだよね、ココロ? ……うん、やっぱり聞こえる」

「“シロコ……”」

「……先生は、こんな話信じられる?」

 

「“……ああ、信じるよ。シロコが言ってるなら、本当の事なんだよね”」

「……ん。先生ならそう言ってくれると思ってた」

 

 私の言葉に、シロコは嬉しそうに微笑んだ。

 だってその状況、まさに普段の私にも当てはまっている状況だ。

 私は心当たりのある二人に早速声を掛ける。

 

「“アロナ、プラナ”」

『はい! 早速目の前の鍵を調べてみましたが……これはおかしいです!? まず材質が全く分かりません!』

『肯定。アロナ先輩の言うとおり、コレはこれまでキヴォトスで確認出来る素材を一切使われていない特殊な物体です』

「“そうなんだ……【シッテムの箱】みたいに、特殊な端末の可能性は?”」

『それも考えて調べてみましたが、どうにも電子機器端末のような構成には見えません……』

『特殊な素材を使われてはいますが、構造自体はシンプルな鍵、としか言いようがありません。シロコさんの言う“声”も確認してみましたが、周波数、電磁波、と言った特定のリズムのものは出されていません』

「“なるほど……そうなんだね”」

 

 私がアロナ、プラナと話していると、シロコは納得した表情でこっちを見て来ていた。

 

「先生、誰かと話してる? ……そっか、そういえば確か、アロナって人が先生の端末に入っているんだっけ? 私には聞こえないけど……」

「“うん、そうだよ。だからシロコの状況は、わかってるつもり”」

「ん、お揃い……♪ ココロ? そうだよ、先生も同じ、先生しか聞こえない声がある。……うん、ココロにも聞こえていないんだね」

 

 私と同じ状況を味わえたことを嬉しいのか、シロコは楽しそうな声でそう言った。

 そうして、シロコは手に持った鍵そのものと会話しているようだった。

 

 私も、私と同じ状況に生徒が会うとは思わなかった。

 こうしてみると、聞こえない誰かと会話してる人を側から見る気分が味わえる。

 ある意味私はこう見られていたんだなって、客観視出来て新鮮だった。

 

「ココロ? ……うん、うん、わかった。先生、ちょっといい?」

「“何かな?”」

「ココロが、その端末に鍵を近づけて欲しいって言ってるんだけど、いいかな?」

「“【シッテムの箱】に? まあ、いいけど……”」

「うん、それじゃあ……」

 

 そう言って、シロコは手に持った鍵を【シッテムの箱】に近づけた。

 

──直後、シロコの持っている鍵が光り、そこから光の球がシッテムの箱の中に入って行った

 

「“っ!? シロコ……!? 今一体何したの!?”」

「わ、分からない! ココロ……!?」

「“アロナ、プラナ!? 大丈夫!?”」

 

 私は驚いた表情で二人に確認の声を掛ける。

 一体今のは……!? 明らかに【シッテムの箱】に何かされた!? 

 こんな経験、殆ど無い! デカグラマトンか、アトラ・ハシースの箱舟の時くらいしか……!! 

 

『わ、わあ!? 誰ですか!?』

『この場所に、私達と先生以外の人が……!?』

「“アロナ、プラナ!?”」

 

 二人の言葉がおかしい事を言っている!! 

 誰かが、そこにいる……!? 

 私は急いで、自分の意識を【シッテムの箱】の中に移して行った……

 

 

 ☆★☆

 

『……アロナ? その人と先生が会話してるの?』

「ココロ? そうだよ、先生も同じ、先生しか聞こえない声がある」

『マジで? うわ、私にも聞こえないや……!?』

「うん、ココロにも聞こえていないんだね」

 

 シロコの言葉に私は大いに驚く。

 私自身、私の声が聞こえていない事は経験してたけど、逆に私も他人の声が聞こえない状態に陥るなんて思っていなかった……!! 

 ところで、あの端末の中に入ってるって話だったよね? 

 

 ……感じる。うん、言われて見て意識を集中してみたら、確かに感じる。

 あの中に、“心が二つ”ある事を。

 

 電脳空間ってやつ? キングダムハーツで、その世界がある事は知ってる。

 そこに、心が宿る空間があるのなら……

 

 ……試してみたい事がある。

 

『……シロコ、ちょっといい?』

「ココロ?」

『お願い。試したい事があるんだ。あの端末に、私自身を近づけてくれない? お願い』

「……うん、うん、わかった」

 

 私のお願いを聞いてくれたシロコは、先生、ちょっといい? と声を掛けていた。

 そして、端末と私自身の距離をグッと近づけてくれた。

 

 ……ああ、“行ける

 

 感覚的に分かる。“私はこの中に入れる”。

 私は、ゲームでソラが心を取り出した時のようなイメージを行う。

 自身を光の球として、キーブレードから取り出して、端末の中に移して行った──

 

 ☆★☆

 

「──ぶべっ!?」

 

 バシャアっ!! と水塗れの床に倒れ込む。

 水かさはそれほど高くなく2,3cm位だが、それでも倒れ込んだ体をビシャビシャにするには十分だった。

 

「ゲホっ!! ごほっ!! ……ここは?」

 

 息を整えた私は、あたりを見渡す。

 ……そこは、壊れた教室のような場所だった。

 壁と天井が大胆に破壊され、澄み渡るような青空が広がっている世界。

 

「外だ……私のステンドグラスじゃない、別の空間……!!」

 

 私は感動で打ち震えていた。

 厳密には外では無いだろうが、私が閉じ込められていた空間とは全く別の、綺麗な広い世界! 

 こんな世界に、鍵の身体では無い、私自身の生身の精神体で行動出来るなんて、思ってもいなかった! 

 私は茶髪の女の子の体を起こし、水塗れの教室の中でゆっくり立ち上がった。

 

「わ、わあ!? 誰ですか!?」

「ん?」

「この場所に、私達と先生以外の人が……!?」

 

 あたりを再度見渡していると、そんな声が聞こえて来た。

 振り返ると、二人の少女がそこにいた。

 全体的に水色っぽい女の子と、白黒の印象の女の子だ。

 

「人だっ!?」

「はいっ?!」

「人だ、人だ!! 生身の人だ!?」

「えっと、その……」

 

 私はバシャバシャと音を立てながら、二人に近づいた。

 私と同じ、精神体の女の子たち……!! 

 

「えっと、その! こんにちわっ!!」

「こ、こんにちわー……?」

「こんにちわ……?」

「あの、その! あ、握手してもいいですか!?」

「え? あ、えと、その……まあ、はい」

「えっと…………はい」

 

 私の言葉に、警戒をしながら二人の少女はゆっくり手を差し出してくれた。

 その手をそれぞれ私はオズオズと握った。

 

「……柔らかい、暖かい……」

「えっと……」

「なんでしょうか……」

「────っ」

「え、ええ!? どうしたんですかいきなり!?」

「泣き始めました……?」

 

 私は、ポロポロと涙をこぼし、感動のあまり膝をついてしまっていた。

 シロコに鍵として触られるのとは違う、生身の人間としての暖かさな感触。

 精神体とは言っても、その感触は替えの効かない暖かさの交換だった。

 

「うう、ぐす……!」

「えっと、その……」

「……どうしましょう」

 

「“……これは一体、どう言う状況なんだい?”」

 

「ぐす、あえ……?」

「あっ! 先生!!」

 

 私が泣いていると、背後から新しい声が聞こえて来た。

 この声は知ってる、さっきシロコに紹介された……シャーレの先生という人だ。

 

 な、なんで……? ここ、電脳空間ってやつじゃ無いの? どうして外にいたはずの人がここにいるの? 

 そんな疑問がうっすら浮かび上がってくるが、それ以上に新しい同じ人がここにいる、というのが自分にとって重要だった。

 

 私は二人の女の子から手を離して、立ち上がって先生と呼ばれた人に向き合った。

 

「ぐす、あ、あの、その……! こ、こんにちは!!」

「こ、こんにちは……?」

「だ、抱きしめてもいいですか!?」

「“どういう状況!? 藪から棒に!!”」

 

 あ、ついとんでもない事を口走ってしまった。

 けど、偽りない本音でもある。

 

「あの、その。わ、私、ずっと人肌に触れてなくて……ずっと一人で、誰もいない空間にいたから人肌が恋しくてぇ……!!」

「“あー……その……そっかー……、まあ、いいよ。はい”」

「っ!! いいんですか!?」

「“うん。しょうがない、いいよ”」

「は、はい! 失礼します!!」

 

 そうお礼を言って、私は先生と呼ばれた彼に抱きついた。

 人の感触。人の温度。人の暖かさ。

 一人では決して味わえなかったそれを、感じとる。

 

「────っっ!!」

「“ど、どうしたの!?”」

「わ、私……寂しかった……寂しかったんですぅぅぅ────!! ずっと暗くて、ひとりぼっちでぇぇ────っ!!!」

 

 あああぁぁぁぁ────────……っと、人目を憚らずに私は泣き叫んでいた。

 シロコと会った時ですら、さらけ出しきれなかった感情の洪水がどっと溢れ出す。

 そんな私の頭を、困ったような表情の後、しょうがないなあ……といった表情に変わって、先生と呼ばれた男の人は私の頭をポンポンっと撫でてくれた。

 

 その暖かさに、私は再度涙の洪水を溢れ出すのだった……

 


 

 新規AI:K.O.K.O.R.O

 3人目のAI。

 先輩達二人とは違って解析能力は皆無だが、セキュリティの解除、突破という点では二人を凌駕する、特定分野に突出している存在。

 よく食べ物、ゲームなどを取り出して、先輩二人や先生と一緒に遊んでいる。

 

 嘘ですが、大体合ってます。

 

 

 

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