裏社会でヒットマン稼業を営む男、ウィリアム・ウィルキンソン
そんな彼にある老人が依頼を申し込む
果たしてウィリアムは無事に依頼を達成できるのか―――?

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いろいろガバガバなので温かい目で見てくれたら嬉しいです!


殲滅者(仮)

「お願いします! 私の家族を奪った()()()()を、あの組織を潰してくれるというのならいくらでも払います!!」

 

「本当ぉ? じゃ、ま、頑張るよウン」

 

老人と中年の男、二人は狭く、小汚いが開放感はあるオフィスで机を挟んで何かの取引をしている。

老人の携えている重厚感のあるジュラルミンケースからおおよそ明るい取引でないことは明らかだ。

 

「まぁ百万! 百万でいいよ、俺は生活があるけど、どうにも可哀想だしね。この仕事、引き受けた」

 

「本当ですか!」

 

「本当だ、すぐに動こう。 じゃ、この……ここまで」

 

中年はジュラルミンケースにぎっしり詰まった札束のほんの一部だけを取り出し、それを机の引き出しにしまった。

実に不用心だ。

 

「それじゃ、潰したら報告するよ。さよなら」

 

「はい……」

 

「あぁ、それと! このことは他言無用で。ウチは闇稼業だ」

 

「ええ、わかっております」

 

そうして老人はオフィスのガタのきた扉から出ていった。

それを見送った中年――このウィリアム・ウィルキンソンはしばらく天井を眺めて考え事をしてから湯を沸かし始めた。

コーヒーを飲もうとしたのだ、嫌になるほど砂糖が入ったエネルギー効率の高いやつを。

正気じゃない、ミルクを入れずに飲むなんて。

 

だが蛇口から出る水が湯沸かし器を満たす前に、外から音が聞こえた。

何か言い争う声が。

 

「なんだ? 喧嘩でも起きてんのか」

 

ウィリアムがいる地域は治安が良いとは言えない、若い親不孝者(バカ)共がトラブルを起こすこともしょっちゅうだ。

老人が出た扉と同じ扉を開けて、路地裏の景色を見る。

オフィスは路地裏と繋がっているのだ、後ろめたいビジネスが表に出るわけがなかろう。

時刻は深夜を回り、月と街路の差し込む明かりしか光は存在しないが見えたのだ。

壁を背に倒れている、先程の老人が。

その脇腹には大ぶりのナイフが深く刺さっている。

 

「おいおいおい、な、なにがあったのよ!」

 

「そ……組織の始末屋……です」

 

「そんなことある? 今出てったところじゃん」

 

「ま……待ち構えて……いて……ううぐっ」

 

老人は血を吐いた、内臓が損傷しているということだ、どう処置してももはや助からないだろう。 

 

「お願い……します……」

 

「!」

 

老人はウィリアムの手を強く握った。

 

「私は……死んでもいい……

ですが……必ず……必ず! 奴らに! ……私の……家族の恨みを…………憎悪を……奴らに刻みつけて……くださ…………………………………………」

 

老人は息を引き取った。

涙を流しながら、死してなお、ウィリアムの手を握る両手は頑強であった。

 

「……あぁ任せろ」

 

ウィリアムは老人の死体を大きな袋に包み、オフィスに持ち帰った。

そしてすぐさま電話をかけ始める、彼の友人、協力者たる男に。

 

「あぁ、俺だよジョー」

 

『丈だ、ウィリアムか』

 

「とある犯罪組織のアジトの場所を調べてほしい、ええと名前は確か“rust・hand(錆の手)”」

 

『ラスト・ボーン……了解した、少しまて。依頼でか?』

 

「あぁそうだ」

 

『そう……あぁ解った、某所の山間部にある大豪邸だ』

 

「オーケイ、口座には後で振り込んでおく250万」

 

『足りん、500だ』

 

「ボッタクリの亡者め、せいぜいまともな死に方しろよ」

 

電話を切ると次はオフィスのバックヤードに移動した。

銃が保管してある場所だ、それだけではない。

非合法な報酬やコレクション、とても公には出せない文書など。

まぁこの場合それらは使う事は無い、ただ戦闘のための武器があれば良い。

 

「よし……」

 

次に、移動だ。

歩いて数分の場所にある車にのり、目当てのアジトに向かう。

装備は防弾コートと何の変哲もない、銃社会の国ならばどこにでも売っている拳銃一丁とナイフと大量の装填用マガジン。

ウィリアムは弾切れを嫌う、明らかに過剰な量の弾薬だが本人曰くは『備えあれば憂いなし』と言っている。

まぁ大抵有効活用はできず余るがね。

 

車は何の変哲もない国産車、目だってはいけないのだ。 

ウィリアムのような仕事をするものは。

もちろんウィリアムの職業は殺し屋だ、だが断じて暗殺者ではない。

 

「そろそろアジト前か……見えた! 洋館か……デケェし……柵に囲まれてやがる……門が見えてきたな」

 

「止まれ!」

 

何故なら……

 

「どこのものだ? 降りろ!」

 

「はいはい、警備員さん」

 

「ボディチェックだ、手を挙げて……」

 

彼はいつも、正面から殲滅する。

 

「おわっ」

 

ウィリアムの拳銃から放たれた弾丸が警備員の頭を、水風船のように破裂させる。

すかさず警備員の相方はトランシーバーで今目の前で起きた異常を報告する。

自らの命を護る銃よりも先に仲間に情報を伝えるトランシーバーを手に取るのはプロとしか言いようがない。

 

「がわっ」

 

まぁ、結局は死ぬのだが。

敬礼ッ

 

「さーて、門に入って……あれ?」

 

錠がかかっている。

まぁ至極当然の話である、逆に何故この男は鍵がかかっていないと思っていたのか聞きたい。 

普通の家ならともかく、ここは犯罪組織のアジトなのだぞ。

ちなみに錠はカードキーを使うデジタル式、洋式の豪邸の雰囲気には……合わないような、合うような。

 

「ま、それじゃ警備員クンから剥ぎ取ればいいだろっと……あったあった」

 

ウィリアムはカードキーを読み取り口にスライドさせた、が……

 

「アクセス拒否!?」

 

まぁそうだろうな、警備員を倒して侵入できたら、まるでセキュリティとして機能しない。

アジトの方から侵入者の報告を受けて干渉したのだろう。

 

「クソッ」

 

ウィリアムは警備員の持っていたアサルトライフルを手に取り、錠の門をロックしている部分に向けてフルバースト。

さすがの鉄製のロックもこれには耐えきれず粉砕。

 

「最初からこーすりゃよかったんだよ! 侵入じゃっ」

 

門から豪邸までの距離実に100メートルほど、さほど時間はかからない。

だがもう異常を聞きつけ命令を与えられた私兵が次々到着、ヘルメットに防弾チョッキを身に着けた雇われの傭兵(プロ)達。

美しい剪定された木々を血に染める戦いが始まろうとしていた。

ウィリアムは木の陰を障害物として利用、傭兵の数、実に10人!

 

「侵入者よ! 降伏しろ」

 

「しない!」

 

木から腕だけを出してアサルトライフルを乱射、狙い(エイム)も精密もクソもない安全に弾丸(たま)をばら撒くだけの射撃方法。

しかしこれが集団には効果てきめん!

3人死亡、傭兵たちは侵入者に対して即射撃しなかった愚かさと甘さを早くも後悔する。

戦場に身を投じず護衛というぬるま湯に浸かっていた人間の妥当な末路である。

傭兵の隊長が命令を下す、包囲して確実に仕留めよと。

 

「この動き……3面から攻撃するつもりか」

 

もはや木は障害物としての機能を放棄。 

空は以前暗いまま、傭兵の黒い装備は丨闇《よる》に溶け込み草木に紛れ脳の認知から外れていく。

そして死は確実なものとなる。

 

「どこにいる?」

 

その時放たれた銃弾が右の横腹から左の横腹まで体組織を潰しながら貫通する。

だが同時に敵の位置を把握、存在しているであろう場所へ猛ダッシュで突っ込んでいく!

 

「む、向かってくるぞっ」

 

「野郎狂ったかっ」

 

(二人いるな……)

 

真っ直ぐ突撃したウィリアムは射撃を全身に受ける、それでも痛みを感じないのか傭兵の喉元にナイフを突き立てた!

 

「ぐわっ」

 

「次はお前だっ」

 

流れで、もう一人の首を強く掴む。

しかしウィリアムは無情にもその直後飛んできた傭兵の射撃で頭を吹き飛ばされた……

最初から無茶だったのである、人間一人の身体で傭兵の軍団に勝てるわけがないのだ……

 

「おい、首は大丈夫か」

 

「あ……なんか、ベトベトする…… !? うぅっ!!」

 

「ど、どうした!? あっ お、首に……なんだコレは!」

 

ウィリアムに首を掴まれた傭兵首にはヘドロのような黒い物質が粘菌のようにびっしりとへばりついていた。

それは蠢きながら目や耳の穴に入り込んでいた。

 

「あ、頭が、う……うぎぃぃぃぃいっ」

 

傭兵は尋常ではない速度で歯ぎしりを鳴らして呻く。

周りにいた傭兵たちが感じたのは恐怖!

得体のしれないものを目の前にした、本能からの恐怖だ。

故に皆硬直(フリーズ)し動けないでいた。

 

「ぎぎぎいいぃぎいいぃぃっ」

 

「なっ」

 

苦しむ傭兵は突如としてアサルトライフルを味方に向ける、まるで操り人形(パぺット)のように生気なく。

傭兵の困惑が解ける前に操り人形により丨引き金《トリガー》は引かれた。

傭兵は当然指南書(マニュアル)にも載っていないこの特異な事態に対処できるはずも無く残った5人は沈黙。

 

「ぎいぃいいぃっ……あっはっはっはっは! 戻ったぜ」

 

―ウィリアム・ウィルキンソン―

()()()()が何処から来たのか何時から居たのか、誰も知らない。

ただ一部の人間だけが、この未知の生物の正体を知っている。

身体を乗っ取り支配する。

地球上にいる寄生虫共のような居候ではない、(ホスト)そのものを奪う。

ただ今の所、人類全体に敵対的な反応は示していない。

 

ウィリアムが入った傭兵の身体は悲鳴を上げながらその姿を変えていく。

その様はまるで皮膚と肉の間で無数の蛇が暴れているようだった。

そうしていつものウィリアム・ウィルキンソンの姿に成る。

何度身体を変えても、彼の姿のイメージは人々で一致する、それはこのように整形するからであろう。

 

「よーし、それじゃあ着替えてお屋敷に上がらせてもらうか」

 

現在の装備はアサルトライフル二丁持ち、もはや準備した拳銃など必要ない連射の力。

さらにウィリアムの防弾コートの内側は典型的(ステレオタイプ)な武器商人の服ように武器や弾丸を持ち運べる構造になっている。

なので一見持っている装備はアサルトライフル二丁にナイフだけのように見えるが実際はアサルトライフル4丁、ナイフ二振り、拳銃一丁と毒瓶が二つ、そしておやつのビーフジャーキー。

 

「お邪魔しまーす! え」

 

ウィリアムが木製の扉を開けて豪邸に入ると20人ほどのの黒服がエントランスで拳銃を向けて待ち構えていた。

 

「…………“ドッキリ大成功”?」

 

「ぅてーーーーっ!!」

 

「あわっ、ちょっちょっと待っ」

 

慌てて扉の裏に周り盾として使う、だが木製なので当然長くはもたない!

そして扉には凝った装飾がついているのでもったいない!

しばらく待つと銃声が止んだ、弾切れである。

所詮はただの黒服、傭兵のような統率が取れるはずもない。

だから隙が生まれるんだ、訓練とかしてないのか。

 

「反撃タイム開始だっ」

 

そうなってからは早かった。

黒服はもう……いとも簡単にアサルトライフルを前にして倒されていった。

ヘルメットも防弾チョッキも付けてない雑兵、それが黒服である。

 

組織に対する忠誠心はな、いいが中身が伴っていないとまるでお話にはならない。

だが応援に駆けつけた増援の傭兵、これは安々と突破することは不可能!

 

(なんかさっきより装備の階級(グレード)がアップしてないか?)

 

その通り、ヘルメットもチョッキも軍事(ミリタリー)ブランド物の高級仕様。

装備はアサルトライフルよりも屋内戦に向いたサブマシンガンとショットガンに変更されている。

 

move(動け)! fire(撃て)!」

 

「てあっ」

 

何たる冒涜、罰当たり。

ウィリアムは先程自ら手にかけた黒服を盾に銃弾を防いでいる。

盾がダメになったら、地面に落ちている盾を次から次に変えながら徐々に傭兵の集団に接近している!

しかし人間の身体というものは思ったより頑丈なのだなあ。

 

「うぉらぁぁぁっ」

 

そして十分な距離に踏み切った時、黒服の胸元にナイフを仕込み、傭兵に向かって放り投げる。

70キロという十分な重さが伴った砲丸だ、死にはしないがまともに受けて体勢を崩さない生き物などいな……

少なくとも人間にはいない!

 

「うわああっ」

 

「へっ馬鹿が、自ら盾を手放すとはな」

 

「!?」

 

なんと傭兵達が向いた先にいたウィリアムはうつ伏せになって倒れている!

投げる瞬間に被弾してしまったのであろうか……

 

「侵入者が……倒れてん !? あがっ」

 

ナイフだ!

傭兵が投げられた(黒服)にナイフで首を掻っ切られた。

ウィリアムは死体にも入り込み動かすことが可能なのである。

つまり投げる瞬間、死んだ黒服に本体を移動させていたのだ。

不意を突かれた傭兵たちだが、即座にウィリアムが入った黒服に標的変更。

銃弾の雨を浴びせるが一手遅れた。

 

「ショットガンか……あんまり得意じゃないが」

 

「おあっ」

 

既に首を斬られた傭兵傷口から身体の内部に移動!

手に元々持っていたショットガンで左右の傭兵の膝を破壊だ、老後は車椅子生活確定!

 

「でもやっぱり結構強いかも」

 

脆いヘルメットのバイザー部分を散弾が貫通、頭部は破壊される。

 

「クッ」 

 

「遅い!」

 

「ぐわっ」

 

狙いを向けてきた傭兵の手を、サブマシンガンごと粉砕!

恐れ慄く傭兵たち、その隙を見逃してなるものかとばかりに一人二人続けて撃破だ。

傭兵達は大人数というのが仇になった、味方への誤射を恐れて容易に発砲できない!

片やたった一人のウィリアム、彼の発砲を縛る鎖は存在しない。

銃弾が切れれば死体から回収!

そして、ひたすらに撃つ!

 

「クソッ退避だ、戦略的撤退!」

 

「まちやがれっ! うわっ」

 

屋敷内の防火用隔壁が作動!

あまりに分厚く、突破はおそらく不可能であろう。

ウィリアムは今、エントランスに完全に閉じ込められた状態となった。

 

『侵入者……』

 

「えっ? あぁ館内放送ね」

 

『君のその()()()()()()、実に面白い』

 

「…………」

 

『どうだ、私の部下にならないか?』

 

「いやでも俺めちゃくちゃ損害出してるけど……いいの? そこんとこは」

 

『私はそんな細かいことは気にしない、優秀な者はたとえ親の仇でもスカウトする』

 

「それで俺になんのメリットがあるんだよ」

 

「生涯遊んでも使い切れぬ財産……最上級の支援(バックアップ)

 

「なんとまぁありきたりな……大して特別性も感じないね」

 

「そして全身義体(サイボーグ)技術を君の身体に施せる」  

 

「なにぃ!? 全身義体(サイボーグ)だとっ……義手義足ならまだしも……」

 

『ククク……驚いたか?』

 

「うん、すっごく。で、どんな事が出来るんだ」

 

『興味が湧いてきたようだな』

 

「まぁね、サイボーグなんてゲームとか映画とかでしか聞いたことないし。戦場でもお目にかかったことは無いね」

 

『筋繊維を人工繊維に置き換える事による筋力、ジャガーにも劣らない反射速度、装甲による耐久力が得られる』

 

「へー……すご……」

 

『そして……永遠の命だ』

 

「えぇ……なんかもうサイボーグの範疇超えてない?」

 

『脳の電算化による恩恵だ、どうだ時の権力者が得ようとしても得られなかった永遠の命が手に入るのだぞ!

このチャンスを逃すのか……?』

 

「…………」

 

『さあ、どうした!』

 

―――――――――√―――――――――

 

「カメラとマイクが破壊されたようです」

 

「これが答えというわけか……! フン、不躾者が……己の選択を薄れゆく意識の中で後悔するがいい!」

 

(俺ァサイボーグなんかならなくても死なないし……何よりこの組織は潰すって約束したからな)

 

そのとき部屋にある通気口から異常な音が発生する。

だがあらゆる戦場の経験があるウィリアムは瞬時に気づいた。

 

(毒ガスだな、こりゃ)

 

通常の人間ならここで終わり(ジ・エンド)だが……ウィリアムという生物にとってはまるで問題ない。

強めのサウナと変わりないものだ、まぁ彼はサウナが嫌いだがね。

 

(問題はどうやって出るかだが……通気口から出ればいいか)

 

通気口には鉄格子がついているが、ウィリアムの本体はドロドロのスライムのようなもの、風が通る隙間があれば容易に侵入できる。

 

「おぼぉ……おぼぼ……」

 

気色の悪い音を立てながら本体が目と鼻と耳と口からゲル状の本体が垂れ流される。

見よ、この犬ほどの大きさの黒いスライムがウィリアム・ウィルキンソンなのだ。

常に得体のしれない黒い液体を垂れ流し、地面を這い回って動く、視点を変えれば哀れなようにも見える生き物である。

 

(さて、一体どこに繋がってるんだ?)

 

網状になっている鉄格子を通るウィリアムは……製麺機に押し込まれる生地のようで、これを見れば数日はパスタを食べるたびにこの光景が浮かぶことだろう。

特にイカスミパスタには効果絶大だ!

 

這いながらウィリアムはダクトを進んでいく、上向きの通路も問題ナシ。

ナメクジのように粘液のお陰で壁を這えるのだ。

しかも意外と速度が速い、時速7キロほどのスピードだ、ゴキブリもそうだが無駄にスピードが速いと余計気持ち悪い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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