救いのために   作:ヒナまつり

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15話

 

 Wと離れて自己紹介を行いスノーデビル小隊と行動を開始した。

 

 そこで、俺は今まで以上に…現実を知ることになったのだ。

 

 レユニオンという世界に絶望した者達の醜さとアーミヤが継いだ使命の高潔さを。

 

 それが分かったのは目に写る真っ赤に燃え盛るビルだった。

 

 その中には死にたくなくて必死に逃げていたであろう人々が苦悶の表情で殺され吊るされている姿があった。

 

 確かに…彼らは罪人であるのかもしれない。だが、それでも…人を、命をそのように扱っていいものではないのだ。

 

 彼らが、狂気に駆られる過去があるのは分かる。

 

 だが、やられたからやってもいい…その考えが何になるというのだ。

 

 復讐すれば全てが良くなるなんてこと、ある筈ないのに。

 

 「なんで、こんな…惨いことを…?」

 

 そう言葉を出してしまった。

 

 スノーデビル小隊の皆は彼らと同じレユニオンであるのに。

 

 だが、スノーデビルは彼らとは違うようだった。

 

 俺の言葉に、否定することはなかった。それどころか、俺の目を手のひらで覆い隠してくれたのだ。

 

 「ベトロワ…大丈夫、動揺しただけ…僕は見届ける義務がある、ロドスを捨て…レユニオンに入ったんだから」

 

 「そうか…だけどな、レユニオンだって…あんなことやろうとするヤツは、昔は居なかったさ」

 

 顔をしかめながら、ベトロワはビルを睨む。

 

 「お前は、なんでレユニオンを選んだんだ?それも、裏切って…あぁ、言いたくないなら言わなくていいからな?」

 

 「…Wに、命の恩人を人質に、取られたから。でも、僕の意思で、ロドスから離れることに決めたよ。僕にとって、ロドスより、その人の方が…大切だったから」

 

 「そうか…辛かったよな。裏切りってのは」

 

 暖かな瞳でこちらを覗く彼は、今まで見てきたレユニオンとは違うのだとその暖かさで教えてくれた。

 

 「でも、僕はスノーデビルに会えて…良かった。レユニオンが、ただの酷い人達、だけじゃないって…知れたから」

 

 「俺たちには、姐さんが居たからな。道を間違えそうになることも無かった─」

 

 「ベトロワ、フォルト…そろそろ着くぞ。話はまた後にしろ」

 

 「了解、それじゃあ頼りにしてるぞ、新人」

 

 「うん、任せて」

 

 


 

 吹き込む冷気が、私達の脚を凍りつかせる。

 

 優勢だった戦線はスノーデビル小隊の登場によりいとも簡単に裏返った。

 

 「ッ!アーミヤ、皆を連れて逃げろ…!」

 

 前に突出してしまっているフロストリーフは撤退出来ないことを悟り、アーミヤへ、叫んだ。

 

 「ごめんなさい、出来ません。もうロドスから、誰一人犠牲は出したくないんです」

 

 だが、アーミヤにはその選択肢は無いようで手をレユニオンへ向ける。

 

 「今はそんなこと言っている場合じゃない、追いつかれたら私達には勝ち目がないんだ。早く─」

 

 その言葉を遮って赤黒いアーツが戦場を駆ける。

 

 放たれたアーツはフロストリーフの側に近づこうとするレユニオンをなぎ払い、スノーデビルまで貫こうとする。

 

 だが、そのアーツはその直前で消失した。

 

 まるで何者かに食い破られるように。

 

 「フォルトさん…やっぱり此処にいたんですね。ドクター、指揮をお願いします」

 

 だが、その言葉が綴られる前に周囲に異常が発生した。

 

 酷く寒い冷気が全てを凍てつかせようと吹き込める。

 

 それは、先ほどまでとは比べ物にならない程に。

 

 「案ずるな、ロドスの者達よ。お前達のことは、苦しまないよう死なせてやる」

 

 その言葉を告げ、スノーデビルはこの世の終わりのように吹き込める吹雪と共にこちらを襲いかかった。

 

 「させない…凡そ、血の通う者ならば─」

 

 凍てつく身体に鞭を撃ちながらフロストリーフはアーツの詠唱を綴る。

 

 だが、それを許す相手ではなかった。

 

 フロストリーフの口内へ凄まじい冷気が吹き込まれたのだ。

 

 「…っ!?貴、様」

 

 「これで、上手く舌が回らないだろう?」

 

 「フロストリーフ!?…っ!ほんと、良いところ狙ってくるわね、フォルト!」

 

 それを目撃したメテオリーテが援護に回ろうとした時、ハンドバリスタに向けて矢が放たれる。

 

 それに反応したメテオリーテは間一髪躱したようだが体勢を崩した。

 

 そこを狙いフォルトのアーツによる炎が降る。

 

 だが、それを守るようにアーミヤが前に立ったところ、相手にも動きがあった。

 

 何故か、フロストノヴァの近くに固まったのだ。

 

 だが、その答えは直ぐに出た。

 

 フロストノヴァの、彼女の歌が…アーツの詠唱が始まったのだ。

 

 「…!アーツの詠唱!?皆さん、私の側に!」

 

 アーミヤの声に反応して、ジェシカとドクターが集まっている間にもフロストノヴァの歌が綴られていく。

 

 そして、フロストノヴァの周りに大量の黒い結晶が生成されていく。

 

 それは、地面に落ちた瞬間…地面を黒く凍りつかせた。

 

 そして、瞬く間に広がり侵食する。

 

 当たったら生き残る確率は0に等しいだろう。

 

 そして、その結晶は全てアーミヤへ向けられた。

 

 「…皆さん、何としてもあの詠唱を止めなければ私達に勝ち目はありません。皆さん…援護を、お願いします」

 

 アーミヤは深呼吸するように息を吸い込み、手をフロストノヴァへ向ける。

 

 そして、その刹那黒い結晶と黒いアーツが衝突した。

 

 だが、アーミヤのアーツは物体は防げても冷気までは防げない。

 

 瞬く間に、アーミヤは手や顔の一部を凍らせられる。

 

 「…っ!?」

 

 手足の感覚を失い、声にもならない苦悶の叫びがアーミヤの口から漏れる。

 

 そして、最後の結晶がアーミヤのアーツに衝突し、アーミヤは地面に膝をついた。

 

 それを見たフロストノヴァはアーミヤの限界を悟ったのか冷気を集める。

 

 それは、アーミヤが守りきれない程の冷気を一気に爆発させるために。

 

 だが、その冷気の流れを立ちきるように氷の刃が放たれる。

 

 「これ以上、好きにはさせない」

 

 それは、フロストリーフによるものだった。

 

 死力を振り絞り出した刃は、長くは持たなかった。だが、その一瞬がアーミヤ達にチャンスを作り出した。

 

 それをものにするために駆け出すメテオリーテは走り出す。

 

 だけれど、それに勘づいたレユニオンとフォルトの矢が彼女を狙う。

 

 ジェシカが援護をするが、それでも数々の矢がメテオリーテを襲った。

 

 その中の一つはメテオリーテの肩を掠ったが、彼女はそれでも止まらない。

 

 「これくらいじゃ、私を止められないんだから!」

 

 自己暗示するように叫び走るそんな彼女を見守るしか出来ないアーミヤは周囲を見渡す。

 

 「何か、何か私に出来ることは…」

 

 その焦りが功を成した。

 

 スノーデビルがアーツを使用しようと冷気を集める際に冷気が揺らいでいることが分かったのだ。

 

 それも、源石で覆われた建物の壁から。

 

 そして、アーミヤのアーツがそこを撃ち抜く。

 

 パラパラと舞う粉塵が晴れた時、そこには黒い源石が隠されていた。

 

 それが壊れた時、霧が晴れた。

 

 レユニオンはからくりがバレたことに焦り、隙が生まれた。

 

 メテオリーテは、その間にフロストリーフと合流し彼女を背中に担ぐ。

 

 「まったく英雄気取りも大概にしなさい!あなたのことを見殺しになんて、できるわけないでしょう!」

 

 「下ろしてくれ…私は子供じゃないんだぞ…」

 

 「イヤよ、絶対放さないから!」

 

 そう二人は多少言い合いながら、アーミヤの元へ駆ける。

 

 だが、それを許さないと放たれたレユニオンの矢が彼女達を狙う。

 

 でも、アーミヤのアーツがその全てを打ち落とし、彼女達の盾になるように立ちはだかる。

 

 そして、ロドスの全員が撤退を開始した。

 

 だが、追撃を行おうとするレユニオンが彼女達へ襲いかかろうと追っていく。

 

 それに気がついたアーミヤは狙撃オペレーターへ忌々しいシンボルへ射撃を命令した。

 

 そして、ビルが爆発で崩れゆく煙に紛れてロドスは消え去った。

 

 そして、それが見えているのに…引き金を引けない弱虫の視線が彼らの背を見届けた。

  

 


 

 俺のスノーデビルでの初陣は成功とは言えなかっただろう。

 

 白銀の世界に佇みながら、先ほどの戦闘を思い出す。

 

 敵はオペレーター数人に指揮官1人、こちらはスノーデビル小隊と別の小隊の者が少し。

 

 だが、基本的にはフロストノヴァの独壇場だった。

 

 確かにフロストノヴァのアーツは凄まじい、だが本人の体調はそれに伴ってもう戻れない所まで来ているのだ。

 

 彼女に頼り続ける戦法はこの先、取り続けることは出来ない。

 

 だけれど、俺にはそれ程の力がない。

 

 今さっきも、放った矢はフロストリーフに打ち落とされ、アーミヤのアーツに消失させられた。

 

 それに、あいつらの力もアーミヤに防がれ、次を詠唱している間にアーツを撃たれてしまった。

 

 これは、戦闘経験不足故の敗北なのだろう。

 

 力を実直に使いすぎているのだ。それに、詠唱により誰に何をやるのかが割れるため、防がれやすい。

 

 後で、戦い方を練らないと。

 

 そんな考えに耽っているとフロストノヴァに側に大きな兵士が立っていることに気がついた。

 

 二人は何かを話しているようで、親しそうだ。

 

 もしかして、あれがパトリオット?

 

 凄く強そうな雰囲気が纏ってるし、数々の死が彼を覆っているのも見れる。

 

 多分様々な戦争を経験した人なのだろう。

 

 何処か恐ろしい感覚と尊敬の気持ちで彼を見ていると彼の目が俺を貫いた。

 

 その瞳は前世の何処かで見たことのあった瞳だった。

 

 すっと思いだせはしない。だが、彼のような人とあった気がするのだ。

 

 悲しく、苦しく…寂しいその瞳が。

 

 あぁ…分かった。戦争で全てを喪ってしまったことのある人の目だ。

 

 同情することもその傷を癒すことも出来ない程に壊れてしまった人もいたが、この人は強いのだろう。

 

 いや、あるいは罪滅ぼしで生きているだけなのかもしれない。

 

 そして、過去を思い出しながら数刻、目を向けあった。

 

 それで、彼は何かを納得したのか不意に視線を外し何処かへ歩きだした。

 

 とりあえず、直ぐに殺されるわけではないようだ。

 

 ホッとして、吐き出した息が空へと舞う。

 

 少し晴れた空の光がフロストノヴァが作り出した白銀の世界を輝かせていた。

 

 そして、そこにはこちらを見るスノーデビルとフロストノヴァが居た。




遅くなりました。

次からのお話は色々荒れるかもしれません。

ですが、これがアークナイツだと思うのでアークナイツらしさを出していきます。

それでも良いよって方はしばらくお待ちいただけると幸いです。
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