救いのために   作:ヒナまつり

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11話

 

 素早くスラム街を抜けるため、エクシアが教えてくれた脱出ポイントへ向かう。

 

 どうやら、レユニオン達がこちらを包囲して近づいてきているのは本当のようで、前に進む度レユニオンの兵士を見ることが多くなっていた。

 

 そして、また仮面の被った兵士が見えた。

 

 「…皆、また前方から、レユニオン…多分5人かな」

 

 「了解しました。ドクター、指揮をお願いします!」

 

 「ほんと、多いわね~? これならまだあの鬼隊長の下で働いてた方がマシだったんじゃない~?」

 

 「フランカ、文句言わないの。はぁ…ドクター、術師の相手はお任せください」

 

 走ることを止める事なく、正面から暴力で押し通る。それだけで練度の低い下っ端のレユニオンは動きを止めてくれる。

 

 それに装備を身に纏った兵士の足音や匂いはスラム街に住む人々と異なるため、幾分か五感による察知がしやすいのは救いだろう。

 

 ただこの遭遇でもう4回目になる。こう多いと戦闘による道具の消耗や体力の減少が激しくなっていくだろう。

 

 それに…護衛対象のミーシャはこのような状況に慣れていない所為か余計に疲れているみたいだ。

 

 「ミーシャ…手、貸すよ」

 

 そう許可をもらい手を握る。彼女の手のひらはブレイズや他のオペレーターの人たちのような豆や固くなった皮膚などでもなく、フォルトの手とも違う普通の女の子らしい手で何処か繊細なガラス細工のように感じた。

 

 この手が汚れないように守ってあげたい、そんな考えが過る。

 

 そして、道中のレユニオンを気絶させながらやっとのことで合流地点の廃ビルへたどり着いた。

 

 中に入り少し汚れた階段を上がると、そこには太陽の光を吸い込み何処か神々しい黒い髪のループス…そうテキサスがいた。

 

 まぁ…ポリポリとお菓子を食べているんだけど。…よくあれで太らないよね。

 

 そうアーミヤ達がテキサスと話しているのを観察しながら眺めているとテキサスはお菓子を欲しがっているのと勘違いしたのか差し出してきた。

 

 「そんなに欲しいなら…食べるか?」

 

 「うん…ありがと」

 

 久しぶりに食べるチョコレートの甘さに感動しながら警戒を続ける。

 

 そしてふと気になり、割れた窓の外を覗こうとした時、視界の端から円状の何が飛んできた。

 

 それは、多分レユニオンの攻撃だろう。ゆっくりと煙をあげるそれに気がついた瞬間、ミーシャを抱える様にし家具の後ろへと身を投げる。

 

 そして、弾けるように煙が上がった。

 

 他の皆も同じように他の家具に隠れているが少しはぐれてしまった。その上、煙で視界が悪い。声を出そうにも何が混ざっているか分からない煙を吸うリスクを考えればやめておいた方がいいだろう。

 

 そして、煙が晴れるのを待とうとしていたら、階段を駆け上がってくる複数人の足音が聞こえた。

 

 スタンバトンを手に取りミーシャを落ち着かせながら戸を開ける音が聞こえた瞬間、家具を蹴り飛ばす。

 

 それは、入ってきたレユニオンの兵士ごと部屋の壁へ叩きつけられた。

 

 それに伴って少し晴れた視界に映る動揺したレユニオンの腹部へスタンバトンを押し付ける。

 

 だが、他のレユニオンからの攻撃により、気絶させるまではいけず痺れさす程度に留まった。

 

 跳び跳ねてミーシャの元へ戻ろうとした瞬間、自らの背丈と同じようなフードを被った兵士が駆けてきた。

 

 浮かんでいて体勢を変えることが出来ない俺に対して拳を振り抜こうとする腕を掴み身体を無理やり捻る。

 

 勢いの乗った拳はそれにより反動でかえって相手を浮かび上がらせる。だが、此方も体勢を正すことが出来ずに地面へ頭から落ちる。

 

 そして、二人仲良く地面へ倒れた。

 

 だが、こうなることを予測していたこちらと違い不意を突かれたスカルシュレッダーと呼ばれる兵士はまだ立ち上がることが出来ないようだ。

 

 そして、ガンガンと痛む頭を押さえながら目へ流れる血を拭いミーシャの手を取ってこちらを呼ぶアーミヤ達の方へ走る。

 

 扉をフランカがアーツで溶接し追ってこれないようにしながらアーミヤ達の話を聞く。

 

 どうやら、突入してきたレユニオン以外も騒ぎを聞き付けこちらに向かってきているため脱出ポイントへこのまま駆け抜けるらしい。

 

 「フォルトさん、怪我は平気ですか!?」

 

 こちらを心配そうに話すアーミヤを安心させるため、強がりながら微笑み言葉で表す。

 

 「平気…それより、なんで屋上に?…これじゃあ、逃げ道なんて─」

 

 「そうよ! これじゃあ包囲されにいっているようなものよ?」

 

 「まぁまぁ、ここは私たちペンギン急便を信じてよ! 私たちは龍門のどんな道でも知っているんだからさ!」

 

 通信から流れてくる楽観的な声はこちらの不信感を刺激し本当に信じていいものか不安になる。

 

 だが、後ろから着いてくるレユニオンのせいで従うしかない。

 

 「もし…追い詰められたら、恨むからね」

 

 「うわぁー、それは大変だ! …でもフォルトなら気に入るルートだと思うよ!」

 

 恨み言を気にもかけない元気な声でそう返ってきた。フォルトが気に入るルート?それなら、安全で確実なルートではないだろう。

 

 …つまり、破天荒な道ってことか?うぅ、寒気がしてきた。

 

 そして、屋上へたどり着きテキサスが鍵の掛かった扉を蹴破る。

 

 「よし、じゃあ隣のビルへ翔んじゃって! ねぇフォルト!こんなルート絶対予想外でしょ!」

 

 あぁ…くそっー予感が当たっちゃった! こちとらドクターとミーシャがいるんだぞ!こんなルート危ないじゃんか!

 

 「うん…そうだね。エクシア…後で怒るから」

 

 「ええー!? 何でさ! こんな龍門みたいな秘密の溢れるこんな都市でも─」

 

 「─待て! そう簡単に逃げれると思うなよ!」

 

 そう叫びながらレユニオンはジェットパックで他のビルから飛ぼうとしている。それも1人や2人じゃない。

 

 「…エクシア、相手の方が予想外みたいだね…?」

 

 「うぅ! ごめんってば! 直ぐ援護に行くから許して!」

 

 「はぁ…やっぱりこうなるのね? 悪いけどさっさとしてねラテラーノの救世主さん。じゃないと包囲されちゃうから」

 

 「フランカ、もう包囲されてるよ。ドクター、私たちはこちらの建物に降りているレユニオンの対処をします。飛んでいるジェットパックの兵士はそちらでお願いします」

 

 「ああ、分かった。アーミヤ、フォルト…すまない、無茶をさせる」

 

 「大丈夫です、ドクター。私たちは貴方の指示通りに動いて見せます!」

 

 そう啖呵を切ったアーミヤの言葉に頷き、クロスボウを構える。

 

 そして、ドクターの指示に従いこちらへ飛び立とうとするジェットパック兵から撃ち落としていく。

 

 数は多いものの直線的にしか移動できないジェットパック兵は的と言っていいだろう。

 

 だが、頭を打っていて少し覚束ない視界のせいか何発か外してしまった。

 

 でも、フランカやリスカムが打ち漏らしてたどり着いた兵士を見事なコンビネーションで倒してくれる。

 

 そうして、敵の増援が止まり行動を起こそうと動き出した頃にやっと、エクシアがたどり着いた。

 

 「あれ? もしかして…もう終わっちゃった?!」

 

 「ええ、貴方が遅かったからね~?」

 

 「うん…エクシア、遅い」

 

 「うぅ、そんなに言わなくてもいいじゃん!」

 

 そんな会話をしていると、リスカムが焦った顔でこちらに叫んだ。

 

 「ドクター、下から敵の援軍です! それも今さっきの非にならない数来ています!」

 

 多分、スカルシュレッダーが無理やり扉を吹き飛ばしたのだろう。

 

 「分かった! エクシア、案内は頼むよ?」

 

 「ふふん、任せてよ! 名誉挽回ってね! それじゃあこっち来て!」

 

 エクシアは走り、恐れもなく隣のビルへ跳び移った。それに続くようにドクターを連れたアーミヤとリスカム、フランカが跳び移り…最後に俺とミーシャの番になった。

 

 ミーシャの恐怖により震える手を優しく握り、走り出す。その後ろから走り寄ってくるスカルシュレッダーに追い付かれないために。

 

 そして、跳び移るために足に力を入れた時、目眩がした。

 

 それが致命的だった。

 

 姿勢を崩した上に、何時もなら絶対に届く距離その油断もあいまって、僅かに距離が足らないであろうと気が付いた。

 

 だから…せめてミーシャだけでもと、エクシアに向かってミーシャを投げつける。

 

 それを上手いこと身体で受け止めてくれたエクシアは見たこともない表情で叫ぶ。それは、苦痛を秘めたもので俺の心を乱す。

 

 「そんな、顔しないでよ…」

 

 そんな、フォルトの小さな声は届いたのか分からない。

 

 ただ、今は生き残るための行動をとらないと行けない。そのためにもビルの壁へナイフを突き立てる。

 

 でも、押さえきれない勢いをブーツに仕込ませたナイフも刺して今できる全てをして最大限押さえ込む。

 

 ゆっくりと近づく地面、嫌な音を絶てながら折れそうなナイフ。

 

 スローモーションで頭に流れる映像からただではすまないことを感じとりながらナイフが音を立て折れ、その時はやって来た。

 

 パキッと軽快な聞きなれない音と共に全身に襲いかかる衝撃と苦痛に悲痛の声が漏れ出そうになるが歯を食い縛り、まだ動く足を引きずりながらせめて遠くへ離れる。

 

 多分、スカルシュレッダーやレユニオンの兵士が追ってくるだろうから。

 

 あぁ…くそっ。こんなところで死ぬのか?なにも成せずに…

 

 出血により、薄れゆく視界に最悪のヴィジョンを浮かべながら、どんどんと酷くなる痛みに耐えれなくなって、地面に頭から倒れそうになる。

 

 だけど、何か柔らかいものに当たり、倒れ伏すことは許されなかった。

 

 もしかして、もうレユニオンに追い付かれたのかな…。

 

 そんな考えは嗅ぎ慣れた薬品の混じった匂いで吹き飛ばされた。

 

 その人は優しく地面に置いてくれて、安心させるように目を閉ざしてくれる。

 

 それに、身を任せて意識を手放した…。

 

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