救いのために   作:ヒナまつり

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またまた遅くなりました。ほんまにごめんなさい!

あと、数日に分けながら書いたせいでミスがあるかもしれません。もし、気づいたら報告してくださると助かります。


4話 後編

 

 決めた。最大限抗ってそれでも勝てそうにないならこの術を使おう。

 

 一応俺の意識を一部犠牲にすれば何処かしら植物状態になるかもだけど生きては帰れるだろうし。

 

 今からするのは無謀な挑戦に近いだろう。でも、それをすることで得られるものは確かにあるのだから。

 

 考えが纏まり、武器を直ぐ取り出せる様にする。

 

 もう、決戦の時は近い。少し遠いが見覚えのある広場と轟々となる空が広がっていて、少し体が震える。

 

 ははっ、流石に恐いなぁ。こちとら本来戦いなんてしたことないんだ。

 

 命を懸けて誰かを守るとかそんな誠実な人じゃなかったし前を張るような人間でもなかったからさぁ…。だから、こんな時はscoutに教わったことをしよう。

 

 深く息を吸い込む、そしてこの先の未来を思い浮かべる。その後、ゆっくりと息を吐き…仲間を見る。

 

 そうすると自然と落ち着く。

 

 その行為が仲間や未来を思ったことなら余計に、だっけな?

 

 確かに落ち着いた気がするね。よし、いっちょ命を張りますか!イシンのために、ロドスの皆のために!

 

 恐怖が無くなり、息を正し前を向くと此方を心配そうに見ているアーミヤと目があった。

 

 多分、今さっきの恐怖を感じ取られたんだろう。

 

 大丈夫と伝えるように彼女の手を強く握り、皆に着いていく。

 

 直ぐにその時は来た。ドクターの警告を受け、皆で回避行動を取った。

 

 来た道にあったビルを貫通して現れた全てを飲み込む様な火炎が通りすぎた。後に残ったのは燃えかすと絶望だけだった。

 

 あぁ…実際に彼女のアーツを見てみると消し去った筈の恐怖が滲み出してくる。

 

 あれ相手に勝てるのか、皆を守れるのか。だがそんな思考は許されない。

 

 次々と飛んでくる火が周りの建物を壊し、その破片が脅威となっているのだ。その上、躱しているのに炎の熱気が身体中を襲う。

 

 破片を避け、周囲の味方へ建物の近くに行かないよう叫ぶ。

 

 そして、いくつもの炎によって建物が壊され、焼き爛れた広場に悠々と彼女は現れた。

 

 揺らめく炎に照らされた白い彼女は酷く美しく、冷酷な瞳は此方を全て見破るように感じる。

 

 天災が来ていない今しか、彼女を倒せる可能性はないだろう。

 

 一歩、また一歩走り出す。此方を視認した彼女は手を向け炎を飛ばす。

 

 全力で横に転がり、熱気で出しにくい声を絞り出す。

 

 「■■■■■■、かの敵を、掌握せよ!」

 

 右目に宿る生暖かさを確認した後、視認し続ける為に走り出す。

 

 だが、視認し続けることが難しい。彼女が出す炎を避ける必要もある。又、生み出した炎によって彼女が隠されるのだ。

 

 そして、避け続けるにも限界があった。

 

 熱気と疲労によって先へ跳ぼうと力を入れた足が崩れてしまったのだ。

 

  「ッチ!■■■■■─っ間に合わない…」

 

 直ぐに身を守るために発動させようとしたアーツは詠唱の影響で間に合いそうにもなかった。とにかく耐えれるように近くに落ちている鉄の破片を盾にする。

 

 熱い、熱い熱い熱い!?防いでいる筈なのに身体中から水分が飛ぶ。ジリジリと肌が焼ける感覚が襲い、痛みにより声が出そうになるがじっと耐え、叫ぶ。

 

 「■■■■■、今度こそ…この火を飲み込め!」

 

 背後から出てきた大きな口が火と熱気を全て吸い込んでいく。それと同時に体から悲鳴があがる。

 

 余りにも多すぎるエネルギーの吸収に貧弱な身体が耐えきれないようで、全身が燃えているような痛みが流れ込んでくる。

 

 必死に生命エネルギーへ交換し続けること、数刻。炎が止み痛みが収まった時、目にした光景は先程より大きな炎から皆を守り苦しんでいるアーミヤの姿だった。

 

 それを認識した瞬間、身体が勝手にタルラへ向かって走り出す。イシンが怒っているのだろう、大切な存在を傷けられていることに。

 

 がむしゃらに駆けている俺を捉えたタルラはアーミヤへの攻撃を止め、剣を構えた。

 

 「貴様、愚かだな」

 

 冷酷な言葉と共に振り下ろされた剣を受けきれず、吹き飛ばされる。俺の勝手な行動のカバーに向かった皆の攻撃もタルラによって簡単に弾き返されているようだ。

 

 「落ち着け!お前一人で勝てる相手じゃないことは分かるだろ!」

 

 「…ごめん」

 

 彼の言葉によってやっと身体の制御を取り戻し、周囲の確認をする。

 

 今はドクターの指示によって逃げ道を確保しようとするもの、タルラからの攻撃を防ぐために立ちふさがっている者で別れているようだ。

 

 まだ希望はあった…今さっきまでは。次々と皆が空を見上げる。鈍よりとした空から何かが数え切れないほど落ちてくる。

 

 あぁ─天災が始まってしまった…。

 

 そう認識した頃には既に被害が出てしまっている。恐怖で泣き叫ぶ声、建物の破片に当たり苦しむ声。

 

 こんな状況で命を捨てでも味方を守りたい彼は、俺の制御をまた振り切り叫ぶ。

 

 「■■■■■、僕らに襲う…全てを、食べて!」

 

 その救いを求める声に応えるよう、大きな口が現れる。それは襲い来る天災を吸収していく。

 

 「っ!?────!!

 

 それに同調して身体が崩れているような酷い痛みが走る。

 

 「フォルトさん!?医療を急いで下さい!」

 

 あぁ、当然だろう。前回の攻撃よりも遥かに多いエネルギーを吸収したのだ。

 

 だが、丁度良いのかもしれない。イシンの行動により秘策を出す準備は整った。心配する皆の手を振り払い立ち上がった。

 

 目を閉じ痛みを噛みしめ、イシンが感じていた怒りを引き出す。そして、全部のエネルギーを心臓へ集めていく。

 

 集まる程、徐々にドクン、ドクンと心臓の音が強まっていき、耐えるのも苦しい痛みが襲ってくる。そして、エネルギーを消費して詠唱を始める。こんだけ辛いのに何時もより長い詠唱を。

 

 「門は開かれた。我が感情に…呼応する、憤怒よ。今、全てを…打ち砕け!」

 

 アーツユニットである指輪の宝石が輝き始め、黒い渦が目の前に発生する。

 

 成功した…みたいだな。エネルギーを使い果たしたため膝から崩れ落ち薄れていく視界で美しい人を見た─。

 


 

 一体、彼は何をしたんだ…?天災が起き、それから皆を守るために彼がアーツを使ったのは分かっている。だが、あの女性は…なんなんだ!?

 

 彼女が出てきた瞬間、息をすることが出来なかった。身体が恐怖で動けなかったのだ。酷い者に至っては気絶している。一挙一足も許されない程の重圧の中、彼女が喋り始めた。

 

 「ふむ。まさか始めに認められるのが儂か。あやつが怒っている様子が目に見えるのぉ。ふふっ、愛しきイシンよ。よくやった」

 

 彼女は優しくフォルトの頭を撫でながら彼を抱える。そして、私たちに向き直り…

 

 「貴様らよ。我が主の命により儂は此処で戦わなければいけん。だが余波で貴様らとイシンが傷つく恐れがある故、貴様らにはイシンを連れての撤退を要求する。よいな?」

 

 不敵な笑みを浮かべながらイシンをアーミヤへ手渡した。その瞬間、私たちを襲っていた重圧が消え去り、動けるようになった。彼女の指示の通り直ぐに無線を用いて撤退命令を下す。

 

 「皆、指定した座標に抜け道がある。急いで」

 

 撤退時に戦闘音が聞こえないことを疑問に抱きつつ素早く撤退していく。

 

 ある程度、離れた時背後から大きな爆発音が鳴り響いた。戦闘が開始されたようだ。

 

 「このまま、撤退地点へ止まらず行くぞ。天災の第二陣が来る可能性がまだあるからな」

 

 「はい、分かりました。その…フォルトさんの容態はどうでしょうか?」

 

 「火傷による負傷と脈拍が少し変な反応を示しています。詳しい結果はロドスに戻ってみないと分からないです」

 

 「─分かりました、ありがとうございます」

 

 アーミヤが苦しそうな顔で俯いている。優しい子なのは今さっきの反応で分かっていたがフォルトの時は余計苦しそうだ。

 

 「アーミヤ、大丈夫か?」

 

 「大丈夫…大丈夫です。─ほら、ドクター早く行きましょう」

 

 空元気な笑顔を浮かべ歩いていくアーミヤに着いていく。

 

 


 

 「あら、タルラは苦戦しているようね。あのまま死んでくれないかしら」

 

 薄暗い廃墟の中で椅子に座っている悪魔は状況を眺めている。それに、俺の手は手錠に繋がっており、動けないようにされているみたいだ。

 

 「おいおい、仮にもお前らのリーダーだろ?そんなこと聞かれたら不味いんじゃないか?」

 

 「平気よ、此処には私とあんたしか居ないもの」

 

 彼女はこちらに近づきながら、ナイフを取り出し鼻唄を歌う

 

 「ああ、そうかい。で俺はいつ殺されるんだ?」

 

 「そうねぇ~。─私にとっては貴方には死んで欲しくないのよ。部下もあんたの部下にかなり削られたからねぇ?」

 

 「ははっ、あいつらは良い戦士だったろ」

 

 「ええ、彼処で死んでしまうのには惜しいぐらいにはね?それと、あんたの愛弟子は逃げたようよ。良かったわね」

 

 こいつ、何処からその情報を調べ出した?フォルトについてはロドスの職員しか知らない筈だ。あいつらは拷問によって口を割る訳がない。

 

 まさか、スパイが入り込んでいるのか!?

 

 「良い顔をするようになったわね?■■■■?」

 

 俺の顔を見て笑う彼女はあの時と変わっていないように感じる。まぁ、こんな事態に荷担する様になってしまっているが

 

 「ッチ、お前の性格は変わらないみたいだな?まぁいい、それでお前の要求はなんだ?」

 

 「あんた、私の部下にならない?裏切ったら直ぐ爆発する爆弾は着けさせて貰うけど待遇は良いわよ?」

 

 そんなの従うわけがないだろ。そう思いつつ彼女は弱味に漬け込んで従わせてくるだろうと過去の事から予想してしまう。

 

 「もし、断ったら?」

 

 「あの子の前でドカーン」

 

 「分かった、従う」

 

 ああ、やっぱりこいつ性格悪いな。あの時もAceと酒を飲んでるのを利用してテレジアの写真を撮らせてきたしよぉ。くそったれが!

 

 「あら、あんたが直ぐに折れるなんてねぇ、そんなにあの子の事が大切なの?」

 

 そこまでは調べきれていないのか、ならスパイは一般職員に近いんだろうな、オペレーターなら俺らの関係性は知っている筈だ。

 

 「当たり前だ。俺はあの子を生かしてしまったんだから、せめて過去を忘れて幸せになれるまで面倒を見なきゃいけないのさ」

 

 「ふーん?結構複雑な関係なのね。まぁいいわ、それならドックタグ貰って良いかしら。少し用事があるの」

 

 「好きに持ってけ、それで俺はこれからどうすれば良いんだ?」

 

 「それはまた後で伝えるわ。─よし、これね。それじゃ少し用事を済ませてくるから逃げるなんて考えないようにねぇ~」

 

 嫌な音を立てて閉まる扉を見守り、天井を見上げる。何もない天井なのに其処には思い出が過る。部隊の皆で過ごした時間が。

 

 あいつらを死に追いやったのは俺だ、後悔してももう遅い。そう、頭では認識しているのに心は暗いままだ。

 

 まさか、生き残るなんて─考えてなかった。遺書も書いてしまったのになぁ。

 

 暗い部屋で思考に没頭する。この先どうなるか分からない不安に刈られながら──。

 

 


 

 暗い闇の中で、誰かが話しかけてくる。それは黒い羽を持っている美しい女性のようだ。

 

 「もう、私よりもアイツを呼び出すの?ほんと貴方はつれない子ねぇ~?まぁいいわ、次こそ私を呼び出してね?愛しているわ、イシン」

 

 額に指を置かれトンっと押された。その瞬間、落下をしていく。途方にもなく続く浮遊感に恐怖を覚えながら視界が光で埋め尽くされていく──。

 

 「っっは!?」

 

 心臓が鳴り響く、俺は生きていられたようだ。

 

 精神にも記憶にも後遺症は残っていないみたいだ、負荷は何を受けたのか分からないが…。

 

 「起きたのか、フォルト!身体に違和感はないか?!」

 

 俺を背負っていたであろう、Aceが俺を下ろして額を触りつつ体調を確認している。周りを見るとアーミヤや皆も此方を心配そうに見ている。

 

 「大丈夫、だよ。心臓の音が…うるさいぐらい、だから」

 

 「フォルトさん、無事…なんですね。良かった、良かったです!!」

 

 目に雫を貯めながら、俺に抱き付いてくるアーミヤを受け入れながら、少し違和感のある心臓について考える。

 

 あれほどのエネルギーを注ぎ込んだのに不調が見当たらないのもそうだし、感覚が変なのだ。

 

 視界が良くなっている、聴覚もだ。俺は対価に何をされたんだ!?

 

 分からない、早くケルシーに見て貰わなければ…命に関わるかもしれない。

 

 「アーミヤ、早くいこ。天災が、また来るかも」

  

 「あっ、ごめんなさい。フォルトさん、そうですね!早く私達の家へ帰りましょう」

 

 「うん、帰ろう。ドクター、道どこ?」

 

 「此方だ、エース。先導してくれ」

 

 「あいよ、フォルト。もし辛くなったら言えよ?背負ってやるからな」

 

 コクッと頷いて彼らに着いていく。都心部をゆっくりと進みながら撤退地点へ向かっていく。順調に進んでいき、油断していた時、建物の陰から誰かが現れた。

 

 「あら、もうこんな場所に来てたのね?」

 

 彼女は…wか。戦闘する気はなさそうかな?一応武器に手を掛け動向を探る。

 

 「…貴方、どこか出会いましたか?」

 

 「あら、どうかしら?私には見覚えがないわ。それと、用があるんだけどいいかしら」

 

 「何を言って─」

 

 「あら、動かない方がいいわよ?此処にはたくさんの爆弾が仕掛けられているわ」

 

 「─っ、貴方はレユニオンですか!?」

 

 「気づいていなかったの?ふふっ、そう私はW。レユニオンの傭兵よ。それで、其処のドクター貰ってもいいかしら?」

 

 「貴方も…。残念ながらドクターは渡しません。皆さん、戦闘する準備を!」

 

 「残念、それならこれは要らないわねぇ?」

 

 笑いながら取り出した13個の傷ついたドックタグを俺に見せつけるようにさらけ出した。

 

 「そ、れは…」

 

 「ほんと、残念だわ。わざわざ死体から持ってきたのにねぇ」

 

 死体…そうかscoutは死んだのか。何となく分かっていた。彼らを彼処で止められなかった以上死んでしまうことは。

 

 でも、でももしかしたら…そう思っていたのに─。

 

 「フォルト、どうした!?」

 

 誰かの声が聞こえる。でもそんなのはどうでも良い。僕の恩人仇敵を殺したのはこいつか!!

 

 「ゆる、さない!」

 

 踏み込んだ土をけり飛ばしながら喉を切り裂こうとする。だが、踏み込んだ力が強すぎたのか彼女へぶつかりそうになる。

 

 「ふふっ!良い反応ねぇ!?あぁ、本当にあんたはいいわ!」

 

 僕の手を掴み力を逃がした彼女にナイフははたき落とされ、動けなくされる。

 

 「ほら、これが欲しかったんでしょ?あげるわ」

 

 そのまま、彼女は僕の首にドックタグを下げ背中を押される。

 

 「ふざける…なぁ!」

 

 直ぐにナイフを拾い振り返った時には目の前に赤く光った丸い…ものが!?

 

 「ばぁん!あはは!大丈夫、それは煙幕よ!」

 

 視界を遮られ状況が分からないが高笑いを上げながら逃げているようだ。

 

 声が離れていく。

 

 「あ!それとそこら辺に爆弾はないから安心して逃げていいわよ~」

 

 逃がすか!お前だけは!!

 

 追おうとする身体を理性で制御する。…危ない、いまイシンは此方の思考すらも埋め尽くすほど怒っていたのか。パタリと膝を着く。制御に思考を回しすぎたようで足に力が入らない。

 

 「バカかお前は!ドーベルマン!拘束用のモノをよこせ!」

 

 「分かった!暴れるなよ?フォルト、お前の行動は看過しきれない」

 

 あっ、物凄く怒ってらっしゃりますね。でも、俺はわるくないんすよ。イシンが悪いんすよ!

 

 鞭で拘束された上に手錠と拘束具を取り付けられる。

 

 「フォルトさん、ごめんなさい。でも、あなたが無茶をして死んでしまうのが怖いんです。だから、今だけは許してください」

 

 怒っているのか悲しんでいるのかそれともどちらもなのかアーミヤは俺の目にアイマスクを取り付ける。そして、誰かに担がれた。そして、何かを注射されたようだ。

 

 揺れる感覚に耐える。

 

 視界に浮かぶ闇と、イシンから来る感情に埋め尽くされそうになるが、深い深い睡魔が襲い来て、意識が─。

 


 

 

 昔のことを思い出した。

 

 彼、イシン…いやその時にはフォルトと呼んでと言っていたか。

 

 彼はこの世界では余り珍しい物でもない孤児だった。まぁ、彼処まで残酷なことは珍しいが。

 

 だが、一番他と違うところは彼はこの大地を人を恨むのではなく、自らを恨んでいた所とそれでいて自分の体は大切にしていたことだろう。

 

 彼は常に無茶をしていた。それでも死に急いでいたわけではないのだろう。いつも、怪我ができたら直ぐに私の所へ来て治療をねだってきていた。

 

 ある時、つい気になって聞いてしまった。

 

 「其処までして君はなぜ戦おうとするんだ?」

 

 そう聞いた私の顔を見て、いつも感情を出さなかった彼は少し微笑んでこう言った。

 

 「僕の命は…皆を不幸にするから。だから、せめて最後は…人の役に経ちたいの」

 

 彼はもう既に自分の死に方を決めていたのだ。まだ7歳だと言うのにだ

 

 私は直ぐに訓練を理由に中止にしていたカウンセリングを再開した。

 

 こんな少年が命を捨てようとしているのに止めなかったら彼女に怒られてしまう気がしたから。

 

 それで分かったのは彼は自分が産まれてしまったから皆が狂ってしまった、だからその贖罪のために自分の命を使って人を救いたいという理由と死にたいと願っていたのに助けたscoutに復讐がしたいからという理由だった。

 

 だが、一つ疑問が残った。なぜ、村人を恨まなかった?父親を恨まなかった?そう聞くと彼は

 

 「一回、恨んだことはある。でも…この未来になったのは、僕が産まれたから、って気がついたの」

 

 彼は懐からある写真を取り出した。それは彼がいなかった頃の村の写真だそうで、其処には皆が笑顔で肩を組み宴会をしている様子が写っていた。

 

 「これを見たときに、ね。ほら皆、幸せそう。僕が居なかったら…このままの世界、だったのかなぁ」

 

 彼は弱々しく泣き出した。叫びたいのにそれすら赦されず、ただ呻くことしか出来ない彼に私は背中を撫でることしか出来なかった。

 

 それ以降、私は彼をよく見るようになった。無茶をしそうだったら止め、暇な時には知識を教える。それしか出来なかったが彼は嬉しそうにしてくれた。

 

 だが、とある日、彼から目を離していた時に警報が鳴り響いた。内容は彼が訓練中に使えない筈のアーツを使ってしまい暴走してしまっていると。

 

 その場に直ぐに駆けつけた私が視たものは深い闇から出てくるこの世のものとは思えない程の美貌を持った女性に頭を撫でられている彼の姿だった。

 

 そして、彼女は私を見て──。其処から意識が途絶えた。気がついた時には彼を医務室のベッドに運んでいて治療を施していた。

 

 そして、その次の日から彼は命懸けのアーツの練習を隠れてするようになり、そして今私の命令を無視して戦場にいるというのだ。

 

 不安になったんだ、彼はこの戦いで死んでしまうのではないかと。

 

 通信が繋がらなくなって時間が経つにつれ不安は恐怖に変わり、祈ることしか出来ない。

 

 どんなことがあっても生きて帰ってきてと。

 

 その時、通信が入った。彼らを無事回収出来たと。

 

 その言葉を聞いた瞬間、心の底から安心したんだ。

 

 私は直ぐに医務室を使用する準備を取り掛かった。どうせ彼は怪我をして帰ってくる筈だ。

 

 そうして、帰って来たアーミヤ達に渡された彼を運ぶ。

 

 検査をして見ると綺麗な肌は火傷と切り傷によって傷ついていて、足に至っては骨折をしているかもしれないようだ。

 

 だが、そんなことより、心拍数が変化しすぎている。睡眠剤によって寝かされているのに運動時の速度だ。

 

 そして、検査が進む程分かってきてしまった。彼の心臓は何者かに変えられてしまっていることに。いや、それよりも変化させられていると言う方が正しいかもしれない。

 

 これは、彼が起きたときに何をしたのか調べなければならないな。

 

 彼の身体を癒しながら、首につけられたドックタグを見る。scoutはやはり死んでしまったようだ。頼まれていた遺書を彼に渡さないといけないな。

 

 あぁ、でも私の心の中はscoutが死んでしまって悲しいなんて思いは出てこない。それよりも彼が生きていて良かったという安堵が溢れるのだ。

 

 私は壊れてしまったのか?今までは仲間の死は悲しい筈だったのだが…。

 

 まぁいい、次の作戦の準備をしなければ行けないな。

 

 フォルトに無茶をさせないためにもな─。

 

 





 やっと、やっと!初めの物語が終わったー!長過ぎません?でもこれでもカットした部分あるんですよね。そのせいでアークナイツ本来の魅力を損なってしまってる可能性が…。

 ま、まぁこれから日常編を少ししてからまたストーリーへ、行きます。もし登場させて欲しいキャラなどの要望があるなら登録してない方でも感想書けるようにしたので書いてくださると執筆が捗ります。

 それと!いつの間にか224人もお気に入りをしてくれていました。う、嬉しすぎます!それに評価してくださる方も数多くいるみたいで本当にありがとうございます!!

 こんなにも伸びると思っていなかったというか自分に文才はないと思っていたので成長できたのかなという感動がありますね!

 あっ、話しは変わるのですが皆さんはちゃんとシージコラボ引きましたか?もし引いていなかったら皆強いし可愛い人やダンディーなおじさまもいるので引くことをお勧めします!

後書きが長くなりましたがお気に入り、アドバイスや感想を書いてくださると嬉しいです!

 それでは次の更新のため頑張りますね!
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