身体を揺さぶられ、目が覚める。辺りは少し薄暗くなっていた。
かなりの時間寝てしまっていたようだ。
「良く、眠れたみたいね」
側で揺らしてくれるパフューマはうっすらと目を細めていて少し妖艶な雰囲気があった。その所為でちょっと恥ずかしくなって起き上がる。そして、早くしなければいけない用事を思い出し直ぐ動ける準備をし、感謝を伝えた。
「うん、パフューマのおかげ。ありがとう」
「それなら良かったわ。これからはちゃんと寝る前にお香を炊くのよ?」
横から取り出した新作であろうお香を僕の手に預けて柔らかな手で俺の手を握り、忠告をしてくる。…なんだか少し悪寒が─?いや、いやいや…アーミヤとかケルシーじゃあるまいし!気のせいだ、うん!そう思おう!!
「分かった。それじゃあ…パフューマ。僕用事が、あるから…行かなきゃ」
「…分かったわ。行ってらっしゃい」
寂しそうに弱い声量で返す言葉にやっぱり心配されているんだろうかと罪悪感を感じつつ、戸を開け走っていく。
その背を見つめる視線は、黒く濁っておりながらちゃんと愛を感じれるものであった。だけどもそれに、彼らは気づかない。
急げ、急げ!クロージャは何をしでかすか分かんないんだ!
もし、scoutのプレゼントに何かあったらイシンが壊れちまう!
運良く誰も通らない道を持てる力で走り抜けていく。
そして、問題なくたどり着きクロージャを呼ぶ。
「ク、クロージャ…はぁ、来た、よ」
息が絶え絶えになりながらだが。
「おおー!やっと来た!待ってたんだよ?まぁ、とにかくあの話、しよっか」
クロージャはこっちこっちと手を振りながら奥へと入っていく。息を少し整えて、付いていく。
薄暗い部屋を早い足取りで歩いていくクロージャに少し置いていかれながらたどり着いた其処には壁に固定された…scoutが持っていた特殊なバリスタに似たものが飾ってあった。
「こ、これ!scoutの、と…似てる!!」
それは、イシンにとっては憧れに近いものだった。scoutのクロスボウを持たせて貰えることは訓練で頑張った時にご褒美としてだった時だけで他の時には触らせもしてくれなかったから。
「あ、やっぱり分かる!?これはscoutと協力して作ったものだからね!でもちゃんとフォルト用に改造してあるんだよ!グリップとかスコープとかね!」
その言葉を聴きながら、その思い出が頭に溢れてくる。この特殊なクロスボウを上手く使えた時には頭を撫で喜んでくれたこと。隠れて触ったのを怒られたこと。その全てがもう戻らないこと。
彼に…もう会えないこと。だけど、このクロスボウさえあれば彼との思い出が全て残り、思い出せることを。
「クロー、ジャ…ありがとう。これ、ほんとうに…嬉しい」
壁に掛けてあったクロスボウを抱きしめ心からの感謝を言う。これにはそれだけの価値があるから。それと、クロージャへの好感度と信頼度を上げておこう。ただの銭ゲバではないとね。
「いやー、そんなに喜んで貰えて良かったよ!scoutが大金を叩いてくれたから私も売り上げ達成できたし!そうだ!フォルトは消耗品とかの補充は平気?今なら直ぐに対応できるよ!」
いや、この感動シーンにそんなこと聞く!?やっぱり銭ゲバじゃん!信頼度は下げとこ!まぁ色々消耗したから補充しようとは思ってたけども!
「…スモーク、グレネード、3個ずつ。スタンバトン、の修理…ぐらいかな。頼んでも…いい?」
「それぐらいなら今渡すね!スタンバトンは明日来てくれたら直し終わってると思うから…って!なんでこんなに壊れてるの!?」
「相手に投げた、だけだよ?」
「投げるものじゃないって説明したよね!?もぉー!フォルト、これは使用禁止!催涙ガスのグレネードとか使うようにして!分かった?」
催涙ガスは隠密に適さないんだよねぇ。動きづらくなるし。なんとか代案を…
「それ、…使いにくい」
「なら、後でまたフォルト用の作るから設計を練ろう!今度は壊れにくいものにしてね?」
「分かった、それはいつぐらいが…いい?」
「うーん、じゃあ…明後日!──ああ~!でも、もうちょっとであの作戦があるんだっけ?なら、うーんと一時的にスタンバトンを使って貰おうかな」
「あの作戦?何かあるの?」
「うん、なんか龍門にレユニオン迎撃の協力を仰ぐらしいよ?それで色んなオペレーターが作戦に出るらしいからね。だからその作戦が終わるまではスタンバトン使って貰ってもいい?これも頑張って明日には直しておくから!」
「うん、分かった。それで、どれぐらいになりそう?」
「120000ぐらいかな。直ぐにありそう?」
「うん、ちょっと待って。確か、これに」
ボロボロな貴重品入れを取り出し、龍門幣を出す。…どんどんチャック閉まりにくくなってるなぁ。それに、穴が…後で縫わないと
「うん、丁度だね!─てか、それまだ使ってたんだ」
「うん、だって…ケルシーと、クロージャが。くれたものだから」
これはイシンがロドスに入って1年が経った頃に彼女達がくれたものなのだ。少し質素だけど愛という暖かさを常に与えてくれる、そんな大切なものだ。
「…そっか。じゃあ後で私が直してあげるよ!それでこれからもずぅーっと使ってくれるなら嬉しいからね!」
彼女の明るい笑顔を見て、少し心が満たされる。けれども彼女の後ろからLancet-2とCastle-3によって運び出されたカシャを見た瞬間、そんな心は消し飛んだ。
「クロージャ…?」
スッと目線を外したクロージャは汗を滝のように流しながら必死に口を回している。
「…あー、ははっ、カシャは撮影を頑張ってたんじゃないかな?…ほら、ドクターが戻ってきたからね?その、施設の説明のためにね!」
その言い訳は余りにも見苦しく、嘘であることが分かってしまう。…それに、カシャ。何時も仕事してるもん
「早く、カシャを休ませて…?あと、クロージャ。そういう酷いとこ、直した方がいいよ?」
「…気を付けます」
「うん、お願い。それじゃ、また」
「うん、ばいばい!」
背に背負ったクロスボウを持って訓練所へ歩いていく。これから、直ぐに作戦があるなら早めに練習しとく方が良さそうだし、早く使いたいしなぁ。
足を早めてたどり着いた訓練所では、一人のサルカズが射撃の練習をしていた。
「メテオリーテ…。久しぶり」
耳をつんざく様な音のあと此方に気付き、近寄ってきた。
「フォルト、貴方怪我をしたんじゃないの?どうして…」
「んっ、これ使いたくて」
目の前で掲げると意外と大きいバリスタで彼女の顔が隠れてしまった。そして、少しの間が空き彼女の顔を見ようとバリスタを下げようとすると彼女に取り上げられてしまった。
「あっ!メテオリーテ、返して」
「嫌よ、怪我…まだ治ってないでしょ?」
「治ったよ、ほら」
触ってみるように促し、彼女に身を預ける。彼女は数分間身体をまさぐり、ようやく納得してくれたみたいだ。
「あの怪我が、こんなに早く治るなんて…。」
「分かったなら、早く返して。それ…大事な物だから」
「え、ええ。分かったわ。ごめんなさい、急に奪ってしまって」
「返してくれるなら、平気。それより、ここの一つ。使ってもいい?」
「ええ、いいわよ。私もそろそろ休憩しようかと思っていたから」
…確かに所々汗をかいているようだ。なら、集中して練習が出来そう。
よし、先ずは的を立て、数メートル離れる。…そして、息を整えてスコープの調整、そして…引き金を引く。
風を切り裂く音と共に何時ものクロスボウよりも強い衝撃により、少し体制がよろける。だが、その分威力は強まっているようで、的を貫き壁へ突き刺さった。
「ととっ、うん。やっぱり…完全には、扱えない」
少し痛い肩を撫でながら矢の回収のため、歩いた…。
疲れた身体を休めながら、彼の練習を眺める。
scoutに育てられたからか、素早い身のこなしとクロスボウの照準スキルの高さに目を引かれる。
でも、こんなにも戦闘慣れしている様に見えるこの子は10歳なのよね。
本来なら、戦火に身を投じる必要が無い筈なのに…彼が動く程目に写る、サルカズの象徴であるあのしっぽの所為で酷い扱いも受けたと聞いたわ。そこで大事な人を失ってしまったから彼は戦闘の訓練を行っているとも。
…それは、サルカズという種族への偏見と異質な子ということで起ってしまったのかもしれないわ。彼自身の優しい性格には目もくれずに…ね。
その話を聞いて私は可哀想と、そう思ったわ。そして、初めて会った時に、彼へこんな話をしたわ。
「ねぇ、フォルト。貴方はその異質なしっぽを恨んでる?そして、あの時の原因となったサルカズをどう思ってるのかしら」
我ながら、初対面で失礼だったと思っているけれど彼の答えを聞いてよかったと心の底から思ったわ。だってそうじゃなきゃ、今の彼との関係もなかったもの。
「…?この、しっぽ。お母さんは、可愛いって…言ってくれたから、好き。それに、あれはサルカズの人たち…の所為でなったわけじゃ、ないよ。僕が変に、生まれちゃったから。起きた。それに、サルカズの人…僕みたいに、しっぽあるから、少し嬉しいよ。一人じゃないって、思えるの」
「そう…なの。ごめんなさい、失礼なことを聞いたわ」
「ううん、平気。えっと、あっ…お姉さんは、僕のしっぽどう思う?」
「えっ?…ごめんなさい、よく見るしっぽと変わらないから特には感じないわ」
「ふふっ、よかった。やっぱり…変に見えないよね。そうだ、僕はお姉さんの…角カッコいい、って感じるよ。それに、大人が言う、サルカズの噂は…やっぱり嘘、って思った。だって、お姉さん…いい人だもん」
柔らかな笑顔で此方を信頼してくれる彼は私にとっては眩しくて、それでいて、少しの希望をくれた。
「そうかしら、でも…ありがとうね。私もフォルトはいい子だと感じるわ。あと、私はメテオリーテよ。よろしく」
「そっか、僕も、そう言われて…嬉しい。よろしく、メテオリーテ」
それが初めて会った彼との出会いだった。
それから、会うたびに少しの会話と触れ合いを繰り返して。そして、久しぶりに訓練室で会った彼は何処か危なっかしく感じたの。
命を大切にしてないという訳じゃないけれど、目を離した隙に消えてしまう、そんな雰囲気があったから。
でも、何となく彼は平気だとそう…思っていたわ。彼は賢く優秀だったから。
だけれど、そんなことはなかったのよね。
次の作戦での連戦の影響で疲労していた彼はフロストノヴァとの戦いで…援軍として、駆けつけた彼は命を燃やし、そして…彼女を救うべく風前の灯火の様に消える寸前まで戦ったのだから。
スゥー、ちょっーと体調崩してて遅くなりました!すみません
それに、シリアスが書けへん書けへん悩んでいたので遅くなりました。
とりあえずは満足いく形にはなったので、次からはもっ~と戦闘とか曇らせを入れていきますね。(リハビリも兼ねて)
あと、数々の感想及びお気に入りありがとうございます。これからもどんどん感想とか頂けるとやる気と小説の文が良くなるかもしれないのでお願いします!
300人突破記念の書いてほしいもの!
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曇らせの短編!
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恋愛系の短編!
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ハロウィーンやクリスマスなどの短編!