ブルアカ世界に、キーブレードそのものとして転生した件について 作:ニュームーン
「オラオラオラ!! 私たちを誰だと思ってやがる! 泣く子も黙る【ボコボコヘルメット団】じゃーい!!」
「我ら真のヘルメット団!! その強さを思い知るがいい!!」
D.U.地区の中心に近い区画。
そこで先生の言うとおり、ヘルメット団が暴れていた。
「“あれだね”」
「ん。こんな街中のど真ん中で暴れているなんて、逆に珍しい」
「そうね。こんなシャーレの近くだもの。普通の不良達なら、もう少し頭で考えて離れたところで暴れるものだけど……」
「なんか真のヘルメット団とか言ってますね……? 最近作られたグループなんでしょうか?」
「“うーん。どうやら、今までのヘルメット団とは違うグループみたいだね。ひとまず大人しくさせよう。みんな、制圧頼める?”」
「「「了解」」」
『うわー、本当に銃撃戦やってるんだ……』
「ん、そう。よく見ててね、私たちの戦いを」
背中に背負っているココロが見ている中、私たちは先生の指示通りに動き出す。
まずは先手として、風紀委員長からだ。
普通の不良達なら、風紀委員長の強さを分かっているから、彼女が出るだけで大半は怖気つくものなんだけど……
「なんだ!? あの白いチビ!?」
「邪魔すんなら容赦しねえぞ!!」
「関係ねえ! あんな弱そうな白モップ、ボッコボコにしてやるー!」
「“ヒナの事を知らない? 一応他地区とは言え、凄く有名なのに……”」
「どうやら、よっぽどオツムが足りないようね。ある意味勇気があると言うのか、蛮勇と言えばいいのか……」
風紀委員長が呆れながら、その手に持ってるマシンガンを構える。
そして、先生の指示により一番敵が密集してる地帯へ照準を定めていた。
そして……
「終幕:イシュ・ボシェテ」
その言葉とともに、風紀委員長のマシンガンが火を吹き始める。
拡散する弾を放出し、数だけはいる敵のヘルメット団達を大量に気絶させていく。
「な、なんだあ?!」
「おい!? 一気に削られたぞ、あのチビの攻撃で!?」
『すっごーい!? 何あれ!? 普通のマシンガンでも、あんなに大きい弾が広範囲に広がるっけ!?』
「ん。風紀委員長の攻撃は本当に凄い」
『……って、そうじゃ無いや!? 撃たれた敵さん大丈夫!? ……うわ、本当に死んでない!? 気絶してるだけ!?』
「これがキヴォトス人。頑丈でしょ」
ゲヘナの風紀委員長の攻撃を見て、背中でココロが盛り上がる。
風紀委員長の凄さやら、キヴォトス人の頑丈さやら、いろいろな事にはえ~……と声を漏らしていた。
「“よし! シロコ、ヒフミ! 残りの敵を倒してきて!”」
「ん!」
「は、はい!」
そうしていると、私たちにも指示が飛んでくる。
それに従って、私とヒフミはアサルトライフルを持って、前に向かって走っていく。
風紀委員長の攻撃から逃れた少数の敵達を、片っ端からどんどん片付けていく。
タタタン! タタタン!
「ぐあっ!? なんだコイツ!?」
「くそ! コイツもつええ!!」
『すっごーいシロコ! どんどん倒していっちゃってる! 無双だー!』
「ん、これくらい余裕」
「お、落ち着け! じゃあまだ残ってる弱そうな方からだ!」
「ひいんっ、こっちに来ましたー!? って、あ!?」
私ではなくヒフミの方に攻撃が集中し、それを避けようとして彼女が倒れてしまう。
すると、彼女のリュックの中から何かが飛び出てきた。
それは、白いペンギンのような生き物を出すAR装置。ヒフミのお気に入りのキャラクター。
彼女曰く、【ペロロ】と呼ばれるものだった。
「うおおおっ?!! なんだコイツ!? キモイ生き物!?」
「うっそだろ!? なんだこのキモい鳥!? 気持ち悪い、邪魔だ!?」
そうして、出てきたペロロに対して狙撃しまくる敵のヘルメット団。
しかし所詮は立体映像、いくら打ったところで全く意味が無い。
「ぺ、ペロロ様はキモくありませーん!!」
「ぐぎゃあ!?」
「ぐえっ!?」
その間に、怒ったヒフミは体勢を立て直して、ペロロに集中していた敵ヘルメット団達を一人一人片付けていく。
うん、ヒフミも結構やる。
『ね、ねえ? 何あの生き物?』
「ペロロって言うらしい。ヒフミが好きなキャラクター」
『へ、へえ……この世界だと、あんなのが流行ってるんだねえ。キモカワってやつ? 確かに私の世界でも似たようなのが時折流行っていたような……』
「そうなの? 異世界って広い……」
『……っ!? シロコ、後ろ!?』
「油断したなあっ! くら……」
「んっ!!」
「ぐげぱあっ!?」
ココロとヒフミについて会話していると、急にココロが声をあげた。
それに合わせて、一瞬で振り返り私はトリガーを引く。
いつの間にか迫っていた敵ヘルメット団に対して、複数の弾を当てて気絶させた。
「ん、ココロ。ありがとう」
『へへー、どういたしまして』
「こうしてみると、後ろを常時見てくれるのって凄い便利」
『でしょー? 戦闘には使えないって言っても、これくらいの手助けなら出来るんだよー』
「く、くそ! 増援だ、増援を呼べ!!」
ココロと話しているうちに、リーダー格の少女がそう叫ぶと、横にいた他の部下が携帯を取り出してどこかに連絡をしていた。
すると、ほとんど時間が経たないうちに、あっという間に他のヘルメット団員がやってきていた。
「“むう。思ったより数がいるね”」
「面倒くさい……数だけは一級品ね」
「けど、この程度の強さならまだまだ大丈夫です! どんどん片付けて行きましょう」
そのヒフミの言葉にうなづいて、私たちは続けて先生の指示に従ってどんどん敵を倒していく。
……けれど、途中で私の銃がトリガーを引いてもカチカチッと鳴るだけになった。
「むう、弾切れ。補充を……」
「──油断したなあ!! くらえええ!!」
「──っ?!」
……弾薬をリロードしようとした隙を突かれ、背後で気絶してた筈のヘルメット団に襲われる。
超至近距離で、今にも弾丸が放たれそうになっている。リロードなんて、間に合わない……!!
やられる……!?
そう思った、次の瞬間。
私の背中で、拳銃が弾かれる様な音がした
「っ?!」
「は、はあ?!」
私の背後で、ヘルメット団が驚愕の声を上げていた。
背中越しだったからよく分からないけど、今、バリアみたいなものに防がれたような……?
『シロコ!! “私を振って”!!』
「っ!!」
その言葉に従い、背負っていたキーブレードを一瞬で掴み、振り向きざま一閃。
とっさに動いたそれは、ただ背後の敵を怯ませようと振っただけに過ぎず、ヘルメット団にキーブレードがぶつかり……
「ぐべらああぁッ?!!」
予想以上の勢いで、ヘルメット団がぶん殴られてふっとばされていった。
……あれ?
『シロコ、大丈夫!?』
「だ、大丈夫。さっきのは……?」
『へへーん、ただの【防御】だよ! 背中に背負っててよかったねー、たまたまだけど発動出来たよ!』
「そうなの……? よく分からないけど、ありがとう」
私はココロが守ってくれた事に気付き、素直にお礼を言う。
ところで……
「……なんか、思ったより吹っ飛んだ」
『ね? 敵結構吹っ飛んだね?』
私は、私がキーブレードで殴り飛ばしたヘルメット団を見てそう呟いた。
うん、私そんなに力入れてない。せいぜい一瞬隙を作れればいいくらいに思っていたのに……何故か4,5m程吹っ飛んでいた。
……ちょっと、試したい。
「……ココロ?」
『何?』
「……あなたを振り回すけど、いい?」
『……!! 良いよ! ガンガンぶつけちゃって!! 大丈夫、そんなヤワじゃないから!』
「そっか。……うん、行くよ!」
ココロに許可を得た。
私は愛銃を一度背負い、逆にキーブレードを構える。
そして、息を整えて……敵陣の中に突っ込んでいった。
「どわあっ?! 突っ込んできた!?」
「なんだあれ!? 鍵!? でっかい鍵だ!?」
「馬鹿かあいつ!? 銃を構えてないのに、何考えてんだ!?」
私の意味の分からない行動に対し、ヘルメット団は混乱していた。好都合。
私はキーブレードを構え、軽く横になぎ払った。
「「「グぎゃああああッ?!!」」」
「ん……っ!? やっぱり、明らかに打撃力が大きい……!!」
私は自分のキーブレードに込めた力に反して、得られた結果の大きさに驚いた。
軽く振っただけの手応えなのに、面白いくらい敵が吹っ飛ぶ。
しかも攻撃を喰らった敵はすでに気絶していた。
大体アサルトライフルで3,4発当てて敵一人気絶させると考えると、キーブレードで一振りするだけで同等の結果を得られている。
もちろんリーチという意味でははるかにアサルトライフルの方が長いが……ここまで距離の近い接近戦だと、キーブレードだけでも十分戦える。
……うず。
「お、おい!? なんだあれ!?」
「ねえ、嘘だよね? 今、仲間達簡単に吹っ飛ばされてなかった?」
「は、な、なんで? あいつ、そんな凄い怪力なの?」
私のさっきやった事を見て、ヘルメット団達が一瞬足を止めた。
信じられないものを見たように、驚きで私に襲いかかってこなかった。
……もっと、試したい。
対して、私は少しづつ興奮しだしていた。
思った以上の打撃力。そして、さっき守ってくれた防御力。……それに加えて、学校で試した魔法。
もしかしたら。もしかしたら……
この力は、思った以上に使えるかもしれない
「──んっ!!!」
「うわあっ?! こっち来たあ!?」
「げ、迎撃だ!! 迎撃だあああ!!」
私は心の湧き出る好奇心のまま、敵に向かって突っ込んでいった……
☆★☆
──私は、信じられないものを見た。
「“シロコ!?”」
「ん、大丈夫!! 先生、このまま行かせて!!」
先生の驚きの声を無視して、砂狼シロコは敵の増援に対して、単身突っ込んでいった。
無謀すぎる。
いくら敵は全体的に弱いと言っても、彼女の耐久力で囲まれたらひとたまりも無いはず。
何より、彼女は銃を手に持っていない。例の鍵だけ持っているのだ
そんな大きい鍵一本だけで、戦えるとは思えない。彼女は何を考えているの!?
そう思い、私はいつでも彼女を救出出来るようマシンガンの照準を合わしていたが……
「んっ!! たあっ! えいっ!」
「ぐぎゃあ!?」「あぎゃあっ!?」「ぎゃぱあっ?!」
私の予想に反して、砂狼シロコは敵に囲まれず、逆にどんどん蹴散らしていった。
銃を使わず、ただの鍵による打撲攻撃。
振り方を見ても、そんなに思いっきり力を入れてるとは思えない。……けれど、それに当たった敵は面白いように吹っ飛んで気絶していく。
ポンポン、ポンポン、まるで私の広範囲の殲滅攻撃が当たっていくように。
……嘘でしょ?
私はつい、目の前の攻撃が信じられなくて攻撃の手を止めてしまっていた。
そんな私に関係なく、砂狼シロコはどんどん敵を倒し続けている。
「このおっ!? 調子に乗るな!!」
敵のヘルメット団の一人が、砂狼シロコに向かってマシンガンを構えていた。
危ないっ!!
──そう思った直後、さらに信じられないものを見た。
「ん! 【ファイア】!!」
「っは?! ウギャアっ?!」
「──は?」
砂狼シロコの鍵から、炎の玉が出たのだ
一瞬でよく分からなかったが、火球が一つ飛び出て、マシンガンを構えた敵に対してヒットしていたように見えた。
それに怯んだ相手は、マシンガンを取り落としてしまう。
その隙を見逃さず、砂狼シロコは彼女も鍵で殴って気絶させていた。
「えいっ!」
「グギュルっ?!」
「副隊長!? 貴様ぁー!!」
砂狼シロコを囲うように、ヘルメット団達が彼女の周りを陣取った。
彼女は敵陣の中で孤立無援の状態だ。絶望的なその状況で……
「ん! 【サンダー】!!」
「ぐぎゃああっ?!」「し、痺れる!!」「ビリビリビリッ?!」
「で、電気?」
取り囲んだ彼女達の頭上に、一瞬電気のようなものが見えた。
それに当たって、周囲の彼女達は痺れたように一瞬マヒする。
そんな彼女達に対し、砂狼シロコは無情にも鍵を振るって吹っ飛ばしまくっていく。
「こ、このお!! これなら、どうだああっ!」
今度は、ミサイルランチャーを構えている敵まで!!
砂狼シロコに向かって照準を合わせられたそれは、彼女に向かって放たれようと……
「ん! 【ブリザド】!!」
「食らえ……ん、あれ!?」
「──凍ってる?」
ミサイルランチャーに自分から近づいたと思ったら、それに対して鍵を向けていた。
直後、ミサイルランチャーの射出口を中心として凍っていた。
いつの間にか氷漬けになったそれは、射出としての機能を果たす事は出来ない。
「テメエっ!! 良い加減にしろ!!」
そんな声と共に放り投げられたのは、手榴弾。
それが砂狼シロコに向かって飛んでいき……
「ん! 【ウォータ】!!」
「……は? あれ?」
「水……!?」
その飛んできた手榴弾に向かって鍵先を向け、水の塊を射出していた。
水に包まれた手榴弾はそのまま押し返され、投げた本人の付近に落ち──爆発した。
「ぎゃあああああっ?!」
「な、なんだよこれ……なんだよそれはあッ!?」
「ん。【キーブレード】」
その言葉と共に、砂狼シロコは彼女達に対して、鍵先を向け──
「【エアロラ】!!」
その言葉と共に、大きな風の竜巻が発生したのだった。
「なあああっ?!」「わあああっ?!」「きゃああっ?!」
風に巻き込まれたヘルメット団は、銃を落とし、ヘルメットが脱げ、強風に体を持ち上げられる。
近くの団員達は全員巻き込まれ、一箇所に固まって行き……
「──ん! はあああぁッ!!」
砂狼シロコの、全力のなぎ払いに吹っ飛ばされていったのだった。
──────。
「……あ、あはは。な、なんですかこれ? し、シロコさん? 一体何をやったんですか……?」
横にいる阿慈谷ヒフミも、渇いた笑いを隠せないでいた。
私自身、彼女の心はよく分かる。私も同様に、何が起こったのか理解出来ないでいた。
「“し、シロコ……?”」
動揺を隠せない声で、先生が砂狼シロコに声を掛けていた。
先生も、何が起こったのかよく理解出来ていないようで……
「“え、こ、ココロ? ココロかい? ……なるほど、それが君の力なんだね”」
……と思っていたら、誰かと会話するような声を先生が出していた。
その後、だんだんと表情の動揺が収まっていき、納得と言った表情に変わっていった。
……これが、先生の言っていた鍵との会話?
……やっぱり、私には全然分からない……
「“──! みんな! まだ敵が来るよ!!”」
「っ!!」
私が少し落ち込んでいると、先生のそんな呼び声が聞こえてきて意識を切り替える。
さらにヘルメット団の増援のようだ。
それを見て、砂狼シロコは鍵先を彼女達に向けて──
「【エアロラ】!! ……!! MP切れ……!」
しかし、今度は何も起こらなかった。
MP切れ、と聞こえて来たけど、あの鍵にも弾数制限みたいなものがあったのだろうか?
「だったら……こう!!」
その後砂狼シロコは切り替えるように動き出し、背中に背負っていたアサルトライフルをまた手に持ち始めた。
ただし、片手で右手持ちで。もう片方の左手は、鍵を構えたままで
右手のアサルトライフルで、私の知ってる通りの戦い方で銃弾を撃ち始めていた。
片手では、今までの両手持ちと違って照準が多少ブレている。
しかし、今の砂狼シロコにはそれで十分だったらしい。
「いだ! いだだ! くそっ!!」
「いまっ!!」
「ぐああああッ?!!」
右手の銃で牽制し、近づいて左手の鍵でなぎ払う。
それが今砂狼シロコがやってる戦い方だった。
「くそっ! みんな近づくな!! 近づかなかったらあの怪力は怖くねえ!」
「そ、そうか!! 流石はリーダー!!」
「よーし、だったら距離を保って……」
「ん。だったら普通に撃つ」
「いだっ! ぐあっ!!?」
敵との距離が近いなら、左手の鍵であっという間に敵をなぎ払い。
それを警戒して距離を取り続けたのなら、右手の銃で今まで通りの砂狼シロコの攻撃が火を吹く。
私の知らない、砂狼シロコの新たな戦闘スタイルがそこにあった
けれど、距離を保ち続けているなら、私たちの知ってるキヴォトスの戦いに戻っただけ。
あのままだと、砂狼シロコは敵の数に押し込まれ──
「──ん、回復した!! 【エアロラ】!!」
「ぐわあああっ?!」「きゃああああっ?!」「またああああっ?!」
と思ったら、再度例の竜巻が発生していた。
……あれ、弾切れしたんじゃなかったの!?
回復したって……ちょっと休んだら、また使えるようになるの!?
──そこからは、砂狼シロコの独壇場だった。
近接は左の鍵で。遠距離は右の銃で。状況が固まったら不思議な力で。
この3種の武器で、残るヘルメット団達を一人でほとんど倒していき……
「──ん! 満足!」
……残った敵は、誰一人いなくなった。
全て、砂狼シロコの周りで気絶して転がっていた。
「……す、すごいです。シロコさん……!!」
途中からただ見ていた阿慈谷ヒフミが、彼女に向かってそう感嘆の声を上げていた。
……私も同意見だ。あの戦い方は何? 一体あの鍵は? 彼女に何があったの?
「“シロコ!!”」
「……先生! 先生!」
すると、砂狼シロコが大変興奮した様子で先生に近づいていった。
それはまるで、すごく楽しいものを見つけた小さい子のようで……
「これがキーブレード!! 私とココロの力!! 凄い、凄い!! ここまで出来るなんて思わなかった!! 見ててくれた!?」
「“……ああ、見ていたよ。凄い力だね、シロコ、ココロ”」
「うんっ!!」
あまり見た事ない、彼女の心の奥底からの笑顔で、そう返事していた。
「し、シロコさんシロコさん! す、すごいです! さっきの、一体どうやったんですか!? その鍵の力なんですか!?」
「そう、キーブレード!! 私の新しい友達の力!」
フンス、と鼻息を荒くして砂狼シロコが鍵を見せながら自慢する。
わー、と騒ぎながら、阿慈谷ヒフミが彼女の鍵を眺めていた。
「……キーブレード」
私は、彼女の言った言葉をそっと繰り返していた。
あれが、あの鍵の名前……あれが、あの子の新しい武器。
ミレニアムの最新兵器? それとも、根本的にもっと別な……?
そんな疑問がいくつか浮かび上がってくる。
けれど、一番思ったのは……
「……すごかった。……面白かった……!」
私は、砂狼シロコの戦いを見て、そんな感想を抱いていた。
あんな……あんな、魔法のようなことが出来る武器があるなんて。
鍵で殴るだけで、あんなに簡単にダメージを与えられるなんて。
何より、あんな不思議な戦い方が出来るなんて!
私は別に戦いが好き、というわけじゃない。どちらかというと、めんどうくさがりの方だ。
けれど、けれど。
先ほどの彼女の動きと戦い方は、私の知らない全く新しいスタイルで、とても、とても新鮮な気分で見られた。
つい、私自身の戦いを忘れてしまうほどの。
各学校のトップのような、嵐を感じさせるような戦い方ではない。
総合力で言ったら、まだまだ私個人の本気の方が強いだろう。
けれど、そんなことはどうでも良くて。
杖を振るうかのように鍵を振り回し、それに合わせて不思議な現象が起こる様は。
まるで魔法使いが戦ってるショーを見せられているようで、とてもワクワクした。
きっと阿慈谷ヒフミも、同じ感想を描いただろう。
「……先生」
「“なんだい、ヒナ?”」
「──教えて。彼女の持ってる【キーブレード】の事。さっき何が起こったのか。……何処であれを手に入れたのか。知ってる事、全て」
私はそうお願いする。
不思議な現象を起こせる、キーブレード。
その正体は分からないけど、知らないと放っておくにはもう出来ない存在。
さっきの話だと、私たちには聞こえない声が宿っているという、簡単には信じられない話。
きっともっと、信じられないような話が出てくるのだろう。
けれど、それでも聞きたい。聞くべきだ。
砂狼シロコが、あの鍵だけで明らかに強くなった事を知るために。
危険物の確認のために、ゲヘナの風紀委員長として。
何より、先ほど楽しませてもらったものの正体を知りたいために。
「“……私も、さっき知ったばかりだから全部分かってるわけじゃないんだ。彼女達に聞きながらでいいかい?”」
「ええ、それで構わないわ」
「“そっか。じゃあ一度、シャーレに戻ってからね”」
私はそう返事をして、砂狼シロコ達の方に歩き出す。
先ほどの戦いで、興奮している二人を落ち着かせて、シャーレに戻って改めて話を聞くために──