なんで、なんでこんなことに…?
そんな疑問がずっと頭を支配する。
轟々と燃えゆく家…父さんだった人に無茶苦茶にされて殺された母さん。
この世の地獄がそこにはあったからだ。
嘘だ、こんなの現実じゃない…。
そう否定したくても、母さんから跳び跳ねた血が、あいつらの僕を責めながら笑う汚い笑い声が…そして、焼けてるようなこの痛みがこれを現実だと教えてくる。
そうして、これを現実だと認めざるおえない僕は思ったのだ。
本当の悪魔は僕ではなく、こいつらなんだって…!こいつらがいるからこんなことになったんだって…!
だから、僕は心の底から溢れる自身への怒りとコイツらへの怒りに身を任せた。
そして、その怒りから意識が解放された時には…血の池が広がっていたのだ。
自分自身何をしたのかは分からない。
でも、人の臓物を抉る感触が…苦痛で叫ぶ悲鳴が脳裏から離れない。
ただ、それを何処か愉しく感じた僕もまた…悪魔だとそう感じたのだ。
誰一人幸せに出来ず、それどころか皆の幸せを奪い…挙げ句の果てには全てを殺してしまった。
その事実が、その現実が僕を責め立てる。
─僕なんて…生まれてこなかったら。僕が…死んでいれば…
白銀の世界で僕は一人、仰向けになりながら冷たい冷たい雪へ沈み込む。
もうなにも見たくなかったから。死んでしまいたかったから
でも、何かがそれを許さないかのごとく、身体中から熱を放出する。
それは、周囲の雪を溶かし僕から寒さを取り去った。
だから、次は邪魔をされないように母さんの首を切った刃物を拾った。
そして、その刃を心臓へ突き刺そうと振り上げる…。
だが、その刃は僕の心臓へ突き刺さる瞬間、熱でひん曲がってしまった。
「なんで…なんで、死なせてくれない」
「僕に、どうしろって…いうの」
何もかも失ったのに、命だけは捨てることを許されない。
これが、皆を狂気へ追いやった僕への罰なのだろうか。
そうであるのならば、この罰とやらを考えた神こそが…僕とっては悪魔だ。
僕が望んでこうなったのではない…それなのに、勝手に悪魔として生まれて、蔑まれて…母を殺された。
そして、子は神から与えられると…僕は教わった。
「クソッタレ、の神がっ…!」
思わず出たその言葉が、新たに積もる雪のように…僕の心を埋め尽くす。
あぁ、死んだらクソッタレの神へ復讐してやろう…!
その考えと共に白銀の世界で僕は歩を進めた。
それから、2年がたった。
あれからというもの家も帰る故郷も無くした僕は宛もなく旅をし、フリーの傭兵として色々なものを体験した。
感染者への差別も、醜い人の姿も。はたまた、綺麗で美しい街や自然、そして輝かしい理念を持つ大人を。
そんな、眩しい光もその背後に蔓延っている闇も、結局は人の命の上に建っていることも。
だけど、僕にとってはそれら全てがどうでもいいように感じていた。
だって、僕は復讐したいだけなのだ。
そして、そのために傭兵として人を守り…助けて力を蓄えているのだから。
運のいいことにこの身体は刃で傷つけられても、腕が爆弾で吹き飛んでも時間をかければ再生してくれる。
だから、無茶が出来た。
普通なら死んでしまうような戦場だって、前線で相手の戦いかたを学ぶための訓練に出来た。
そして、そんな無茶を繰り返していたある日…僕は彼女たちと背を預けることとなった。
それは、クルビアにある鉱山での事件だった。
その日、ある依頼から久しぶりに帰った僕は急遽依頼を出してきた少女に頼まれて向かった場所に規制線と重装備で武装した集団にあった。
名をBSWと名乗ったその集団は私達にこの事件は任せてほしいと複数人で鉱山へ侵入していった。
だけど、僕の感覚がこの人たちだけでは重大な被害を出すだけで依頼をこなせないであることを示した。
何故ならば、そんな装備ではまともな視界も、万全な動きも出来ないからだ。
相手は感染者で、元々ここら一帯で有名な山賊だった者達なのだ。
トラップも作ってあるだろうし、奇襲を仕掛けるスポットも用意している筈だ。
どれだけ訓練している傭兵でも、身動きが取りにくい状態の構造も把握してない洞窟でトラップの対処は出来ないだろう。
だが、この手のものは話を聞いてくれないだろう。だから、せめてなにか起こった時に援護できるように、近くの木で身を忍ばせた。
そして、予想通り大きな爆発音と共に洞窟から黒煙が上がった。
その衝撃と焦りで、規制線が緩んだその瞬間にアーツを使い、洞窟へ飛び入る。
後ろから聞こえる怒号を無視しつつ、現場へたどり着いた。
そこでは、元気な姿で刃物を振り回す感染者と装甲にヒビが入りながらも耐えている二人の女性が、相手と立ち向かっていた。
高純度の源石が舞っているこの状況では長く戦うだけ感染のリスクが高くなるだろう。
それに、彼女達とはこの事件を解決するという利害が一致している。
ならば、手を貸す方が得策だろう。
構えた剣で山賊の一人を刺し、彼女達へ声をかけた。
「手、必要でしょ。助けてあげる」
首元にある、傭兵の印であるペンダントを見せながら銃を構える。
「どうやって傭兵が入ったのよ…?表の連中は何してるのかしら。…はぁ、まあいいわ。今は猫の手でも借りたい気分なの、役に立ちなさいよ」
「ちょっと…フランカ!名も知らない傭兵なんて信用できないでしょ!?」
「別にいいじゃないー?緊急事態なんだし~。リスカムはもう少し頭を柔らかくした方がいいわよ~?」
「フランカが自由すぎるだけでしょ!?」
ふむ、一人は話の分かる人で良かった。もう一人はダメそうだけど…まぁ、仲良さそうだし上の連中を説得してくれるでしょ、多分。
「クソッタレ!なんで白銀の悪魔が此処にいるんだ!?」
「白銀の悪魔…?!それって…」
驚愕の表情で固まっているリスカムと呼ばれた彼女へマイレンダー協会からもらった勲章を見せつける。
それを見た彼女の顔が面白く、笑いながら問いかける。
「ふふっ。いま名前、知ったね。信頼、してくれる…?」
「…っ!えぇ、信頼します。ただこの後の事情聴取には、参加してくださいね!」
─えっ、嫌だな。…聞こえないふりしよ。
「貴様らぁ!よそ見して談笑とはいい度胸だな!」
怒りによって、飛びかかってくる山賊へ銃を放つ。弾丸は彼の脚を撃ち抜き、動けなくなった所をフランカが無力化した。
続いてアーツを撃ってくる山賊の攻撃をリスカムが無力化し、リスカムが放った弾丸が彼らを足止めする。
それに合わせるように切り込むフランカと共に持ち変えた剣で切り込む。
盾を持った山賊がフランカの刃を受け止めようと構えたが、その盾ごと、敵の脚を貫く。
だが、横から迫る山賊の刃が彼女を狙う。
僕は、その山賊を押し退けて腕を切り落とす。
「あら、貸し一つね?ありがとう」
「危なっかしい、戦い方だね。そんだけ、あの人の事…信頼してるんだ」
笑いながらそう言う彼女へ後ろで襲おうとしていた山賊に拳銃を構えていたリスカムを見て問う。
「当たり前でしょ?私達はコンビなの─」
「ちょっとフランカ!前に出すぎ!私とフォルトさんの負担も考えて!」
自信満々にそう答えようとしたフランカの声に被さるようにリスカムが叫ぶ。
どうやら、リスカムはフランカの行動に納得はいってないようだ。
「だって。いいコンビ…だね?」
「えぇ、そうでしょ?貴方もいい性格してるわね~?」
頬を少し赤らめているフランカは、煽られるのは得意ではないのかもしれない。
─あれ?てか、なんでリスカムは僕のコードネーム知っているんだ?
今じゃあ、白銀の悪魔が有名になって覚えてる人居ないのに…。
そんな疑問を胸に秘めながら、最後のリーダーであろう山賊に目を向ける。
その山賊は僕の依頼主である少女の姉の首へナイフを押し付けて叫んだ。
「くそっ!貴様ら、こいつを殺されたくなきゃ、武器を捨てろ!」
距離も離れている上に射撃をしても、致命傷になる箇所は人質で隠されている。
「あら、これは一時休戦かしらね~?」
「えぇ、そうですね。この距離では為す術ありませんね」
わざとらしく言いながら、武器を捨てる二人。その二人の期待するような視線に、しょうがなく答えるしかないようだ。
僕も二人と同じように武装を地面へ置く。
そして、山賊に見られないように詠唱をする。
「傲慢よ、その力を我に渡したまえ。そして、汝に勝利を捧げよう」
その言葉を紡いだ時、世界が歪んだ。そして、白銀に光る何かが僕の全身に纏い、山賊との距離をゼロにした。
徐々に驚愕に染まるその顔を楽しみながら、ナイフを取り上げ顔面に拳を叩き込む。
それらの動作が完了した時、世界が元に戻る。
白銀に光り纏っていた何かは、僕の身体に中に入り消失する。
白い息を吐きながら、少女の姉に話しかける。
「もう、大丈夫だよ」
その言葉に安心したのか、泣きわめく彼女の頭を撫でながら、リスカムとフランカへ目を向ける。
リスカムはこちらへキラキラと輝く目を向け、フランカはそれをからかいながら笑う。
僕が、心の何処かで求めていた暖かな光が、そこにはあった。
「はぁ…それで白銀の悪魔が何のようだ」
勝手な行動により事情聴取をBSWの基地で行われた後、フランカ達の上司であるジャネットのところへ案内してもらった。
くたびれた表情の彼女は話を聞く気はあるようだ…だから、単刀直入に答えた。
「僕を、BSWのB.P.R.Sに入れて」
「ほう?何処にも所属していなかった貴様がか?何のために?」
「此処なら今の、僕じゃ…受けれない仕事を、受けれる。それに、彼女達が…眩しかったから」
「…そうか。だが、その決定をするのは私ではない。管理本部だ。ただ、もし会計士が君を採用するなら私も君を求めよう。我々にはプロフェッショナルが必要だからな」
「本当?…実は管理本部からは…ジャネットがいいと、言ったら雇ってもいいって…言われたよ」
「なに…?それは本当なのか?」
「うん、これ…書類」
パッとジャネットの机に落とした書類は、事前にあるルートを使って話を通してもらった正式な書類だ。
「貴様、私がこう答えると知っていたのか?」
「うん、君に親しい人が、教えてくれたからね」
後ろの扉に向けて微笑む。ジャネットはそれだけで気がついたようだ。
「はぁ、悪知恵を教えたのはフランカか…。分かった。フォルト、君の所属を歓迎しよう。後で他の必要書類も君へ送ろう」
「ん、分かった。それじゃ、これからよろしく。ジャネット」
背を向けて、外へ出る。少し眩しい廊下には妖しく笑うヴァルポとそれを咎めるヴィーヴルが居た…。
リクエスト編です。BSW所属のオペレーターは知れば知るほど好きになりますね。
後半は曇らせとリスカム、フランカの話を深めます。
完成までお待ちください。