???[梔子ユメ。それがこのキヴォトスにおける、お前の名前だ]
私の1番古い記憶は、これだった。名前も知らないおじさんに、育てられた。
ユメ[ユメ…]
???[そうだ、それがお前の名前だ]
でも、どこか安心した。
ユメ[ねぇおじさん!]
???[どうした?]
ユメ[あのね!、今度授業参観があるの!、だからおじさんも来て欲しくて!]
???[その日は予定が…]
ユメ[え?…、来ないの?…]
???[分かった、予定を空けておこう]
ユメ[ありがとう!、おじさん大好き!]
???[…]
生活に関しては、おじさんが色んなことをしてくれた。勉強を教えてくれたり、ご飯を作ってくれたり、時には厳しく、優しく、私を育ててくれた。そして私が15になって、アビドス学校に入る前。
???[ユメ、1つ昔話をしよう]
ユメ[昔話?、桃太郎や浦島太郎とか?]
???[ある科学者がいた、家族を捨て、禁忌の存在の研究に没頭していた]
ユメ[禁忌?…]
???[狂った成果が山ほど生み出された、そのせいで、大勢の死人が出た]
ユメ[そうなんだ…]
???[だが、善良な科学者もいた。男の罪を肩代わりし、全てに火をつけ、そして満足して死んだ]
ユメ[その人も死んじゃったんだ…]
???[この話には教訓がある、1度生まれたものは、そう簡単には死なない]
それが、私とおじさんとの、最後の会話だった。それからアビドス学校への入学が決まって、おじさんに報告しに、家に戻ったら。
ユメ[おじさん!、アビドス学校へ入学決まったって、あれ?]
家には誰もいなかった。
ユメ[仕事かな?、それなら言うはずだし]
そこに机の上にあるメモが目に入った。
ユメ[何これ?]
メモには、こう書かれてた。
”ユメ、俺の役目はここまでだ。こんな形での別れになってしまってすまない。ユメ、お前を縛るものはもう何もない。これからのお前の選択が、お前自身の、可能性を広げることを祈る”
ユメ[おじさん?…]
おじさんの部屋を見たけど、前まではパソコンや、仕事関連と思う機材があった部屋が、最初から何もなかったかのような空き部屋になってた。
ユメ[おじさん…]
そこからの記憶はあまりなかった。多分だけど、雨の中飛び出して、キヴォトス中を駆け回り、おじさんを探した。知り合いにも聞いたけど、誰もおじさんのことを知らなかった。最初からいなかったように。
ユメ[おじさん…、どこに行ったの?…]
体力が尽きて、路地裏に座り込んでしまった。
???[どうしましたか?]
そこに、黄色の鉄板の頭の人が、傘を差し出してきた。
ユメ[あ…、ありがとうございます…]
???[ここでは風邪を引いてしまいます。建物の中に入りましょう]
その人に連れられ、1つの建物に入った。
???[ホットミルクです、これで温まってください]
ユメ[ありがとうございます…、タオルまでくれちゃって]
ブルートゥ[私はオーネスト・ブルートゥ。気軽にブルートゥと呼んでください]
ユメ[ブルートゥさん…、私はユメ、梔子ユメです]
ブルートゥ[ユメですか、素敵な名前ですね]
ユメ[私を育てくれた、おじさんが付けてくれたんです。でも、どっかに行っちゃって]
ブルートゥ[それは…、不憫だ、辛かったでしょう]
ユメ[ううん、おじさんにも事情があると思うの。それに今思うとおかしいですよね、名前も知らないおじさんに育てられたって]
ブルートゥ[ですが、今ユメさんがこうしているのは、そのおじさんが確かな愛情を持ってた事です]
ユメ[愛情?…]
ブルートゥ[愛なくして人は生きることは出来ません、例えそれが偽りであったとしてもです]
ユメ[偽りの愛…、かぁ…]
ブルートゥ[血が繋がってなくても、名前を知らなくても、そして、離れていても、その人とユメさんは、立派な家族です]
ユメ[ありがとうブルートゥさん…、少し元気が湧いてきたよ]
ブルートゥ[それは何よりです。おや?、]
すると日差しが、私に照ってきた。
ブルートゥ[晴れてきましたね。これはユメさんの為の日の出でしょう]
ユメ[私の為の日の出か…]
ブルートゥ[さて、私の方も仕事に戻りますが、ユメさんはどうしますか?]
ユメ[お礼もかねて、少し手伝います]
ブルートゥ[これはこれは…、きっとユメさんは素敵な大人になりますね]
ユメ[そうかな…、でも]
”お前の選択が、お前自身の、可能性を広げることを祈る”
ユメ[そうだね。だって、あのおじさんの家族だから!]