眩ゆい光に目が覚める。こんなにもゆっくりと寝れたのは何時ぶりだろうか。
たぶん、昨日はたくさん考えて疲れていたのだろう。だから、悪い夢は見ずに済んだのかもしれない。
いや、心構えの変化によるものかもしれない。
過去を背負う、それの重さも辛さも知って今を生きると決めたから、彼…scoutに決めさせられたから。
イシンは、進んだんだろう。
でも、彼らのことを思い出して、溢れそうな思いは未だにある。
ただ、この沸々と溢れそうな心の弱さもイシンの良さだとscoutは綴っていた。この思いがこの先、人々を助け正しい道を見いだせるんだと。
だから、俺は圧し殺すのではなく調和する。
過ちを起こさないように、scoutが信じた彼を守るために。
息を吸い込み、大切なものを思い浮かべる。進むべき道は得た。ならば進むだけなのだから、一歩…また一歩、ゆっくりと歩むんだ。
この残酷な世界を、アークナイツとして。
ベッドから立ち、伸びをする。凝り固まった身体と共に考え続けた脳をリセットする。
そうだ…今日は、パフューマに会いに行こう。それと、彼からのプレゼントも取りに行かないと。
光に照らされた道を進み、温室を目指す。
だが暖かな光に照らされた所為か眠気が出てきてぼんやりとしてしまい、誰かとぶつかってしまった。
「あうっ、ご…ごめんなさい」
残念なことに華奢なこの身体はぶつかった反動に尻餅をついてしまう。
誰にぶつかったかは分からなく取り敢えず謝ってみたが其処に居たのは会おうと望んでいた人であった。
「あら、大丈夫?…フォルト、くん」
彼女も俺のことに気がついた様でその瞬間に優しそうな顔がムッとした顔に変化した。
「…パフューマ。話したいことが」
「ええ、私もよ。でも、此処で話す内容ではないから、温室へ行きましょう」
「うん…」
そうして、俺の手を取り温室へと歩いていく。
怒られることに怖がっていたが彼女が纏ういい匂いが心を落ち着かせてくれる。
たどり着いた温室には様々な声が鳴り響き草木が揺れる。イシンの帰りを喜ぶもの、居なくて悲しかったと嘆くもの。その全てを発しているのは此処に生えている植物であり、お世話をしたことがあるものだ。
「相変わらずフォルトくんが来ると此処の子達は騒がしくなるわね」
この光景を何度も見ているパフューマはうっすらと微笑み慣れたようにそう言うと椅子を差し出してきて座るように促す。
【ただいま】と呟き、彼らを落ち着かせてから椅子に座ると彼女の顔が真剣なものになった。
「実はもうフォルトくんの身に起こったことも、彼らに何があったのかもアーミヤちゃんから聞いたの。始めはフォルトくんを怒ろうと思っていたんだけどね?話を聞いて、今のフォルトくんに必要なのは反省を促すことじゃなくて休ませてあげることって思ったのよ。だってフォルトくんは頑張ったんだもの」
彼女は微笑みながら頭を撫でる。其処にあるのは怒りではなく情けだった。
怒られると思っていた俺は彼女の優しさに感謝しながらも既に休んでいたため、その事を伝えた。
「休ませる…?──僕は、もう休んだから、平気だよ」
「だーめ、顔色があまり優れてないわ。私があげたお香は炊いてから寝た?」
…自分自身では疲れも取れ、悪い夢も見ないことから元気になったと思ったがそれは違かったようだ。
確認するために覗き込んだ水面に反射する顔は青白く、健康とは言いがたい姿だった。
だが、彼女から貰ったお香を炊かないだけで体調が悪くなるものなのか…?
少し疑問に思い、彼女のことを疑ってしまう。だけども彼女は俺が此処に着た時から優しくしてくれた恩人で色んな恩がある。
そんな思いは失礼だろう。嫌な考えを振り捨て、会話を続ける。
「……忘れてた」
「もう、フォルトくん?あれはフォルトくんを癒すために調香したものなんだから疲れた時には絶対使うように言ったでしょ?」
「はい……ごめんなさい」
「そうだ!それなら、今からお昼寝をしましょ?今なら新しいものもあるもの」
この申し出は断りにくいがクロージャに預けてあるscoutのプレゼントは時間が立つに連れて彼女に売られてしまう可能性が高まるのだ。
寝ている場合ではないだろう。
いや、さすがに銭ゲバな彼女でもよくしている子へのプレゼントは売らないか…?
でも、ヤバい問題起こしまくってるし?悪名高きブラッドブルードなんだよなぁ。
しょうがない、やはり此処は断るしかないだろう。
「…よ、用事がこの後、あるから─」
「フォルトくん~?私はまだ隠れて戦いに行ったこと許してないのよ~?」
あっ、これ意外と怒ってはいるんだ。しょうがない、クロージャを信じる他ないようだ。
「ね、寝ます」
「よし、いい子ね。それじゃあそっちのベッドに入って?」
誘われるがまま、ベッドに入った。パフューマは俺のベッドの直ぐ側へ椅子を持ってきて座り、お香を炊き始めた。
そのお香からはラベンダーのいい香りが漂い、他の様々な香りによって心の動きがなだらかになる。
その上、パフューマが身体をゆっくりと優しく叩き、眠気を誘ってくる。
数刻もしないうちに睡魔は肥大化し、脳の機能が衰えてくる。
だけど、だけれど…寝る瞬間に嗅いだ香りが何故か、最近嗅いだことがある。そう頭に残った──。
「ほんと、かわいい寝顔ね。でもこれで一先ずは元気になってくれる筈よね。ふふっ、今回もいい調香が出来たみたい。でも、原材料について知られちゃったらこの子に幻滅されちゃうかも」
其処には裕福な家庭の箱入り娘でも、自然を愛し仕事に一途な彼女でもなく妖艶な顔でフォルトを見つめる一人の女狐がいた。
「でも、何時まで立ってもラナって呼んでくれないのよね。それに、パフューマって私はパフューマーなのよ?本当にいけずなんだから。そんなところも愛おしいけど」
何故、彼女がこのように恋に焦がれてしまったのか。それはフォルトの過去の行いのせいである。
それは三度に渡る。
一つは彼も自然を愛し、その自然と対話が出来ること。それにより、ミノスでしか取れない筈の植物を一生懸命育てていたパフューマーへアドバイスを行い、ここロドスの温室でも育つようにしたこと。
もう一つはその行いによる感謝でロドス初めての「エーゲの口づけ」を嗅がした際に、発した彼の感想とそこで初めてみる彼の涙ながらの笑顔によるものだ。
彼はこの匂いに大好きな母や彼女を見いだしながら、太陽のように眩しい笑顔を見せ、後悔による涙を浮かべた。
その感情は美しく、儚く…壊れていた。助けたいと優しい彼女が思ってしまうのも納得なものだった。
そして、彼女に感謝を述べたのだ。忘れてた母や彼女の愛情のことを思い出せたと。
そして、この香りから見える様々な自然について教えて欲しいと。
そこで、故郷の思い出をパフューマーは語ったのだ。その一つ一つに彼は目を輝かせながら、香りからその姿を想像した。
彼はこの匂いに自らの故郷や愛情を感じながら、彼女の故郷をも感じ取った。
それは彼女の、パフューマーとしての希望となったのだ。
それから、彼女は彼に様々なお香を調香した。安眠に効くもの、心を落ち着かせるもの。そのどれもが彼が世話を手伝ってくれた植物から作り、その全てを彼は喜び、材料をも言い当ててくれた。
だけども、どれだけ作っても彼がしっかりと寝れたことはなかった。
しかし、一度だけ彼女の指から垂れた血が混じってしまったお香を炊いたところ、彼は「パフューマの匂いがすると」安心して、眠りについたのだ。
そうして、彼により安心して寝て欲しいと感じた彼女は自らの分泌物や血を混ぜるようになった。
さて、このお香には何が入っているのだろう。
いや、知らない方がいいだろう。彼女のためにも、フォルトのためにも…私達の精神のためにも。
パフューマーは可愛い!皆もそう思うよね!今回のお話はキャラ崩壊してるかもだけどね!!
何故か当初の予定と変わり、パフューマーがヤンデレになりました。おかしい、おかしいよこんなの!俺はただ、癒し枠に彼女を書こうとしただけなのになぁ!
次回からはアークナイツらしい救いようのないお話が始まるのでお楽しみに!
それと、お気に入りの人数が250人を越えました。達成感が凄いですね。でもまだまだお気に入り、アドバイスや感想。お待ちしております!私強欲なので!
300人突破記念の書いてほしいもの!
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