ブルアカ世界に、キーブレードそのものとして転生した件について 作:ニュームーン
「“──と、言うわけなんだ”」
「「「────」」」
「そうだったんですね! ココロは、鍵として生まれ変わったんですね! アリス、了解です!」
『そうなんだよー! 良かった、他にも私の声聞こえてくれる人が増えて! とても嬉しい〜!』
「はい! アリスもココロに会えて嬉しいです!」
エンジニア部と、アリスと名乗った少女に、先生からヒフミ達の時のように同様に説明がされた。
エンジニア部3人はやっぱり固まっていたけど、唯一声の聞こえたアリスは素直に理解してくれたようだった。
「……先生、それは」
「“うん”」
「──それはとても夢のある話じゃ無いか!!」
「うん、うん!」
「それは大変興味深いですね!! 是非色々と調べてみたいです!」
「“っ!! 信じてくれるのかい?”」
エンジニア部3人は、固まっていた割には予想に反して、ココロの存在を積極的に信じてくれているようだった。ビックリ。
「確かに、信じきれないような出来事だ。現に、私たちには声が聞こえていないからね。けれど、先生とシロコ君、それにアリスには聞こえているのだろう? なら十分、信じる根拠にはなるさ」
「なんらかの条件があるかもしれないしね。聞こえるために」
「その差を調べるのが、技術者の役割というものでは無いでしょうか!」
「“そっか。そこまで考えてくれてるようで嬉しいよ”」
エンジニア部と先生の話はすごく盛り上がっていた。
対してこっちも、私はココロを両手で差し出して、それとアリスは会話し続けている。
「ココロは、一回死んでこの世界に鍵の姿でやってきてしまったんですよね? 蘇生に失敗してしまったのでしょうか? 教会でちゃんとお祈りしてきましたか? 今からでもやってきますか?」
『うーん、私教会自体行った事ないんだよねえ。そもそも外出自体あんまりしなかったというか、病院で点滴に繋がれていたばっかだったっていうか』
「なら、今度一緒にお祈りに行きましょう!! 大丈夫です、蘇生の代金はアリスが払って上げます!」
『本当に〜!? 蘇生はともかく、一緒にお出かけは楽しみ〜!! まだまだ見たいところあったんだー!』
「ん、すごく盛り上がってる」
私と先生以外に現実世界で話せるのがとても嬉しいのか、ココロとアリスはすっごくよく会話している。
側から聞いてるだけでも、二人ともとても楽しそうだった。
ふと、ココロが何かに気づいてアリスに質問する。
『あれ? そういえばアリス、何か大きな物背負ってるね? それ何?』
「これですか? ──これは【光の剣】です! 勇者の剣です!!」
『勇者の剣!? 凄ーい!! え、この世界勇者とかいる世界なんだ!? ビックリ!』
「ん、違うと思う」
アリスの言葉をそのまま信じかけたココロを、私はそれとなく修正した。
それはそれとして、アリスの言葉は止まらない。
「はい! 私は勇者なのです! 仲間達も一緒にいます、ゲーム開発部のみんなです! そしてこの【光の剣】は、そこにいるエンジニア部の皆さんから頂きました!」
「どうやら、【光の剣】について紹介してくれているようだね。【光の剣:スーパーノヴァ】。元々宇宙戦艦に搭載しようと、下半期の予算の約70%とロマンを詰め込んだレールガンさ!」
他にも、基本重量140kg以上、砲撃時の反動は200kgを超えるという代物で、アリス以外使えない代物という説明がされた。
その説明に私とココロは凄く驚いていた。
『おおーッ!??』
「ん、すごい……!」
「はい! なので私は、選ばれし勇者なのです!」
『へー! アリス凄いんだねー!』
「えっへん!」
『……あ、でも』
「え?」
『──そう言えば私、というかキーブレードって、勇者の武器って呼ばれた事あるよ。キーブレードの持ち主が、【キーブレードの勇者】だって』
「そうなのですかっ!?」
「ん……!?」
『まあ、あくまでゲームの話なんだけどね……』
そう言ってココロは、以前教えてくれたキングダムハーツって初代ゲームでは、主人公は【キーブレードの勇者】と呼ばれていたらしい。
だからアリスが勇者を名乗った事に、親近感が沸いたらしい。
ん……!
「そうなんですか……! アリス、感激です! こんなところで新たな勇者の武器に出会えるなんて! 私の光の剣とお揃いです! 勇者仲間です!」
『ねー! すっごい親近感!』
「“アリス、良かったね”」
「はい!」
「……ん、聞き捨てならない」
「“ん?”」
「はい?」
『え?』
「ん。真の勇者は私。私の方が本物」
『何言ってるのシロコ!?』
「“急にどうしたのシロコ!?”」
私の言葉に先生達は慌てだし、アリスはポカーンとしている。
だってそうでしょ?
「さっきの話が本当なら。今のココロの……キーブレードの使い手は私。という事は、自動的に私がキーブレードの勇者。ん、つまりは私が最強」
「“なんか話ややこしくなってる!?”」
私はグッと親指を自分の方に向けながら、そう自信満々に宣言する。
ん、私が選ばれし者。つまり、私が本物。完璧な理論。
別に今の話を聞いて、強そうだったから私も名乗り始めたとかそんな理由なんかじゃない。決して。
「っ!! それは聞き捨てなりません!!」
そう言うと、アリスがそう反論し始めてきた。
「アリスだって、アリスだって選ばれし勇者なのです! そんな事を言われて、アリスだって黙ってはいられません! アリスを勇者と認めてくれた、みんなの為にも!!」
「ん、ならどうする?」
「むむむ! ──それなら、決闘です!!」
『「“決闘!?”」』
「真の勇者を決める、決闘イベントです!! 偽物の勇者が現れて、どっちが真の勇者か証明するイベントは経験した事あります! これもそれと似たようなイベントです! アリス分かりました!」
「ん、受けて立つ」
『あちゃー、二人とも熱くなっちゃってる……』
「“ちょっと二人とも、落ち着いて……”」
「いいじゃないか、決闘」
「“ウタハ?”」
私とアリスがバチバチしていると、それを良しとしたのは、意外な事にエンジニア部の部長だった。
エンジニア部の部長は、部屋のとあるスペースを指さした。
おそらく開発した発明品の試運転するスペースらしい。
「戦うなら、あそこでやるといい。あそこなら決闘に十分なスペースが取れるだろう」
「了解です、ウタハ先輩! ありがとうございます!」
「ん、分かった」
「“いいのかい? こんな場所でそんな事して”」
「大丈夫、あそこのスペースなら実験のテストデータ取り用に頑丈だから」
「それに、戦闘データもあそこなら取りやすいですしね!!」
「“戦闘データ?”」
「そう。私達が許可を出した主な理由はそれだ。シロコ君の戦闘データが取りたい……より正確には、キーブレードの戦闘データを、ね」
エンジニア部の部長はウインクしながら、そう先生に言っていた。
その視線の先は、私の持ってるココロ……キーブレードに向けられて。
「ああ。それに、魔法、だったかい? 先生達が今日の不良達との騒動で使ったと言うそれ。──大変興味深い!!」
「魔法っ! 魔法っ!」
「超常的な力や行為、特に西洋的なそれの総称!! それが魔法です!」
「ああ! 科学では全く説明出来ないソレ……ある意味、生粋の科学者に取っては理解不能で、拒絶するような存在だが……だからこそ、科学的に証明し、解析し、再現しがいがある存在!! それが我々にとっての魔法さ!! そんなものを見る機会があるのならば、是非観てみたいだろう?」
ワクワクを一切隠さず、エンジニア部の部長はそう興奮した声で説明していた。
よく分からないけど、とっても見たいと言う気持ちだけは伝わってきた。
「“なるほど……とりあえず、とっても興奮している事だけは分かった”」
「ああ。だから是非、そのキーブレードで戦ってくれたまえ。データを取りたいからね」
「あ! アリスも是非観てみたいです、魔法!」
「ん……? じゃあ、今回は私の銃は使わない方がいいかな?」
「ああ、それ単体で戦えるのなら、是非そうして貰いたい」
「ん、分かった。じゃあ、先生ハイ。私の銃、預かっていて欲しい」
「“おっとと……分かったよ、了解”」
そう言って、先生は私の愛銃、【WHITE FANG 465】を預かってくれた。
ん、今回はお留守番。ごめんね。
「よし、ココロ。良い?」
『しょうがない、こうなったら私もやる気だよ! いつでもいいよ!』
「アリスも、準備は出来ています!」
「ん、了解。じゃあ、行こうか」
そう言って、私たちは決闘場所へと進んで行った──
☆★☆
──決闘場。正確には、実験場。
そこで私達は、アリスと一対一(片方ココロ付き)で相対する。
『シロコ、ちょっといい?』
「ん、何?」
軽く準備運動をして足を伸ばしていると、右手に持ったココロがそう声を掛けてきた。
今回はココロ一本だけで戦うから、しっかり右手に持っている。
『決闘開始する前に、シロコに改めて教えておこうと思ってね。【防御】の方法を』
「防御……! 不良達との戦いで、私を守ってくれたアレ?」
『そう。正式名称は、【リフレクトガード】。発動条件は、両足で立ち止まって、正面でキーブレードを構える事。両手で持って前に出すといいかも』
「ん……こう?」
私は言われた通りの構えを試してみて、ココロに確認を取ってもらった。
そうそう、とココロはうなづいていた。と言っても、顔は見えないから想像上だけど。
『この間の不良戦の時は、背中に背負ってたからたまたまだったからね。本来は、正面からの攻撃を防ぐ技だよ。大抵どんな攻撃も、防げると思う』
「キーブレードの本体で、弾く感じ?」
『うーん、いや。どっちかって言うとバリアが前方に貼られる感じかな? 今は攻撃が来てないから見えないけど、イメージとしてはそんな感じ』
あっと、そうだ。と、ココロが何かに気づいたように付け足す。
『あと、【リフレクトガード】は一瞬しか展開出来ないから気をつけて! 連続攻撃なら自動反応してくれるんだけど、もし単発ごとだと……基本的に、タイミング良くガードする! これを覚えておいて!!』
「ん、分かった」
『この場所は遮蔽物が無いからね。この方法を覚えておくだけでも、戦闘は大分楽になると思う。【ドッジロール】は……多分再現し切れないから、試さないほうがいいな』
ボソッと最後に何か呟いていたけど、そっちは聞こえなかった。
けれど、ここまで来てココロの事は大分分かってきていたから、私がまだ知らなくてもいい事なんだろう。そう信じて、聞き返す事はしなかった。
「《──準備は出来たかい?》」
マイク越しに、離れた位置から見ているエンジニア部の部長の声が聞こえてきた。
その傍らには、他のエンジニア部の部員達がなんらかの機材を使って今まさにデータ取りをしているようだった。
その横には、先生も立っている。ん、見られているなら、負けられない。
「アリスは、準備OKです!!」
「ん、私も大丈夫」
『私も良いよ!』
「《それじゃあ、バトルスタートだ!!》」
ブザー音が鳴り響き、決闘が開始する──
☆★☆
「まずは小手調べです!! えい!!」
その掛け声とともに、アリスの持ってるレールガンから、小さな光の球が放たれた。
なかなかの弾速、ギリギリ避けられない事もないけど……
『シロコ、ここだ!』
「ん、了解!」
ここは、さっき言われたことを試してみようと思う。
両手でキーブレードを前に構える。一瞬だけ、タイミング良く。
──すると、光の弾が目の前で見えない壁に当たったかのように掻き消えた!!
「んっ!?」
『よっし! 成功!』
これが防御……【リフレクトガード】!!
私は攻撃を防いだ実感を、その身で凄く感じていた。
「躱しもされず、受け止められました!?」
「《これは……!? 謎のバリアが発生して、攻撃を防いだようだね!》」
「《ミレニアム製のバリアとは、なんか違う感じだね》」
「《初手からとても興味がありますね!! ワクワクしてきました!》」
「“あれがココロが言っていた防御か……アロナバリアとは、ちょっと違うかな? こっちのバリアは自動だけど、あっちは手動かな?”」
私の防御方法を見て、エンジニア部と先生が離れたところで考察をしているようだった。
ん、私もビックリ。
「なら、沢山です! えい、えい、えいっ!!」
『シロコ! 1、2、3!!』
「ん、1、2、……あう!?」
私は再度目の前でキーブレードを構えて、攻撃を防いでいた。
けど、一発目と二発目はタイミングよくガード出来たけど……3発目は構えを解かずにながらで受けてしまったら、攻撃が素通りしてダメージを受けてしまう。
『シロコ!? 大丈夫!?』
「大丈夫……ちょっと痛かったけど」
けど、今のでココロの言っていたことがよく分かった。
防御、【リフレクトガード】は凄いけど、展開されるのは本当に一瞬。
めんどくさくてそのままの構えでいただけじゃ、攻撃を防げないと言う意味が実感出来た。
ん、今度はミスらない。
「ちょっと当たりました!! このまま行きます!! えい、えい、えーい!!」
「ん! もう効かない!!」
私はリズム良く、タイミングを合わせてアリスの攻撃を防ぎ続けていた。
ん、もう大分慣れた。この攻撃なら、もう私には当たらない。ふふん。
『シロコ、良いよ!! タイミングどんどん上手くなってる!!』
「ん♪ このままエネルギー切れまで耐え切れそう」
私はそんなことを思っていた。
あのレールガンがどれくらいのエネルギー残量があるかどうかは分からないけど、極論こうしているだけでも私にダメージは入らない。
塩試合にはなるけれど、このままエネルギー切れまで耐えればそれだけで私の勝利は確定だ。
ふふん、どうだ。
けれど、そんな決着は流石につまらないから、流石に何か行動しようか。
うーん、どうしよう。どの魔法を使おうかな、悩む……
贅沢な悩みだ、我ながらそんな事を考えていると……
「光よ──!!」
『また攻撃が来るよ!!』
「ふふん、今度も防ぐだけ」
『……あれ、ちょっと待ってなんかデカく──』
そして、ズゴオオオウッ!! っと。
調子に乗った私ごと、巨大な光が呑み込んでいくのであった──
まだまだアリス戦は続きます。